「74話 賢い狼 」
雪に覆われた階層で襲ってきた狼たちを倒すと、狼がなぜか手作りの眼鏡を持っていた。
この事実から考えられることをみんなで話し合うことになった。
「まぁ順当に考えれば、ダンジョンに入った冒険者の持ち物だよねぇ....。」
私がそうつぶやくと皆は頭をうんうん、と縦にふる。
これ、話し合う必要あった?
「もっとひねくれた考え方をすると、人間がダンジョンに住み着いているとか....それはないですかね、忘れるです。」
珍しく根拠があまりないことを言うカナちゃん。この食料も何もない環境でダンジョンに暮らすもの好きがいないとは言い切れないかもしれないけど....。
「まぁ完全に否定はできっこないっしょ~。ミミズが喋りだす今日この頃、ダンジョン内に眼鏡のなる木がありました~ってなったってオレは驚かないけどね~。」
「それは流石に....。」
トルペタ君がレオの発言に苦笑いをしながら答える、フレアはうむむと唸ってるけどそれ何唸り?
「あっ、じゃ、じゃあこんなのはどうだ!?狼がこう、手を使ったりなんだりして眼鏡を作ったとかよ!」
「私の眼鏡を返してもらおうか。」
ふいに聞こえた声に武器を身構えて反応する私達。
振り向いた先には一匹の狼が立っていた。敵意を向けるわけでもなく、理性的な顔でこちらを見つめている。
「まて、争うつもりはない。私はインテリジェンスウルフのルクス、知の探究者だ。」
「....どう思う?カナちゃん。」
「<鑑定>アナライズ!.....どうやら嘘ではないみたいですし、戦闘になったら相当な痛手を負いそうです。」
カナちゃんがこの寒さの中冷や汗をかく、そこまでの相手なのかな。
「<鑑定>アナライズ!」
-------------------
名前:ルクス
種族:インテリジェンスウルフ
職業:知の探究者
HP:1000/1000
MP:5500/5500
力:C
防御:C
魔力:A+
早さ:A+
-------------------
職業が知の探究者で知能がずば抜けている、嘘ではないみたい。
狼なのに力よりも知能が高いなんて珍しいなあ。
「じゃあよ、お前がこの眼鏡を作ったのか!?」
「いや~、眼鏡のなる木から採ったのかもしれないよ~?」
レオとフレアは答え合わせにテンションを上げながら狼のルクスへと問いかけた。
「その眼鏡は私が魔法とこの手先で作ったのだが....眼鏡の木というのはなんだ?それどういうものでどこに成っているものだ?生息地域は?その地域の環境、木の特徴は?」
おおう、知識探求してそうな返答....。
やっぱりなー!と嬉しそうに笑いながらフレアは手に持っていた眼鏡をルクスへと渡した。
ルクスは受け取った眼鏡を肉球で持ち...どうやってんのこれ?眼鏡をかけた。
眼鏡をかけたその姿は、魔物らしからぬ知能あふれる見た目になっていた。
でもなんだろう、この既視感。....あっ、しゃべり方と眼鏡をかけた見た目がちょっとヒュムに似てるんだ。
眷属達は元気かなぁ。今何やってるんだろうなぁ。仲間と行動している分、皆に気軽に話せなくなっちゃったな。
チャットだけでも今度送っておこう....。
「ルクスさん、あなたはこのダンジョンで暮らしているんですか?」
トルペタ君は恐る恐るといった表情でルクスへと質問した。
その問いかけにルクスは頭を下げ何かを考えるようにつぶやいた。。
「ダンジョン...。やはりここはダンジョンなのか。」
「知らなかったんですか?」
「うむ、私はここから出たことが無いのでな。...私のこの知識はあの山にある小屋の本から得たものと、なぜかもともと持っていたものがあるのだ。ダンジョンについては前者の方だな。」
小屋に行けば一休みができるし、何か情報が集められるかもしれない。
意見を求めようとカナちゃんの方を見ると目を輝かせるようにしてルクスを見ていた。
「そ、その文献。私も見てみたいのですがその小屋に案内してもらうことは可能ですか!?....でもルクスからしたら私達は仲間を殺した敵です...?」
「いや、私はいつも一匹だ。君たちを襲った狼には私も手を焼いていてね。いつも悪さをされていたよ。君たちの知識に私も興味がある。小屋でゆっくりと話を聞かせてくれ。」
「じゃあその小屋とやらにいこうぜ。ここはさみいしよぉ。」
私たちはルクスの案内で山小屋へとを向かうことになった。
せっかくだし何か料理でも作ってあげようかな?それとも生肉のほうが喜ぶのかなぁ?
雪山に向かうまでの道のりは、幸い雪が硬くなっていたためかき分けて歩く、なんて自体には陥らなかった。
凍えるように冷たくなる足に関しては、カナちゃんが魔法で体の表面を暖かい空気で覆ってくれたため何とかなった。
魔法が無かったら敵に襲われた時点で足が動かなくて一瞬でやられちゃうだろうな。
歩きながらルクスとカナちゃんは頭のよさそうな話をして盛り上がってた。
私はフレアとレオの中をもっと深めちゃえ計画を実行するため、トルペタ君と二人で一番後ろを歩いてついていった。
「にしても最初は二人だったのに、気が付いたら賑やかになったもんだねぇ~。」
「ほんとですね、まだ数カ月しかたってないのに...オレがクルシュを拾いに行って、偶然ミウシアさんに会わなかったら今こうして旅をしてないのかな....。」
そこまで言い終わると立ち止まって私の方を向いて頭を軽く下げてきた。
「ミウシアさん、俺と旅をしてくれてありがとうございます。おかげで世界中、旅をしたいというオレの夢は今こうして叶ってます。」
トルペタ君は私がいいきっかけになって旅を決意したんだよね、でも私もトルペタ君がいたからここまで楽しく旅ができたんだろうな。...とは恥ずかしくて言えないから茶化そう。
「.....それにカナちゃんにも会えたしね?」
「~~~!!すぐ茶化す!!!この!!このぉ!!」
地面の雪を固めて私に投げてくるトルペタ君だったけど残念、私は素早いのだ.....イテッ!
避けたはずなのに私に向かって飛んでくる雪玉、磁力魔法かなんか付与したな!?
「ちょっと!魔法は無しでしょ!!このっ!!」
トルペタ君は指輪が祝福されてるから雪玉に属性を付与できるけど、私は武器なんだぞ!武器持って雪玉がなげられるかあ!!
私は持てるだけ大量の雪を持って高速でトルペタ君の後ろに回り込み、頭からどさささっと雪をかけた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ワーワー!ギャーギャー!
「...人間とはああやって群れの中の調和を取っていくのか...。」
「いや、違うです...。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
トルペタ君と雪合戦しながら皆についていくこと数十分。
山小屋についても雪合戦をやめなかった私達に対して、カナちゃんは暖かくなる魔法の効果を切って私達を止めた。
「さ、さささささむいんだけどどどどど。」
「ここここやのなかにいきききましょうううううう。」
皆より早く物置程度の小さな小屋に駆け込む私とトルペタ君、小屋の扉を開けると中は住んでいるのが魔物であるということが信じられないくらいちゃんとしていた。
本だなにカーペットに椅子にベッドに暖炉、どう見ても快適すぎる暮らしができそうだ。
暖炉の前で縮こまって私とトルペタ君は温まった。
ふああ、あったかい。
「とりあえず適当に座ってくれ。」
ルクスは椅子の上でちょこんとお座りをして私達に座るよう促した。私はもう暖炉の前を陣取ってるんだけどね。
カナちゃんはベッドに腰かけ、フレアとレオは地面に座った。
「ここって、まるで人間の家っぽくない~?ルックンがこの家つくったん?」
「る....?私のことか...?もともとあった小屋を私が綺麗にして使っているだけだ。」
狼なのにこんなにちゃんとした家に住むのは何か理由があるのかな?
体も温まったことだし、何か食べ物でもアイテムボックスから出して話したほうが休めるよね。
「とりあえずご飯でも食べながら話さない?丁度コルペタさんの料理もあるし、ルクスは人間の料理とか食べれるのかな?」
「わからん、何せ今まで山の獣しか食べてこなかったからな。...料理というものは文献では見たことがあるが、より食材を楽しむものなのであろう?それならば好奇心に任せて食べるとしよう。」
テーブルが無いから地面にコルペタさんの料理を並べていく。
スープを鍋ごと出して鹿のハンバーグとクルシュの乗ったサラダをお皿に盛っていく。
ルクスは肉の匂いに舌なめずりをしてよだれを垂らしている。ほかのみんなもちゃんとした食事にありつけることがうれしそうだ。
スープを器によそっているとフレアから催促が飛んでくる。根拠があるかはわからないけど炎属性のマナは他の属性よりもお腹が減りやすいんだって。ほんとかなぁ。
皆に食材がいきわたり、各々が食べ始めると、ルクスが一口ハンバーグを口にしたときに遠吠えをしだした
「なっ、なに!?やっぱり人間の料理はダメだった!?」
ビックリして声をかけるも、ルクスはガツガツと一気にハンバーグを食べてからくっちゃくっちゃと噛みながらこちらを見てきた。
「うむ!!とても美味だ!!肉は焼かなくても美味だが焼くともっと美味になるな!!!」
目をキラキラさせるその姿はまるでおやつをもっと欲しがる飼い犬だった。
わたあめ元気かなぁ。
私もずずずとコルペタさんの作ってくれた、クルシュ村で採れた野菜のスープを流し込む。
野菜の甘味とコンソメ風の塩気が疲れて冷え切った体を温めてくれた。
コンソメってどうやって作ってるんだったかなぁ、なんかいろいろ煮込んで出汁を抽出してたような....。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ですので、このダンジョンというのはダンジョンミミックという魔物の体内みたいなものなのです。おそらくルクスは外で雪山に住んでいて、このダンジョンに迷い込んでしまったのでしょう...。」
「ふむ..私がこのダンジョンから出ることは可能なのだろうか?」
ご飯を食べながら現状の説明をしていると、ルクスはダンジョンミミックがどういった存在で、ここがどこなのかを理解していないことがわかり、カナちゃんが説明をし始めた。
知の探究者とか自分でいうくらいだし、ルクスはここを出て世界中を旅したいのかもしれない。
私達と目的は一緒だけど魔物らしい見た目をしている以上一緒に行くことは難しいかなぁ。
「ダンジョンの最奥部には各層に配置しようとしているミミックのお宝とミミックの本体がいるっぽいよ~?倒せば外に出られるから奥に進めばいいんじゃない~?」
なるほど、お宝があるのか。
でもそれだと...。
「ん?そうするとミミックっつーのを倒した後、ダンジョンの中にいるもんはどうなっちまうんだ?」
フレアが私が気が付いたことを言ってくれた。消滅してしまうならほかに冒険者がいないことを確認してからじゃないと倒せないよね。
「生命体は元となった場所に引っ張られるらしいです。私達の場合は密林地帯にはじき出され、ルクスは雪山地帯に出されるようですね。」
なんというご都合主義。ありがたい。
「ではどちらにせよその次の階層とやらに向かう道を探さねばならぬということか。....もしやその場には強い魔物がいたりするのではないか?」
「あれ?心当たりあるの?」
探す手間が省けそうだ。
「うむ、狩りに行くたびに愚鈍ながらも邪魔をしてくる魔物が山の頂上におるぞ。」
「ちょ、山登りしなきゃいけないわけ~?カナっちにはオレらを終始魔法で温めてもらわなきゃじゃん。ガンバ!カナっち!」
「はぁ...雪山となると仕方がなさそうですね...。緊急以外は常にそちらに専念するです...。」
カナちゃんの方に手を置いて軽いノリで激励をするレオ、カナちゃんはやれやれと言った表情でその手を払いのけて了承した。
もしカナちゃんがいなかったらと思うとぞっとするなぁ、とりあえず私達が目指す先は雪山の頂上かぁ。
「...ところでルクスさんに聞きたいことがあるんですが....。」
トルペタ君が突然、真剣な表情になった。
「なぜオレら人間を襲わないんですか?そしてダンジョンから出て人に会ったらどうしますか?」
その発言を聞いたルクスはきょとんとした表情の後、頬を上げてニコリと笑った。その表情に敵意はなく、むしろ慈愛すら感じた。
「....私が人を襲うことはありえんよ。何度も言うが私は知の探究者。知を無限に生み出す人間達をどうして襲おう?...それに、これは理屈では無いのだが、私は生まれた時から人間を知っていて、そして人間に対する愛情も持っていた。....理由は不明だがな。もしかしたらそれを知るために知を探求しているのかもしれないな。」
「...それならよかった...。」
そこまで言うとルクスは残っていたサラダに口をつけて、飛びのいた。
「ぎゃん!!!なんだこれは何だこの匂いは!!私の本能が危険だと言っている!」
ふー、ふー、と息を荒げて耳を下げて尻尾を股の間に丸めながらサラダに向かっているルクス。
「えー?そんなおかしなもの入ってたっけ.....。」
サラダの具材を確認した私は理解した。
狼もダメなんだ......。
「玉ねぎ.....。」
魔物だろうと関係ないのね.....。
「早くそれをどけてくれーーーーッ!!!」
読んでくださってありがとうございます!もしよろしければ下の欄の✩をタップして頂けると励みになります(*ˊ˘ˋ*)




