「59話 上級職 」
宝箱から入手したゴーグルを手に持ったトルペタ君をみて、カナちゃんが上級職になる準備が着々と進んでると発言したことにより、私はこの世界にも上級職があることを知った。
とはいえゲームとこの世界のズレを知るためにカナちゃんに上級職について、詳しく聞くのだった。
「上級職というのはですね、祝福装備を2つ持つ冒険者をさすです。そうですね、ルクニカ・ホワイトがいい例です。彼女は剣と盾、両方が祝福済みです。」
「確かに、そんな感じだったなぁ。」
ニカは豪勢な剣と盾を持っていた。どっちが祝福されているんだろうとは思っていたけどまさか両方とは。
「とはいえ、2つ目の祝福には条件があるです。1つ目の条件はレベルが一定以上であること。これに関しては明確なレベルを把握しているものはいないですが、上級職の冒険者の情報からおそらく60~70レべル辺りであると言われています。」
「と、遠いな...俺は確か30行ってないくらい...?」
確か24とかだったよね、このダンジョンで少しは上がってると思うけど。
「まぁその条件はまだまだですがね。2つ目の条件はマナの制御に長けていること。これは1つ目の条件までレベルが上がるほど戦っていれば満たせますです。そして3つ目は祝福する装備がAランク以上の品質であること。トル君はこれを満たしているですね。」
いい装備じゃないと2つ目の祝福はできないってことかぁ。
私は何がいいんだろう?2本目の剣?靴?マナを出せるってことを考えると靴になるのかな。
「なるほど。ちなみにレオさんとアルカナはもう2つ目の祝福を決めているんですか?」
トルペタ君が聞くとレオがうーんと唸る。それに対してカナちゃんはふふんと胸を張っている。
カナちゃんは決まっているみたい。
「私はもう決まっているです。さらに高火力な魔法を出せるように魔石の埋め込まれたグローブか....指輪、ですね。.....現物はまだ用意してないですが...。」
チラッとトルペタ君を見ながら答えるカナちゃん。指輪で顔を赤らめている様子からトルペタ君に何かを期待してるのかな?
婚約指輪は魔石の入った指輪がいいなって感じ?...カナちゃんちょっと重いよそれ。
「俺はまだ決まってないんだ。でも回復職だし回復系の魔石を埋め込んだ杖とかになるのかな。」
おっと、ここで新情報。魔石なるものには種類があるのか。
「そもそも魔石って何??」
トルペタ君もうんうんと魔石について質問をした私に同意をする。
「それはですね...先に片づけてからにしましょうか。」
会話に夢中で全然気が付かなかったけど通路の先に魔物が見える。
あれは....はぁ、またアンデッドか...。しかもたくさん。
「トルペタ君、今離れてるしゴーグル使ってみなよ。」
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◇SIDE:トルペタ
「そうですね。」
ミウシアさんに言われて、さっそくゴーグルの性能を試すチャンスが訪れたことに気付いた。
俺はゴーグルを装備しゴーグル越しにはるか先にいるアンデッドを見つめる。
マナを祝福武器に込めると同時にゴーグルにもマナを込めた。
祝福していないとマナを流してもすぐに霧散してしまうが、このゴーグルはマナを感知すると動作するスイッチ式のようなものなので、マナをゴーグルに流すだけでいいみたいだ。
「わわっ」
マナを流した瞬間、ゴーグルはアンデッドの顔をはっきりと映し出した。
近すぎてリアルな腐った死体を目の当たりにしてしまい、思わず声が漏れる。
距離を調整できないかとゴーグルを触ると、縁についている歯車で距離を調整できることに気が付き少しだけ距離を調節した。
距離を調節したことで、アンデッドたちが固まっている部分が明確になり、スパイラルアローを効率的に射る場所が明らかになる。
しかし距離的にスパイラルアローが届かないことに気が付いた。
この距離だと飛距離を稼げるテイルアローしか届かない、でもアンデッドの群れを効率的に倒すには貫通力のあるスパイラルアローで行きたいところだ。ここはマナの効率を無視してでも両方の特性を持たせる必要がありそうだ。
この弓ならいけるはず。
俺はウィングボウに魔力を込めて、力いっぱい引き絞る。
まず魔法の矢を放って矢の追い風になるような風の道を作る。その後に矢を高速回転させるような竜巻を矢じりに展開し、貫通力を上げる。もちろん込める魔力量は普段よりも格段に多い。
そして限界まで矢を引き絞り.....撃つ!
ヒュン!とウィングボウから矢を射る音が聞こえた後、ピュウと風を鋭く切る音がした。
いつもよりも矢の音が高音であることに疑問を感じながら、ゴーグルを覗きアンデッドを確認する....。
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トルペタ君の放った矢は速度がいつもよりも格段に速く、アンデッドたちに当たった。
普段素早い動きをしていて目が慣れている私でも、いつ矢が着弾したのかわからないほど早かった。
ここからではアンデッドたちの状況が見えないため、撃ち漏らしを私が仕留めておこうとアンデッドに向かって走る。
アンデッドたちを視認することができる程度近寄ったところで私は気が付く、全て倒されていることに。
「うっそ....。」
アンデッドはおよそ30体はいたと思われた、なぜおよそなのかと言うと地面に転がる死体は全てバラバラになっていてどこまでが1体なのかが判断が付かなかったからだった。
トルペタ君の矢が早すぎてかまいたち的な効果を生んでその風の刃で周囲のアンデッドも細切れになった....のかな?
「まさかここまで魔力が強化されるなんて....。」
追いついたトルペタ君がいまだに信じられないというような顔で、細切れの死体に目をやった。
「トル君、トル君、今のは?」
カナちゃんがニコニコしながらトルペタ君に話しかけてるんだけど、これは間違いなく新しいスキルの名前を付けられるウキウキ感だ。
「ええと、距離を延ばすテイルアローと貫通力を上げるスパイラルアローを魔力多めで同時にやってみたんだけど....って、アルカナ?まさかまた名前を付けるつもりか?」
トルペタ君多分正解。
「もちろんです!!おそらくゴーグルの魔力強化によって多く込められたマナが、風の威力を増大させたことによっていつもとは比べ物にならない速度を生んだんです。その結果周囲に風の刃を発生させるほどの乱気流が発生した....ストームアロー?いやもっと...ハリケーンとか...むしろアローはいらないです?事象そのものの名をつけるとかそういう...むむ。」
「トルっちの装備している風の精霊の名、シルフを使ったらどうだい?シルフィ・アローとかシルフィ・ハリケーンとか。」
「いや、ここは災厄の矢<ディザスターアロー>なんていいんじゃないかな?かっこいいし。」
「好きにしてくれ.....。」
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◇SIDE:ウォルフ
暇ね。
遠視の湖でミウシア達を見るのは楽しいんだけど、あれって天から地上を見てるようなものだから晴れた日以外は見れないのよね。
もっと近くで見れたらいいのに...ハッ!
閃いた私はすぐさま魔物を統べる神でありへっぽこな弟、デストラの元へと駆け寄った。
最近、デストラは自分を戒めるように、己の肉体を痛めつけ....要はミウシア知識でいうところの筋トレね。筋トレを欠かさず続けていた。
最近は水の中に上半身だけ使った状態から起きる、水圧腹筋というトレーニングをしていた。あれってはたから見るとバカよね。
「デストラ!デストラ!...早く上がってきなさい!」
足だけを地上に出して上半身が完全に水につかったままの体制で、動かなくなっていたデストラの足を蹴りながらデストラを呼んだ。
生前だったらこれ水死体よね。私はこんなバカみたいなことしたことないから知らなかったけど、やっぱり神って死なないのね。
「ぶはっ!!!はっ、ウォルフよ、どうかしたか?」
鼻と口と耳から水を垂らしながら答えるデストラを見て、汚いなぁという感想しか出てこない。
「うわぁ....。」
「いいから要件を!」
そんなに腹筋したいのかこいつは....。
「えっと、あんたって魔族と交信できるわよね?」
「ま、まぁ。天啓を出すために魂を一時的につなげるからな。」
やっぱり、予想通りだった。
「だったらさ、魔物の意識をさ...てさ....と...して....。」
「....なんだか楽しそうだなそれは。...うまくいけばミウシア教官のお助けができるかもしれぬ!!」
これができれば...どうせなら人数分作ろうかしら。
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◇SIDE:シーア
「...あなたは常闇へと閉じ込められ、そのまま生き続ける罪を背負った....。はいっ、85番目のバッドエンドでヒュムクリア~!」
今日もいつものようにヒュー兄の書斎でヒュー兄と一緒に、シーアが作ったTRPG、『ミウシアクエストファンタジー26』で遊んでたんだけど、ヒュー兄ってば毎回慎重すぎて話が進まずに制限時間が経過してバッドエンドになっちゃう。もっと見てほしいところたくさんあるのににゃ~。
「...シーア、もう少し簡単にしてくれないか?頭を使うことは好きだが、流石に難しすぎる...。」
ヒュー兄ったら、頭が固いにゃ~。
「じゃあヒント、もっと自分から積極的に動いて聞き込まないと!ヒュー兄ってば人避けて机とか押し入れとか茂みの中とか探しすぎ!!」
「シーアの作ったシナリオの探索範囲が広すぎるのが問題だ!!」
『全員「円卓ん」にしゅ~ご~~~!』
その時ウォルちゃんの声が私たちのいる書斎に響いた。
「またウォルフが何か発明したのか...まぁ暇は潰せそうだな。」
素直に楽しみって言えばいいのににゃあ。やれやれって感じの発言だけど顔が笑ってるよ。
「そだねっ!」
ヒュー兄と一緒に湖の畔にどかーんと置いてある大きな机、円卓んの前までくるともう4人そろってた。シーア達が最後だったみたい。
円卓んの上に載ってる頭をすっぽりと覆った帽子みたいな被り物は何なんだろう?
「集まったわね!ここにあるのは、暇を持て余した神々たち(ウォルフ・デストラ)が発明した遊びよ!」
どやっとした表情で手を広げて被り物を見せつけるウォルちゃん。トラちゃんも横で腕組んで唸ってるから多分一緒に作ったんだろうにゃー。
「この被り物は一体どういうものなのでしょう?」
ルー姉が恐る恐る手を上げて質問した。
ルー姉的にはミウちゃんが絡んでないとそこまで乗り気にはならないみたい。
「ふふん、これはね。私達神々が魔物を通してサスティニアをリアルに体験することができる被り物。名付けて!!『乗っ取りヘルメット!』」
魔物か~。猫がいいにゃあ。
「魔物の目を通して地上の様子が見れる....遠視の湖みてぇなもんなのか?」
一緒なのかにゃー。
「ちっちっち。そんなもんじゃないわ。魔物って知能が低いものが多いでしょう?その意識を乗っ取って私たちが体を動かすことができるの。でも乗っ取れるのはあくまで低位の魔物。でもこの世界の魔物はマナの取り込み...レベルによってより上位の存在になることができる。つまり.....。」
?どゆこと?
「ふむ、弱い魔物に乗り移り、魔物を倒して強くなる。人間たちには手を出さずに強くなり、私達もミウシアの助けになろう。ということか。」
「そういうことかぁ!魔物たちが狂暴化してる今、世界のバランスがちょーーっとおかしくなってるもんね。」
「そうよ、本来はあまり地上に干渉するのは良くないんだけど、バカトラの起こした問題を解決しつつ、私達も地上を楽しめる....一石二鳥でしょ?」
「すぐにやりましょう!!!!!!デストラさん!!私は可愛らしいウサギさんの魔物でお願いいたします!!」
ルー姉はやっぱりうさぎさんかぁ。
「じゃあオレはクマだな。」
「シーアは猫~!」
「私は...何だろうな。犬にでもしておこうか。」
「じゃあ私は...特に浮かばないからトカゲ。バカトラは?」
「ふむ、生前は蛇を飼っていたし蛇にしよう。一人ずつ遠視の湖である程度決めておいてくれ。」
シーアもついに地上に降りられるんだ!わくわく!!




