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「75話 登山 」

雪山を登ることになった私達。

ルクスが道案内と、魔物の討伐に力を貸してくれるようだ。

しかし私達の戦いが見たいとのことで、最低限しか戦わないと言っていた。

ルクスはやっぱり魔法とかで戦うのかな?ステータス的にも魔力特化型っぽかったし。


小屋を出る前にカナちゃんに魔法をかけてもらい雪山を目指した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ルックン!?いつ登山がはじまんのよコレーーーー!!」

ついに音を上げたレオ。それもそうだ。小屋を出てからすぐだと思った雪山は、小屋側からは急斜面になっていて登れないらしく、雪山をぐるーーーーっと回り込むことになった。

かれこれ数時間、雪山に上らず歩いている。


「た、たしかに...。目的地が見えているのに全く進んでない気がして精神的にきついですね...。」

「私だけならば崖を駆け上がることは可能なのだが....。魔法を使えるものがいても足場を作るには道のりが長すぎるのだ、回り込むしかない。」

そう。カナちゃんに頼んだらどうかと思ったんだけど、見渡す限り急斜面過ぎて常に魔法で足場を維持し続けなければいけない。

私には人ひとり分程度の足場を一時的に作り出す程度しかできないし、カナちゃんは魔法を使って防寒をしてくれている。

一時的な同時展開はできても持続的な魔法の同時展開は難しいらしい。


「にしても雪山のふもとは魔物が多いですね...。」

「ほんとね....。」

事実、山のふもとを大回りしている間に出会った魔物は狼を筆頭にアイスゴーレム、ウールベア、フリーズバード、アイスワームの、5種類だ。

その中でもウールベアの見た目は凄い可愛かったんだけど、襲い掛かられたら倒すしかない。

羊のようにもこもこした熊なんて可愛いに決まってるじゃんねぇ?

魔物以外にも普通の野生生物もいた。でもウサギとかさ、狩る必要もないし狩りたくもないよね。

なんか自分の祖先を見ているような気持ち....地球に居た頃にTVでどこかの民族が猿を食べていたのをみて拒絶感が凄かったけど、感覚的にはそんな感じに近いのかな?

もしあの兎が魔物で、私達に襲い掛かってきてたら....うあ、気分悪い。


「ミウシア?どうかしたか?」

思い出して気分が悪くなっているとフレアが心配をしてくれた。

こういうとこ姉御肌だよね。


「いや、さっき出てきたウサギが襲ってきて狩らなきゃいけなくなってたらと思うとちょっとなんか....。」

頭から垂れている耳を何となく両手でぎゅっと握る。

今更生き物の命を奪うことを気にするなんて....。


「あ~~~。確かにバーニアが兎を好んで狩るこたぁねぇな。あたしも猿タイプの魔物を倒すことはあっても食べることはきちーな。」

「フレアの場合、ゴーレムにも情けをかけそうですね。」

ぷくくと笑いながらからかうカナちゃんだったが、次の一言でカウンターを食らう。


「じゃあアルカナはまな板に情けをかけるってことか?がははは!まな板の魔物が出てきたらあたしに任せな!!がっはははは!....っひい!?」

フレアにかけていた魔法を意図的に切り、その素肌を凍える冷気が襲った。


「...。」

「わ、わわわわるかかかったからあ!謝る!謝る!まな板って言っても流石にそこまででででもねぇから!!!アルカナの胸はまな板よりはある....かな?アルカナだけに.....がっはははああああああああ!!!!!!」

なんで余計な事言っちゃうかなぁ....カナちゃんが無言で発動したウォーターボールの魔法で、濡れた体がみるみる内に凍り付いていく。


「ファイヤー・スピリット!!!....あっぶねえ!!もう少しで死んでたぞ!!!」

「謝るならちゃんと謝れですよ!!!!」

ぎゃーぎゃーと言い合いをするカナちゃんとフレアを見てルクスは思い悩んだ表情をしている。


「どったん?ルックン。そんな真剣な表情して。」

「いや、人間のメスはあそこまで赤子のことを考えているのか...と思ってな。」

???どういうことだろう。

ルクスはあの言い合いを見て何やら真剣に悩んでいるようだ。


「どゆこと?」

「???彼女らは赤子に上げる母乳の量に対して意見をぶつけ合っているのだろう?確かに、フレアのほうが多くの母乳は出そうだ。すでに子供がいるのか?」

おぉう...斜め上からの視点....。


「あ~....いや、そういうことじゃないと思いますよ....。」

「む?じゃあどういうことなのだ?」

トルペタ君がやんわりと否定してくれるも、流石は知の探究者、探求心が尽きないみたい。

ん~、人間の価値観で話しても伝わらないし、真面目に話すのもなんだかあほらしいし...。


「ルックンも狼ならいずれは番を探すっしょ?その時メスを選ぶときの目印になるのが人間では胸ってわけ....か?まぁ大体そんなとこでしょ。多分。」

なんかそういう言い方するとちょっとキツい。でも訂正してもめんどくさいし知らんぷりしとこ。


「なるほど、ではフレアのほうがオスが寄り易いというわけか。」

「ま、オレは胸が小さい子もすきだけどね~?」

レオの発言にトルペタ君も恥ずかしがりながら頷く。

トルペタ君...?


「.....?????訳が分からぬ.....。」

「人それぞれってことだよ....。」

知識とは人によっていろいろな見方がある、ルクスは訳が分からなさそうな顔をしているけどもうそういうことにしておいて。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ふい~~~。一時はどうなるかと思ったぜ~。」

「フレアが変なこと言うからです!!....それよりも本当に教えてくれるんでしょうね?胸が大きくなる魔法の飲み物...。」

「おう!あたしは小さい頃からルクニカの実家の牛の乳を飲んでたからよ、多分それじゃねーかなぁ?」

2人の言い争いがひと段落して、旅が再開したと思ったらそんな手でカナちゃんを丸め込んでいたとは...。

そういえばニカの家は酪農家って言ってたなぁ、牛乳とかあったら異世界転生定番のプリンとかも作れるのかな?

あぁ、デザートが恋しい。


「よし、この辺りであれば登れるだろう。山には今までよりも強い魔物が出るから気を付けてくれ。」

そうこうしてる間にルクスが山に登れるポイントについたことを教えてくれた。

今までより強い魔物ってどんなのがいるんだろう、山....雪山....雪男とか?


「そうだ、ルクス。この山の愚鈍な魔物って何なの?山の主っぽい奴。」

ルクスは何か考えながら歩みを進めている。

例える対象が無いからなんて伝えればいいか迷ってる感じなのかも。


「うー、そうだな。白い毛でおおわれた二足歩行の魔物だ。ゴーレムのような見た目で動きが酷く遅い。しかし低能そうな見た目で魔法を使ってくるから気を付けてくれ。」

やっぱり雪男みたいなものなのか。

どういう系統の魔法を使うかで戦略が変わってきそうだ。


「それって、イエティですかね?私が思っている魔物で合っていれば私達では苦戦しそうです。」

カナちゃんの脳内辞書に思い当たる魔物がいたらしい。

そんで名前もイエティ、そのままだ。

あんまり気にしたことなかったけどこの世界の魔物は地球由来の名前が多い気がするんだけどどういうことだろ。

言語的にも日本語だし、翻訳機能か何かが作用してるんだろうか。

それともこの世界を繁栄させた眷属達の影響?


「なんでだ?ガッと行ってザクッと切ればいいだけの話なんじゃねぇのか?」

一人で変な方向に悩みだしていた私はフレアの発言で我に返る。

愚鈍って言ってたしフレアの言うように私とかがシュパッといってシュシュッと切れば困らなさそうだけど。


「イエティというのはスノーマンという人型の魔物の変異種なのです。もしイエティであれば取り巻きに大勢のスノーマンがいるでしょう。そして厄介なのはそのスノーマンたちなのです。...あいつらは弱体化魔法で相手を弱らせ、イエティが魔法や物理で止めを刺す。といった戦法を魔物なのに使ってくるです。」

「ああ、確か周りに小さい魔物もいたな。あやつらは襲ってこなかったから気にも留めていなかった。」

最初に周りのスノーマンを間引かなきゃいけない?イエティと戦う前に戦法について話さなきゃな。

そんな話をルクスから聞き、戦法について話しているとずいぶんと開けた場所に出た。

そこはまるでスキー場のように均されていて、山の上部遠くまで見渡せるが頂上は見えない。


均された斜面の両サイドには木がところどころに生い茂っている。




その景色をみんなできょろきょろと眺めていると、かすかに遠くからゴロゴロと音を立てて何かが近づいてくる。


「皆、何か来る!転がってきてるってことは山の上からだと思う!」

山の上の方から雪煙をたてて何か丸いものが転がってくる。

なにあれ、運動会の大玉転がしの球くらいの大きさがあるけどあれは生き物なの?


「あれはスノーアルマジロだ。相手をすることもない。普通に良ければよいのだ。」

ならわざわざ手を出す必要もないかな。


私達はスノーアルマジロの直線状から離れて、両側に生えている木の方へと向かった。

フレア以外。


「なんだろーが関係ねぇ!あんなのあたしの斧で真っ二つだろ!」

フレアが前に出て斧を振りかざして自信満々に大玉を待ち受ける。

その姿はまるでバッターボックスに入った背番号4番だ。


「フーレーアー!逃げるですよー!!」


ゴロゴロと大玉は凄い速度で近づいてきて、あと少しでフレアの射程距離に入る。


「っしゃあ!....はれ?」

今まさに斧を振り回そうとしたフレアの体が紫色のもやもやに包まれた。

フレアはそのもやもやのせいか力が入らない。

そのままスノーアルマジロに巻き込まれて雪玉となり止まることなく転がっていった。


「あちゃー...まぁフレアだしそれほど食らってはいないだろうけど、さっきのは魔法かな?」

「おそらく弱体化魔法でしょう、スノーマンが近くにいるのかもしれませーーーーんーーーーーねーーーーーーー。」

カナちゃんが突如現れた紫色のもやもやに包まれたとたん、声が遅くなった。

私はその時のマナの動きを近くの木の上から感じた。


「トルペタ君!あそこの一番でかい木の上!」

「!!ディザスター・アロー!」

私の合図と共に背中から矢を取り出し風魔法を纏わせるトルペタ君

そのまま膨大な量の魔力と共に旋風を巻き起こしながら木に向かって飛んでいく。


トルペタ君の狙った木はかろうじてついていた枯葉を全て散らしながら木の上にいた何者かに向かって飛んでいき、見事命中した。

ドサリと木から落ちてきたのはサルと人間の中間の見た目をした白い体毛を纏った魔物、スノーマン。


「...やーーーはーーーりーーーースゥゥゥゥゥゥノォォォォォォマアアアアア「マジカナっちウケんね、コレがスノーマンの魔法?」ンンンンでええええええしいいいいたあああああかああああああ。」

動きと発言がスローモーションになったままのカナちゃんをみて、レオはケタケタと笑っている。

確かにカナちゃんの様子は面白いけど、もしこれを魔物が沢山いる状態でやられたら、食らった人は集中攻撃に会い庇いきれないだろう。

おっそろしい....。


「アルカナ、これ大丈夫かなぁ?レオさん直せませんか?」

「心配するな、効果時間は短い。もう直切れるだろう。」

ルクスはこの魔法を知っているみたいで、その直後にカナちゃんの動きが元に.....戻ったんだけど、逆に戻りすぎてる。

目まぐるしく動くカナちゃんはギリギリ聞き取れないくらい早口で何かを話し出した。


「ウワアアアビックリシタデス、イキナリミンナガハヤクナルモンデスカラドウシタノカト...。アレ?ミンナナンデソンナオソインデス?コレハワタシガハヤクナッテルデス?ドウイウコトナンデしょう...あ、戻ったです。」

「これはあの魔法の反動だ。<不思議>ストレンジという魔法でな、魔法を使ったものも何が起こるかわからないのだ。受けたものは何かしらの弱体効果の後、弱体化した分の能力が付く。」

そんなぽんぽんと自分の体の状況が変わったらろくに戦えなさそう。

....ってことはフレアはどうなったんだろう?


「うぉーーーーい!!!」

その時坂の下の方からフレアの声がした。

フレアは雪に覆われた巨大なアルマジロの死骸?をずるずると引きずってこちらへと向かっている。

アルマジロの死骸はフレアに尻尾を持たれて雪の上を引きずれらている。

その跡は赤く染まり、アルマジロの口からはモザイクをかけたくなるようなものが出ていた。


「うわ、あれが雪玉の正体?」

「にしてもグロテスクな死に方をしていますね....。」

「ストレンジって魔法のせい?パワーアップしたフレっちが仕留めたんかね~。」

「うわ、あの魔物口から内臓が出てますよ....。」

一同、ドン引きである。


「なんかよー!力が一気にでなくなって巻き込まれたんだけどよー、その後バカみてえに力が湧いたもんで、巻き込んできた雪玉にあっつい抱擁をしただけなんだが、このありさまよ!」

ガハハと大笑いをするフレア。

私達の中で唯一彼女を歓迎したのは狼であるルクスだけだった。


「おお!!うまそうな内臓だ!!ここらで休憩しようじゃないか!!」

ルクスが尻尾を振ってるの初めて見たよ.....。


読んでくださってありがとうございます!もしよろしければ下の欄の✩をタップして頂けると励みになります(*ˊ˘ˋ*)

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