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「66話 修行の成果 」

私はあれからゴーゲンに飛び兎の柄の部分を交換してもらった。

教会で祝福した時、黒錬鉄に変異したことを伝えてなかったからゴーゲンにはビックリされたけど、怒られはしなかった。

なにせゴーゲンの鍛えた技術はそのまま、材質だけ置き換えられていたから。

-------------------

名称:飛び兎:光/闇(小太刀)

レベル:41(7UP)

品質:A+

祝福:済

武器性能:攻撃力+98(8UP)

構成素材:黒錬鋼、陰陽樹、漆、チェラリの染色剤

説明:鍛冶師ゴーゲンがミウシアに贈った小太刀。

補足:・取り込んだマナが一定量に達すると成長する。

   ・祝福により小太刀を通して光/闇属性のスキルを発動することができる。

   ・黒錬鋼でできた刃は決して形状が変わることは無い。

-------------------


コルペタさんのところによると、またもや大量のごはんを作ってくれたのでみんなで集まった時は、コルペタさんの手料理でパーティをしようと思った。

....また一緒にお風呂に入ることになったけどなんだか前以上に緊張しちゃった。男の部分が残ってることを喜んだらいいのかなんやら....。


なんやかんやで約束の日の前日、私達は修行の成果を仲間内で発表しあうことなり、ちょっぴりドキドキする。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

一通り皆の成果を見た後、私達は一つの結論に至った。


それは...「「「「一人で戦ってみたい。」」」」だった。


フレアさんに勝てなかったとしても全力で修行の成果を披露したい。

仲間同士で戦ったとしても全力を出すには相性が悪い。でも高い防御力を誇るフレアさんなら耐えてくれるだろう。

皆がそう思っていたのだ。


念のため、みんなが仮に負けたときのために4人での連携技を考えてから、コルペタさんの料理でパーティをした。


ちなみに、わたあめが「酔ってけっとしー」で客引きを行った結果、若い女性の層を見事獲得し、売り上げが2倍になったそうだ。

地味にすごい。私たちの家でお店開いて店番やらせてみてもいいかもしれない。

そういえばゲームでも課金要素としてお洒落装備を買うときのNPCで、わたあめみたいな白ふわもこわんちゃんNPCがいたなぁ。

可愛いキャラクターはどの世界でも受けがいいんだね。


次の日、万全の状態でジャイアント地区の修練所、コロッセオに来ると真ん中で斧を構えているフレアさんがいた。

そしていつも通り満員の観客席。どこで知ったんだか。


「来たか。どうだ?ちったあ強くなったかよ。」

相変わらず男勝りでかっこいいな。


「そのことなんだけど、まずは一人づつ戦ってもいいかな?修行の成果を見てもらいたいんだ。」

フレアさんは一瞬きょとんとした表情をした後、豪快に笑いだした。


「ふ、ふははっはははは!いいぜ!そしたら一人づつ稽古してやるよ、皆ダメなら4人まとめてかかってきてもいいぜ。」

その余裕そうな表情をいつまで保てるかな。

皆の方を向くと真剣な表情でうなずいてくれた。


「まずはオレからいくよ~。」

レオがへらへらと笑いながらダルそうに前に出て行った。

私も最初見たときは驚いたんだけど、あんな態度でも精霊が愛想をつかさなくなったらしい。

レオもレオなりに真剣に強くなろうとした結果...なのか?自分が楽したいだけの気もするんだけど。


「....レオ....くんはイメージが変わったけど、相変わらずかっこいいな....。」

フレアさんの声がしりすぼみになっていて聞こえなかったけど、相変わらず照れている。

確かにレオは顔に関してのみ言えば、この世界でもトップクラスには変わりないんだけどね。


「じゃあ行くよ~。」


「こっ!!こいっ!!!近接以外は先行を譲ってや..あげる!!」

レオが手を前に掲げるといつもの精霊とは違った色の精霊がどこからともなく降りてくる。


「<拘束茨>ソーンバインド!<泥沼>スワンプ!」

「!?」

フレアさんの足に茨が絡みつき、そのまま周囲地面が泥沼へと変わった。

茨を引きちぎろうとするも、地面が沼になっていてうまく動けなくなる。


「くそっ!」

フレアさんが手に持つ斧にマナを集め、火属性に変換した後体内へと吸収していく。

例のモードだ。カナちゃんは昨日、例のモードのことをスピリット・エレメントと言っていた。

話によるとマナを操作しているのは自身の精神、その精神をマナによって属性で染め上げるから....だってさ。


スピリット・エレメントを使用したフレアさんの体は高熱を放っているのか、泥が乾き硬い地面へと戻る。

レオは隙を与えることはなかった。


「マナ・ペネトレイション!<光の大剣>グランド・ホーリー・ソード!!」

フレアさんの頭上に大きな光の剣が現れる。その大きさはフレアさんの斧よりもはるかに巨大だ。


観客たちもこれほど大規模な魔法が見れるのは珍しいらしく歓声を上げていた。


「ははっ!」

フレアさんは不敵に笑うと地面に腰まで埋まった状態で、斧を大きく振り上げて地面をたたき割る。

そしてそのままレオに向かって飛びつき、斧を振りかざした。


「うわっ!」

レオのすぐ目の前の地面に斧を叩きつけると、会場全体がぐらりと揺れる。

レオが恐怖と地面の揺れによってしりもちをついたところで決着がついた。フレアさんの勝ちだ。


「一応、あたしの勝ちだけど、多分あたしじゃなかったら勝てたと思うよ。自信もって。」

レオに対してのしおらしさがすさまじい。観客からは「イケメンだからって緊張してんじゃねーよ!!」とか「イケメンの兄ちゃんやるじゃねーか!!」とか野次が飛んでくる。


フレアは修練所の真ん中のひび割れた地面を避けて私達に向きなおった。


「次は誰だ?」

「私が行くです。でもその前に...<水作成、土圧縮、乾燥>クリエイトウォーター、アースプレス、ドライ。これで綺麗になったですね。」

カナちゃんの声が三重に聞こえたと思うとひび割れた地面に水が混ざり柔らくなる。盛り上がった地面は圧縮され地面が平らになり、即座に乾燥して地面は元通りとなった。


「....今の詠唱は知らねぇな、楽しませてくれそうじゃねえか!」

「楽しむ暇すら....」

カナちゃんが杖を前に構えると、杖に水属性のマナが集まる。

まさかカナちゃんまで?昨日見せてくれなかったじゃん!!!


次の瞬間、カナちゃんの髪の毛は藍色から水色へと変わり、髪からは水面揺らめきさえ感じた。


「与えないです!」

ビシッと杖を正面に向けると巨大な魔法陣がフレアさんの足元に浮かび、上空に巨大な水の塊が浮かぶ。


「いいぜ、正面から受けてやるよ!」

スピリット・エレメント状態のまま、フレアさんは斧にも炎属性の魔力を流し込み灼熱の斧へと変えた。


「水よ、全てを覆いて海となれ。氷よ、全てを凍らせ死を招け。<氷結牢獄>アイス・プリズン!!」

今回ばかりはカナちゃんの中二詠唱が本気でかっこよく見えた。

詠唱を唱えるたびにフレアさんを中心にどんどんと新たな魔法陣が展開されていく。

もしかしたら詠唱の一つ一つが始動キー、別々の魔法なのかもしれない。


そして詠唱を終えたカナちゃんは、杖を振るう。

その瞬間、上空に浮かぶすさまじい大きさの水の塊がそのままフレアさんへと降り注ぎ、着弾した瞬間、フレアさんを中心とするおよそ10メートルが一瞬で氷の塊と化した。


観客、私達含めて皆目の前の状況に唖然としていた。

そもそも昨日見せてくれた魔法はこんなのじゃなかった。さては驚かせるつもりだったな....。

というかフレアさんは....これ生きてるの?巨大な氷の塊の中心にいるっぽいけど...。


ゆっくりと氷の塊は上空へと浮かんでいく。カナちゃんは杖を縦にしてこつんと地面をたたくと最後の魔法を告げた。


「<破壊>ブレイク!」


その言葉と同時に宙に浮かんでいた氷が粉々に砕け、フレアさんが地面へと叩きつけられる。

....そのまま動かなくなったフレアさんを見てこの場にいる全ての人が焦りの色を浮かべた。


「え...?カナちゃん殺した?」

バッとこっちを見て慌てふためくカナちゃん。


「いやいやいやいやいや!フレアさんの強さからしてこれでは重傷は与えても、殺人を犯すことはないはずです!!!....たぶん...。」

カナちゃんが動かなくなったフレアに近付こうとした次の瞬間、上空から何かがふってきてカナちゃんの動きを止めた。


「あれ食らってたらさすがのあたしでも死んでたぞ!!!....まぁこうして生きてるってことであたしの勝ちだな!」

その正体は無傷のフレアさんだった。

カナちゃんに斧を突きつけて勝利を宣言したフレアさんはカナちゃんに向けてニカっと笑う。


「あれ?そうするとあれは...?」

トルペタ君が指を刺したのは動かなくなったフレアさん。


「ああ、あれは。魔法人形さ、あたしの身代わりみたいなもんだ。とっさに魔法人形を置いて高く飛び上がっといてよかった。」

あぁ、本当によかった。と胸を撫でおろすフレアさんの額にはうっすらと冷や汗がにじんでいた。


「あーーーーーもう!悔しいです!!!」

スピリット・エレメントを解除したカナちゃんは地団駄を踏んで子供みたいに悔しがった。

でもあれはほぼ勝ちと言っても過言じゃないんじゃないかなぁ。

なんだかズルいような....まあ腕試しだし何でもアリなのかな。


「あんな魔法見たことねぇよ!!!」「なにもんだ!?あの嬢ちゃんは!!」「俺を弟子にしてくれーーーー!!!!」

観客の盛り上がりがどんどんと上がってきた。観客席を見るとこの盛り上がりに便乗して、お酒や食べ物を売る人まで見える。

たしかに、お酒飲みながらこの戦いを観戦出来たら楽しいだろうなぁとは私も思う。


「はーーーー、じゃあ次は?トルペタ?ミウシアか?」

トルペタ君、私の順番で斧を向けてくる。


「俺です。ふぅ....お願いします。」


「じゃあかかってきな。さっきも言ったが、遠距離タイプの奴は先に攻撃していいぞ。....アルカナみたいなのの場合は例外だがな。」

そう言ってる間もスピリット・エレメント状態のままのフレアさん。

スピリット・エレメントの使い方を修行で学んだ私にはわかる、あれはマナの放出量を最小限に抑えてる、いわば省エネモードだ。

戦闘時には放出量を上げているんだろう。あー、なんだか緊張してきた。


「じゃあ、行きます!!最初の攻撃は、避けないでいてくれるんですよね?」

トルペタ君は矢を5本同時に構えた。

同時に撃てるように弓を改造したらしく、新しいトルペタ君の戦闘スタイルと完全に合致した。


「ああ、受け止めてやるよ。」

5本の矢は全て打撃用の矢になっている。

これもカナちゃん同様聞いてない。どんな技なんだろう。


トルペタ君が矢を射った、全てフレアさんの上空へと。


「これじゃあ斧で弾くだけだぞ?」

一番最初の矢がフレアさんに当たるとき、トルペタ君が魔法を唱えた。


「<重圧連結>ヘビィ・リンク!!<磁力付与>マグネティック・エンハンス!」

フレアさんが斧を上に向けて1本目の矢をうけると、続けざまに2本目の矢が凄い勢いで1本目の矢に重なるように落ちてくる。

1本目の矢の矢じり部分以外を破壊して、平たくなっている矢じりの部分だけが重なって斧に張り付く。

そして3,4,5本目も同様にガン!ガン!と音を立てながら次々と斧に張り付く。

その重量は相当のものらしく、フレアさんはついに斧を地面に落とした。


「ディザスター・アロー!!<二重>タブル!」

隙を与えず放った矢を、魔法で二倍にする。後方に出た複製されたディザスターアロー、二つの風が合わさり周囲にある者すべてを切り刻みながらフレアさんの元へと向かっていく。


「観客は大丈夫なのかなぁ。これ観客が心配で集中できないよ...。」「ですね...。」「だね~~。」

カナちゃんと苦笑いをしながら試合の行く末を見守っていると、フレアさんは地面に置いたまま斧を高熱にして張り付いた矢じりを溶かしていく。

ギリギリディザスターアローを斧で受け止めるが、二発目を防いだところでそのまま吹き飛んでしまい、後ろの壁に叩きつけられた。

「くそっ、こうなった~らぁ~。」ばたん


トルペタ君がMP切れを起こし顔から地面に倒れこむ。


「ははは!残りマナを把握しておくのも忘れちゃダメだぞ!ほら、残るはミウシアだけだ!」

壁に叩きつけられてもピンピンとしているフレアさんは本当にそこが知れないなぁ。


「トル君は私がマナを分け与えておくですから、ミウは気にせず頑張るですよ!」

カナちゃんはトルペタ君とイチャイチャしたいだけだと思う。


「ボウヤよくやった!!」「ボウヤはおねむか~?」「マナ切れとは...まだ若いな。」

観客的にはボウヤなんだろうけど、トルペタ君は一応成人してるからね!!


「ミウシアちゃんファイト~!こっそりマナ・ペネ、マナ・アクしちゃう??」

「ズルしてもしょうがないからやめとく。今の自分でどれだけ通用するか知りたいから。」

だよね~。といっておとなしく観戦モードになるレオ。


あれだけ修業したんだ、多分いい線いけるはず!

今は全力を出すことに集中しよう!

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