「70話 製作依頼 」
ニカに案内された奇抜なお店の中で私は一人立っていた。
ファニーシャ?さんが何か言いかけたのをニカが止めて、店の奥に入って行っちゃったけど....。
「仲間外れ気分....。」
ニカがいつもと雰囲気が違ったのは、気を許せる相手だからなのかな。
「にしても、すごいなぁ。」
お店の中に並んでる服はどれもデザイン性が高く、幅広いジャンルが並んでいる。
最初にファニーシャさんが説明しかけた服はゴシックロリータ風の服、他にも奇抜なドレスや傷んだように見えるデザインの服等、色々あった。
そして、先ほどの説明では鉄よりも硬いだとかなんとか....半信半疑でそのゴスロリ服を触っても高級感のある生地だなぁとしかわからない。
鑑定しちゃえ。
「<鑑定>アナライズ!」
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名称:白と黒のドレス~ヘッドドレスを添えて~
品質:A+
祝福:不可
武器性能:防御力+83
構成素材:カオスマジックスパイダーの白糸、カオスマジックシープの黒糸
説明:ファニーシャの作成した魔法障壁が付与されたドレス。
補足:魔法障壁の効果により、外部の攻撃を着衣者のマナを使って防ぐことができる。着衣者のマナが不十分な場合は発動せず、防御力は1となる。
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私の装備している防具よりも強い....このひらひらで...?
それを可能としているのが魔法障壁。これがあればお洒落な格好で戦闘ができる!
なんとしてでもファニーシャさんに飛び兎と合う和服を作ってもらいたい!
どんなデザインの和服がいいかな~と脳内でいろんな服をイメージしていると奥からニカとファニーシャが戻ってきた。
また頭叩かれたのかな?ファニーシャさんは頭を押さえて涙目になっている。
「ミウちゃん、ごめん一人で待たせて。」
「つつつ....さっきは取り乱してご免にゃ。改めて名前と要件を教えてほしいにゃ。」
改めてファニーシャさんの見た目の奇抜さを実感した。
髪はソバージュのセミロングヘア。色が奇抜で、右半分が青、左半分が赤色。もちろん耳の色も髪と同じだ。
頬には肉球マークのタトゥーが彫られていて、目じりにはきらきらとした小さい宝石がちりばめられている。
服装は赤と白のブラウスに黒のスカート、青のタイツ。奇抜すぎる!
「そんなじろじろ見つめられると照れるにゃあぁ~。」
頬に手を当ててモジモジと過剰に照れる素振りをするファニーシャさん。
名前と目的だっけ。
「あっ、すみません!私ミウシアって言います。この素材で作ってほしいデザインの服が合って、ニカにファニーシャさんを紹介してもらったんです。」
「作ってほしい、かにゃ~...ウチが気に入らないと作る気ににゃらにゃいからにゃあ。とりあえずデザインを書いてもらってもいいかにゃあ?こっちくるにゃ~。」
ちょいちょい、ついてくるように招くファニーシャさんに続いてと奥へと向かう。
「うわあ..!」
奥は作業場のようで様々な布や糸が沢山置かれていた。
素人目には何かわからないような裁縫道具がたくさんあり、真ん中の作業机のには造り途中と思われる布が置いてある。
「ん~、じゃあここに書くにゃ。イメージが伝わればにゃんでもいいにゃあ~」
机の上に置かれた大量の紙をドン!と机の真ん中に置いてペンを渡される。
ちゃんとかけるかな...。
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机の上には私が書いた、お世辞にもうまいとは言えない和服のデザインが描かれた紙が置いてある。
ニカがニコニコしながら私と紙を交互に見つめてくる...そんな優しい目で見ないで!頑張って書いたねって顔で見ないで!
肝心のファニーシャさんは紙をじっと見つめたまま何かを考えているみたい。
「にゃるほど...この戦いに向かないデザイン、ウチの好みには合うにゃ。.....でもにゃ~~~~地味にゃんだよにゃ~~~。...ここの色シャインビートルの殻から作った液体で着色していいかにゃ?」
「??どんな色になるんですか?」
「ん~~、こんな感じにゃ。」
ファニーシャさんは小さい布の束から一枚だけ取り出して私に見せてくれた。
深い緑の布で、私のイメージとは程遠い色、なんでこれが地味じゃなくなると思ったんだろう?価値観の違い?
うーん、私は鬼神の布そのままの暗めの赤がいいんだけどなぁ。
「ちなみに夜になると光るにゃ。」
部屋の電気を消すとぼや~っと地球の蓄光素材のように淡く光りだした。
「いやちょっとこれはないですね....隠密とかもしたいですし....。」
「じゃあ嫌にゃ。作らないにゃ。地味にゃ。」
「そんな.....。」
私に背中を向けて作る気が無いことを体で表すファニーシャさん。
ニカの言った通り、めんどく...変わった人だ。
どうしよう、他にあてもないしこの人以外には防御とお洒落が両立した防具は作れないかもしれない。
私が困っているとニカがファニーシャに耳打ちをした。
その話は私には聞こえなかった。
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「なんにゃ。」
「ファニーシャが前に欲しがってたアビススパイダーの糸を大量にあげましょう。それで彼女の服を作ってくれれば余りは全てあげます。.....ちなみにこの家に収まりきらない程度はありますよ。」
「まじかにゃ!?!?..ルクニカ、『デートの時、相手にバレないように会計を済ませてしまいましょう!』...実践してないかにゃ?」
「ギクゥ!....気が付いたのなら仕方がありません、Niaも多めに払います。...なのでお店から出るときに『お会計はもう頂いてるにゃ』といった感じにミウちゃんに伝えてください。成功した暁にはほかにも素材を分けましょう。....あなたのアイテムボックスを出してください。服の出来に応じて追加報酬も出します。」
「乗ったにゃ。おおおおおおほほほ!大量にゃああああああ!!!」
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...?なんかやけに盛り上がってるなぁ。
ニカとファニーシャさんの話し合いが終わり、ニカさんが笑顔でサムズアップしてきた。
「ごほん!...えー、ミウシアがデザインした服、作ってやるにゃ。特別にいろんな魔法を付与するからこんな機能があったらいいにゃ~ってのをバンバン教えるにゃ。」
「本当ですか!?ありがとうございます!ニカも何か交渉してくれてありがとう!」
ニカが何を言ったのかは気になるけど今はただ純粋に感謝しておこう。
でもニカはなんでちょっと後ろめたい表情をしてるの?
こんな機能があったら嬉しい、かぁ。
私がデザインした服は赤ベースで飛び兎と同じ枝垂れ桜を入れた袖の広い着物に黒系の足まである袴だ。帯はお任せ。あとできれば足袋と草鞋。
戦闘において邪魔でしかないであろう和服を、戦闘でも問題なく着こなすためには何が必要だろう。
走りにくい袴、攻撃しにくい袖、ずれ落ちる帯、隠密には適さない衣擦れ音、履いていて痛くならない素材の草鞋、蹴ってもいたくない足袋...。
それくらい?
考えた内容を伝えると、ファニーシャさんは紙にメモをして考え込んだ。
「...スカートの内側にマナに反応して弱く反発する素材を入れる。袖の部分はちょっと無理にゃ。帯は上着と帯とスカートを引きあうように磁力のある素材を入れる、音は無理にゃ。魔法かなんかで頑張るにゃ。この白いタイツは衝撃が加わると固くなる素材で作る。草で編んだ靴ぅ?見た目だけそんな感じにすればいいにゃ。....もうほかにないかにゃ?」
後は...あ。
着物を着るならさらしが必要だ、ずれない奴がいいな。
「あの...胸を押さえる布が欲しいので、肌に優しい帯をいただけませんか...ぐるぐるっと巻いても落ちてこない奴....。」
「わかったにゃ。じゃあそれで作る「ちょっとまった」にゃ?」
突然ニカが真剣な表情でファニーシャさんを止める。
「スカートの中が見えないようにスカートの裾には私が結界術を展開する。」
まさかのニカ自身も作成に参加してきた!?
スカートの中が見えないようになるのは嬉しいんだけど、そのためだけにっていうのは贅沢な気も...。
「そこまでしなくても、戦闘中に見えたりするのはしょうがないよ...。」
「いーや!よくない!...それともミウちゃんは他の人に見せたいの?」
「なわけないよ!!!....じゃあお願いします..。」
「じゃーそれに加えて全体に防御結界でいいにゃ。」
結局、ニカも全面的に服製作を手伝うことになった。
ニカはこの後ファニーシャさんの店に残るということで、私はお礼をした後、家に帰ることになった。
完成は3日後になるらしい。
....にしてもこれ、いくらになるんだろう。お金が足りなかったら借金とかになるのかな。
絶対足りないよね...なにせ高そうな特殊効果のある素材を惜しげもなく使って、さらに魔法付与、ニカさんの結界術....。
だめだ、絶対全財産じゃ足りない。
皆に相談しよう。
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◇SIDE:ヒュム
「ウゥー...」(やはり都にいかねば私の知識欲を満たすことはできないか..。)
小さな犬としてこの世界に降り立ち、知恵を使い罠を作って魔物を倒していた私だったが、気が付いたら魔法が使えるようになり、種族もインテリジェンスウルフという種族になっていた。
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プレイヤー名:ヒュム
種族:インテリジェンスウルフ
レベル:57/60
HP:1000/1000
MP:5500/5500
力:100
防御:200
魔力:7540
早さ:6500
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私はサスティニアに生きる人々の歴史や文化、知識がどのようなものか知りたかった。
しかしこの雪山に人の気配はない。こうなっては得られるものは少なく、この雪山の生態系や食べても平気な魔物、ダメな魔物といった単純な知識だけだった。
「ウゥ、ウォウフ....。」(狼は生肉をとてもおいしく感じるということもわかったな...。)
ミウシアの知識を借りて表現するとすれば、サバイバルゲームをしているような感じと言ったところか。
この生活に文明はない。一度神界に戻るか.....。
私は住処としている洞穴に戻り、頭の中で『ログアウト』と呟いた。
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「ふぅ。帰ってきたか。」
ここは私の書斎、本やインクの匂いがとても落ち着く。
皆はどうしているだろうか?サスティニアでの情報の交換をしたいのだが...。
いつも皆が集まっている湖の畔へと向かうと、そこには思い思いの方法でくつろいでいる皆がいた。
「.....皆、何かおかしくないか?」
「あ、ヒュー兄おかえり~。」ペロペロ
シーアはまるで猫に戻ったように毛繕いをしている。手に毛なんてはえてないだろうに。
「あら、ヒュムも戻ったのね。」フーフー
ウォルフは鉄をハンマーで叩いているが、なぜ鉄に息を吹きかけているんだ?
「おお、帰ったか!あのゲームってやつぁスカッとして気分が晴れるなァ!」
ジアは...いつも通りだな。剣の素振りをしている。
「ヒュムは犬?だったか。今度私の百蛇夜行を見てくれ!」チロチロ
デストラに至っては蛇のようにしきりに舌を出している。人の姿でそれをやるな。
「ぴょん、ぴょん。ヒュムさんおかえりなさい~。ぴょん。」
ルニアが一番酷い。ウサギ飛びで湖の周りを回っている。天然ではなくこれではただのアホだ。
あの発明品の影響がここまで出ているのは果たして危険ではないのか?
魔物としての残虐性が神としての肉体に戻っても無くならないとしたら....。
私はもう一度皆を眺める。
はたから見ると実に間抜けな光景である。
.....何か食べて落ち着くか...。
私は湖を後にして、地上の供え物が集まる神殿へを向かった。
「おぉ、珍しいな。これは..猪肉か。」
神殿の中心にある大きな祭壇には今日も供え物が転送されていた。
その供え物の中には大きな生肉が置いてあった。
「ふむ、どれどれ味見でも....。」
ふと我に返る。私は今生肉をそのまま味見しようとしていた?
確実に私にも影響が出ている。
これは軽視していいことなのか重視すべきなのか。
一度皆と相談する必要がありそうだな。
そう思いながら私は生の猪肉というご馳走に後ろ髪を引かれながらも神殿を去った。




