「83話 勝てる気がしない 」
更新頻度がガクッと下がってすみません、仕事が忙しくしばらくはこれくらいの頻度になりそうです・・・。
今持てる最大火力の技を熊に放ったんだけど全く効果が無かった。
私は即座に剣を抜き、数歩下がって様子を伺う。
「ミウちゃん!そっちは任せてもいいかい!?」
ニカが竜の攻撃を受けながら私を頼ってくれる。
「任せて!」
まだまだ実力派伴わないけど、こうして世界最強の冒険者と一緒に戦えることがうれしかった。
「オマエ、アイツヨリ、イイ。アソボウゼ。」
熊はその野性味あふれる顔でニヤリと微笑むと、片言で私に語り掛けてきた。
この熊、もしかして少し話ができる?
剣を構えたままこちらに攻めてこない姿を見て、私の返答を待っているのだと判断した。
「ねぇ、あなたは何のために王都に来たの?」
いっそのこと聞いてみよう。もしかしたら何か聞き出せるかもしれない。
「ツヨイヤツ、タタカウタメ、オレハキタ。アイツハ、シラン。」
タダの戦闘狂でしたか....。
何も考えず攻めてきたとは考えにくい。
でも二匹ともキングと名前についていないことから私が狙いではない、もしくは私を連れて来いと指示を受けているのかもしれない。
どちらにせよこの熊はただ強い敵と戦うために来たんだろう。
この手のタイプってどの漫画でもいるけど、大体は負けても「もっと強くなる」とか何とかいえば見逃してくれること多いよね。
「じゃあできるだけ、楽しませるねっ!」
私のスピードに追い付けないことはステータスで確認済みだ。
火力が足りないのならさっき付けた傷を重点的に狙えばいい。
「ガハハハハ!イクゾ!!」
熊は豪快に笑うとその巨体で一気に距離を詰め、大剣を片手で私に叩きつけてくる。
コレ剣じゃなくてもはや鈍器みたい..。
やはり私の元々の速さ+ホーリー・スピリットによって避けることはたやすかった。
熊の振り下ろした剣に集中してその軌道を確認。私の脳天に直撃するコースだ。
身体を半身左に傾けて避けつつ。回るようにそのまま右手で持っていた飛び兎で先ほどの攻撃で少し広がった傷を、雷属性のマナを纏わせた飛び兎で撫でるように切り裂く。
「ガッ!」
電気を纏った飛び兎が熊に触れた瞬間、ジュウという音とバチッという音が鳴り、焦げ臭いにおいを感じる。
それと同時にドゴンと大きな音を立てて私がいた地面に大剣がめり込む。
一瞬顔をしかめたと思うと、即座に私の胴体よりも太い足で私を蹴り上げた。
攻撃力S+キックはマズい!
足に力を混めて真横へとステップしギリギリ熊の攻撃をかわす。
しかし熊は私と離れた位置にいるにもかかわらず、地面にめり込んだ大剣を私に向け振り上げた。
地面を砕いた破片が大剣によって持ち上げられ、熊の力により弾丸のような速さで私に向かって飛んでくる。
この量では避けられない!
ダーク・スピリットに切替えて斥力の盾で跳ね返すしか.....。
「<石壁>ストーンウォール!」
不意にどこからかカナちゃんの魔法を唱える声が聞こえ、次の瞬間私の目の前に「く」の字の形をした石の壁が現れた。
飛んできた破片が壁に当たるも、石の壁は壊れることなく破片をいなしていく。
敵に向けて鋭角に壁を作って飛んでくる破片の軌道を少し変えたんだ、機転が利くなぁカナちゃん。
「ダレダ!」
「でけぇのがいるじゃねぇか!」
熊は勝負に水を差されたことに憤慨しているようで、横からこちらに近付いてくるフレア、カナちゃん、レオ、トルペタ君の方へと視線を移した。
その中でもフレアが先陣を切って斧を構えて熊に突進する。
「ファイア・スピリッツ!ラヴァ・アックス!」
熊の実力の高さを本能で理解したのか、最初から全力でスキルを発動した。
フレアの体が赤いオーラで覆われ、赤色の髪の毛が赤とオレンジのグラデーションに染め上がっていき、ところどころ逆毛立ってまるで炎の化身のようだ。
斧は赤を超え白くなるほど高温となり、斧の周りの空気が揺らめきだす。
「いっくぜぇ!」
「オマエ、オモシロイナ!」
熊がフレアの方に向いた隙に私はカナちゃんたちと合流し、簡潔に説明を行った。
「魔物は2匹、熊と竜。二匹ともステータスS越えだから気を付けて!竜はニカが受け持ってくれてるから様子を見ながらサポートしてあげて!」
私がフレアにも聞こえるように大きな声で伝えると状況を理解した皆が各々指示を飛ばし合う。
「ルクニカは一人でも大丈夫ですが火力が足りなさそうですね....私とレオでサポートしに行くです。」
「っけ~!マナ・ペネ、マナ・アク~!」
レオがマナ制御効果アップと身体強化...だよね?のスキルを皆にかけてからカナちゃんと一緒に竜に向かって走っていく。
「じゃあミウシアさん、フレアさんの援護に行きましょう!」
「うん、頑張ろうトルペタ君!」
フレアの大ぶりな攻撃を相手にあてるためには、私が素早い動きで熊に攻撃するだけでサポートになるはずだ。
でもトルペタ君の矢は撃ちにくかったりしそうだけど....そうだ。
「トルペタ君、私が合図したら...に向かって....して...たら....私....。」
「....なるほど、わかりました。では合図があるまで牽制しておきます。」
この作戦なら一撃大きいのが熊にあてられそう。
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SIDE:アルカナ
「やべーですねあの竜....。」
私達にまだ気が付かず、いや、気が付いてるかもしれませんが敵として見られていないようです。
なんだか癪ですね。
というか今なら時間をかけて魔法を当てられるのでは?
「見た感じオレらがサポートしなくても大丈夫そうだけどどうする~?」
レオの言う通り、流石はS級冒険者です。
竜が爪でいくら攻撃しても、ブレスをはいても、魔法で攻撃しても、ルクニカの白銀の大盾によって全て防がれてますね。
でもルクニカは攻撃を全然しませんね。何なら剣をしまって両手で盾を持ってるです。
私がじーっと観察していると目が盾の影から竜に見えないように私にウィンクしてきました。
....今のうちに最大火力の魔法を当てろってことですかね?
どうやらフレアとの模擬戦を見られていたようです...Sランク冒険者に認められてると思うと悪くない気分ですね。
「レオ、竜の生態とか弱点って何かわかるです?私も見るのは初めてで。」
失念していたです、ヒューマン地区の図書館に行ったときに竜の本だってあったはずなのに、魔物として最上級の強さを誇る竜と会うことはないだろうと全く眼中にありませんでした。
「あ~。ちょっちまって~。フューにフォリア。聞いてたと思うんだけど何か竜についてわかる~?...ふんふん、あーなるほー。おっけ!」
レオがいきなりフューとフォリア...おそらく精霊のことでしょう。いつもレオの周りに浮いている光の球に話しかけました。
私も話してみたいです。精霊は寿命とかそういう概念が無いらしいですからね。魔法に関してはトップクラスの知識量でしょう...レオがうらやましいDeath...。
「カナっち、竜は心臓が竜命石っていうハンパなくあっつい石でできてるらしいよ~。だから竜は体内が高温で、他の魔物よりもはるかに身体能力が高いんだって~。つ・ま・り、カナっちの得意な水とか氷で冷やしちゃえば身体能力がガクッと下がっちゃうってことよ~。」
竜命石ってずいぶんそのままの名前ですね、ともかく私は都合よく相性がいいみたいです。
とにかく竜の周り毎、温度を下げてしまえばいいんですね。
.....ルクニカが耐えられることを祈るです....。
「レオ、もし私が準備している時にバレたら何とかしてください!」
「何とかってマジか~。できるだけ頑張ってみるわ~。」
レオの後ろに立ち、数10mは先にいる竜に狙いをつけるです。
もしバレているけど相手にされていないとすると、マナを完治されたら敵視されることでしょう。
それならあれを試すですか。
まずはウォーター・スピリット....アクア・スピリットのほうがいいですかね?
アクア・スピリット(仮)を発動し、私の魔力を底上げするです。
これをやるとまるで自分が水になったような気分になるんですよねぇ、髪の毛も明るい水色になりますし。
さて、始めるですか。
竜を囲うように極微量のマナで外側から熱反射、圧縮、霧生成、凍結の魔法陣を描いていきます。
はたから見ても気が付かれない程度には少ないマナで作成していますが、竜が一瞬こっちに目を向けました。
....マナの量が少ないからでしょうか、取るに足らない相手だと判断してルクニカへの攻撃を続けています。
完全に嘗められてますね...。
竜の体温を急激に冷やす手筈は整いました。次は攻撃ですね。
ルクニカに当たらないよう竜の側面に水の杭の魔法陣を描き、凍らせるための魔法陣、強度を上げる魔法陣を重ねていくです。
....準備は整ったですね、実戦でこんなに入念に準備ができるのは気分がとてもいいです。
始動キーはあくまで小声で.....。
呪文の順番を間違えないように慎重に....。
「魔の者を覆いし氷の霧よ、集いて凝固し檻となれ!!<霧氷檻>アイシクル・フォグ!」
一瞬で竜の周囲に白い霧が生成され、竜の動きが鈍くなる。
その場から退避しようとするも、ルクニカが剣で牽制し、その場から移動することを許さない。
白い霧は竜を中心に収束し、竜の形をした白い塊が出来上がった。
成功です!
魔法の発動と共に杖を振りかぶって走り出していた私は、そのまま次の魔法を詠唱したです。
「氷槍よ、我が力を飲み込み全てを貫け!!」
詠唱を終えると凍り付いた竜の脇腹に大きな杭状の氷が射出され、わずかに突き刺さる。
そして私が持つ杖には水が纏いつき、大きなハンマーへと姿を変えた。
その片面は平たく、もう片方からは水が噴き出る。
そう、ミウに教えてもらったじぇっとはんまー?なるものです。
下に構えているハンマーから水が噴き出て私の体は振り回されるですが、ちゃんと練習しましたから大丈夫です。
その噴き出る力を利用して氷の前でくるくると2回回って振りかぶる。
「<重撃の氷槍>アイシクル.....インパクト!」
水をものすごい勢いで噴出させながら加速し続けたハンマーは、突き刺さった氷をさらに竜の体内へと追いやったです。
「ぐっ、うううぅぅぅうう!!!!!」
凍ったまま動けない竜はなすすべなくその攻撃を受け、血をわずかに噴き出しながら悲痛なうめき声を上げました。
パキパキと表皮にへばりついた氷を割りながら竜は、まだ体内が冷え切っているのかゆっくりと私の方を睨んでくるです。
「貴様、下等生物ごときがこの俺様に傷をつけやがって....。」
「ひっ」
魔物の中でも最も脅威と呼ばれる存在の殺意が、私に注がれたことに震えあがりました。
怖すぎるです、私はこのまま殺されるですか。
「二人とも!!!今のうちに私の後ろに来てください!!!!」
その時ルクニカに呼ばれ、震える足に鞭を撃ちながらヒョコヒョコと王城の門の方へと走り始めました。
後ろからレオも近づいてくるです、そうですよね。この強敵の敵意がこちらに向いていたらさすがのルクニカも守りながら戦うことは難しいでしょう。
....未だ動きが遅い竜から離れつつ、大回りで追いついたレオと一緒にルクニカの後ろまで逃げてこれました。
あくまでサポートをしていればよかったのに、私は欲をかいて全力で攻撃しました....その全力でもあの程度の傷しか負わせられない。
人間にすると料理中に指を切ってしまったくらいでしょうか....
「クソ人間が!!!!こっちに出てきて戦いやがれ!!!!!!」
徐々に動きを取り戻した竜は激高して私に攻撃しようとルクニカを猛攻撃し始めたです。
「戦い方を間違えたです.....迷惑かけるです...。」
「いえ、十分っ、ですっ、助かりましたよ。」
ルクニカの口調はとてもやさしく、その目には慈愛すら感じました。
私には力が足りない。もっと、もっと強くならないと皆の足を引っ張ってしまうです。
強くならないと。




