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「64話 フレアとの手合わせ 」

王都に戻ってきてからフレアと戦うために休息をとり、今日で丁度約束の日になった。

レオがやっと普段通りの口調、服装に戻って自由だ~って叫んでたけど、腕試しが1対1とは言っていなかったため、一応戦闘モードにしてもらった。

わたあめは魔物らしからぬ見た目から、愛玩用のペットとして認められたため、「酔ってけっとしー」で客引きの仕事を任された。

ちやほやされるのは嫌いじゃないのか、思ったよりも乗り気だったしよかった。


冒険者ギルドに討伐報告をすると、その実力と早期で依頼をこなしていることからBランクまで冒険者ランクを上げてもらった。


準備をした私たちは約束の場所、ジャイアント地区へと向かった。


ジャイアント地区の修練所はコロッセオのような見た目をしていて、だれが呼んだのか観客であふれかえっていた。

修練所はよく決闘や手合わせに使われ、それを娯楽として見に来ることは珍しいことじゃないみたいだ。


「でもこの人数は多くない....?」

だって修練所の観客席満員だよ?


「ん~、フレア・イグニスはBランクなのにSランクに匹敵してもおかしくない実力を持ってるからね、それにSランク冒険者、ルクニカ・ホワイトとしか手合わせをしてこなかったのにオレ達と手合わせをすることになったら、まぁ気になるよね~。」

ニカさんと!!そりゃ強い訳だ....。


「よく来たな!!伝え忘れてたが、そっちは4人でいいぜ!聞いたところによると、まだCランク冒険者なんだろ?あたしは1人で1パーティ分の実力があるんだ、手加減はいらねーぞ、殺す気で来い。」


「....こういわれると一泡吹かせたくなるですね。」

「確かに...アルカナ、ミウシアさん、レオさん、全力でやっちゃいましょう。」

「おっけー。」

「頑張ろうね。」


「一応さっきBランクに上がりましたから!後から1対1とか言われても知りませんからね!!!」

念のため冒険者ランクの訂正をして、私達は構えた。


「マナ・ペネトレーション!マナ・アクティビティ!」


まずはいつも通りレオの強化魔法から始まる。


「<水の壁>ウォーターウォール!<氷結>フロスト!」

そしてトルペタ君が矢を準備している隙にカナちゃんがフレアさんの逃げ道を無くす。


「へぇ、魔法の精度がバカたけぇな。」


その隙に私が氷の壁越しにフレアさんの後ろ側に回りこむため走り出す。

トルペタ君の準備が終わり、矢を引き絞り射出する。

「ディザスター、アロー!!」

流石にこれで無傷ってことはない.....!?


「っ!?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

SIDE:警備員

「最初はびっくりしたね、駆け出しのBランク冒険者がフレア・イグニスと腕試しってんだから。あ、三秒で終わるなって思ったよ。」


それではその後すぐに決着がついたんですか?

「ん~....それが以外にも冒険者はい~い感じの攻撃で先手を取ったんですわ。こう、氷の壁で逃げ場を塞ぎ、死角からの前衛攻撃、遠隔からの弓攻撃。」


ではあのフレア・イグニスも危なかったと?

「~~~~~~~~~っ!あんたはフレア・イグニスをわかってねぇ。あいつはソロでBランクパーティと渡り合える実力を持ち、個人ではSランクといい勝負をするんだ。」


ではどうやって。

「そりゃぁ....氷を解かすには...炎だろォ....?」


炎?

「炎、それも、とびっきり強力なやつでさぁ。氷だけでなく正面から飛んでくる矢を溶かしちまうくらい強力(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)なんだわ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


途端にフレアさんの周囲の温度が急上昇し、氷の壁が溶け出した。

そして現れたフレアさんの持つ斧は白に近い赤色に輝き、その周囲が歪んでいた。


そしてトルペタ君が放った矢は斧に当たった瞬間溶けてフレアさんの後方へと飛び跳ねて行った。


「やるじゃねぇか。だが、氷たあ相性が悪かったな。あたしは生半可なもんは全部溶かしちまうんだ。ボウヤの矢も金属だろ?おしかったな。」

そんなの反則だーーーー!!!

攻撃にも防御にも何にだって使えるじゃないか!!


トルペタ君は絶望した顔をしている、レオ、カナちゃんもいともたやすく策を突破され悔しそうな表情をしていた。

これは出し惜しみなんてできない!


「カナちゃん!時間稼ぎお願い!!」


「させるかよ!!!」

私が何かすることを察知し、こちらに向かって走り出したフレアさん。


「<多重水球>マルチプル・ウォーターボール!!」

カナちゃんが即座に20個以上の水の球を展開し、フレアさんへと浴びせた。

あれは船で遭難した時に暇つぶしで習得した魔法かな?


「くそッ!!」

フレアさんは斧で受けずに避ける。

あの斧を維持するのに相当のマナを必要とするから冷めないようにしているのかもしれない。


カナちゃんが時間を稼いでる隙に私はドラゴンゾンビ戦を思い出す。

剣にマナを送り、もう一度吸収するイメージ、剣は手の延長、マナだって移動できる。


次第に体全体に心地よい光属性のマナがいきわたる感覚に陥った。


「なっ!!!おいおいおいまじかよ!!!お前も(・・・)できるのか!」


そして私は体から淡い光を放ちながら一気にフレアさんの死角へ移動し、切りかかった。

この速さならフレアさんも反応ができないでしょう、それにカナちゃんの水球も相まって考える時間すらないと思う。


フレアさんの肌に切りかかるとわずかに位置をずらして鎧で受けられる。

まさかこの速さにもついて来てる!?....いや、視線がこちらを向いていない、直感で肌の露出してる部分をガードしてるんだ。


「<聖なる剣>ホーリー・ソード!!」「ディザスター・アロー!!」「<氷結>フリーズ!...<多重氷塊>マルチプル・アイスボール!」

その瞬間、三人が一斉攻撃を仕掛けた。この状態の私なら容易に避けることができるだろうと信頼して大技を叩き込んだに違いない。

最後に一発攻撃して距離を取ろうと、高速の速さで足払いを........。


ガイーン

「いったあ!!!!!!」

まるで金属を生身の足で蹴ったような反動を受けて大きく後退した。

次の瞬間、光の剣と氷塊、かまいたちを起こす矢を受けたフレアさんは.....仁王立ちでその場から動いていなかった。


「あれで無傷!?ありえないです!」

「....何かフレアさんの見た目が.....。」

「.....まじかー....。」

フレアさんの赤かった髪は赤とオレンジのグラデーションに代わり、ところどころ逆毛立つその姿は、まるで揺らめく炎のようだった。


「いやー、今のは危なかった。ウサギっ子...いや、ミウシア。悪いな、あたしもそれできるんだわ(・・・・・・・・・・・・)」

「....くっ!!」


諦めず再度高速でフレアさんに近づき飛び兎を脇腹に全力で刺し...だめだ!通らない!!

何度も何度も攻撃しようがフレアさんはその場から動かずガードすらしてこない。


「残念、いいところまで行ってるけど決め手に欠けんだよなぁ。例えばほら」

突然、ガシッと腕を掴まれて腕を引っ張り上げたまま体が宙に浮く。

抗おうともすさまじい力でピクリともしない。


「いくら早くても場所さえ予測しちまえば後は待ってるだけだ。ミウシア自身がその速さになれなきゃ意味がねぇ。」

ブンッとそのまま投げられた私はコロッセオの壁へと叩きつけられ、痛みに悶え、実に纏っていたマナが宙へと霧散する。

「か..げほっ....あぁ...げほ....」


「さて、まだやるか?」


「......いえ、降参です。」

瞬間、観客席から大歓声が上がった。



「いいぞー!!相変わらず派手だなフレアー!!!」「新人も頑張ったじゃねぇか!!!フレアじゃなかったらかってたぞー!!」

「悶えてるミウシアちゃんかわゆ」「フレアー!!あんまりいじめんじゃねーぞー!」「あのケットシー見たことあるな....。」


フレアが火属性のマナを解いて私のところまで歩いてくると、手を差し伸べてきた。


「ほら、手加減ができなくて悪かったな。あんたら素質あるよ。」

なんだか無性に悔しくなって手を払って自分で起き上がる。

完敗だった、悔しい。今まで割と何とかなってきたぶん、負けたことが凄い悔しい。


「んだよ、まだ元気じゃねぇか。おーい!ちょっと遠距離組もこっちこーい!観客は解散!!これ以降は秘密の話だ!部外者たちゃ散れー!!」

トルペタ君、カナちゃん、レオがとぼとぼと歩いてやってくる。でも今は近くに来ないで欲しかった。

恥ずかしい、自分の態度があんまりよくないのはわかってるけど感情が抑えきれない。


「参ったです。完全に負けたです。...悔しいですがあの装備品は諦めるです。」

「あ?なに言ってんだ一回負けたくらいで。何回でもかかってこい。あたしは日中いつもここにいるからよ。.....っと、あのな、お前たちの惜しい箇所を伝えるからそこを重点的に修行しろ。そうすればお前らは1対1でもあたしに匹敵するくらい強くなるはずだ。」.....悔しいけどフレアさんの言う通りだ。ここはおとなしく話を聞いて修行して、今度こそ倒して見せよう。

キッとフレアの方を見つめて話を聞く。


「......おー?もう泣き止んだのか?目が赤いぞ~うさちゃん?」

「うるさいっ!!早く教えて!!」

くそ~~~~~~!煽り方が憎たらしいオッサンみたいだなぁ!!!

それに3人とも私の方を見ないようにしてくれてるのはありがたいけど!なんか笑ってない?!


「まずミウシア。お前はさっきも言った通り、自分の速さに慣れろ。そんで攻撃の重みを増せ。ん~っとちょっと待ってろ。どこだー?コレか?」

フレアさんはごそごそとカバンに手を突っ込んで木材のようなものを取り出した。


「これは陰陽樹っつー木の木材だ。こいつで剣の柄を作れ。刀身は黒錬鉄だろ?そいつには一緒に使う素材の属性をそのまま反映させるっつー特性がある。んでこの木材は光と闇を兼ね備えてる。多分だがお前は光よりも闇のほうが相性がいい。」

.....洞察眼はものすごかった。認めるしかない、この人は凄い。


「こんな高価そうな素材貰っていいの...?」

「あー、気にすんな。あたしが持ってても使わねーからよ。むしろあたしの修行に付き合ってくれる丁度いい相手ができるならそっちの方がいいんだ。」

なんかさばさばしてて気持ちのいい人だな。さっきまで拗ねてた自分が恥ずかしい。


「次!そこの~...あー....ぺちゃっ子。」

「アルカナです!!!!誰がぺちゃです!!ミウだって変わんないですよ!!!!!」

うぉいこっちを見るな!!!トルペタ君もレオも!!セクハラだぞ!!!


「ははは、悪い。アルカナ、お前は魔法を飛ばすスピードを意識してるか?あたしが戦ったことのある冒険者で、威力はてんで低いが速度が一級品だった奴がいる。早い魔物相手じゃ今のままじゃ通用しねぇ。もちろん人が相手でもだ。」

「た、確かに。威力は重視していましたが、魔法を飛ばすときの速さに関してはあまり意識してないです。」

おお、魔法についても博識なのかな?頭は残念と思ったけど戦闘に関してはものすごく切れるな。

フレアさんがあたまをポリポリと掻きながら続ける。


「あー...あたしも魔法に関しては詳しくねーが、相手に使われたらいやな魔法はわかる。速度のある魔法、こっちを妨害したり能力値を下げてくる魔法、それに....どうしようもねぇ程逃げ場のない大規模魔法とかな。」

「なるほど...わかったです。」

カナちゃん自身も何か思うところがあったようで、考え込みながら返事をしていた。


「次に...トル...トルケラ?」

「あー...トルペタです。」

申し訳なさそうに手を小さく上げるトルペタ君。


「ああ、すまんすまん、トルペタ。お前は風のスキルにこだわっているのか?」

「あ、いえ。そんなことはないんですが、風が相性いいと聞いて...。」

ははは、と頭を掻きながら答える...凄い腰が低いなぁ。


「弓を使う職業はな、弓を祝福してるともったいないんだ。矢に属性を付与できればいいからな、そこで.....ほれ!」

フレアさんがトルペタ君に投げたのは宝箱に入っていた指輪と同じデザインの指輪だった。


「あー!!それは私が欲しい指輪です!!勝った時の報酬じゃないんですかーー!!!!」

「落ち着け、そりゃあたしの私物だ。あたしには入らねぇからトルペタが使え。そんでそれを祝福にしろ。矢に属性を付与させるのは難しいができれば前属性の矢を操れて戦略の幅が一気に広がる。あと体力をつけろ。」

「でも、こんな高価なもの..いいんですか?」

あの指輪がこの前の指輪と同じ性能だとすると、相当高い代物だと思う。フレアさんはなんでこんな大盤振る舞いをしてくれるんだろう。


「いいか、何度も言うがあたしは見込みのない奴や強くならない奴には興味がない、が、あんたらは確実に強くなる。だから投資視点だ。強くなったら酒と飯をおごってくれりゃそれでいいよ。がはは!!」

この人ほんまもんのええ人やで......。


「で、さ、さささいごにレオくん」

「ん?」「ん?」「え?」「オレ?」

いきなりしおらしく、優しい感じになってるフレアさんに思わず首をひねるカナちゃんと私とトルペタ君。

当のレオも自分が君付けで呼ばれたことにビックリしていた。

しかもフレアさん顔赤くなってる。ギャップかわいい。


「あぁ、え、えーと。キミは相手の能力を下げる魔法、味方の魔法やスキル事態を強化する魔法を使うといいよ...。じゃ!!!じゃあ!!!あんたら!!1か月やるから!1か月後にまたここに来な!!!修行の成果を見てやるから!!!じゃあな!!!」

ヒューーーーンと音がするほど速足でどこかへと去っていったフレアさん。


レオが何だったんだ?と呟く後ろで、私達は確信した。

「惚れたね。」「ですね。」「あーやって恋に落ちるのか....。」

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