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「99話 綺麗な風景 」

「ミウシア、ミウシア!」

必死でルクスにしがみつくこと数時間、私を呼ぶルクスの声が耳に届いた。


「る、るくす?」

数時間も揺さぶられ続けた私は、心身共にズタボロだった。

ルクスにしがみついていた手にもはや力は入らなく、むき出しの手は凍り付くように冷たくなった。

凄い勢いで走っているルクスの上で感じる風のせいで髪の毛はぐちゃぐちゃ。

乗り物酔いのその先まで行ってしまうほどの揺れを感じていたせいでいつでも胃の中の物を吐き出せそう。


すでに限界ギリギリだった体を起こして辺りを見回そうとするも、風を受けないようにぎゅっと目をつむってルクスの首に顔をうずめていたせいですぐには何も見えなかった。


「ついたぞ、この辺りでいいか?」

「ちょっと...まって....。」

ぼやける視界がだんだんとクリアになっていく。

すっかりと暗くなった空と、目の前に広がるピンク色の風景。

気が付けば気温も安定している。


手をぐっぱぐっぱと広げると冷え切った手が徐々に間隔を取り戻していった。


「あ、ありがとう。助かったよ...。」

大幅に時間を短縮はできたけど体力を相当削られた気がする。

それでも、私一人では雪山で凍え死ぬか、弱体化している状態で魔物にやられていたかもしれない。


「例には及ばん。ミウシアには恩がある、この程度では到底返しきれぬよ。」

恩ってダンジョンを一緒に抜けた事かなぁ?

それなら私の方こそ、ルクスがいなかったらダンジョンの最下層までたどり着けなかっただろうし、お互い様だと思うんだけど...。


ルクスから降りて、雪が無い大地を踏みしめる。

あ~~~落ち着く!!


ルクスはフンと鼻から息を吐くと雪山の方に向かおうと私に背を向けた。


「もういっちゃうの?...また会えるよね?」

「そうだな、私は知の探究者。人間の国にもいずれ訪れるだろう。....とはいっても、人化魔法を習得してからだがな。」

ルクスのこの巨体じゃあ人間の領地には足を踏み入れられないよね。

それにしても人化魔法かぁ、そんなのがあるんだ。


「そっか、もし私がその魔法について何かわかったらまたこの雪山に来るね。」

「ああ、ではな。」

そう言ってルクスは凄い速さで雪山の方へと走り去っていった。


相変わらずドライだなぁ。


再度周囲を見回すと、桜が舞い散る綺麗な風景が広がっている。

星も綺麗、気温も安定、そして夜桜。


今日はもうここらへんで野宿しちゃおう。

いまだに治らない乗り物酔いに耐えながら、野営の準備を始めた。


あれ?そう言えばいつの間にルニアとの通話が終わったんだろう?

しがみつくのに夢中だったや....。

今度謝っておこう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


うむ、絶品だった。


今日は砂漠の町でたくさん作ってもらった料理の一つ、デザートフィッシュの葉包み焼きを食べた。

デザートフィッシュっていう、砂漠を泳ぐ魚がいるらしい。

砂の処理がめんどくさい分、味は絶品って聞いてたけど本当においしかった。

身はぷりっぷり、油もよく乗ってて言うことなし!しいて言うならご飯と一緒に食べたかったなぁ。


食べた後はごみをまとめて<弱火>プチファイアで焼く。

後片付けが楽でいいね。


食後の一服をしながら空を見つめる。

視界には桜の隙間から星の綺麗な空が見える。


「この桜って年中割いてるのかなぁ....。<鑑定>アナライズ。」


-------------------

名称:サクラ

品質:B

説明:特殊な地域でのみ年中花を咲かせるドライアドの成れの果て。極稀にマナを多く取り込んだ個体が先祖返りによって巨大化することがある。

-------------------


「ドライアドの成れの果て.....。」

ドライアドって何なんだろう....。ルニアがこの星の繁栄のためにマナの実を持つドライアドをつくったんだよね?

まぁ今は何も考えず、夜桜でも楽しもう。


3日後~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ようやくこのなにも変化のない森に変化が現れた。

遥か先の方にとてつもなく大きなサクラの木が見えたのだ。

きっとそこには何かがあると、そこにめがけて一目散に走る。


「あれ....まだ....?」

『上から見るとわかるんだけど、とんでもなく大きいわねあの木。』

ウォルフに言われて気が付く、近く見えるけどどれだけ走ってもたどりつけない。

その理由は大きすぎて縮尺がバグっているのだった。


『じゃあまだまだかかるじゃん....。』

はぁ、はぁと息を荒げながら早歩きで大きな木に向かって歩く。

弱体化した私はものすごく足が遅い。

と言っても地球の陸上競技ではぶっちぎりの1位をとれる程度には早いんだけど。


その分、道中の魔物との闘いには神経を使うようになった。

どうすれば隙を付けるか、どうすれば攻撃を誘導できるか。


結果的にあのオセロとかいう猫に救われ..てはいないんだけども、少なくとも私の糧にはなってる。


それに、呪いさえ解ければものすごく価値のある腕輪に代わるみたいな記述も鑑定で確認している。

呪いの解き方を知らないのが問題なんだけどね。


『がんばって、としか言えないわね。上から見ても木しか映らないけど、たぶんその木の下に集落があると思うわ。米粒みたいな何かが無数に動いてるけど、これたぶん人ね。』

『なんだって!』

俄然やる気が出てきた。

人間ってゴールが明確になるとやる気が出るよね、私半神だけど。

巨大な目印がゴール、迷うこともないしあとは突っ切るだけ!


敵がいつ来てもいいように飛び兎を構えて手を後ろに向けて走る。

この走り方は某忍者漫画定番の走り方で、一回やってみたかったんだよね。

実際にやってみるとどうも落ち着かないけど、武器を出したまま手を振ると無駄に疲労してしまうため、武器を出したまま走る場合はこの走り方のほうがいいんだと思う。


決して興味本位じゃないよ。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

SIDE:レオ

精霊王の爺に挑み続けてから数日が経過した。

いや、マジパネェって。全然勝てる気がしない。


人間は老いれば衰える。

でも精霊に肉体は無いため、老いたら老いた分だけ経験とマナの保有量が増えていく。

そんなんわかってんだけど、わかってんだけどこの実力差は無いでしょ~。


「レオ、もう諦めよ~?」

「レオ、もう無理なの。」

フューもフォリアも精霊王とのあまりの力量にやる気をなくしている。

ま~そうだよねぇ、2人からしたら師匠というか親というか、勝てないのが当たり前の相手だし。


「2人とも、オレとマナ直結してみない?」

普段精霊術を使うときは、2人にマナを分け与えて魔法を行使している。要は二人が魔法陣の代わりになるって感じ?

そのために少し発動までに時間がかかる。

精霊王と戦うときにはその少しの時間がネックになってくるってわけ。

だから二人にはオレの武器とか手とかに入ってもらってマナを直結しちゃえばいいんじゃない?

そしたら始動キーみたいにスキル名を合図に二人に精霊魔法を即座に使ってもらえる。

これ、行けるっしょ。アリよりのアリ!!

顔を上げてフューとフォリアをみるとものすごい嫌悪感のある顔で二人が体を寄せ合っていた。


「ついにフューの体を求めてきた...。ドン引き...。」

「ついにレオが変態さんになったの...。マジ無いの...。」

「いやいやいやいや!ちげーって!!!オレは2人みたいな幼女には興味ないから!!!...2人にこの杖か俺の体のどこかに入ってもらって、そこから直接マナを分け与えようかってことだから!!」

もっとミウシアちゃんとかフレっちみたいに身長が高くて、健康的な肉付きでな女性が好みだから!

あー、みんな元気かな。こんな真面目に修行してるのってオレ似合わねーなぁ...。


2人に理由をしても、未だに体を寄せ合って冷たい目で見ている。


「太くて長い杖をレオに入れる....?それもまた一興...?」

「違うの、それ違うの、お姉ちゃん落ち着くの。それじゃお姉ちゃんが変態さんなの。」

フォリアがフューの頭をぺちぺちと叩き、間違った思考を正そうとする。

フューはどこでそんな特殊な知識を覚えてきたんだ?


「ちがくて、精霊魔法の速度を上げるために!」

「レオに杖を刺すんだよね?」

「お姉ちゃん、違うの。」

話が進まねぇ!!!!!!!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

SIDE:トルペタ

「驚いた!!ただの鉄でコイツに傷をつけるか!!!」

「すげぇじゃねえかトルペタ!」

「まさか本当にできるとは思ってませんでした....。」


ギアードの技術を完全に理解した俺は、以前考えていたスキルを試行錯誤で試した。

マナを矢じりに流して先端をできるだけ鋭くする。そんなスキル。


ブライト師匠に相談したら「面白そうだな!!!コレ使え!!!」と世界最高硬度のオリハルコンのインゴットに向けて矢を撃てと言われたもんだから驚いた。


でもこれに傷をつけることができれば、ほぼ全ての魔物を貫くことができる。

そう思って試させてもらった結果、ほんの少しだけ、ゴーグルを使って拡大してやっと見える程度の傷しかつけられることができなかった。


もしや、と思い、ものすごく軽く矢を手で投げてみたところ、オリハルコンに1センチほど矢が刺さったのだった。


「師匠、ありがとうございました。それで...その....オリハルコンのほうは....。」

「ああ、心配いらねぇよ。どーせ打ち直すんだからな!!がはは!!!」

腰に手を当てて大声でいつものように笑う師匠に感謝し、俺は宿へと戻った。


今回解った事は、このスキルで作ったとても鋭い刃は鋭い分、刃こぼれを簡単に起こしてしまうということだ。

弓を使って撃っては刃こぼれを起こす。

かといって手で投げたような遅い攻撃を誰が律義に受けてくれるのだろうか。


「まいったな....。」

こんな時に俺なんかよりもはるかに頭のいいアルカナがいれば、いい案を出してくれるのかもしれない。

でも俺は俺の力で何とかしなきゃ。


とりあえず、俺の目標は二つ。


一つはこのギアードで学んだ技術を使って役に立つスキルを生み出すこと。

技術自体は皆の武器のメンテナンスや、自分の矢を作り出すことができるため、重宝するだろう。

でも皆の強化ができるわけでは無い、学んで満足するんじゃなくてさらにここから俺自身のスキルとして磨き上げないと。


二つ目はレベルを上げる事。

皆のが俺に譲ってくれたダンジョンミミックの灰、コレを元に武器を作れば使用するマナの属性によって武器の形状を変化させることができるらしい。

そのためには武器に属性のマナを流す必要がある、つまり祝福武器を今の指輪とダンジョンミミックの灰を使用した武器の二つにする必要がある。祝福武器を二つ扱うときはレベルが60~70は必要、装備のランクがA以上、マナの操作に長けていること。

俺のレベルは最後にミウシアさんに確認してもらった時で52。

最悪18レベルも上げる必要がある。


「....とりあえず師匠に相談して武器を作ってもらおう...。お金足りないだろうなぁ。」


前途多難だ....。

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