「94話 一方そのころ 」
SIDE:アルカナ
「はぁ...はぁ....。」
何ですかこの森は...!
マナがうまく操作できない上に奥に進むにつれて体が重くなってくるような気がするです!
私はミウのようにアイテムボックスを使えるわけでもないです。
ですので食料を大量に抱えなきゃいけないんですよ!?
「これなら....ッ!ぜぇぜぇ....ミウに教わるべきでした...ッ!」
トル君の出身地のクルシュ村、その北に存在する禁忌の森。
この禁忌の森のどこかに住むという、マナを持たない代わりにこの世の全ての知識を手に入れたという謎の人物。
その人物に会うために来たというのに...!
というかそもそもマナを持たないくせに私の知りたい魔法の知識を持ってるですか?
なんで私はこんな体力が必要な状況に陥ってるです?
地面は木の根で埋め尽くされていて、とても歩きにくい。
禁忌の森にはなぜか魔物が存在していないです。
体が重く感じるこんな場所に好き好んで住むわけはないですしね。
「....?何の音です?こっちですかね。」
かすかにドドドドドという音が奥の方で聞こえたです。木と根しかないこの代わり映えのない景色に飽き飽きしてたところですからね。
今の私にはささいな変化でもありがたいです。
音のする方へと重い体を動かしながら向かうと、そこには大きな滝があったです。
数十メートルはある崖の頂上から流れ落ちる滝、その崖の側面からは何本も木が横に生えていてとても綺麗です。
でも不思議なことがただ一つ。
滝の下には湖だけ、その湖から水は一滴も溢れていません。
「どういうことです?」
私はその湖に近付くと、滝が落ちる中心部に人影を確認したです。
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SIDE:トルペタ
「トルペタァ!そうじゃねぇっつってんだろ!!!!マナをこう、ぐぐぐぐっと金属に練りこんでにょーん!!!だ!!!!」
「はい!!!ブライト師匠!!!」
わかるわけないじゃないか!!!
俺はギア王から紹介されたギアード国で一番の腕を持つ鍛冶職人に金属変形の魔法を教わることになった。
でもギアードの職人は...というかこのブライト師匠が感覚的過ぎて教えるのに向いてなさすぎるんだよ。
俺は弓職人の家系だし、木材を使った弓を中心にやってきた。
金属には慣れてない...というのはいい訳なんだけどさ....。
「よし!お前に才能はねぇ!!明日から来なくていいぞ!!!」
「それは困ります!俺は仲間のためにツヨクナラナキャイケナインデス!」
「うぅ!!!感動した!!教えてやる!!!ついてこい!!」
「ハイ!」
俺がなんでこんなに感情を込めてないかというと。
これが8度目の破門宣言&撤回だからだ。
もうこの人ボケてるんじゃないか?毎回同じセリフで毎回同じことを俺が言ってもその度に感動する。
いや、ボケてたとしても腕は確かだ。
ブライト師匠は地面に手を当てて金属のみを抽出し、即座に武器に変形することができるほどの腕の持ち主だ。
今俺がやらなきゃいけないのは、あの感覚的にしか人にものを教えられない師匠の感覚を理解することだ。
そのためには...どうしたらいいんだろう。とりあえず師匠の真似から始めよう...。
俺は師匠に渡された鉄のインゴットを手にしてマナを....ぐぐぐぐっと練り込んだ。
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SIDE:フレア
王都の兵士を訓練し始めて2週間が経とうとしていた。
守ることを専門とする兵士たちはルクニカが担当、敵を倒すことを専門とする兵士はあたしが担当をしている。
目の前には150人程度の兵士たち。むさくるしいったらありゃしねぇのはあたしがミウシア達との旅になれちまったからだな。
....しっかし、こいつらときたら....
「オラァ!....今ので吹っ飛んじまうならもっと足踏ん張って、マナでも武器でも魔法でもスキルでも、何でも使ってこらえろ!!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
いや、なかなかどーしてやるじゃねぇか。
根性がすげぇ、いつ魔族が攻めてきてもおかしくない状況のせいか、あたしがバリバリに厳しく指導しても皆ついてきやがる。
それに伸びがすげぇ。
B級冒険者くらいの実力まで伸びてきたんじゃねぇか?
そもそも兵士として鍛錬は怠ってねぇから基礎はできてんだよ。そこにあたしの実戦知識と戦い方を追加すればこんなもんよ。
ルクニカのとこはどうなんだ?あいつは敵からの防衛に特化して教えてんだよな。
今度ルクニカの育ててる兵士とあたしの育ててる兵士で模擬試合をしてみるのもいいな、攻撃と防御、お互いどう攻めればいいかどう守ればいいか学ぶことができるしな。
というか後一週間がっつりあたしが教えたら、あとはルクニカの兵との模擬試合で2カ月訓練する方が効率よくねぇか?
ちょっとルクニカに提案してみるか~、丁度今日の訓練も終わりの時間だ。
「よーし、じゃあ今日の訓練は終わり!何か質問があれば明日までにまとめておいておくように!それと、明日までの宿題は敵に隙ができた時に切り出すような『必殺技』を考えておくことだ!じゃあ解散!お疲れ!」
必殺技ってのは要は切り札だ。あたしだったら何だろうな、スキルではあるんだが自分の攻めの決め手になるようなモンを持っておかなきゃ戦況は変えられねぇ。
私の出した宿題を受けて、兵士たちはわくわくしているものから、不安そうな顔しているものまでいた。
兵士たちは皆祝福武器を持ってはいるが、それは城から支給された槍や剣で、まだスキルを使用したことが無いものもいる。
となればスキルの自由さも理解していないものばかりだ。スキルっつーのは自分のイメージにあったマナを使えば簡単に出せるもんなんだがなぁ。
その感覚をつかむまでどれくらいかかるか楽しみだ。
とりあえずルクニカと飯でも食いながら模擬試合について話してみるか。
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ルクニカの泊まっている宿は城の近く、つまり貴族街の一角にある高級な宿だ。
飯の誘いをしに部屋まで行こうとすると、丁度ルクニカもどこかへ出かけるところだったらしく、宿のロビーでばったり会えた。
「よう。」
「フレアじゃないですか。どうしたんです?」
動きやすいパンツにカジュアルなシャツを着たルクニカを見る限り、汗を流して着替えてきたんだろう。
そういえば昔はもっとふりふりっとした服を着てたのに何の変化なんだろうか。
「ああ、いや。訓練も終わったし飯でもどうだ?もちろん。酒場だがな。」
「はぁ...いいですけど、私は飲みませんからね....。」
ルクニカと和解...まぁ喧嘩していたわけでは無いが、飯を食いに行くようになってから知ったんだが、コイツは酒が弱いらしい。
というかバーニア族が酒に弱い種族なんだとか。ミウシアの奴が規格外ってことだ。アイツはバーニア族じゃなくてミウシア族だな。
「しゃー、行くぜ。」
貴族街の酒場なんてお高くて行けたもんじゃねぇ。やっぱここは行きつけのとこだよなー。
行きつけのジャイアント地区にある酒場、「死ぬまで飲んジャイアント」に来て適当に注文を澄ましたあたしはルクニカの恰好について早速触れてみることにした。
「てかよー、ルクニカってそういう...なんつーか、女性らしくない服きてたか?昔はもっとフリフリのを着てなかったか?」
「えぇ、まぁ....。あー、フレアに相談とかはしたくなかったんですが....。ミウちゃんに好かれるためですよ。」
顔を赤くして答えるルクニカを見て、この話題なら存分にからかえそうだと確信を得た。
「ほ~~~~~~~~?やっぱりルクニカはミウシアに惚れてんのか。でもミウシアはそういう服が好きなのか?どっちかっつーと女らしい見た目の方が好きそうだったぞ?」
「!?!?!?!?本当ですか!?!?!」
机にバン!と手を置いて身を乗り出して叫ぶルクニカ。うるせぇ!普段そんな声ださねぇじゃねぇか!
ほら、まわりの客もみてんじゃねぇか。
「す、すみません。取り乱しました。....え?..え?つまり私のアプローチは逆効果?口調もわざわざかっこよく決めたのに?」
「お前、昔とキャラ変わったなあ...。確か前にミウシアがよー。レオと一緒に街中であの子可愛いとかなんとか言ってたんだが、ミウシアは異性に対する目をしてたなーって思ってなぁ。」
そういやレオはミウシアのこと狙ってたと思ったのに気が付いたら男友達に接するような態度になってたな。
なんかあったのか?ということはあたしにもわんちゃん....ゴクリ。
「ほっ、他には!ミウちゃんの好みのタイプとか服装とか喋り方とか髪型とか!!」
もはや隠すつもりないなコイツ!
「とりあえず、飯食いながらにしようぜ。ほれ。」
ミウシアの話で夢中になっているルクニカに、酒を渡すと一気に飲み干して話を戻そうとしてきた。
「お、おい。そんなに一気に飲んで大丈夫か?」
「いいから他の情報を教えてください!」
目をカッと開いて必死な表情のルクニカ、ミウシアはどうやってコイツをそんなに本気にさせたんだ?
色恋より戦い!!ってタイプだったのに。
「わかったよ、でも代わりにあたしの相談にも乗ってもらうぞ?まずミウシアはな.....」
この際だしレオにどうやって意識してもらうか相談しよう。あたしよりはまぁ、詳しいだろ...多分。
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SIDE:レオ
「だ~か~ら~!今魔物が攻めてきて王都が危険だから手伝ってっていってるわけ~!」
「しつこいわ!!大体、それが人にものを頼む態度か!!!」
トルッちくらいの身長で、鼻下から延びた髭は地面につくほどに長い。白と緑色の威厳あるローブを纏って大きな杖を持っている。
それが今俺が説得しようとしている堅物爺の精霊王。
「でもおじいちゃん、暇してるよ。...いたたたた」
「やることなくて、暇してるの。...いたたたた」
フューとフォリアに本当は暇していることをばらされ、2人の頭を杖でポコポコと叩く精霊王。
どうしたもんかね~。
「ゴ、ゴホン!確かに儂は暇ではある。精霊たちも各地の森とに移り住んで自由気ままに過ごしておるもんで、精霊の森は今暇だからな。精霊王の指輪を持っているとなれば力を貸してやらんこともない。」
「だったら....」
「でも儂は貴様の口調が気に入らん!!!」
めんどくせ~~~~~~~~。真面目に話そうと思えばできるけど自然体を受け入れてもらわなきゃマジで困るんだよね。とっさの時とか。
「口調を直す以外で力を貸してくれる条件無いの?」
「意地でも口調を改めんか!ったく近頃の幼いモンは....。」
俺の発言に一度は怒鳴り散らすも、自分の髭をいじりながら何かを考える精霊王。
なんだかめんどくさいことになりそうだなぁ。
「よし、儂に魔法を一撃でも与えたら考えてやろう。」
意地悪そうにニヤリと笑う爺。オレが精霊王に攻撃を与えられないのわかってて言ってるよ~。
精霊王のマナ保有量がパないっていうのもあるけど、たかがオレ程度のマナじゃあ爺の周りを覆うオートマナバリア(自動魔力壁)に全て防がれてしまう。
とはいえここで諦めちゃったら、皆に見せる顔がないよね~。
「ま、ちょっと頑張ってみますか~。」
「頑張るぞ~!」
「頑張る...です。」
「10年もしたら一発くらいは儂にあてられるかもしれんなぁ!」
その日から、オレは精霊の森で修行しながら爺に挑む日々が始まった。
マジ、勘弁してよね~。




