「71話 受け取り 」
ファニーシャさんに依頼を出した後、家に帰って外で修行をしていたフレアに付き合って修行を行った。
とはいっても戦闘をするのではなく、単純な筋トレだけどね。
残りの三人は前日飲みすぎたせいでずっと横になってた。レオは元気が無くて魔法が出せなかったらしい。
飲みすぎ注意!
少し元気になったところで今日のことを皆に話すとフレアが「ルクニカがなんとかしてくれる」の一点張りだった。
その時のフレアはなんだか寂しいような嬉しいような表情をしていたけど、やっぱり昔に何かあったのかな~。
受け取りの日にフレアも誘ったけど、ミウシアが一人で行った方がルクニカは喜ぶって言うもんだから一人で行くことになった。
やっぱりあの時ニカにキスされたのは冗談じゃなくて本気だったのかな?
本来であれば...というか武蔵だったころにはもう秒でお付き合いを申し込んでいたんだろうけど、レオに断った時同様、お断りをしなきゃいけないのかなぁ。うーん。
そして3日が経過し、今日は受け取りの日になった。
記憶を頼りにヒューマン地区まで来て奇抜な家を探す。
途中で迷子の子を助けたり、荷物が多くて困っているお年寄りを助けたりしているうちに無事たどりついた。
人助けノルマ達成!
「...?なんだこれ....。」
たどりついたはたどりついたんだけど、壁の模様、というかデフォルメされた人の絵と文字の落書きが壁一面に書いてあった。
多分ファニーシャさんと思われる顔とニカっぽい顔、謎の文字と服やトマトや...ウサギの落書きも書いてあった。
家の前にはペンキが無造作に置かれている。倒れて道を汚しているのもある。
状況が全く理解できない私はとりあえず中に入ることにした。
「しつれいしまーーーーくっさ!!!!!」
家の中はお酒とペンキが混ざったような匂いが充満していた。
服が置いてあるところに二人はいなかったのでお店の中へと入っていく。
「~~!!.....!!!」
....何やら声がする。
ここの奥かな?
「だぁああかあらあああ!むりにゃああ!そんなんじゃあああ!」
「じゃああどぉしあたらああ~、ふりむいてくれるんですかああああ~~~」
床に座りながら頭を伏せてしゃべっているニカと寝っ転がりながら横を向いてお酒を飲むファニーシャさんがいた。
「ちょ、2人とも....朝ですよ....?」
私が声をかけると二人はぐるんと凄い角度で私の方を向く。
「あぁ~!みうちゃんだああ~!できたぴょ~~~ん!ふくれきたぴょ~~~~~ん!!」
「きたかにゃ~!これにゃきるにゃきがえるにゃああああ!」
いつもと口調の違うニカとこの前とあんまり変わらないファニーシャ。
ニカは甘え上戸なのかな?新鮮でかわいいけどお酒臭いのはやめてね。
ファニーシャさんは近くにあった麻袋を私に投げて、ぐでんぐでんの体で店の奥を指さした。
あそこで着替えて来いってことかな?
とりあえずお礼をいって奥へと向かった。
途中、ニアが「みうちゃあああ~ぴょんがきせるぅぅぅ~まあてええええ」と言って立ち上がろうとしたときうまく力が入らずその場でこけてしまう。
爆笑するファニーシャと動かないニカ。
ニカは酔うと一人称がピョンになる....?これがギャップ萌えか!!
なんか最近酔っぱらい見てばかりだなぁ。
ここまで酔っぱらってると何も邪な気持ちが芽生えず唯々心配になる。
お店の奥に行くと中にはベッドと乱雑に脱ぎ散らかされた服が床に散乱していた。
ファニーシャさんの部屋なのかな?
私は受け取った麻袋を開けてベッドの上に広げた。
「うわぁ...。」
中には私が思い描いていた通りの服が入っていた。
濃い赤色で飛び兎と同じ柄の入った着物と内側に着る用の着物、黒の袴に濃い赤色と黒の2本の帯、白い足袋と草鞋。
手に取ってみると驚くほど手触りが良く、暖かさも感じられる。
さっそく着ようとしたところで気が付く。
私、サイズの話してなかった....。
不安を感じながら来ているセーターを脱いで着替えを始めた。
まず足袋と袴をはいた。しかし、帯をしないといけないことに気が付き一度ベッドへと腰かけた。
先にさらしをぐるぐると巻いていく。
胸が無いからさらしを巻く意味あるのかなぁ、今まで来てたのだってスポブラみたいな感じだし...思ってて悲しくなってきた。
次に中に着る着物を着て上に着る着物を着た瞬間、磁石でもついているのかと思うほどに着物同士の裾がくっつき、一つの着物になる。
おお~と感動しながら袴の中に着物をしまう。その上から2本の帯を巻くと袴と着物をピタッと磁力でまとめてくれた。
「<水作成>クリエイトウォーター、<光反射>ミラー」
全て着替え終わり、自身の姿を確認するため水を作成し、光を反射させて鏡にする。
鏡に映っていたのはまるでRoAの世界のミウシアが、そのまま映し出されたような見た目の自分だった。
「うわ...可愛い...。」
思わず口から出たナルシストにも聞こえる発言に、少し照れ臭くなる。
あんなにも一人で山に籠っていた頃は自分の姿を見続けて慣らしたはずなのに、この世界に無い和服を着た自分を見るとどうしても自画自賛してしまう。
アイテムボックスにしまっていた飛び兎を出して帯に挟んでみる。
「うわぁ....これだよこれ!...飛び兎と凄いマッチしてる!」
横を向いたり武器を構えたり、武器をしまったりちょっと色っぽいポーズをしたり。
何をしても全て似合う自分をみて、この姿で某巨大オタクイベントに参加したらさぞかしちやほやされるんだろうなぁと地球を懐かしむ。
「そういえば性能を見てなかったけど....<解析>アナライズ!」
-------------------
名称:鬼神の着物
品質:S-
祝福:不可
武器性能:防御力+90
構成素材:鬼神の布、アビススパイダーの糸、マジックシープの毛、マグネットゴーレムの核粉末
説明:ファニーシャの作成した魔法障壁が付与された変わった上下分離型のドレス。
補足:・魔法障壁の効果により、外部の攻撃を着衣者のマナを使って防ぐことができる。着衣者のマナが不十分な場合は発動せず、防御力は1となる。
・鬼神の布の効果により、装備者の腕力が20%上昇する。
・袴に特殊な磁場が発生していて走る際に布の抵抗を感じなくなる。
・特殊な磁場によりこの衣類が着崩れることはない。
・特殊な魔法陣により、袴の中は何者にも覗くことができない。
・魔法障壁の効果により、外部の攻撃を着衣者のマナを使って防ぐことができる。着衣者のマナが不十分な場合は発動せず、防御力は1となる。
-------------------
-------------------
名称:柔硬の足袋
品質:S-
祝福:不可
武器性能:防御力+18
構成素材:メタリックスライムの核、マグネットゴーレムの核粉末
説明:ファニーシャの作成した特殊な技術を使用した変わった靴下。
補足:・メタリックスライムの特性により、普段は柔らかく、衝撃を受けると超硬質化する。普段はただの布と同等の柔らかさを持つ。
-------------------
-------------------
名称:雷竜の髭靴
品質:S-
祝福:不可
武器性能:防御力+2
構成素材:雷竜の髭、メタリックスライムの核粉末、鬼神の布、マグネットゴーレムの核粉末
説明:ファニーシャの作成した特殊な技術を使用した変わった靴。
補足:・雷竜の髭を編んで作られた靴は電気の力を増幅させる。
・メタリックスライムの核を特殊な方法で靴に編み込んでいるため、常に超硬質化状態になっている。
-------------------
「要望100%答えてくれてんじゃん.....。」
鬼神の布の効果による腕力アップは知っていたけどまさかここまで完璧に作ってくれるなんて...。
自分で袴の中は覗けないから帰ったらトルペタ君をいじりつつ覗かせよう。
足袋と靴もオーダー以上の出来になっている。見た目は親指と人差し指の部分で別れている白い靴下と赤い帯の鼻緒のある...なんていうんだっけ、成人式に出る女の子たちが履いている奴みたいな....そんな感じ。
しかもこれもマグネティックゴーレム?の素材のお陰で足にピタッとくっついて離れないようになってる。
どうやら足の裏辺りと草鞋?の表面がS極とN極みたいになっているらしく、いくら振っても脱げる気配が無い。
脱ごうと思うとするりと脱げる。コレ鼻緒部分いらないよね、デザイン重視のために再現してくれたのかな?
一つ一つ性能を確かめていると、早くこれを着て戦いたくなる。
しかも見た目もいいから普段着として常に切ることになると思うし、これからは常にこの装備と一緒だ。嬉しい。
.....ふと気が付く。こんなに機能盛り沢山、しかも完全オーダーメイド、確実にレアな素材を使いまくっていることを表す品質S-。
このセットで家が数件買えるのでは?
頭を抱えてベッドに座り込む私。
「ど~かにゃ?ウチの作った装備は。」
声がした方向を見ると扉の前にファニーシャさんが立っていた。いつからいたんだろう。
「ファニーシャさん、酔いはもう醒めたんですか?」
「吐いたらにゃおった。...で、その装備はどうだったにゃ?」
装備の出来が凄すぎて、それ以上にお金の心配が脳内を占めてしまう。
「もう、本当に素晴らしい出来です。理想の中の理想の装備なんですが....。」
「なんにゃ。不満があるにゃ?」
眉を顰めるファニーシャさんに対して首をぶんぶんと振り全力で否定する。
「不満は微塵もありません!....でも、私、こんなにいい装備の製作費をとてもじゃないけど払えないと思います。作って頂いた後にこんなことを言うのは失礼ですけど...どうしたらいいでしょうか..というかおいくらなのでしょうか...。」
「....80万Nia家が3軒は立つくらいニャ。....でもお代はもうルクニカから貰ってるにゃ。」
そんな!!いくら何でもそれは貰いすぎだよ!!
勢いよく立ち上がりニカの元へと向かおうとした瞬間、ファニーシャさんにガシッと腕を掴まれ止められる。
「待つにゃ。ルクニカも男気を...女気?を見せていいところを見せようとしてるにゃ。それを断ったら可哀そうにゃ。」
女気はよくわからないけど後輩に奢って感謝よりも断られるのがつらいことはわかる。わかるんだけども額が桁違いすぎるよ。
「でも、でもいくら何でも80万Niaなんて膨大なお金...。」
ファニーシャさんはにやりと意味深な笑い方をした。
「こういうのはどうにゃ?来月に王都の冒険者ランクS昇格大会があるにゃ。参加権限を持つのは全ての冒険者。その優勝賞品は50万Nia、その分をルクニカに返して足りない額はルクニカの一旦奢り、後はそこで優勝したときにその場にいる全ての人にウチの装備を宣伝する。それでウチの売り上げが飛躍的に伸びたらミウシアには宣伝費として30万Nia払ってやるにゃ。そしたらトントンにゃ。」
冒険者ランクS昇格大会...フレアは確実に参加するよね、優勝するにはAランクほぼ最強と言われるフレアに勝たなきゃいけない。しかもフレア以外にも公になってないつわものたちが沢山いると思う。
でも一カ月後までに死に物狂いで強くなれば行けるかもしれない。....もしかしたらその過程で魔物の素材でお金も稼げる可能性だってある。やるしかないか...。
「わかりました。...遅れましたがファニーシャさん、素晴らしい装備を作ってくださってありがとうございます。大事にします!」
「うむ、めんてにゃんすも怠るにゃよ。ちゃんと魔力を込めて魔法障壁を維持していれば大丈夫だと思うにゃ。」
ニカさんにもお礼を言わなくちゃ。ファニーシャさんに頭を下げてニカのところに行こうとするとまたもや腕を掴まれて止められる。
「まつにゃ!ニカに今何を言っても無駄にゃ。」
「?なんでですか?」
「酔いつぶれて意識が無いにゃ。また日を改めるにゃ。」
「あぁ.....。」
2人でニカの元に行くと、お酒の匂いが充満する作業場でよだれを垂らしてニカが寝ていた。
「う~ん...みうちゃ~~ん.....」




