「73話 ルニアの思いが強すぎて 」
◇SIDE:ウォルフ
マズいことになったわね、ヒュムに言われて初めて気が付いたんだけど、『乗っ取りヘルメット』で魔物に意識を乗り移らせてから皆のしぐさが魔物に寄ってきてたのね。
皆が変なのはいつもだけど確かにいつも以上に変だったものね。
魔物のしぐさが移る、これがただ癖がついたとかならいいんだけど、もし性格が変わるほどのものであればマズいことになる。
「はぁ...またお蔵入りかしらね....。」
とりあえず皆を呼びましょう..。
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「え~、というわけで!『乗っ取りヘルメット』を回収して破棄することにしました!」
「「「「え~~~~~~~~~!」」」」
やっぱり抗議してきたのはシーア、ジア、デストラ、ルニアだった。
楽しんでたものね。
「早くあの森に帰らなくちゃいけないんです!ウォルフちゃんのせいで迷えるウサギたちが絶滅したらどうするぴょん!?」
「ルニア、知能が前の半分くらいになってるわよ。」
ルニアはたまにポンコツ天然の部分が出る程度の美人だったのに、野生の兎に乗り移ったせいでポンコツ全開になってる。
今ミウシアにあったらどうなっちゃうのかしらね、ポンコツヤンデレも見てみたいわ。
「オイオイオイオイガウガウガウ!!これから魔族の本拠地に行って暴れるところだったのによォ!!!あと一回でいいから使わせてくれよォ!」
このバカ、途中からガウガウ言ってるわ。見た目オッサンにやられるとキッツいわね。
「これからケットシーたちにミウシアクエストファンタジー40を広めるところなのに~~~!!」
この前聞いたとき確か26じゃなかった?というかその名前を広めるのはかなりマズいわね。
早めに止めておいてよかったわ...。
「シュ~~~~チロチロ」
コイツはもうだめだ。早く何とかしないと...。
「自分が普段とどれくらい違うか、4人で少し話してみろ。...シーアはいつもと変わらないがほかの3人は話せばすぐわかるはずだ。それに納得したらすぐに持ってこい。」
ヒュムないす!
ヒュムの発言によって話し合い始めた4人は、みるみる内に顔が青ざめていった。
特にデストラは言葉を発しているつもりでしゅーしゅー言っていた事を受け止めきれず、膝を抱えて湖に向かってブツブツと言っている。
まぁほっときゃ治るでしょ。
「やべぇな...こんなナリでガウとか言ってたのかオレは....。キツい...。」
「え~~~?かわいいよ~!」
「可愛くないから!!!皆わかった!?私達が影響を受けるってことは、サスティニアにも影響が出ているかもしれないの。軽率に作ってしまったあたしに落ち度があるのはわかっているの。だから早く持ってきて壊すわよ!」
このことをミウシアに話したら怒られるかしら?
多分ミウシアなら怒らないと思うけど、もし私の理論が正しければ私達のアバターはミウシアの味方になってくれるはず。
.....じゃあ言わずにびっくりさせたほうが楽しませられそうね。
「ウォルフちゃん。私達が乗り移っていた魔物はどうなるのでしょう?」
ルニアが今私が思っていた事を質問してきた。
本当に、この子はたまに核心を突くから凄いわね。
「推測でしかないのだけど、私達が乗り移ったことで知能が低い魔物に知能が芽生えたと思うの。そして私達の考え方を多少なりとも継承していると思うわ。....そうね、私達の子供みたいなものかしら?」
子供っていう表現が正しいかはわからないけどね。
「じゃあ子供たちに名前つけてあげようよー!!せっかくだしさー!」
シーアの考えに同意ね、あたしとしても思い入れは多少、いや割と...だいぶあるし。
「おっ、いいじゃねぇか!!じゃあ...俺のクマは...ゴルギアス・グルドゥルンブシアだな!!」
「....ジアのセンスが悪いのか、生前の世界のセンスが悪いのかわからんな...。」
....せめてちゃんとした名前を付けてあげないとかわいそうね。
とはいえ名前なんて発明品にしかつけたことなかったけど、どんなのがいいかしら。
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◇SIDE:ルニア
決めました!あの子の名前はピョンです!
ウサギさんはぴょんぴょんと跳ねますからね、そのチャームポイントを名前にするのは普通でしょう。
生前もよく動物さんたちに名前を付けていましたので、こういったのは得意です。
インコのチュッピやリスのキューイは元気でしょうか..。
ピョンには魔物ではなく人間を助ける慈悲深い森の守り神となってほしいですね。
できればミウシア様を守って欲しいという気持ちはありますが、個人を守れと言った細かい意識を植え付けるのは難しいみたいです。
あくまで思考が私達寄りなだけで、人為的に何か手を加えるのは無理とのことでした。
私のこのミウシア様への気持ちを、人々に対する慈悲へと変えて、ピョンに天啓を授けましょう。
ピョンはまだ弱いです、願わくば安全な地で暮らせるように願いながら。
どうか、どうか優しく、慈悲を忘れず、末永く人々の味方でありますように。
『面白そうだし、叶えてあげるよ。』
?なんでしょう、少年の声が聞こえたような気がしましたが...気のせいでしょうか?
どうせならミウシア様の声が聞こえればよかったのに...。
~~~~~~~~~~~人間が生まれる遥か昔~~~~~~~~~~~~
◇SIDE:ピョン
私は誰....?
私は....ピョン。
私は何のために生まれてきたのでしょう....?
....そうです、ヒトビトを守るために。
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....私に自我が芽生えてからどのくらいが経ったのでしょう。
この森で永い間暮しているうちに、色々なことがありました。
遥か昔より神によりこの星を守ってきたドライアド達に会い、育てられた私は気が付くとマナと呼ばれる力を誰よりも多く保有していました。
しかし、体力面ではただのひ弱な魔物。
そんなドライアド達もこの森からいなくなり、私は独りになってしまいまsた。
....やがて時が経ち、ついに人間達が生まれました。
いつからか、なぜなのかはわかりませんが私は人々のことを考えると、心が温かくなり、とても愛おしい気持ちになりました。
..しかし、人間が生まれてからというもの、人間と魔物同士の争いは耐えることはありませんでした。
私は森で傷付いて倒れている人間を見かけるたびに回復魔法をかけ、森の中での争いがあれば仲裁に入る。
そんなことをしているからか、人間からは森の守り神と呼ばれ、魔物からは恐れられるようになってしまったのです。
それからさらに永い時が経った今では、私のことを知る者はもういません。
この森から出て人間の元に行ったところで、人々の成長の妨げになると思ったからです。
そんな私の前に、ある日一匹の魔物がやってきました。
その姿の衝撃はすさまじく、蛇の鱗の一枚一枚を私くらい大きくしたような立派な紅い鱗を持ち、木を3本並べても足りないくらい大きな空を飛ぶトカゲ。
いくら長く生きようとも、この森の外に出たことが無い私にとって、今まで生きてきた中で一番驚いた瞬間でした。
しかし、この魔物はなぜこの森に?もしやこの森を滅ぼしに来たのかもしれない。
ならば守らなくては。この森を、住む動物を、魔物を、周辺の人間を。
相手の力量は不明、目的もわからない。いつでも攻撃ができるような準備をするために私は無尽蔵のマナを絞り出し魔法を...。
「て、敵意はありません!どうか話をお聞きください!」
地面に降り立ったその魔物は頭を深々と下げ敵意が無いことを表した。
その見た目とは裏腹に、腰がとても低く、敵意が無ければ攻撃は行う必要はないと判断し、その場を収めました。
「ならばこの地にどんな用がおありで?」
私が質問をすると大きな魔物は頭を上げてその問いかけに答えました。
「...私は竜族の長、ディレヴォイズと言います。あなたの力を貸して欲しい。...私の一族の住む島は魔物達の楽園です。しかし愚かにも人間達が我らの大陸を奪おうと攻めてきました。...しかしその数は我らをはるかに凌ぐのです....。なのでぜひとも!全ての魔物の中で最強と謳われるあなたの力を借りたいのです!」
拳を振り上げて演説するその姿は、媚を売るような、私を利用としているような、そんな印象を抱きました。
にしてもどこで私のことを知ったのでしょう?
私の答えはもちろんNO。たとえ守るべき人間達が魔物を蹂躙しようとも、手を貸すことはせずとも敵対することはありません。
私の気持ちをこの魔物に伝えましょう。おとなしく去ってくれればよいのですが。
「私は人間達を愛しています。....いかなる理由があろうとも人間と敵対することは...ガハッ!?」
話終わる前に突然、何かが私の小さな体を貫き、激痛を噛みしめながら地面に倒れました。
いくら魔力が無尽蔵と言えど、無防備な状態で不意を突かれたひとたまりもありません、今まで変わらなかった毎日に訪れた、非日常。そんな出来事に浮かれていたのかもしれません。
「じゃぁよぉ~....俺らの糧になってもらうしかねぇよなぁ??」
朦朧とする意識の中、大きな魔物の下卑た声を聴きながら私は意識を手放しました。
こんなことなら森から出て、いろんなことを成したかった。
すみません...***様.....。
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「...夫!?....丈夫!?....ねぇ!!ルクニカ!!!」
ふと気が付くと目の前には赤い髪の人間の子供が泣き顔で私を揺さぶっていました。
....どちら様でしょう...?
「あ...私は...。」
ふいに頭痛に襲われました。
....とたんに私の知らない記憶を、いえ、ルクニカとして生まれてからの記憶を思い出しました。
「大丈夫!?ルクニカ!!あたしが強く叩きすぎたから!!!ご、ごめんね!?」
「だ、大丈夫だよ、フレアお姉ちゃん(・・・・・・・・)」
そう、私は前世の記憶を持ってバーニア族として生まれ変わった、エンシェントユグドラシルラビットのピョンであり、バーニア族のルクニカです。
今世では沢山人と関わり、人のために生きよう。
もっと世界を歩き回って。




