「69話 わたあめの就職 」
「昨日は皆飲みすぎてたけど....いつ起きてくるんだろう.....?」
今はお昼の12時くらい。拠点となった家のリビングの窓際で煙草を吸いながら皆を待った。
昨日はフレアのパーティ加入も決まり、盛大に飲み食いして盛り上がった。
私としてはレオのプロポーズをお断りしたりカミングアウトしたりと、少し緊張したイベントもあったけど基本的には楽しめた。
レオは状態異常回復の魔法で酔い醒ましができるのに、「今日は死ぬまでのむよ~~~☆」とか言って死ぬほど飲んでた。
その結果、酒豪のフレアとご飯重視の私以外の三人はかつてないほど酔いつぶれることに。
レオを私が背負い、カナちゃんとトルペタ君はフレアの両脇に抱えられてバーニア地区の家までやってきた。
帰りながら聞いた話だと、フレアはその男勝りな性格で周りからは男扱いしかされたことが無く、レオみたいにキラキラしたイケメンは初めて見たためものすごく緊張するらしい。
「フレアは意外に滅茶苦茶乙女だなぁ。」
レオは前、身長が高くて健康的な女性が好みとか言ってたし、フレアとくっついてくれたらいい感じにまとまるのになぁ。
カナちゃんとトルペタ君も時間の問題だし、後は異種族間で子を成せるようになればいいんだけど。
ゲームの世界ではどういう設定だったんだっけ...まぁ覚えてても参考にはならないか...所詮ゲームだし。
冒険者として有名になって、あの4人が異種族カップルの象徴とかになったらいいな。
「....そうなると...ぼっちに....。」
いやいや、私達は恋愛とかじゃなくて友情でも結ばれてるから。私ひとりじゃないから....。
私にはかわいいわたあめちゃんが....。
「あっ!...忘れてた。」
わたあめちゃん「酔ってけっとしー」に預けたまんまだった!
皆には書置きを残して迎えに行ってあげよう。それとこの鬼神の布を服にしてもらえる人を探しに行かなくちゃ。
和服とかあるのかなー、つくれる人いるのかな?機能性よりも見た目を重視したいのは女性キャラを操作してたからなのか、心が女性よりになってるからなのか....。
私は「わたあめちゃんを迎えに行ってきます。皆起きたらお鍋に入ってるスープ食べてね。」と書置きを残して、冷めてもおいしいビシソワーズぽいスープを鍋に作っておいた。
後から気が付いたんだけど日本語で書いても皆読めないよね、一緒にイラストも描いたし雰囲気で読み取ってもらいたいや...。
「こんにちは~。わたあめちゃんゴフッ!」
「酔ってけっとしー」にたどりついた私がお店の扉を開けると、お腹にわたあめちゃんが頭突きをかましてきた。
「ミウシア~~~~!!遅いよ~~~~!!ボクミウシアがどこにいるかわかんないから待つしかなかったんだよ~~!!1か月もどこ行ってたの~~~~!!」
お腹から頭の上に移動したわたあめは、私の頭をぽこぽこと叩きながら不満をぶつける。
「ごめんね、ちょっと修行が忙しくて....あ、わたあめちゃんを預かってもらっててありがとうございました!」
いつもお世話になってる受付のお姉さんに頭を下げると、お姉さんは大きな袋を持って私に詰め寄ってきた。
「ミウシアちゃん。この子のお陰で上がった売上の内の2割を上げる予定だったんだけど。これ、みて。」
差し出してきた袋を見ると、中には大量の金貨が入っていた。
ちゃんと数えてないけど多分50000Niaは入ってると思う。つまり、1か月の給料が手取り50万!?ひえええ。
「ひええ....。」
「ねぇ、わたあめちゃんうちの店で正式に働かない?もちろん給料は出すし、ご飯も部屋も提供する。部屋...?...宿泊客の添い寝をコース化して料金を上げて....!?」
「ミウシアがやれって言うならやるけど。」
「なんか怪しいサービスになるからやめようか....。」
正直、戦力になるわたあめには冒険について来てもらったほうがいいと思う。
わたあめの気持ち次第かな。
「わたあめはどうしたいの?使命とか私のこと考えないで教えて?」
「ボ、ボクは....。今まで森で過ごして、長として頑張ってたんだけど。こうやって皆にちやほやされて、おいしいご飯も食べられて、戦わなくていい今の状況好きだな...。お金とかはいらないからミウシアにあげる。だからここにいてもいい?」
元々戦うことは好きじゃなかったのかな。
わたあめがそういうならこのままここで働かせてみよう。
「わかった。じゃあこのまま働いていいよ。それと、お金は自分で使いなよ。趣味を見つけたり好きなもの食べたりして楽しみを増やしていけばもっと楽しくなるよ?」
「わかった。ミウシアありがとう!!たまにはこのお店に顔出してね!!!」
「ありがとうございます!!!!これで増築も夢じゃないです!!!!もうわたあめ亭とかに名前変えようかな。」
わたあめ無しじゃ成り立たないくらいに儲けてるのかもしれない。
もし私がわたあめを連れて帰ったらこのお店はどうなってたんだろう...。
「じゃあ、また来るね~!わたあめちゃん、頑張ってね!」
もう冒険中にふわもこに癒されることができないと思うと寂しい気持ちもあるけど、ダンジョンで戦っている時もあんまり乗り気じゃなかったし、わたあめがやりたいようにした方が一番いいよね。
私は近々名前が変わりそうな「酔ってけっとしー」を後にして、鍛冶屋のドワーフに裁縫ができる人を紹介してもうことにした。
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◇SIDE:ルクニカ:ホワイトミルク
今回の遠征は凄い疲れました...。
魔大陸に何やら不穏な動きがあるということで調査に向かったら、竜を筆頭に様々な種類の魔物たちが魔大陸に集結しているなんて。
私一人では耐えることはできても倒すことはできない、ああ、前世の私が恋しい。あの頃ならきっと一人で何とかできたのに...。
もしあの量の魔物たちが王都に攻め入ってきたら....。早く、早く冒険者や王国の騎士を鍛えなければいけない。
そんなことを考えながら、私は久々の休暇を優雅にクッキーを食べながら過ごしていました。
....鍛えると言えば、昨日ミウちゃんのパーティーとあのフレアが修練所で立ち合いをしていて驚きました。
驚いたことにフレアが修行方法をミウちゃんたちに伝えたらしく、たったの一カ月であのレベルまで強くなるなんて。
イケメン君は妨害魔法に長けていてその上回復魔法も得意、攻撃魔法も使える器用なタイプ。
小さい女の子は..魔法職の中ではすでにトップレベルを誇るかもしれないほどの実力を持っている、攻撃担当。
栗色の男の子は遠距離から正確な威力の高い魔法矢を撃てる牽制役。多分ほかの属性も使える器用なタイプ。
そしてミウちゃん、高速の攻撃と私が伝授した雷属性のスキル。それに闇属性まで使いこなす、超スピード型なのに隠密にも長けている。
そこに超火力高防御の前衛、フレアが加わったら死角のない素晴らしいパーティになるでしょう。
....昔のフレアは頼れるお姉さんでした。
でも私が前世の記憶を取り戻し、才能が開花して冒険者としての実力を上げれば上げるほど、私達の距離は遠くなっていって、今では他人行儀のような冷たい口調で何度も模擬戦闘することでしか関われない。
...意地になって私の真似をしてソロの冒険者をするよりも、ミウちゃんたちと組んだ方が彼女の実力を十二分に発揮できると思っていた矢先、あのあとすぐに仲間になれたらしい....。記憶が戻る前の私ならこう言ったでしょう、よかったねフレアお姉ちゃん。
そんなことを考えながらぼーっと町行く人々を眺めると、こげ茶色とピンク色のラインの入った髪のかわいらしいたれ目の女の子が町を歩いているのを目にする。
私のピンと立った耳と違って、愛らしいその垂れた耳をしたバーニア族の女の子は...間違いない、ミウちゃんでした。
私にとってミウちゃんは...運命の相手だと確信しています。
何が理由かはわかりません、前世のことなのか、それよりも昔のことなのか....。
もはや理屈ではなく、愛、愛なのです。
私は食べていたクッキーを急いで口に頬張り、紅茶で流し込む。食器を店員に渡して駆け足でミウちゃんを追った。
っと、女性が好みの女性を落とすときは男とも女ともとれる中性口調で、時に強引に、余裕のある姿で...と本にありましたね。
ミウちゃんに話しかける前に数度深呼吸をして息を整えた。
「やあ、ミウちゃん。一人でどこに行くんだい?」
「あわっ、わ、ニカ!ひひひ久しぶり!!」
急に話しかけられて慌てるミウちゃん、すっごくかわいい。
顔が赤いけど、もしかしてこの前の去り際にしちゃったキスのせい?あれは攻めすぎましたね。
私もあの後はしばらく悶えたものですね。
「ごほん。えと、鬼神の布で作りたい装備があって...ニカはこう、布が斜めに折り重なってて袖が広い、帯で固定する服とかプリーツ...折り目が付いたロングスカートとかってわかる?」
「んん..。」
真ん中で閉めるような服ではなく...袖が広い..帯..折り目のついたスカート...。
「ミウちゃんが言っている服かどうかはわからないけど、変わった服を作ろうとしてはやらなかった職人がヒューマン地区にいるよ。知り合いなんだけど変わり者というか...とりあえず行ってみようか。」
ミウちゃんとデートする流れに持ち込めたのは凄くラッキーでした。
服を作るなら私が使わないような素材を上げてしまってもいいかもしれないです。
「いいの?やった!じゃあヒューマン地区に...どっちだっけ?」
「ははは、ついて来てよ。」
こういうちょっと抜けてるところも可愛らしい、ああ、自然に話したい。作った喋り方にするんじゃなかった。
途中で買い食いをしながらこの幸せな時間を噛みしめていると、あっという間にヒューマン地区。
ここの防具屋にはあの変わり者の猫がいる。元気かな。ミウちゃんがびっくりしないといいけど....。
「この先の防具屋に知り合いがいるんだけど、驚かないでね?」
その防具屋に向かいながらミウちゃんに軽く忠告をした。
でもあの外観を見たら驚かないのは無理でしょうね.....。
「....よくわかんないけどわかった。怖いような楽しみなような...。って、建物からめっちゃ奇抜やん....。」
私達の前に現れたのは、赤と黄色の縞模様の屋根、ピンクと白と青と黒が斑になったようなよくわからない建物。
ぽけーっと口を開けて家を見上げるミウちゃん。
ふあぁ、かわいい!
...いけない、この調子じゃすぐにボロが出てしまいます。気を引き締めないと。
「凄く奇抜だよね、住んでる人も大体こんな感じだよ....じゃあとりあえず中に入ろうか。」
「こんな感じの人...ピエロとか出てくるのかな...。」
その奇抜な建物の奇抜な扉を押して中に入ると、中は数多くの防具..というか服が並んでいる。
やっぱり、今でも見た目重視の装備を作っているのね...。
「...これって防具なの?なんだか普通にお洒落な服に見えるんだけど....。」
「ふっふっふ.....聞いて驚くにゃ。例えばそこのフリルのついた白黒のフリフリドレス、こう見えて鉄の鎧よりも硬いにゃ。」
どこからともなく声がするけど、どこにもいないですね。
「....ファニーシャ。とりあえず姿を見せて。」
「にゃっ!ルクニカじゃにゃいか!」
突如として天井から一人の人間が落ちてきて、くるっと1回転した後地面に着地。
「うわぁ!!....びっくりしたぁ~。」
「うわぁ!!とはあんた失礼にゃ!人に会ったら驚きよりまず挨拶、自己紹介、好きな食べ物に好きにゃ服、魔法はにゃにを使えるかスキルは何が得意かにゃに属性にゃのか、ぎにゃ!!!」
いきなりミウちゃんを困らせたファニーシャの頭を軽く叩い...たつもりでしたけどちょっと手加減ができなかったみたいです。
その衝撃のまま地面にべちゃりと倒れこむファニーシャ
「あの~、大丈夫ですか....?」
「る、るくにかぁ~...自分がS級だってことぉ~わすれるにゃ~....。うぅぅぅ。」
頭をさすりながらゆっくりと立ち上がるファニーシャ、昔と同じ感覚で叩きましたのに。
「まぁいいにゃ!初めましてトマトにゃ!好きな食べ物は面白い服、好きな服は魔法全般、魔法は針にゃ。スキルは光と闇、属性はファニーシャにゃ!!」
ミウちゃんは...苦笑いしてます。どう反応したらいいかわからなそうですね。
「ファニーシャ、ひとつづつずれてる。一気にたくさん話しかけたらだれでも困るよ。」
「.....?ルクニカってそんな話し方だったかにゃ...前はもっともがもがもが」
っ!ぶない!もしミウちゃんに聞かれたらどうするの!?
ファニーシャの口を押えてそのままぐいぐいと店の奥に押して小声で話しかける。
「私の口調について、今日は一切触れないでください。これには訳があるので。...わかりましたか....?」
「んー!んー!んー!」
首をがくがくと上下に振り強く肯定するファニーシャ、よかった。わかってもらえましたね。
手を放してファニーシャを開放するとにやにやとした表情でこちらを見てきます。なんでしょう。
「るくにかぁ~?あの子のこと狙ってるにゃ~?...どーせ今月の『月刊サスティニア:ビューティ』に載ってた『女性が女性を落とすテク』を実践してるとかにゃ~~~???ぎにゃ!?」
はっ、思わず手が!!
「まずは...そういうとこから....直すにゃ.....ガクッ」
「ご、ごめんなさい~!!!」




