「93話 砂漠の町 」
『ふむ、町が見えたようだが....思った以上に寂れているな。』
『本当だ。外を出歩いている人がいないね。』
岩場で一夜過ごしてから数時間歩いてようやく見えてきた砂漠の町は思った以上に寂れていた。
一応、壁で一面を覆われていたけどそれほど広くはない。
でかいショッピングモール位かな?こういう時は東京ドーム何個分とか表現すべきなのかな?
東京ドーム行ったことないからわかんないや。
石でできた壁は2mくらい、ところどころひび割れたりかけたりしている。
侵入を防ぐ門のような物はなく。入り口からすんなりと町に入る事ができた。
町の中は民家?と思われる石造りの家、店らしきものは入り口近くには見当たらない。
民家は生活感がない訳ではないが、中の様子が確認できないため外からでは状況がわからない。
町の中心部の方にほかの建物の3倍程度の大きさをした建物があったのでとりあえず向かってみる。
『人がいないわけではなさそうだけど、外から全く人の気配を感じないのは少し不気味だねぇ。』
『砂漠という地形のせいかもしれん。こうも砂だらけでは窓を付けることもできないだろう、外を出歩くことはあまりないのではないか?必要最低限、という感じだろう。』
たしかになー、風が吹いたら砂が飛ぶ、家の中が砂だらけになったらたまったもんじゃないよねぇ。
一番大きな建物の前までくると、建物の壁にはジョッキのような物が彫られていた。
酒場?
扉は私の身長(175+耳)よりも大きく、木で作られている。
扉と石の間には何か柔らかいクッションのようなもので隙間を埋められている。
仲が静かなのか扉が分厚いのか、扉の向こう側からはかすかに音が聞こえた。
『じゃあ入ってみるね、人と話している間はあんまり返事ができないから落ち着いたときに話して。』
『わかった。念のため用心はしておくんだぞ。』
新しい町はいつも緊張はするけど、今回はまた少し違った緊張だ。
まだ人は見ていないしもしこの町にいる人がギリギリの生活をしていて、暗い感じだったらどうしよう。
どういうテンションで接すればいいんだろう?
そんな不安を胸に、私は重い扉を開けた。
「はい!!!!!イッキ!イッキ!イッキ!うぇーーーーーーーーーーい!!!!」
扉を開けた瞬間に聞こえてきたのは男性のテンションの高い叫び声、その後拍手と歓声、指笛も聞こえる。
なになに、どういうこと!?
中の様子を確認すると、中は広い酒場になっていて、30人くらいのケットシー族達がお酒を飲んでいた。
テーブルの上でジョッキを持ちながら両手を上げている若い男性を20人ぐらいで囲っている、他の人は少し離れて談笑をしていたり、人だかりをみてクスクスと笑っていた。
皆服装が薄着で、なんというか、踊り子とかアラビアンとかそういった感じだった。
全く状況が読めないけど、一つ分かったことがある。
「この村の人、陽キャ過ぎない....?」
私が入り口で唖然固まっていると、騒ぎの中心から外れてお酒を飲んでいた若いケットシーのお姉さんが私に気が付いた。
私と目が合うなり目をぱちくりとさせ、驚いた表情を私に向けたまま隣の女の子の肩をぽんぽんと叩く。
「なに??どこ見てんの?え?入り口?」
肩をたたかれた女の子もまた、私の方を見て口をパクパクさせた。
『何か挨拶しておいたらどうだ?』
『た、たしかに...。』
何で驚いてるかはわかんないけどとりあえず挨拶しておこう。
「ど、ども~。」
手をひらひらとさせて苦笑いで挨拶した瞬間に女の子たちの口が動いた。
「「たっ、旅人だああああああああああああああああああああああ!!!!!」」
うるっさ!!!!
女の子たちの叫び声を聞いたほかの人たちが私の方に一気に視線を移し、私を確認すると一斉に距離を詰めてきた。
「旅人?」「おい!マジかよ!!」「マジで旅人だ!!!」「しかもバーニア族だ!!!!!!」
「うぇいうぇいうぇいうぇい!!!!!」「かこめえええええええ!!!!」「お姉さんいくつっすか?彼女いますか?お酒飲みますか?」「え~、お姉さんマジでかわいい~。どこから来たの~?」「その服珍しいね~。」「え~、あたしも欲しいその服~。」
数十人の男女に囲まれた私は、村の外の雰囲気と酒場の雰囲気の差に面を食らってしまい混乱する。
ぎゅうぎゅうともみくちゃにされながらもなんとか抑えようと声を張り上げて発言をした。
「えええええと、あの!!ちょっと落ち着いて!!押さないで!!」
だめだああああ!うるさすぎて私が何言っても聞こえてない!
その時、奥の方からダァン!!!という机を叩く大きな音が聞こえる。
私を含め、周りの人は一斉に音のした方向を向き直った。
「お前ら!!!!お姉さんが困ってるじゃねえか!!!とまれ!!!!!!!」
奥の方を向くと、大きなテーブルに40歳くらいのダンディなケットシー族が座っていた。
ありがたや~。この場を納めてくれるのかな。
「で、でもさぁ、旅人なんて珍しいじゃん?色々聞きたいだろ。」
「そりゃ俺も同じだ。だからよ、今から今日の主役はそこの兎の嬢ちゃんだ。ステージに上がってもらって色々話してもらおうぜ!」
「えっ...。ちょっ!」
今までもみくちゃにしてた人たちがぐいぐいと、奥のステージ上に向けて私を押していく。
私はなすすべなくステージの上に上がることになった。
『災難だったな...ククッ。』
他人事だからって脳内で笑うなぁ!!!
あー、もう。無理やりとはいえステージにこうして上がっちゃった以上、何か言わないとじゃん...。
なんだか日本に居た時、新卒時代の会社の飲み会を思い出す。
あぁ、まだ新卒だった私を上司がパワハラ気味に自己紹介と一発芸を強要してきたっけ....。
それに比べりゃ楽かな、と思ったら案外楽になってきた。
ええい、腹をくくってやるっ!と思った瞬間、1人の若者が「うぇい!」と言いながら大きなジョッキを渡してきた。
中に入っているのは砂漠にもかかわらず氷が入った少し茶色い透き通ったお酒。
丁度のどが渇いてた私は迷うことなくジョッキに口を付けた。
風味は...テキーラに似てる感じの度が強いお酒を水割りにした感じかな?
この世界に来てから飲んだお酒の中ではトップクラスの出来栄えだと感じるのは氷のせいもあるのかもしれない。
そのまま一気に飲み干すと指笛、歓声、拍手が巻き上がった。
「いいぞー!」「あのサボニーを一気に...。」「バーニア族って酒弱くなかったか?」「おねーさんの名前教えてー!!」
アルコール度数がまぁまぁ高かったらしく、酔いが回る前のなんとも言えない感覚がした。
この流れで自己紹介をしちゃおう、もう後はノリで!ここは会社じゃないんだから!
「おいしいお酒をありがとう!ご馳走様!私の名前はミウシア!ここより北にあるというサクラ族の里を目指して王都から来ました!!」
「サクラ族?」「あのピンクの花が咲く森かー。」「お姉さんスリーサイズは!」「冒険者何年目ー?」
「好きな男性のタイプは!」「好きな女性のタイプは!」「王都かぁ、行ってみたいなぁ。」
サクラ族の里に反応したのは覇気のなさそうな髪の毛の長い男性。後で詳しく話を聞こう。
「すぐに旅立ってはしまいますが、1日程度は滞在しようと思っています!よろしくお願いします!」
「ウチ来るかー?」「いやいやウチに。」「いやいやいや私の家に」「いやいやいやいや俺の家に」
私が話している時だけ静まって、話し終わると一気に騒がしくなる。
酔っ払いばかりで人が多いのをいいことに、発言を特定されないからって悪ノリをしているひとばかりだけど、私は嫌いじゃないよそういうノリ。
『ミウシア、スリーサイズと好きなタイプを聞かれているぞ?』
『聞こえてるよ!聞こえたうえで無視してんの!』
スリーサイズなんて図った事ないし、測りたくもないよ...全く。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
あれからいろんな人に質問攻めに合い、何か旅の話をしてって言われたので、でかいミミズと戦ったこと、わたあめとあったこと、ダンジョンに潜った事や王都の様子をひとしきり語った。
この村はあまり娯楽が少ないらしく、旅人は極めて珍しいとのことで、皆楽しそうに私の話を聞いていた。
戦った時の魔法を見せて!とせがまれてソウル・スピリットを披露したら今日イチの盛り上がりを見せてくれた。
そんなこんなで解放された私は今、お酒を飲みながらサクラ族の里の情報を集めている。
割と飲んでるけどまだ平気まだ平気.....。
「へー、じゃあお兄さんはサクラ族の里近くまでは言ったことあるんだぁ。」
「妹がピンクの花が見てみたいっていうもんだからなー。でもあそこには強い魔物がわんさかいるぜー?俺は逃げ足だけに特化した運び屋だから何とかなったけどなぁ。」
ポイっと口におつまみの木の実を投げ入れてサクラ族の里近くの話をしていくれているのは、さっきステージで反応をしていたは覇気のなさそうな髪の毛の長い男性。
どうやら運び屋らしく、戦闘能力がない代わりに逃げ足に特化しているんだとか。
「でもいいお兄さんだねぇ、妹のために危険な場所に行くなんて~。」
「べっべつにそんなんじゃねぇよ。....ちょっと俺席移動するわ!」
なにかへんなこと言っちゃったかな、そのまま遠巻きにいた男性のところに行って談笑を始めてしまった。
「行っちゃったぁ」
『ミウシア....無自覚か....?』
『えぇ?なにがぁ?』
両手で頬杖をついて頬をムニムニと触る。あ~、だいぶ熱くなってきたなぁ。
『赤く染まった頬、酔って半分しか開いていない目、頬杖をついて上から目線で話しかける仕草。それでは誘惑しているようなものだぞ...。』
確かに頭がふわふわっとして心地よい気持ちではあるけどいうほどじゃないと思うけど。
そこまで言うなら確認しよう。
「<水生成>ウォータークリエイトォ、<光反射>ミラ~」
私はそのままの体制で目の前に水の膜と光の反射を操作したできた鏡を作り出した。
鏡に映ったのは物欲しそうな顔で上目遣いで見つめてくる目がとろんとした美少女。
中折れ耳が根本からぺたーんと髪に張り付いていて尚更保護欲がかられるような見た目をしていた。
あぁ、これは誘ってますね.....。
顔をぐしぐしをこすって火照った体を醒ますために一度外へと向かった。
外に向かう途中、いろんな人に「まさか!かえるの!?」って心配されたけど外でよい醒ましてくると伝えると親切にお水をくれた。
最初はノリが若い!って思ってたけどみんな優しいなあ。
重たい木の扉を開けると外は暗く、空を見上げると雲一つない綺麗な星空が広がっていた。
「綺麗...。」
丁度座れるような石でできたベンチが入り口の横にあったため、そこに腰かけ煙草を吸う。
これでコーヒーがあれば最高なんだけどなぁ。
『そういえばミウシアはよくその煙を吸っているな。平気なのか?』
『あ~、これは危ないものじゃない...ハズだよ~。中和剤もあるしぃ。』
『中和しなければ危ないのではないか....?』
たしかに。まぁ日本に居た頃の煙草よりは人体に影響が少なそうだしいっか。
ぼーっと星空を見ているとふと宇宙神の事を思い出す。
宇宙神はこの星の数よりもーっと沢山の星を管理しているんだよね、人間とは精神の作りが違うとしても終わりなく唯々働き続けるなんて大変だなー。
なんか娯楽でもないとやってられないと思うんだけど。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ティア、この小説って続き無いの?」
「どれですか~?.....あ~。この作者、もう投稿してないっぽいですね。最終更新日時から8カ月たってます~。」
「えぇ?えーっと、.....この人かな?思考パターンを読み取って...ログインして....っと。よし。」
「宇宙神様...その力の使い方はどうかと......」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
でも考えたら不思議だなぁ、サスティニアと地球はこの宙でつながってるなんて。
ゲームじゃないんだもんな。
『ミウシア、そろそろ通話を切るぞ。くれぐれも気を付けて、変な男に連れて行かれないようにな。』
『あんたは私のお父さんか!..まぁ気を付けるよ~。おやすみぃ~。』
眷属達とお話をしながら旅をして、町でお酒を飲んで。
こんなんでいいのかな~。サクラ族の里についたらもっとまじめに修行しますので....。
...皆元気かな~?
よし!もどって飲み直そう!!
ここを出たらサクラ族の里まで町が無いかもしれないし、お酒治めじゃあい!!




