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白い天井に柔らかくもなく硬くもないベッド、腕から延びるチューブからは彼が生きてく為の栄養薬が注入されている。
女性が窓のカーテンを開けると暖かい光が部屋へと流れ込んでいく。
「え!?うそ!!凛君!」
女性は驚く声とともに果実の入った袋を地面に落としてしまった。
久しぶりに目を開けると知らない天井だ。しかも知らないベットの上だし、てか光まぶし!?
「え!?うそ!!凛君!」
あれ母さんがいる?声をかけようと口を開けるが萎んだ声しか出ない。
ホントにどうなってるんだ一体?母さんは泣きながら僕に抱き着いてるし腕には何かよくわかんないチューブが刺さってる。
少し経った頃だろうか扉の開く音と一緒に白衣を着た白髪の男が入ってきた。
「すいませんが華岡さん一度退出願えませんか?」
「ええ、ごめんなさい後で話そうね凛君」
母さんはそのまま扉の外に出ていく
「え~と取り合えず僕の名前は原陽介君の担当医師なんだけど..自分の名前わかるかな?」
そりゃ勿論自分の名前くらいはわかる名前は華岡凛13歳の中学2年生で帰宅部って言おうとしたんだけど声が出ない。
「そっか~長いこと声出してないから出ないのかok~合ってたら口開けて間違ってたら口閉じて」
僕は口を開ける
「なるほど脳は正常に働いてると、君の名前は華岡凛で事故当時は中学2年っとあってるかな?」
事故当時?少し疑問は残るものの口を開ける
「OK,OK,じゃあ最後に何をしてたかは?」
最後?最後は確かそう買い物をして、それで帰ってる途中で....頭の中にまるで靄が掛かったかの様に思い出せなかった。
「なるほど覚えてないのか....率直に言うと君は飲酒運転してる大型トラックに轢かれ掛けたんだ」
大型トラックに轢かれ掛けた普通轢かれたじゃなくて?
ああそうだ......お思いだした。確かスーパーで今日の献立について悩みながら食べ物買って家に帰る途中の信号で同じ学校の子がいたんだっけ?で青になるの待ってたら急に猛スピードでトラックが突っ込んできたんだった。
その後は...ああそうだ爺ちゃんに習ってた方法で同じ学校の子を抱えて後ろに飛んで避けたんだ。
あれ?僕トラックに当たってなくない?
「あ~待ってくれ轢かれ掛けた後が本題なんだ。君は驚くべき事にトラックを避けたが、避けた後ろに川があってね、運悪い事に老朽化した柵のせいで川に落ちたんだ」
そんなミラクルある!?確かに泳ぎは不得意どころか顔に水すらつけれないけど、え~?
「安心してくれ君が抱えてた少女は軽傷だった。むしろ問題は君だ」
「君は全身骨折と頭打撲による脳震盪で気絶してここの病院に運ばれた訳だが心して聞いてくれ、君は.....2年間眠っていたつまり今の君は15歳こんな事を言うのも酷かと思うが事実だ受け止めてくれ」
2年?中学の修学旅行は?卒業式は?.....こういう時こそ落ち着くべきだ。今泣いたり狂ったりしてもどうにも
ならないし。
「驚いたな~君泣いたりもしないのか、普通それくらいの歳の子なら絶望ってくらい酷い顔するんだけど」
そう言われても悲しむ時間があるなら早く元の生活に戻りたいし
「よし、リハビリやカウンセリングは任せてくれ元の生活に戻れるように手伝おう」
それからの僕は早く元の生活に戻れるように手摺りに抱き着きながら、少しずつ筋肉をつけて行って3ヵ月経った今では走ったりジャンプ位ならできるようになった。
扉が開くと原さんが入ってくる
「明後日にはもう退院してもいいよ親御さんにはもう話してあるから、後これ」
そう言って原さんが渡してきたのはヘルメットのようなものだった。
「これはVRゲーム機でゲームのカセットはもう入ってる名前はリアルRPGオンラインでこれを渡した理由は君の頭に残った後遺症のためだね」
後遺症?そういえば体が動くようになってから話すって言ってたけど、どんな後遺症なんだろ体は普通に動くし急に痛くなる訳でもない
「君の脳はどうやら、あの窮地になって戦いを求めたらしくてね。そのせいで頭を打ったときにそれが興奮状態になってしまったようなんだ」
「えっとつまりどういうことですか?」
「君の頭はずっと戦いを求めるようになってしまったってことだよ」
ここまで言われてようやくわかった。ようは僕は誰かと戦うときアドレナリンがドバドバでるような人間になったってことだ.....いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
「治せたりできないんですか?」
「ごめんね僕も治そうと手を尽くしたんだけど......」
そんなぁぁつまり将来ヤンキーとかボクサーになるしかないってこと???
「だが安心してくれ、このゲームの中で戦って耐性を付ければそこまで考えなくても生活できると思うよ」
よかったぁじゃあこのゲームを続けてればそのうちそんな怖い事にはならないのか
「じゃあ僕はこれで」
ペコリと会釈して原さんが出ていくと入れ替わりで母さんが入ってきた。