「35話 トルペタ君のレベル上げ 」
洞窟でトルペタ君、カナちゃん、ミーシャさんと話した結果、このまま山を登ることになった。
エリートがミーシャを捕まえても危害を加えなかったということはその後親玉のところに連れて行こうとしたからだと考えると、山の頂上にその親玉がいると予測したからだった。
正直エリートで手こずった私はそんな親玉と戦いたくないんだけど、ゴブリンキング、コボルトキング程度ならカナちゃん一人で余裕らしい。すっごいね....。
緩やかな坂を探して山を登ってるとトルペタ君がカナちゃんに向かって不安そうに話し始めた。
「なぁアルカナ、俺ももう少しマナの許容量を増やしておきたいんだけど...。」
さっきはなった強力な一撃はポンポン撃てるような感じじゃないもんね...。
「?さっきのエリートを倒したことでだいぶ増えてるですよ。最初は一気に増えて後からなかなか上がらなくなるものです。」
「私がちょっと見てみてあげる。<解析>アナライズ。」
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名前:トルペタ・アロー
種族:ドワーフ族
職業:弓使い Lv1
HP:90/90(30UP)
MP:100/100(90UP)
腕力:D-(1段階UP)
防御:E+(1段階UP)
魔力:E(1段階UP)
早さ:E(1段階UP)
運:A
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「わ、凄い!全部の能力値が1段階づつ上がってHPは30、MPは90も伸びてる!」
本当に最初は上がりやすいんだなぁ。
「は~、よくわかんないけど凄いですね~。」
ミーシャさんがよくわかってないのに話に無理やり入ってくる。
私も上がってるのかな?
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名前:ミウシア
種族:バーニア族(半神)
職業:短剣士(Lv10)
HP:150/150(20UP)
MP:1052/1052(52UP)
力:D+(1段階UP)
防御:E+(1段階UP)
魔力:D+
早さ:C(1段階UP)
運:A+
称号:善意の福兎(6柱の神の祝福により効果UP)
・自分以外のHPを回復する時の回復量+100%
・誰かのために行動する時全能力+50%アップ
・アイテムボックス容量+100%
・製作、採取速度+200%
※このスキルはスキル「鑑定」の対象外となる。
※このスキルを持っていると全NPCに好意的な印象を与える。
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攻撃受けたから防御も上がってるのかな?でも魔法だって使ってるけど魔力が上がってないことからあんまり法則性は無いのかもしれない。
MPの値がLvに直結してるって言ってたっけ。MP÷10がレベルなのかな?トルペタ君は100でLv1だったしカナちゃんは3200いくつかでLv32だったから間違いないかも。
「え!ほんとですか!!!」
「昨日戦ってるときにトル君のMPを常に確認してたですがあのスキルを使った時に15消費してたです。マナを込める量に比例しますですが昨日と同じ威力なら6回は撃てるですね。.....あとマナの譲渡について伝えておくです。ミウ、こっちくるです。」
「?わかった~」
カナちゃんの前まで行くとカナちゃんが私を正面からギュッとしてくる。
高校生くらいの女の子に真正面から抱き着かれて一気に心臓が高鳴る。
なんで!?なんで抱き着かれてんの!?
私の方が背が高いからかカナちゃんが私の胸辺りに顔をうずめてくる。
「なにをそんな慌ててるです。あ~ミウは落ち着くですね、特に胸が落ち着くです。私と同じです。...今から私の中のマナをミウに移すです。体の内側に何かが流れ込んでくるはずです。」
前半はイラっとしたけどカナちゃんの胸部がある私のお腹あたりがひんやりと冷たくなってきて何かが流れ込んでくるのがわかる。
例えるなら...暑いときに冷たい飲み物を飲んだ時、食道を冷たい飲み物が移動しているのを感じるときみたいだった。
「あ~、なんかお腹がひんやりしてきた。マナって冷たいの?」
「私はマナを水にして使うことが多いですからそれがマナに反映されてるです。その人の癖みたいなものですね。」
癖みたいなもので変わるんだ...。
というかこれならトルペタ君打ち放題じゃない?
戦闘中はこんな暇ないと思うけど、レベル上げなら効率がはるかに上がるかも。
あのスキルでガンガン敵を倒して誰かがマナを渡す、っていう風にすれば...念のためカナちゃんのMPは残しておいたほうがいいかも。じゃあ私かな?
「思ったんだけどトルペタ君にガンガンさっきのスキルで敵を倒してもらってマナを回復。それを繰り返せばトルペタ君のMPも頂上に行く頃にはもっと上がってるんじゃないかな?」
「それはそうですけど....さっきのを誰かが俺にやるんですか....?ちょっとそれはなんというかあのその....。」
「まままままぁ、しょうがないですしMPの多い私がやるです。やるべきです。」
「カナちゃんは万が一のためにMPを温存しておいたほうが良くない?楽に倒せるのカナちゃんだけなんだから。私MPあんまり使わないし。」
どもりながらカナちゃんがMP譲渡を立候補してきたけど私の意見を言うと黙ってプルプル震えちゃった。
......これもしかしてカナちゃんはトルペタ君を意識してたりする?....するなぁコレ。顔赤くなってるもん。
「あ、私だと身長もだいぶ違うし抱き着きにくいからカナちゃんにお願いしようかな~...なんて...。」
「...ですよね、ということでトル君。さっさと敵を撃つです。ほかにもスキルの練習をしながら行くです。ミウは撃ち漏らしとかお願いするです。ミーシャは私のとなりにいとくですよ。」
ほっとした顔をした後やる気に満ち溢れた顔で指示を出すカナちゃん。
いい感じじゃん、年も近いし。
「え...俺やらなきゃ....だめ....?」
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「もっと効率よく回すです。無駄なマナが多すぎです、そんな広範囲を回転させてどうするですか!」
「えーと、こうか?」
「ミウシアさんはたれ耳なんですね~~可愛いです~~」
「ミーシャちゃんの耳も可愛いよ~家にはいるときとか耳あたっちゃいそうだね~」
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「トル君、じゃあこっち...くるです。」
「わ、わかった。」
「へ~ミーシャちゃんってやっぱり人参好きなんだ~」
「はい!家で人参育ててるんですけど、甘くて程よい硬さで美味しいんですよ~」
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「次は貫通力じゃなくて速さです!先に矢から実体のない風の矢を撃つです、その後に普通の矢を撃てば空気の抵抗もない上に追い風で加速するです。」
「わかった、やってみる。」
「うっわ、全然違う!甘くておいしい~!」
「ミウシアさんがくれたこのメープルシロップかけてもおいひーれす~」
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「トル君、するです。」
「わかった、よろしく。」
「え"っ、そ、それだけは....絶対やです~~~~~~~!!!」
「私もね、最初はね、ダメだったんだけど。おいしいよ!フォレストワーム!!」
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頂上付近にたどりついた私たちは最後の打ち合わせと頂上の偵察を行うため、あまり深くない洞窟で話し合っていた。
「ミウ、ミーシャ。そこに座るです。」
「はい。」「はい。」
洞窟に入って一息つくなりカナちゃんに正座を強要された。
「私がなんで怒っているかわかるですか。」
「はい。」「はい。」
私はミーシャとずっと女子会のノリでお話しをしながらピクニック気分だった。
でも一応警戒はしてたんだよ?でもトルペタ君が思った以上に強くなったから私の出番無かったじゃん。撃ち漏らさないし。
「私とトル君が敵と戦ってた時何してたですか。」
「人参食べてました。」「フォレストワームも食べてました。」
ミーシャのお弁当の生の人参は滅茶苦茶おいしかった。
この身体になったから?かはわからないけど日本にいるときに食べたときより明らかにおいしかった。
なんか味覚が増えたのかと思ったくらいおいしかった。
「トル君だって頑張ってレベルを上げて、私だって頑張って教えたです。かなり疲れたですよ。」
「でもトルペタ君と抱き合えて喜んでなかった?」「離れるとき残念な顔してましたね。」
トルペタ君は恥ずかしがっていたけどこれは強くなるのに必要なことだと割り切って変な気を起こさないように我慢してた。
すっごい手を握りしめてたし。
でもカナちゃんはたぶんマナを必要以上に分け与えてなるべく長くくっついていたい感じしてた。
「....。」
顔を赤くしてそっぽを向くトルペタ君。
「ええ、え、え、ええっと。ミウ!トル君のステータス見てみるです!それを踏まえて作戦会議するですよ!!」
図星かぁ、図星を突かれたカナちゃんはバツが悪くなったのかもうお説教モードじゃなくなってた。
ミーシャさんと顔を合わせて笑いあう。
その後トルペタ君のステータスを確認した。
「<解析>アナライズ」
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名前:トルペタ・アロー
種族:ドワーフ族
職業:弓使い(Lv2)
HP:80/100(10UP)
MP:200/200(100UP)
腕力:D+(2段階UP)
防御:E+
魔力:D(2段階UP)
早さ:E
運:A
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「わ!HPが10、MPが100も上がって腕力と魔力が2段階づつアップしてる!すごいよ!!」
スキルを使うためのマナ操作とボウガンを使うときの筋力が結果にコミットしてる!!!!
「ところでミウ、このHPって何です?」
「えーっと、スタミナとか体力みたいなものかな、疲れたり傷を負うと減って0に近ければ近いほど瀕死って感じ。」
ふむ、と考えた後トルペタ君をヒールウォーターをして鑑定、HPが回復したのを確認して頷いた。
「それで、頂上のことなんだけど偵察に行くにあたって何か注目しておく点はあるかな?たぶん鑑定は届かないと思う。」
偵察はあまり慣れていないので確認すべきところを聞くとトルペタ君が答えてくれた。
「えっと、敵の数、配置、キングの場所、それと..建物の数、場所ですかね?ほかにもとらえられた人がいるかもしれませんし。」
「気を付けてくださいね。」
ミーシャさんがうるうるした瞳でこっちを見つめてくる。妹にしたい。
「うん、ありがと。じゃあ行ってくるね。」
私は洞窟を出て、偵察に向かった。