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「44話 苦手な戦い 」


王都に向かう途中で急に馬車が止まったと思ったら大きなミミズが現れたという最悪な状況を迎えてしまった。

何が最悪かって、私は虫が大嫌いだ。

そりゃあ空腹には逆らえなかったからフォレストワームは食べたよ?食べたけど...。


「いくら何でも大きすぎない!?!?」


目の前のミミズは今見える範囲だけでも10メートルはある。地面に埋もれている部分も含めたらきっと倍以上はあるよね...。


「ミウシアさん!気を付けてください、こいつ、踏み固められた地面を隆起させながら進むほどの力と硬さはあります!」

トルペタ君が混乱してる私に代わって冷静に分析してくれる。

いくらミミズとはいえ柔らかい土程度じゃないと土の中を進むことはできないはず、でもこのミミズキングは固い土を泳いできたんだ。

このミミズは....このミミズ....うわぁ、表面が土色かと思ったらコレ中の色が透けて見えてるんだ...。

表面はぬめぬめと粘着質な液体で纏われている。皮膚を守るため?それにしても気持ち悪い...どう戦えばいいんだろう....。


「やっぱりミウシアだな!オデが捕まえてカミサマの生贄にしてやるだ!そうしたらオデもきっとドラゴンに....。」

やっぱりデストラから天啓を受けた魔物の長か...うげぇ。


「ミミズだろうが何だろうが、虫は火が弱点と決まってるです!火属性は不得意ですが....火よ、集まり球となりて対象を焼き尽くせ!<火球>ファイアボール!!」

特に意味のない詠唱(カナちゃんオリジナル)の後、カナちゃんの目の前にドワーフ一人分はあると思われる大きな火の玉が現れてミミズキングに向かっていく。

ミミズキングに当たった火の球はミミズキングに着弾するとゴウ!と凄い音と共に火柱を巻き上げながら対象を煙で覆った。

まるで某国産大作のRPGに出てくる火属性の高位呪文だ。


「やったです?」

私知ってる。こういう発言の時ってやってないことが多いよね...。

案の定、煙が貼れると無傷のミミズが目のない顔で笑いかけてきた。

そんでなんか肌の色が鉄色になってる...。


「オデに魔法はきかねぇぞ、この皮膚は地中の鉱物を吸収してできたもんだ。吸収した鉱物の特性で表面を硬化することだってできるんだぞ!」

「なんでそんなに説明口調なの....。」

無傷でケタケタと笑いながらミミズキングは地中に埋まっている残りの体を勢いよく抜き出した。

その衝撃でミミズキングの周囲の固い土が舞い上がり、私達に向かって礫の雨となり降り注ぐ、これくらいなら何とかなる。


「カナちゃん、馬車を守って!皆は私が守る!」

私とカナちゃん、トルペタ君に向かってくる瓦礫を腕に着いた盾と飛び兎を使ってはじき落とす。


カナちゃんは水の壁を貼って威力を吸収してるみたい。

馬車の中のセレブとレオさんは無事....というかレオさんは何してるの?

あの人セレブの護衛とか言ってたよね?戦えるなら手伝ってほしいんだけど....。


「はっ!」

トルペタ君が2本の矢を一瞬のうちに撃った。

一発は上に、二発目はミミズめがけて飛んでいく。

2本ともマナを感じたので一発目がおそらく衝撃を与えるスキル、二発目が貫通力のあるスキルだと思う....。


まっすぐに飛んでいく矢はヒュオオと音を立てながらミミズに当たり、上に向かって飛んでいった矢は重みとスキルの力で加速し真上からミミズに当たった。.....が。


カンカン!

「くそ、硬すぎるっ!」


2本ともミミズの肌に傷つけることなくはじかれてしまった。

トルペタ君が攻撃手段がなくなったことに悔しそうな表情をしている。


私も虫が嫌いだからと怖気づくわけにはいかない、飛び兎を構えて胴体(どこからが胴体でどこまでが頭なんだろう)に向かって走った。

「これならっ!」

飛び兎を突き刺してライトアローを中から浴びせようとした....けど。


カン!


まず突き刺さりもしない。突き刺さらなければこの技は全く意味をなさない、光の矢自体の火力は飛び兎で切る時よりも低い、あくまで敵に突き刺さって柔らかい部分を貫くために飛び兎のリーチを延長させるような使い方をする技だ。


攻撃がはじかれたのを確認してバックステップで皆の位置に戻る。

戻ったと同時に敵のステータスを確認する。


「<鑑定>アナライズ!!」


-------------------

名前:ミミズキング

種族:アースイーター

職業:一族の王

HP:500/500

MP:1200/1200

力:C+

防御:B+

魔力:C-

早さ:C+

運:-

-------------------

やばい、思った以上のステータスだ。


「皆、気を付けて!ミミズキングのステータスは攻撃:C+、防御力:B+、魔力:C-、早さ:C+!誰も防御を突破できないと思う!魔力もあるってことは魔法も使ってくるかもしれない!」


「オ、オマエ、オデのステータスを見たなぁ!<砂嵐>サンドストーム!」

ミミズキングが鑑定されたことに腹を立たせ、魔法で砂嵐を起こした。


小規模な砂嵐だけど私達の動きを阻害するには十分だった。

というか十分すぎ!目に砂が入る!


「っ、厳しいですね、強い魔法で一気に止めを刺さないと無理そうですが、2人で時間を稼げるですか?」

「わかった」「やってみる!」

カナちゃんが馬車の影に移動し魔法陣を空中に描き始める。

その隙に私とトルペタ君は注意をこちらにそらす。

トルペタ君はミミズキングに対して外側からのダメージが与えられないことから、ミミズキングが口を開けたタイミングで口に向かって矢を撃つ。

私もミミズキングの後ろに回って柔らかい部位を探すとともに、注意を後ろへと引き付ける。


「イデッ!...お前から殺してやるど!」

トルペタ君の矢が口内に刺さったものの、あまりダメージは無くむしろヘイトを集めてしまった。

ミミズキングが頭をトルペタ君にめがけて大きく振り下ろした。


私はいまミミズキングの後ろ側にいる。称号の補正が入っても間に合わないし<時間加速>ヘイストを使って加速してもその後が無い。

頑張って避けてもらうほかない。


「トルペタくん!逃げて!!」

「っっ!」

トルペタ君がとっさに横によけようとする.....。


ダメだ間に合わない!


「妖精たちよ!彼に力を!マナ・アクティビティ!!」

誰かの声と共にトルペタ君の速さが増して回避に成功する。


「え、あれ?避けれた....?」

絶対に当たると覚悟していたトルペタ君は今避けられたことが信じられないようで呆けていた。

また、ミミズキングも何が起こったかわからず途中で聞こえた声の主を探している。


私も声がしたほうを向くと.....。


馬車の前には幻想的なローブを纏った美しい金髪の男性が立っていて、そのそばには妖精が飛んでいた。


え......ほんとに誰....?

あ、トルペタ君も頭に疑問符が浮かんでる。カナちゃんは....。

「ほあああああ!もしかして精霊術です!?精霊術は魔法とは違って精霊に力を借りるというですけど今のはなにしたです!?マナ・アクティビティ...もしかして身体能力強化です!?他人にマナを譲渡すること以外で他人のマナを操作するなんてことは魔法では不可能のはずです!詳しく、詳しくあとで教えるですよ!!!」


.....解説役?カナちゃん落ち着いて....。


というか何あの正統派イケメン、精霊を従えてるし今トルペタ君に使ったのは魔法陣が出てなかったしスキル....?

しかもこのイケメン、よく見たらレオさんとよく似てるけどあれもしかしてレオさんなんじゃあ...と思ったけど清楚すぎるから多分違うね。


「オ、オマエはまさか精霊使いなのか!?ウググ、殺す!!」

ミミズキングが私とトルペタ君を無視して清楚イケメンに向かって直進する。


「我が敵を燃やし続けよ!<白炎>ホワイト・ファイア!」

清楚イケメンから放たれた白色の炎はミミズキングの首元に当たった....しかし火は消えず、燃え続けている。


「な、なんだこれ、でもオデの皮膚は分厚いど。邪魔なだけだ。」

ミミズキングには相変わらず魔法が聞いていない。どうすればいいの!?


「燃え続けて表面が熱く...作戦変更です!!そこの美青年!私が魔法を当てた瞬間火を消すです!トル君!合図をしたらあの重量のある矢を当てるです!ミウ!合図したら矢のあたったとこにアレを打ち込むです!」

「任せてくれ!」「了解!」「わかった!」

イケメン、トルペタ君、私の返事を聞いたカナちゃんが今まで準備していた魔法陣を消し、新たな2つの魔法陣をすぐさま作り出した。


「氷よ!えーっと、浮かばないです!!複合魔法、<氷結光線>フロストレーザー!!」

「妖精たちよ、白き炎を解き放て!」

「はっ!」

白い炎が消え、カナちゃんの杖の先から出たレーザーが炎のあった首元に当たる...が見かけに変化はない。

いきなりの冷気で驚いたのかミミズがのけぞり首を上を向く。

そこにトルペタ君が放った矢が凄い速度でミミズに向かっていき、熱された後即座に冷やされた場所に当たる....。


バキィ!!

「グアアアアアアアア!!!」

「妖精たちよ!美しき彼女に力を!マナ・アクティビティ!!ミウシアちゃん、今だ!!」

イケメンが叫んだ瞬間、私の体が軽くなり力がみなぎる。

アレ絶対レオさんだ、色々聞きたいことはあるけど今は!


私は飛び兎を逆手に握りしめ逃げようとするミミズの反対側に回り込みミミズと向き合う。


「逃がさないよ。」

「それがどうしだああ!お前ひとりじゃオデにはかてないいいいいい!」


私は首に向かってジャンプしたが、ミミズキングは私をつぶそうと頭を振り下ろす。


やっぱりそう来るよね。

身体を大きくよじって体を回転させ、そのまま逆手に持った飛び兎を首の皮膚の割れ目に突き刺した。

レオさんのかけてくれた魔法かスキルのお陰か、すんなりとミミズキングに突き刺さる。


「<貫け!>」

その瞬間、突き刺した割れ目が広がりミミズキングの体液が大量に私にかかる。


「ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」

断末魔もなく静かに崩れ落ちるミミズキングと叫ぶ私。


「すさまじい叫び声です....よっぽど最後の一撃が聞いたですね.....。」


「イイイイイア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"」

ミミズの体液が!生ぬるくて!汚くて!臭くて!!!酸っぱくて!!!黄色い!!!!ウアアアアアアアアア!!!!

暴れまわりながら奇声を上げながら泣きわめく私。


それを見つめるカナちゃんとトルペタ君とイケメン。

「「......」」「ミウシアちゃんは表情豊かでかわいいね。」


「早ぐ!!!ごれ!!!!どっでえええええええええええええええええええ!!!!!」


早く!!見てないで早く!!!!!あああああ!!!!



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