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第26話 飲み屋

「何か作戦会議でもしてたんでしょ?続けてくださいよ……何かいいアイデアとかあったら教えますから」 


 島田は自分が原因だと分かっているくせにニヤニヤ笑いながら誠達を面白そうに眺めていた。


「続けろったって……よう」 


 かなめはそう言うと再び酒の入ったグラスに手を伸ばす。島田はそれを奪い取った。むっとした表情のかなめだが、すぐに彼女はいつもどおりつまらなそうに視線をそらすとそのまま立ち上がろうとする。


「酒に逃げるのは辞めた方がいいですよ。限界なんでしょ?通常の捜査なら……」 


「令状無しじゃ何にもできねえんだよ!犯人は確実に東都都心からこっちに移って来た!しかもこの一月の間でだ!そこまでわかっていながら……」 


 そこまで言うと悔しそうにどっかりと腰を下ろすかなめ。同じようにカウラとパーラが頷きながら唇を噛み締めていた。


「俺は難しいことは分からねえですから」 


 あっさりと島田はそう言う。彼の部下の技術部の士官達なら警察上層部に知られずに楽に不動産取引のネットワークに侵入して情報を得ることができることは知っていた。だが犯人を闇に葬ることが目的の非正規作戦任務ならともかく警察官の身分の誠達にはどれも無理な話だった。


「それに今回は足を使うしかねえですかね……隊長は『放っておけ』って話ですし」 


「叔父貴が?アイツはサドだな」 


 かなめの言葉にサラが噴出す。かなめがにらみつけるが迫力不足のようで二人は相変わらず笑い続けていた。


「大変みたいね……私のおごり」 


 厨房から出ていた春子が鶏の刺身の盛り合わせを持って現れた。


「いいんですか?」


 誠の言葉に笑みを浮かべて春子がうなづく。母親の甘さに小夏がいつものようにかなめをにらんだ。


「ええ、色々大変なんでしょ?でもいつでも嵯峨さんの力を借りてばかりじゃ駄目でしょうしね」 


「あー!頭にきた!」 


 そう言いながらかなめは立ち上がると厨房に飛び込んだ。


「大丈夫かな……かなめちゃん」 


 アメリアの心配そうな声だが厨房ではまったく音がしなかった。


 誠達が黙っていると無表情のかなめが手に取り皿を持って現れる。そしてそのまま一同に配り始めた。必死に怒りを押し殺している。そのかなめの奇行を見ながら誠にはそんな彼女の思いが痛いほど分かった。


「そうカリカリしなくてもいいじゃないですか」 


 島田はそう言うとにんまり笑う。その表情にあわせるように小夏が笑みを浮かべる。


「なんで笑ってるんだよ」 


 そう言いながらかなめは刺身に一番に手をつけた。うまそうに頬張りまた酒を口に流し込む。


「捜査の基本は……餅は餅屋だ。真摯にお巡りさん達に教わればいいだろ?豊川署の連中が信用なら無いなら茜警視正からラーナ巡査でも借りれば良いじゃないですか」 


 島田の一言はまるで天啓のように一同を驚かせた。


「そう言えばいたわね。影の薄い捜査官が」 


「今頃くしゃみでもしてるんじゃないか?」 


 アメリアとカウラが笑顔で顔を見合わせる。誠はようやく明るい兆しが見えてきたのでおいしく見えた白身魚の刺身に箸を伸ばした。


「何事も一人で解決するのはなかなか難しいぞ……まあ俺もクバルカ中佐と出会うまでは一人で何でもできる気でいたからな」 


「島田先輩にもそんな時期があったんですか?」 


 口に刺身を入れたまま誠がつぶやいた言葉に仕方がないというようにうなづきながら島田は烏龍茶を飲む。


「まあな。グレてた俺を立ち直らせてくれた中佐のおかげで今の俺があるわけだ」 


「グレてたんですか……予想通りですけど」


 誠はそう言って島田を見つめた。


「そうよ。相談すれば知恵も出てくるものよ。だから皆さん元気出してね」 


「ガンバレー!」 


 春子と小夏の言葉になんとなく癒されながら誠はビールに手を伸ばす。


「善は急げだ。とりあえずメールくらいはいいだろう」 


 そう言いながらカウラは端末に手を伸ばす。


「なんだか忙しくなりそうね。なんなら私も運行部の非番のメンバーにも招集かけるわよ」 


「サラ……それは勘弁な」 


 かなめはそう言うと笑顔で酒を呷った。誠もようやく捜査の核になる人物が現れると言うことに最後の望みをつなぐことに心を決めた。



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