「72話 ダンジョン攻略再開 」
4人に事の経緯と、1か月後のSランク昇格大会に向けてダンジョンの攻略を再開しようと伝えると皆快く賛成してくれた。
でも皆がみんな大会に出ると言い出したため、私達はお互いに高めあうことになった。
カナちゃんとは戦いたくないなあ。
私の和服については皆驚いてた...というより家に帰るまでの道のりで既に町行く人々に珍しいものを見るような目で見られた。
まぁ珍しいもんね。でも否定するような視線だけではなく、うらやましがるような目線も感じた。
仲間たちの反応は称賛したり無関心だったりそれぞれだった。共通したのは「動きにくそう」という意見だったけどこの服の機能を伝えるとやっぱり驚いてた。
カナちゃんが自分もそういうデザインの服が欲しいと言っていたので今度浴衣でも作ってもらおうかな。非戦闘用の。
皆の装備はと言うとフレアがドラゴンの骨を使った防具にグレードアップ、より蛮族感が増した。
他の皆は魔法職だからあんまりドラゴンと相性が良くないみたい。ダンジョン産の装備やマナの宿った素材じゃないと今の装備を越せないそうな。
「ご飯よし、寝る用の毛布よし。じゃあダンジョン探索に行きますか~!」
「ミウちゃん、そういえば世界中を旅するってのは全然進んでないけど~。ダンジョン攻略したら各地の冒険再開系~?」
「まぁダンジョンなんて珍しいですからね。優先したほうがいいのはわかりますが...ミウの当初の目標は後回しになるですね。」
やっべ、忘れてた。
デストラが元気になる前に魔物のボスを倒さなきゃって感じなんだっけ?
....まあなるようになるよね。Sランクになれば各地に行きやすいし。回り道ではあるけど進んでるよね。
「ちゃちゃっと攻略して、ちゃちゃっと強くなって。ちゃちゃっと旅も再開しよう!」
「そう簡単にいくかはわかりませんが...とにかく、まずはダンジョン攻略で強くなりましょう!」
「まぁSランクになるのはあたしだけどな。」
ダンジョン攻略の準備を終えて家を出た私達は、転移石を使ってダンジョンへと向かった。
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前にドラゴンゾンビを倒した階層まで転移してきた私たちは、以前ドラゴンゾンビと戦った大きな部屋の奥にある、下へと続く階段に向かって足を延ばす。
「次は明るいとこ希望~。もうアンデッドとか薄暗いとか気分上がらなくてマジ勘弁~。」
「あたしの炎で照らしてあげるからそこは任せてくれよ。」
フレアはようやくレオに慣れてきたらしく、最初のような敬語やさん付け、モジモジするのは無くなった。
話し方は普通になったけどやっぱり照れはするみたいであんまり顔は直視しないようにしてるし、顔も赤い。
これレオはどう思ってるんだろう。
「暖かくて景色が良くて居心地がいい階層がいいな~。」
階段を下りながら願望100%の独り言を呟く私。
「ミウ~。そういうことを思ってると大抵反対のことが起きるものなのですよ。例えば。寒くて殺風景で居心地最悪な....??」
カナちゃんが悪い顔で笑いながら私をからかっていると、不意に階段の下から冷気が吹いてくる。
「さむっ!おいアルカナ!お前がそういうからなんか寒くなってきたぞ!」
「ほんのりフレイム・アックス!...おら、これで温かいだろ。暖炉変わりのスキルとしてはなかなかのもんだろ?」
斧に炎を纏わせるスキル、フレイム・アックス(カナちゃん命名)をフレアがよわよわ火力で出してくれた瞬間、じんわりと温かい空気が私達を囲った。
フレアはそれをしょっていて火傷しないの?
「お~。温かくなってきた。フレっちさんきゅ~。」
「お、おう。これくらい任せろ。」
肉体的な熱は大丈夫だけど精神的な熱には弱いフレアさんなのでした。
さらに階段を下りるとどんどんと寒さが増していき、階段の終わりには辺り一面白銀の世界が視界一杯に飛び込んで来た。
「明るいっちゃあ明るいけど、案の定殺風景じゃん!」
ところどころに生える木、目の前に見える大きな山、照り付ける太陽とてもここがダンジョン内と思えなかった。
後ろを振り返ると洞窟があり、その中に階段が見える。
ダンジョンって不思議だなぁ...。うう寒い。
改めて辺りを見回すと近くに山があり、それ以外は多少の起伏と木々があるとは言え、見渡す限りの雪景色。
目の前には小さな丘があり、はるか先に山があることしかわからなかった。
「これは...私たちのいる大陸の北側の気候に似ているです。おそらくそこにダンジョンがあった時があったですね。」
「早速、お出ましだぜ。」
フレアが斧を構えて何かを待ち構える。
耳を澄ますと複数の生き物が雪の上を走ってこちらに向かってくる音が聞こえる。
そんで耳のさきっちょがさむい。手で握って温めよう。
目の前の丘の頂上に1匹、2匹、3,4,5,6,7と狼が姿を現す。
いや、まだ増える。最終的に表れたのは17匹。こちらよりはるかに大所帯だけどすぐには襲ってこなさそうだ。
「どうするです?この距離だと鑑定もできないですし、無策で戦うのはちょっと危ないです。」
「俺が矢で分散させてみるか?」
トルペタ君がゴーグルをかけて狼の方を見つめる。
「とりま、マナ・ペネトレーション、マナ・アクティビティ!」
レオが強化スキルを使用すると一斉に狼が襲い掛かってきた。
この数だと私とフレアだけでは止められず、後衛の人たちにも狼が攻撃してくるだろう。
「レオ、カナちゃん、トルペタ君!気を付けて!何匹かはそっちに行っちゃうかも!」
「行くぞ!ミウシア!」
フレアは出し惜しみをしないでファイア・スピリットを使う。
「<泥沼>スワンプ!」
レオが前衛と後衛の間に泥沼を作り狼が近寄りづらい状態を作り出した。
狼は素早いため私は速さ重視のホーリー・スピリットを使い、こちらから狼に向かって走りだす。
何度かこの服で訓練はしたけど、実戦でも問題なく走ることができる。前の防具よりも軽く、それでいて頑丈で安心して戦える。
戦闘の狼が私に噛みつこうとものすごい速度で飛び掛かってくる...けど私は余裕で避けられる。
横に避けつつ、噛みついてきた口の淵に向かって切り込みを入れる。
赤黒い血で雪を染めながら狼が地面に倒れこむ。
倒してはいないだろうけど動きは鈍るだろう、今は少しでも多くの狼を攻撃しなくちゃ。
戦闘の狼があっさりと攻撃されたのを確認した残りの狼たちは、私を避けるようにして二手に分かれる。
片方はフレアへ、もう片方はレオ達の方へと向かった。
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◇SIDE:フレア
「ミウシアから逃げてあたしの方に来るってか?嘗められたもんだなァ!!ラヴァ・アックス!!」
マナを斧へと流し、赤く染めていく。
このラヴァ・アックスという名前はとても気に入っている。
やっぱり戦闘は派手で気持ちよくしたいもんだ。
こちらに群れでやってきた8匹は一斉にあたしに向かって走ってきた。
「しゃらくせェ!」
赤く染まった斧を向かってくる狼たちに向かって振り切るも、あっさりと躱される。
こいつらあたしよりもはええ。
避けた狼が腕、足を鋭い爪で切り裂こうと試みるも、ファイア・スピリットで強化されているあたしの体に攻撃は通らない。
「痛くもかゆくもねぇんだよ!!いくら早くたってこれじゃあ野良犬とかわんねぇなぁ?」
あたしの発言に対して激高したのか、唸ったり吠えたりしだした。
なんだこいつら、あたしの言葉を理解してんのか?
だったらちょうどいい、挑発はあたしの十八番だ。
「おら、こいよ犬ッコロ。そのご自慢の爪や牙であたしを倒せるならなァ!!」
数匹が回り込み、あたしを挟み撃ちするように飛び掛かってくる狼たち。
空中では避けられねぇよな?頭よくても所詮は魔物か。
「おらァ!!」
今度は斧を縦にして横に回転するようにして全力で斧を振るう。
真っ赤に燃えた斧は周囲の空気を吸収してさらに赤く、いや、白く光る。
狼たちは先ほどよりも速い攻撃に戸惑うも、空中では避けられない。
飛び掛かってきた狼の内、4匹はその脇腹に斧を受け、毛と肉が燃えるような匂いが周囲に漂う。
もちろん、残りの4匹からの攻撃であたしが傷つくことはない。
いつもよりも力を込められたのはレオの強化スキルのお陰か?...後で話す理由ができたな。
あたしの斧を受けた4匹は地面に横たわり、ピクピクと痙攣をしている。
残る4匹は後ずさりをしてあたしから離れていった。
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◇SIDE:レオ
ミウちゃんが狼を1体迎え撃った後、二手に分かれた狼が8匹ほどこっちにやってきた。やばくね~?
「アルカナは数を減らしてくれ!レオさんの泥沼を飛んできたとこを火属性で撃つ!!」
トルっちがグローブ越しで5本の矢に火のマナを通わせると、フレっちみたいに矢が赤くなっていった。
あれ手熱くないの~?グローブしてても溶けるっしょ。
「雪たちよ、凝固し氷の槍となれ!<氷槍>アイシクルランス!」
カナっちが走りくる狼の進路を予測し魔法陣を展開、その後氷を利用?したっぽい。
地面から氷の槍がグサーッと飛び出て2体の狼が串刺しになる。
残り6体。狼ってばもう沼まで来てんだけど。
沼はオレらの周りを囲うような形で展開されてて、俺らに攻撃するなら飛び越える必要があるっぽい。
これならタイミング次第でワンチャンありげ?
6体の狼はバラバラに別れて沼を飛び越えようと地面から足を話した。
ここっしょ。
「<拘束茨>ソーンバインド!」
沼の中から茨がにょろにょろっと出てきて沼を飛び越えた狼の足を掴んで沼に引きずり込んだ。
とかいって成功したのは3体分、残り3体は沼を飛び越えもう目の前まで来てる。
やっば~。
「二人とも!こっちにきてしゃがんで!!」
カナっちが魔法を使った後の疲れでとっさに判断が鈍ってるっぽい。
カナっちのお腹に手をまわしてこっちに引き寄せる。
そのままトルっちの近くでしゃがみこむ。
狙いが一点に集中したことで狼はトルっちに集中して飛びついた。
トルっちはしゃがむのと同時に真上に弓を向けて矢の向きを微調整した。
その調整神がかってんね~。
「っ!」
トルっちが矢を放つと5本の矢は上空から襲い掛かる狼たちに向かって飛んでいく。
でも、ギリで狼たちは体を捻って避けた。
「<爆発>バースト!」
それと同時にトルっちが魔法を唱えると矢が爆発し、狼たちがその爆風で吹き飛んだ。
やるぅ!
そのまま3匹の狼は沼付近に向かって飛んでいく、沼から出たままの茨は空中で手傷を負った狼を捕まえると先ほど同様沼に引きずり込まれていき、沼が消える。
ふ~。焦った。
「やるじゃん、トルっち~。」
「ふぅ...アルカナに教えてもらったんですよ、神式語。」
「レオ、レディを守るときはもっと優しくしなきゃダメです。お腹痛くなっちゃうです。」
倒したことに安堵してオレたちはさらに4匹の狼が近づいていることに気が付かなかった。
ミウちゃんとフレっちの様子を確認しようと顔を上げると前から4匹の狼がこちらに襲い掛かろうと走ってやってくる。
「ちょ!やばいって!」
「!?」「なんです!?」
咄嗟のことで反応ができず、身構えることしかできない二人。
杖を前に出して狼を返り討ちにしようと無謀にも杖を構えたオレだったけど、狼よりも奥の方で一瞬、何かが光った。
あれは何か、と考える間もなく血を噴き出して倒れる狼、そしてオレ達の前には....。
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◇SIDE:ミウシア
ふい~~~~~、危ない危ない。
狼を一匹倒したあと、みんなの様子を確認してたら案外余裕で倒せてそうだったから油断してたんだけど....。
フレアが仕留め損ねた狼もカナちゃんたちの方に行くとはねぇ。
もうちょっと集まって皆で迎え撃った方がよかったかな、早くこの装備を試したい気持ちがあったのかも。反省。
カナちゃんたちに迫る狼達に向かって本気で走って向かって走ったら予想以上に早く追いついちゃったもんだから、すれ違いざまに切りつけたんだけど...。
狼の防御力はそこまで高くなくて、ちゃんと力を入れたらすんなり首を落とすことができた。
何が起きたのかさっぱりわかっていない三人の方を向いた私は遅くなったことを謝罪した。
「皆、遅れてごめんね。」
カナちゃんが私に向かって飛び込んでくる。怖かったのかな。
「み、みみみみう~~~!!!今の登場の仕方は100点です!100点満点です!!かっこよかったです!!」
全然じゃん...。
でもまぁ無事でよかった。
「すみませんミウシアさん、狼達を一旦は片付けたので油断してました....。」
「ミウちゃん助かったよ~。」
トルペタ君は申し訳なさそうに、レオは心底安心したような顔をしていた。
「ううん、もとはと言えば皆から離れちゃったのが悪いんだし...。」
そういえばフレアはどうしたんだろう?
先ほどまでフレアが戦っていた方角を見ると、フレアが狼の死体を見ているのが確認できた。
その後死体から何かを取り出しこちらに駆け寄ってきた。
「お~い!これ、....ちょっとこれ見てくれ。狼が持ってたんだが....。」
フレアが手に持っていたのは木の棒と丸いガラス。
カナちゃんがそれを受け取っていろんな角度から確認する。
「んん~?....これは....。眼鏡です..?」
「眼鏡?なんで狼が?」
誰かほかの人がつけていた眼鏡を持っていたか、はたまた狼がつくったのか....。
まぁ後者はありえないか。
「とりあえず見てみるよ、<鑑定>アナライズ!」
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名称:木の眼鏡
品質:F-
説明:木とガラスで作られた簡易的な眼鏡
補足:特になし。
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うん、何もわかんない!




