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「63話 赤髪のジャイアント族 」

ドラゴンゾンビの体から出てきたのは、人が入れるくらいの大きな宝箱。


というか現に人が入ってた。しかも生きてる。どういうこと?


「ん~?どこかで見たことあるです。起こすですか?」

寝ている女性を観察してみる。

上半身は肩が露出している鎧...ハーフプレートっていうのかな?腕と足は頑丈そうな金属で覆われている。多分いい装備だと思う。

大きな黒い両刃の斧を抱き枕にしているその姿はなんというか、ポーズは乙女なのに持ってるものと装備はゴリゴリの冒険者で可愛さを打ち消し合っている。

本人の見た目は美人系だと思う。髪の毛は毛量がおおい赤毛のウルフヘアー、まつげは長いし顔も整ってる。体格はスラっとモデルのようで、程よく引き締まった筋肉をしている。

これはレオが私から乗り換えてくれるいいチャンスなのでは??

この際きっぱり振って次の恋を探してもらおうかな。仮に、仮に私がレオと両思いだったとしても私はこの世界に滞在することはできない。

それに乙女な私の心がレオのアプローチに反応しちゃってて、はたから見たら思わせぶりな女に見えるかもしれないし。


「ミウ?どうするです?」

と、脳内で別のことを考えたまま何も反応が無かった私に、カナちゃんから声がかかる。


「ああ、ごめん。このままにもしておけないし起こそうか。」

この人は宝箱の中で休んでいたら、宝箱ごとドラゴンゾンビ食べられたのか、ドラゴンゾンビに食べられてからお腹の中で宝箱に逃げ込んだのか....。

まぁ後者なんだろーなぁ。


「じゃあ起こすですよ。眠りの国からその精神を呼び起こし給え。<眠気除去>アウェイク!」

カナちゃんが中二病を拗らせた詠唱(無意味)で女性の目を覚まさせる。

そういえばカナちゃんは私の魔法陣に描かれた神式語を読み解いて、媚びるような文章のほうが効率がいいことを知ってからはずっと媚びた文章で魔法陣を描いているらしい。

後々聞いた話だけどこの時の魔法陣は <<ねぇ~>><<起きてよ>><<起きてくれなきゃ>><<寂しいな>> だったらしい。本人は恥ずかしいらしく、この時の神式語はカナちゃんを酔わせてようやく聞けたんだよね。



カナちゃんの魔法で目が覚めた女性はくあーーーっとあくびをした後辺りをきょろきょろと見回している。


「ふあ~~~。よく寝た。....ん?あれ?誰だ、お前ら?いろんな種族がそろってんなぁ。」

なんかヤンキーみたいな話し方だー!


「オレ達は冒険者だよ。ドラゴンゾンビを倒して出てきた宝箱を開けたら君が出てきたんだ。」

レオが簡潔に説明すると、女性は驚いたような表情をして立ち上がった。


「あいつを倒したのか!!不意を突かれたとはいえあたしが負けたやつを倒しちまうなんて!!誰だ?誰が止めを刺した?あたしと手合わせしてくれ!!!」

その発言に私、トルペタ君、レオが苦笑いを浮かべていると突然カナちゃんが声を上げた。


「あああ!!!思い出したです!!Sランクに最も近いBランク冒険者赤髪の狂戦士(バーサーカー)フレア・イグニスです!!!」

Sランクに一番近いってほぼほぼこの世界で2番目に強いってことじゃない?でもなんでBランクなんだろう?

それって相当強いんじゃないの?


「あたしのこと知ってるやつがいたか、そういやまだ名乗ってなかったな。あたしはフレア・イグニス、ソロで冒険者をやってる。」

「ソ、ソロでB級まで....。」

トルペタ君がキラキラとした目で見つめている。英雄願望があるトルペタ君からしたらソロでここまで上り詰めたフレアさんは尊敬に値するよね。


「んで、倒したのは誰だ?ん~。あたしに勝ったらこの宝箱に入ってた装備をあげてもいいぞ。...ってなんかこれじゃああたしがミミックみたいななっちまうな。」

がははと笑うフレアさん。なんだろう、ジャイアント族って皆ジアみたいな性格なのかな?

陽気で絡みやすいけど今まで出会ったジャイアント族は、ジアタイプかオカマタイプしかいないんだけど....。


「オレらはみんなで協力して倒したんだけどね、攻撃はそこのミウシアちゃんとトルっちかな。」

レオが説明すると私の方をじーっと見つめて手をポンと叩いた。


「ミウシア!お前がミウシアか!あんまり強そうじゃないけどお前速さ重視の剣士か?はー、やっぱり神さんっているんだなぁ。」

その発言で私達は顔を見合わせた。

神?神って言った?やっぱりこの人はジアから指名のあった人物だったんだ。


「もしかして、フレアさんも自分の種族の神にあったです?ジアさまに。」

「???なんで知ってんだ?あたし言ったか?言ったような気もしないこともないな。言ったんだっけか。」

フレアさんは頭は弱めっと。


「俺達もそれぞれの神からミウシアさんについていけって言われてるんです。まぁ一緒に行動しているのはそれだけが理由ではありませんが。」

トルペタ君が使命感だけで一緒に行動しているわけでは無いことを説明してくれて、少しうれしい。

心のどこかで皆私にいやいや着いてきてくれてるのかなって思ってたから、ホッとした。


「なるほどな.....でもあたしは強くなるためにここまで来た。神さんのお告げだろーがなんだろーが自分が強くなれない環境に身を落とすつもりはねーな。ほら、手合わせでそれを示してくれ。」

強くなるためにクレバーすぎるよ!....にしてもちょっと相談が必要かも。


「作戦たーいむ!!」

「お、おう...。」

一旦三人を集めてこの後どうするかを確認する。

フレアさんから少し離れてレオとカナちゃんとトルペタ君を呼んだ。


「で、どうしようか?」

皆に尋ねるとそろって頭を捻らせた。


「ん~。フレアさんは有名な冒険者で評判も悪くないです。それに仲間になってくれるなら盾役として、今後の戦いはとても楽になると思うです。」

「それに宝箱に入ってた装備を見た?皆が欲しそうな杖や指輪なんかが入ってたよ。」

「ん~、戦うのはいいとしてミウシアさんに鑑定をしてもらってから考えませんか?」

「オッケー、あと一回王都に戻って万全の状態で戦った方がいいんじゃないかな?」

話を終えた後フレアの元へ行き、装備品の鑑定をしていいか尋ねると了承してくれた。


「にしても鑑定までできんのか、便利だなぁ~」

杖、指輪、それと赤い布を差し出し私達に見えるようにしてくれた。


杖は謎の真っ白な金属でできていて、持ち手には布のようなものが巻かれている。

杖の上部には大きな石がはめ込まれていて黄色に光り輝いていた。

指輪は謎の字が所狭しと彫られたデザインで、小さな透明の宝石がはめ込まれている。

布は綺麗な濃い赤色と黒色の二種類で、布の繊維はとてもきめ細やかだった。


どれも質が高そうで鑑定するのが楽しみだなぁ。


「器用貧乏ですけどね、<鑑定>アナライズ!」


-------------------

名称:セイクリッド・セプター

品質:A

祝福:可

武器性能:魔力+10

構成素材:白錬鋼、聖なる白布、シャイントパーズ

説明:魔法細工士ミストラルが光属性の極みを目指し、作成した杖。

補足:・祝福されている場合、取り込んだマナが一定量に達すると成長する。

   ・魔力が1%(可変)上昇する。

   ・白錬鋼でできた部位は決して形状が変わることは無い。

-------------------


-------------------

名称:リング・オブ・エレメント

品質:A+

祝福:可

武器性能:魔力+10

構成素材:高純度魔鋼石、マナダイヤモンド、

説明:魔法細工士ミストラルが全ての属性を操るために作り出した指輪。

補足:・祝福されている場合、取り込んだマナが一定量に達すると成長し、指輪の属性がひとつづつ増えていく。

   ・白錬鋼でできた部位は決して形状が変わることは無い。

-------------------


-------------------

名称:鬼神の布

品質:A+

説明:鬼神と呼ばれる魔物が自身のマナで編んだ布、この布で作成した衣類を着ると腕力が上昇すると言われている。

補足:・素材として使用した場合、腕力が20%上昇する。

-------------------


ご都合主義キターーーーーーーーー!!

どの装備も私、レオ、カナちゃんの欲しがるものに一致しすぎて怖い。

運ステータスの賜物なのかな?レオは低いけどその分皆が高くて打ち消しても尚余る程度の運なのかな!?


性能についてみんなに伝えると、レオとカナちゃんが死ぬほど食いついてきた。


「絶対、絶対欲しいって!!コレやるっきゃないっしょ!いやいやいや断る選択肢とかねーから!!!ほら!!!!」

「全属性とか夢のまた夢ですよ!?こんなことってあるです?しかもミストラルと言えば魔法学校ミストラルの創設者じゃないですか!!!!はーこんなことあるですか!!!!」


....私も布で着物みたいな装備作りたいと思ってたから、口から手が出るほど欲しいとは思ってたけど二人の迫力には負けるなぁ。


「??思ったよりも良いもんだったみてーじゃねーか。で?どうする?手合わせしてくれるんかー?」

「そのことですけど、一度休憩してからにしませんか?お互い戦闘後で披露もありますので、全力では戦えないと思います。」

唯一冷静だったトルペタ君が使い物にならないテンションの二人の代わりに説明をしてくれた。

ちなみにレオとカナちゃんはまだ興奮気味で、手に入れたらなんて名前を付けようか話していた。

案外あの二人って感性近いよね....。



「ん~、それはいいけどよ、ここから出るのも一苦労じゃねぇか?それにここまで深く潜ってきたのになんだかもったいないねぇ。」不服そうな顔をするフレア、転移石の存在を知らなかったら普通はそう思うかぁ。


「えっと、私達転移石を持っているんです。だからすぐに王都に戻れるし、ここを登録しておけば1週間後にはこの場所に戻ってこれますよ。」

「転移石!はー、マナ制御が苦手なあたしにゃ関係ないことだと思ってたけど、そんな便利なもんだったわけか。売らなきゃよかったかなあ。」


売らなきゃ....って、自力で転移石を手に入れたことがあるってこと?やっぱりこの人とんでもないなぁ。

勝てる気がしないんだけど、てかそもそも1対1で戦うのかな?絶対勝ち目ないよね。


「とっ、とりあえず転移石で王都に戻るです!この場所の登録はすでに住んでいるですからすぐにでも飛べるです。」

「おー!じゃあ王都に戻って2日後にジャイアント地区修練場、昼に集合でいいか?あたしもちょっと休んでおくからさ。」

こうして王都に戻って休むことが決まった私達は5人集まって転移石を.....。


「ちょっとーーーーーーーーー!!!ボクのこと忘れてない!?!?」

ぴゅーーーーんと扉の向こうから跳んできたわたあめ、ごめん本当に忘れてた....。


「!?魔物か!?」

斧を構えたフレアを止めて誤解を解いた後、わたあめの機嫌を取り戻してから転移石を使って私達は王都へと戻った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◇SIDE:ルニア

ぴょん、ぴょん。

私は今ウォルフちゃんの作った...えーっと名前を忘れてしまいましたが、発明品を使ってウサギさんとしてサスティニアに居ます。

目的としてはミウシア様をお助けするために魔物の数を減らすことです。


でも今だか弱いウサギさんな私はこうして草を()みながら、弱い魔物を倒すことしかできません。

ウォルフちゃんは「魔物を倒して強くなって進化するのよ!」と言っていたけど、生前も戦いというものをしたことが無いので私よりも弱そうなスライムさんや虫さんしか怖くて相手にできません。


いくら元シスターとはいえミウシア様のためなら必要な殺生でしょう。今の私は弱肉強食の世界に降り立ったか弱いウサギさんなのです。

えい!踏みつけた虫さんのことはなるべく見ないようにして足を地面にこすりつけます。

あら?レベルアップしたみたいですね。

ステータスを見てみましょう。


-------------------

プレイヤー名:ルニア

種族:フォレストラビット

レベル:5/8

HP:13/13

MP:0/0

力:3

防御:2

魔力:2

早さ:8

-------------------


よくわかりませんが8レベル?まで行くと進化というものができるみたいです。

このステータスはウォルフちゃんが私達用に作った特別性?と言っていました。

他のステータスを見たことが無いので違いなんて分からないんですけどね。


とにかく私は魔物を踏み踏み、草をはみはみしてまったりとレベルを上げていきます。

ミウシア様を御守りできる日はいつになるんでしょう。ルニア、頑張ります。


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