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「92話 ジャングルを抜けて 」

東の大陸に上陸してから早8日、私はようやくジャングルを抜けることができた。

ようやくジメジメした木ばかりの光景から解放されると思っていたんだけど......。



「さすがにあつーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!」

『ミウちゃん大丈夫~?』

見渡す限りの砂、砂、砂!

どうやらジャングルを抜けた先には砂漠が広がっていたらしい。

いつ魔物に遭遇するかもわからない今、この厚着装備である和服を脱ぐことはできない。

汗を吸って服が汚れるという心配はレオに教わった対象の汚れを落とす魔法、<浄化>クリアで解決した。

教えてもらっておいて本当に良かった...。



ちなみに今日の通話相手はシーア、あれから眷属と休憩中は映像有り、移動中は映像無しというルールを設けた。

5日前にシーアと話した時に、シーアの前世が猫であることを聞いた。

今の姿は猫耳美少女だけど、人間になるならこんな感じになりたいなーと思い描いてた姿通りだったためとても嬉しかったみたい。

猫だったころ、猫にしては頭脳が桁外れに発達していて、猫にして娯楽を発明していたそうだ。

死因は自分でもよくわからないようで寝てたら神界に来ていたと言っていた。

寝てる間に何かあったのかな?


『でも砂漠って広いんだねぇ。砂もたくさんあるし....シーアなんだかむずむずしてきた。』

猫の習性なのか、昔TV番組で猫は元々砂漠地帯で暮らしていたため水が苦手だと聞いたことがある。

砂浴びとかしたくなったのかも。でもギラギラと照り付ける日差しを受けた砂はとんでもなく熱い。

靴が無かったらビーチの砂浜見たくとても歩けるようなものじゃなかったんだろうなぁ。


『神界に砂場でも作っておけばよかったかなぁ?なんか猫は元々砂漠で暮らしてたらしいよ。』

『にゃっ、シーアのご先祖様たちのことかにゃ?そうなんだ~。ムズムズするのはそれかにゃ~。ウォルちゃんに今度砂場作ってもらおっかな~』

ここ数日、眷属達の口から「ウォルフに作ってもらう」という発言をよく聞く。

眷属の間でウォルフは便利屋さんの位置づけのようだ。


そんな話をしながらも、ずんずんと砂漠を進んでいく。

水分補給をメープルウォーターでこまめに取りながら、周囲を警戒していると、数メートル先の砂が盛り上がり徐々に近づいてくる。

剣を構えてダーク・スピリットを展開する。

足場が悪い時に便利なダークスピリット。この砂漠でも効果があるらしく、原理はわかんないけど足の裏に闇属性のマナを集めると普通の地面の上に立っているように歩くことができた。

砂の盛り上がりかたからして、近付いてきているのは1メートル程度の魔物か何かだと予想する。


砂に潜っていては攻撃もできないので、敵が攻撃するタイミングでカウンター攻撃を使用と考えた。


....これ、引力の剣の時のマナを使って吸い寄せられないかな?


飛び兎の剣先に引力を付与したマナを集めてゴルフボールくらいの球体を作り出す。

それを盛り上がった砂の上空に狙いを定めて...射出!からの....停止!


私が放った黒い球体はピタッと盛り上がった砂の上で止まった。

真下の砂が球体にどんどんと吸いついていき、砂の中に潜んでいた魔物も一緒に吸い上げられた。

そしてできたのは宙に浮かぶ砂の塊、中には魔物が逃げようともがいている。


『わー、でっかいありさんだねぇ~。』

『気持ち悪いね....。』

その姿は日本でよく見る黒い蟻ではなく、海外とかにいるような茶色い半透明の蟻だった。

まぁ大型犬ほどの大きさだけど。


始めてみる魔物なのでとりあえず鑑定でステータスを確認しておくことにした。


「鑑定<アナライズ>!」


-------------------

名前:設定されていません

種族:デッドリーファイアーアント

職業:偵察兵

HP:62/70

MP:600/600

力:A-

防御:E-

魔力:C

早さ:B

運:-

-------------------


なんという紙装甲....。弱い魔物かと思いきや能力値は突出している部分がバカにならない強さをしていた。

そんで名前がデッドリーとかついてるのが気になる。ファイヤーアントってヒアリのことかな?

毒とかもってそうだしちゃちゃっと倒しておこう。


「<水生成>ウォータークリエイト!」

砂の塊以上の水球を作り出し、デッドリーファイアーアントを閉じ込めた。

理由はどんな攻撃をしてくるかわからない以上、近づくのは得策じゃないと思ったから。


水で覆われたとたんにジュウウウと水が蒸発するような音が聞こえ、蟻が途端に動かなくなる。

水が弱点なのかな?何はともあれあのまま近づかせないでよかった....。


『ありゃー、お水に弱いんだねぇ。』

『ね~。魔法で水が作れない人には相当苦労する相手なのかもねー。』

引力の球を解除すると、湿った砂と蟻の死体がボトリと地面におちた。

砂の中から蟻の死体をアイテムボックスにしまい、旅を続ける。


『ねーねー、ミウちゃん。ていさつへい?ってなに?』

?....ああ、さっきの蟻の職業かな?って、鑑定結果はシーアにも見えてるのね。


『えっと、敵が近くにいないか拠点からでて周囲を警戒する兵士、かな?』

多分そうだよね?私もゲームとかでしか知らないけど。


『じゃあその兵士が帰ってこないとどうなるの?』

『そりゃあ何かあったんじゃないかって様子を....。』

嫌な予感って敵中するもんなんだね。


そのことに気が付いたとき、はるか先の方で砂が巻き上がっているのが見えた。

まさか....。

そしてその砂を巻き上げながらこちらに走ってくる正体が見えてきた。


「やば!!!!!」

10~20匹ほどのデッドリーファイアーアントの群れが私めがけて近寄ってくる。

その速さは砂の中を移動していた時よりもはるかに速い。


きっとあれを全て倒せばより多くのマナを吸収できるだろう。

んでもあの攻撃力では一撃でも食らえば致命傷、もし毒も持っていたら最悪死ぬかもしれない。


ど、どうしよう!!

後ろに逃げたら来た道を戻ることになるけど、正面から突破するわけにもいかない。


「ええい!」

光属性のマナを飛び兎に集め、ホーリー・スピリットを展開する。

これだと砂に足が取られるけど周囲の状況を安全に確認できる。


私は蟻から逃げずに蟻を飛び越して反対側に向かうことにした。


『ミウちゃん!?逃げなくて平気なの?』

『このまま飛び越す!』

『ええ!』


私は砂に足が埋まる前に次の足を踏み出すことで歩きづらいのをごり押しで無視した。

それでもやっぱり走りにくい、でも蟻よりは早い...ハズ。


蟻に向かって走るとぐんぐんと蟻が近付いていき、そして残り2m程度の近さまで迫った。


蟻たちは正面に12体、後ろに4体の計16匹いるようだ。

この速度でこの距離なら余裕で飛び越せると思う。

残り1メートル!今だ!


蟻たちが口を開け私に噛みつこうとした瞬間、私は斜め前へとジャンプした。

しかし、私がジャンプしたのを確認するとすぐさま真上にいる私の方に向き、口から何かを吐き出した。


そんな!!!空中じゃ避けられないよ!


これは当たったらまずい、そう直感した私は真下に向けて手のひらを向ける。


「<乾燥>ドライ!!!!」

髪の毛を乾かすときの100倍。数値にしてMP200分のマナを込めたドライは、私から真下に向けて温かい突風を吹かせた。


蟻たちの出した液体は突風により蟻たちに降り注ぐ。

「ギ!キイイイイ!」


ジュウウウと音を立てながら蟻の表皮が崩れ落ちる。酸だ!それも強力な!

それにしても仲間に当たっても効果があるなんて、どうやって体内で生成したんだろう...。


私はそのまま蟻たちを飛び越え、砂に着地...に失敗してゴロゴロと転げ落ちたけど、転んだ勢いのまま立ち上がり走り出す。

酸で全員仕留めたわけじゃないから。


「<水生成>ウォータークリエイト!<水生成>ウォータークリエイト!!!!!<水生成>ウォータークリエイトオオオ!!!!!!!」『おお~。』


走りながら後ろに手を向けて水を大量に蟻の方に向けて放出する。

後ろを確認する余裕が無いため、蟻の状態は遠視の泉で私を真上から見下ろしてるシーアに確認してもらうことにした。。


『シーア!後何匹来てるか見える!?』

『ミウちゃんのお水が全部直撃して動かなくなったから追いかけてくる蟻さんはいないよ~。』

適当に後ろに向けて撃ったのに全部命中したんだ、運が良かった(・・・・・・)

走るのをやめて蟻の死体を回収しにくるりと後ろを向いて戻る。


『うわぁ、本当に死んでる....。でもちょっと水に弱すぎない?私的にはありがたいけど都合が良すぎるというか...。』

『簡単に倒せるならいいじゃーん!ミウちゃんは深く考えすぎだよぉ。』

『なのかなぁ~。うわ、グロい...。』

水で倒したほうの蟻の死体は、水が触れた部分だけ火傷したようにただれていた。

ところどころから黄色の体液が噴き出しているのがとってもグロい。この体液すらも素材にできるのかなぁ?


もっと戻ると自身の酸によって半分溶けたよりグロテスクな死体があった。

内臓が露出していてなんだか酸っぱいにおいがする。

もうこの世界になれてきたため死体で吐き気を催すとかはないけどそれでも気持ちが悪いものは気持ちが悪い。

さささっと回収してまた北に向けて歩き出した。


『でもさー、こんなに砂ばっかりだとミウちゃん休めないんじゃないの~?どするの?』

『そこなんだよねぇ、せめて岩場があればいいんだけど...。シーア、遠視の泉で視点をもっと離すことってできるの?』

某世界地図のサイトのように拡大、縮小ができれば近くにある岩場とかを探すことができるかもしれない。

1人旅も修行とか言ってちょっと反則な気もするけど...今更かなぁ。


『んー....?出来はしたんだけどぉ、ミウちゃん中心にしか縮小できないからすっごいちっちゃいけど、下がジャングルだとして、そこからすぐ右上に岩場っぽいのと、その岩場から大分上に四角が沢山ある!町かも?』

『でかしたぁ!!』

じゃあ北東に向かって歩いて岩場で野宿、明日はそのまま北に向かって町に行こう!

でも砂漠の町、ねぇ~。昔やったゲームで夜になると村人が皆ゾンビになる砂漠の町っていうのがあったけど...そういうのはやめてね...。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『ふぅ~。』

『ミウちゃんお疲れ様ぁ!そろそろ時間だし通話切るね!また5日後っ!』

岩場についた瞬間シーアがすぐに通話を切った。気が付けばもう夜。

シーアも岩場に向かって歩いてる間はなんだかうとうとしてたみたいだった。

まぁ元々猫だったし5日前通話した時も途中で寝息が聞こえてきたからおねむなんだろーなぁ。


岩場、というか硬い地面で作られた地帯には高くまでそびえたつ柱のような岩から低く平べったい岩まであった。

私はその中でも摘みあがった岩で影ができている場所を選んで地面にテントを打ち込んだ。

辺りに虫は居たけど、テントの素材が強い魔物の素材だからかよってはこなかった。

うーん、なおさら都合がいい。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

食事を終え、寝袋に入りながら最近のことを振り返る。


私はここ数日でたくさん眷属と話した。

皆と話していくうちに皆がどう思われているか、何が得意なのか等の関係性が徐々にわかってきた。


ヒュムは頼れるお兄さん、皆のまとめ役で話し合いもいつもまとめる立場。人付き合いもよく、ウォルフの研究のお手伝いからシーアの遊び相手までこなすほどだ。


ルニアは優しいお姉さんに見えて滅茶苦茶にドジっ子。皆が皆、ルニアのドジっ子エピソードを教えてくれるんだけど全部違う話であることからいかにドジかがわかる。普段は皆にお菓子を作ってふるまっているらしい。


シーアは自由気まま、寝るか遊ぶか食べるかしかしていない。でも皆を率先して遊びに誘ってくれるお陰で眷属達はいつも楽しく過ごせてるみたい。


デストラは最初こそ、堅苦しくて眷属達を警戒していたけど今では嘘のように丸くなった。でも真面目だからよくからかわれてるみたい。根が頼まれたらどんなことでも全力でこなすから、シーアがくだらない遊びをするときは決まって遊び相手がデストラのようだ。


ウォルフはさすがの職人気質、付き合いが悪い訳じゃないけど自分から話しに行くタイプじゃない。でも皆が一番頼っているのはウォルフみたいで、シーアの遊び道具から家具、機械、秘密道具のような物まで作ってしまうらしい。聞いた話だとVRゲームのような物を作ったけどすぐ没になったとか。なんでだろう?理由は聞けなかった。


最後、ジア....どうしてるんだろう?まだ体調が悪いのか、眷属の皆はジアに対して何も触れなかった。

皆、そのうち元気になるんじゃない?知らないけど。みたいな感じ。心配だなぁ。


とりあえず、そろそろジアが心配になってきた。

明日ヒュムにでも聞いてみよう。


おやすみなさい。

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