「87話 ニカと王の提案 」
ニカが王様達に魔族に対抗する手段をどんどんと提案していく中、突如私の名前もあがり困惑する。
でも王様の前だし変に話を遮って抗議することもできず、再度カナちゃんたちにアイコンタクトを送るも、皆も困惑してどうしようというような顔をしていた。
そりゃそうだよねぇ、フレアとニカで冒険者と兵士を鍛えるのはわかったけど、なぜかニカに滅茶苦茶期待されて修行方法の援助を勝手に王たちに求めてるんだもの。
「S級冒険者であるキミの目から見て間違いない、ということなんだね?当の本人たちは困惑しているが大丈夫かな?」
バーニア族の王、バラッド王が心配そうに私達の方に目をやる。
その時、カナちゃん覚悟を決めたような顔でずい、と前に出た。
「私は、私はもっと強くなるためなら何だってします。今回の戦闘で身に沁みました、むしろこちらからお願いします!」
「お、俺もお願いします!今のままでは魔族に太刀打ちできませんし、ルクニカさんの期待に応えられるかはわかりませんが、もう足手まといになりたくありません!」
トルペタ君もカナちゃんに続きニカの提案に賛成をした。
期待されていることを抜きにしても、魔族との戦闘が堪えたみたい。
私も流石に力不足を感じたし、本格的に強くなるために動き出したいところだけど、もともとの私の使命である世界中を旅するという目的もないがしろにはできないし。
だから皆がもし王都でニカに指南してもらったりするのであれば、私は一人で遠くの地に修行に出るのもいいのかなぁと思っていた所だった。
けどそんなこと言える雰囲気じゃないんだよね、勝手にどんどん決められて少しだけもやもやっと感じる。
「....だそうだ。レオ、それとミウシアさん?君たちはどうする?」
レオの父親でもあるティスライトは反応のない私達に気を使い話を振ってくる。
「あ~、オレにはとてもじゃないけどルクニカが精霊術を教えられるとは思えないんだけど....。」
精霊術を使えるのは今やレオだけって話だったし、レオが賛成できない気持ちもわかるなぁ。
とそのとき、何やらコソコソとティスライト王とレオの母親が話している。
耳をヒョコっと二人に向けると話し声がわずかに聞こえてきた。
「あ、ティス君。レオ君にあの、精霊王の指輪をプレゼントしてあげましょうよぉ。」
「あー、あの君の故郷の秘宝?あれはたしか地下に封印してなかったっけ?」
私ってば耳が良いから聞こえてるんだよねぇ~。
緊張感が無い話し方でサラッと大事なことを決めた2人はオホンと咳払いをするとレオに向けて手をかざした。
「レオよ!その封印を1人で解くことができたら精霊王の指輪を持って行って行くがよい!」「よい!!」
王妃も一緒に手をかざして決めセリフのようにかっこつけているけど、ただただかわいい。
そんな緊張感のない王妃の姿を見て王サイドはやれやれ、といった顔をしている人がほとんどだった。
私は微笑ましい顔で王妃を見ていたけどレオはシリアスな顔で驚愕していた。
「まさか....精霊王の指輪!?それがあれば....。わかった、必ず封印を解いて見せるよパ....ティスライト王。」
封印っていうくらいだから危ない指輪とかじゃないんだろうか?
ティスライト王と王妃がまたこそこそと話し始めたから耳を傾ける。
「ティス君、あの指輪ってなんで封印してたんだっけ?」
「キミが『この指輪付けるとなんかお化けの声がする~』って言って騒いだから封印士の人に封印してもらったんじゃなかったっけ?」
「そうだっけ?」
あ、大丈夫そう、この夫婦めっちゃゆるっゆるだなぁ。
精霊王の指輪を装備すると精霊王と対話できるとかそういう感じなのかな?
確かお母さんはテキトーすぎて精霊に好かれなかったって言ってたし、精霊の声もお化けみたいに感じるのかも。
お祓い感覚で封印したのかな、精霊王可哀そう....。
「それで、ミウちゃ、...ミウシア、私があなたに提案する修行方法を先に伝えますね。東の大陸のさらに北東にあるサクラ族の里には忍者、侍と呼ばれる達人がいると聞いたことがあります。その里までミウシア1人で旅をしてください。その里はよそ者を嫌いますが、おそらくミウシア1人なら入れてもらえるでしょう。」
なんて都合がいいんだろう。一人なら眷属達と連絡も取れるし、まだ行ったことのない土地だし、個人的にもサクラ族の里には興味がある。
侍、忍者なんてまんま和文化でしょ、どう考えてもおかしい....いやコレなんか理由があるでしょ。
うーん、と唸っているとニカが心配そうに首を傾げてじーっと見つめていた。
提案を断られると思わせちゃったのかな、違うよ別のことで悩んでたんだよ。
「うん、それなら私のスタイルに合ってると思う。それにサクラ族には興味があったんだ。ニカ、私のために考えてくれてありがとう!」
ニコッと笑いかけるとニカは安心したような、どこか心配そうな顔でうなずいた。
「あー、褒美についてなんだけどね?丁度君たちは各種族に人数が分散してるし、王が個人的に同種の人に褒美を上げることになったんだ。だからそれぞれで話し合ってほしいんだ。....だからどうだろう。一度この場はお開きにして、また明日。各王の自室で話そうじゃないか。ルクニカ君はここに残って私達にその修行方法について詳しく教えてくれないか?」
バーニア族の王、バラッド王が私達に提案したのはそれぞれが王個人と話して褒美を決めるというシチュエーションだった。
でも私はニカもいるから緊張はしないくて済みそうだ~。
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SIDE:バラッド・バーニア・フォル・サスティニア
ルクニカ君に一通り話を聞いた後、私達は褒美について話し合うことになった。
私達は王である以上この王城からむやみに出ることはできない。
退屈な毎日、貴族の小競り合いから民の不満まで、各町で何が起きたから冒険者を何人手配できるような金銭をギルドに渡すだの、何だの。
暇で暇でしょうがなかった。
そんな時に魔物、いや、魔族の襲撃が起きた。
いくら王都の危機とはいえ、いつもと違う刺激的な出来事に私達は皆恐怖と興奮の最中にいた。
私達王は内緒話をするための王専用指輪型魔法具を持っている。
王妃たちの分はないが、男だけの秘密の話をするにも、民の前で気を抜けない時もとても便利だ。
脳内で考えた事をマナに乗せて指輪に込めると相手の脳内に文章で伝わる。詳しい原理はよくしらん。
脳内に文章が伝わると、視界の端にほかの王の思っていることがどんどん文章になって表れる。
私は王妃たちが褒美や冒険者という今まで遭遇してこなかった自体にどこか興奮気味に話し合ってるのを横目に、魔道具で男だけの会議を始めた。
ウサウサハーレム(希望):思ったんだけど、せっかくならどの種族の子が一番強くなるか競わない?
地上最強のジャイアント:いや、それは体格から見ても、素質から見てもジャイアント族のフレアであろう。
子猫ちゃんたちのキング:どう考えてもレオっしょ、オレの子だし。イケメンだし。
知識王:力があっても頭脳が無ければ話にならないだろう。その点、マジック家の娘は魔法に長けて頭脳も知識も申し分ないぞ。
ドワーフの技術は世界一:やるならば支援は惜しまんな。ドワーフの小僧に技術を叩き込むとするか。
他の王の発言を見て思わず口元がニヤつく。
やっぱり皆、暇を持て余していたのか。本当なら自国の危機を賭けに使うのは良くないが、競争心を駆り立てることで冒険者達が強くなるならいいような気もする。
それに、私はミウシアという冒険者に何か底知れぬ力を感じた。
『何が』といえるほど明確なものではなくもはや勘に過ぎないが、こういったものに賭けるのも面白いだろう。
ウサウサハーレム(希望):魔族を倒して全てが終わったら世界最大の武術大会を開こう。どうせ近々開かれるSランク昇格武術大会は延期されるだろうしね。
ドワーフの技術は世界一:こうしちゃおられん、儂は先に自室に戻る。
脳内の会話を切り上げたギアが玉座から立ち上がり、謁見の間から出ようと歩き出す。
数歩歩いたところでこちらを向き、頬を掻きながら何やら不安そうに私達へと問いかける。
「あー、儂の部屋ってまだあるのか?」
「あの頃からギアの部屋は何も変えてないぞ。....とはいえ部屋というよりは鍛冶場だけどな。」
くくっと笑いながら答えたリージェンの言葉で思い出す。
そういえばギアは王都にいる頃は肩書は王でも鍛冶師としての仕事を受け持って王城で武器や魔道具や日用品を作っていたな。
かくいうこの玉座もギアが作った逸品だ。
腕はいいけどこだわりが強すぎるんだよなギアは。
安心したギアはそのまま謁見の間を出る。
それに続いて皆も自室に戻り褒美について考えることとなった。
自室までの道のりで妻のティリアに今後について簡潔に説明した。
「あなたはいつも賭け事に持っていくわね。ティスよりもケットシーらしいわ....。でも私もあの娘には何かを感じたの、ルニア様の加護でも受けているのかしらね。」
「はは、神の加護を受けた人間か。まるで物語の英雄みたいだね。」
私達が王都を守るためにできる事は、少しでもあの冒険者達の力になること。
全力でサポートするために何ができるか、今夜は頭のいいティリアと話し合うことにしよう。
もちろん、ベッドの中でね。
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SIDE:ミウシア
お城で王様達と話してから一晩が過ぎた。
今日は約束の褒美やサポートについて各王と話すことになっていて、今は皆で王城に向かって歩いている所だ。
ちなみにニカは現地で集合する事になっている。
そういえば聞いた話だとバーニア族の王は生粋のチャラ男。
並みのケットシーよりもケットシーらしい遊び人らしい。王妃も苦労してそうだなぁ。
「にしても、王と一対一で話すことになるとは....。」
「アルカナはいいじゃないか、父親が面識あるだけ。俺なんてただの田舎町の平民だぞ...。」
カナちゃんとトルペタ君は王と対面で話すことにとてつもないプレッシャーを感じているようだ。
一方でレオとフレアは全く緊張していない。
「まぁテキトーにやればいいじゃんか。王サマだって楽にしろって言ってたろ?お前らは気にしすぎなんだよ。ふあーあ。」
頭の後ろで腕を組みながら豪快にあくびをするレベルで緊張感が無いフレアと
「ま、オレに至ってはただの家族会議だからね~。二人の気持ちはわからないけど普通は緊張するっしょ~。」
ただ親と話すだけのレオ。
いつもにましてジト目具合が高いカナちゃんがちらりと私を見てくる。
「ミウは何でそんなけろっとしてるです~?」
「うーん、バラッド王が堅苦しそうな感じがしないからかな?」
ニカからチャラいから気を付けて!って言われたのがさらに後押しだった。
ジャイアントの王みたいに堅そうだと緊張するけどね。
「でも可愛い女の子に目が無いからミウちゃんは気を付けるんだよ。」
「!?」
突然ヌッと私の顔の真横にニカが現れ身体がびくりと縦に揺れる。
「ニカか、びっくりした~~。おはよ!今日はいつも通りの話し方だね。」
一歩引いてニカの口調がいつも通りになっていることを指摘すると、ニカは前髪を手で払った。
「まぁ王様の前だしね、流石に畏ま「おいルクニカ、お前そんな話し方だったか?なんかかっこつけモガモガ」」
フレアが何かを言いかけたとたんフレアの口をサッと塞いだニカ。
やっと幼馴染っぽくなってきたなぁ、と優しい目で二人のじゃれ合いを見守る。
ニカはなぜかフレアと距離を置いてる感じがしたけど、この様子じゃ仲が悪くなったとかではなさそう。
そのまま少し離れたところでヒソヒソと話し始めた。
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「ばっ、フレアお姉ちゃんは黙っててください!」
「あら、元に戻った。....さてはお前、ミウシアの前でかっこつけてんだろ~~~」
「一目ぼれしちゃったんですもん...。」
「マジか、んだよ~~~。訓練が始まったら色々聞かせてもらうからな~~~~~」
「内緒にしといてくださいよ!!!!」
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何聞こえないけど微笑ましいかぎりじゃあ....。
「さっ、気を取り直して王城へ向かおうか。」
「ぷっ....くくく....ほらさっさと行こうぜ、かっこいいルクニカさんが早く王城に行きたそうだ。」
「なんです?」
「さぁ....?」
「仲いいなぁ」




