「33話 初依頼 」
昨日はめでたくカナちゃんも仲間になってうれしくて飲みすぎちゃったけど、なんかこの世界に来てからお酒ばっかり飲んでる気がする。
今日は依頼をしないとお金が無くて宿の更新もできないということで依頼を受けてみることにした。
トルペタ君とカナちゃんと一緒に冒険者酒場に向かい依頼が張り出された掲示板をみる....けど。
「やっぱりランクEが受けられる依頼は少ないですね、お金もマナも稼ぎたいのであれば弱めの魔物をたくさん狩って素材集めるです?弱い魔物がたくさん湧く山とかに向かうですか?」
「うん、俺はどちらかというとマナの方が稼ぎたいからそっちのほうが助かるな。」
トルペタ君がカナちゃんの提案に賛同する。
そりゃそうだよね、風出しただけで気絶するのはプライドが傷つくよね...。
それにしてもトルペタ君のため口は新鮮だなぁ、なんで私には敬語なんだろうね。
結局カナちゃんの言っていたギアード国の東側(クルシュ村とは逆)にある山に行くことになった。
ギアードを出る途中に聞いた話だと森と岩場と泉、洞窟もある自然豊かな山らしい。
資源が豊かなためいろんなものが採取できるけど魔物も暮らしやすいらしくいろんなところから集まってくるらしい。
その山はマナ濃度が薄くて強い魔物が生活するにはちょっとマナが足りないんだって。
「カナちゃーん、歩きながらでいいから『光の矢を敵に討つ』って神式語だけ教えて~、形で覚えるから!」
私の魔法は頭で想像して始動キーを伝えるだけで起動してしまうため剣に付与はできず、切ってから唱えても剣先に魔法を展開することは多分できないし、この世界の魔法を普通に覚えておいたほうが色々応用が利くと思う。
それに強い攻撃魔法は正規の手段を経て祝福武器を通さないと発動しないかもしれない。
「剣につけるですよね?それなら、えっとですね、こう、<<光よ>><<矢となり>><<剣先より>><<射出せよ>>ですね。今回は始動キーを短くして、<<ライトアロー>>がいいですね。」
カナちゃんが空中にマナで文字を書いてくれる...けど全く覚えられる気がしない。
図として覚えるしかないかも...。
「ん~...?ぜんぜん覚えられそうにないや...。」
そう告げるとカナちゃんはカバンから紙を取り出し紙に<<光よ>><<矢となり>><<剣先より>><<射出せよ>>と書いてくれた。
「これ見ながら剣に付与してみるです。なんかいもやってればきっと覚えるですし、本格的に神式語も今度教えるです。」
紙をよーく見ながら飛び兎に魔法陣を書いていると、前のほうの草むらに猪っぽい魔物がのしのしと歩いていた。
「ミウそれだと<<光の>>...」
「ちょっと試してくる!!」
走って猪に向かっていき、気が付かれたところで飛び越すように宙返り、真上に来たところで背中に飛び兎を突き刺して・・・。
「<光の矢>ライトアロー!!!...あれ?」
猪の背中に突き刺さったままの飛び兎、睨む猪、丸腰の私。
「あ、あわわ。猪さんごめん...なんていっても無駄だよね...。」
「ピギイイイイイイイイイイイイイイイ」
全速力で私を追いかけてくる猪、全速力で逃げる私、異世界の猪って小回り凄いきくんだね!!
「たす、たすけて~~~~~~!!」
「ミウシアさん!!」
トルペタ君が猪の動きを予測しボウガンを構えうつ・・・・も猪の背中をかすめる。
かたい毛におおわれていてかすめる程度じゃ肉までとても届かない。
「ミウシアさんがんばって走ってください!!!!」
「やれやれです・・・。<石の壁>ストーンウォール!<水の檻>ウォータープリズン!」
突如私の後ろから猪のピギッ!っという悲鳴と何かに勢いよく当たった音がした。
足を止めて振り返ると猪を囲うようにして石の塊ができていた。
少しすると石の塊がなくなり、中から大量の水と息絶えた猪が出てきた。
「ミウシアさん、平気でしたか!?一人で勝手に走っていかないでくださいよ!」
「ミウ、危なかったです。かっこいい魔法を早く試したいのはわかるですけどせめて魔法陣の確認くらいさせるです。始動キーは唱えたんですよね?ちょっと見せるです。」
私は猪から飛び兎を引き抜きカナちゃんに渡した。
「ブフッ....なるほどです。ミウ、これもってライトハローって唱えてみるです。」
「えぇ....何その挨拶...。ら、<光のこんにちは>ライトハロー!」
すると剣の刀身部分から光でできた棒のような手と足がついた小さな葉っぱがわさわさと出てきて私から逃げて行った。
なにこれ..........。
私がポカーンと呆けてるとカナちゃんがにやにやしながら解説してくれた。
「ミウの書いた神式語は<<光よ>><<矢となり>><<剣先より>><<射出せよ>>じゃなくて<<光よ>><<葉となり>><<剣脇より>><<脱出せよ>>です。神式語から魔法を起こす神か精霊かがミウの間違えた神式語をそういう風に解釈したみたいですね。剣の脇から光でできた葉っぱが出てきて逃げ惑う....ぷぷ、なんですかその魔法...ぷぷぷ」
「神式語って難しいんですね...。」
「いや、うん....やっぱりまともに習ってから魔法とスキルの合わせ技を試してみるよ....。」
倒れた猪をアイテムボックスに入れた後、魔物が出てきたときの立ち回りについて話した。
トルペタ君のレベル上げが最優先、私がその次、何かあればカナちゃんがサポートしてくれるようになった。
小さい魔物、トルペタ君がスキルを使わなくても戦えそうな魔物はトルペタ君。
大きめの魔物で私が何とか倒せそうなら私。
私もトルペタ君も歯が立たなそうな魔物が出たら危なくない程度まで戦ってみて、ダメそうならカナちゃんが倒してくれる。
これならカナちゃんにまかせっきりにならなそうだしいいかな。私もさっきの失敗の分、頑張らなくちゃ....。
そういえばすっかり忘れてたけどカナちゃんのステータスを見てなかった。鑑定癖付けたほうがいいのかなぁ。
「カナちゃん、私鑑定的なことだけど、鑑定してみてもいいかな?」
その瞬間カナちゃんが一気に私に詰め寄ってくる。
「どうして神式語を理解していないミウがそんな魔法使えるです?しかも特殊な祝福武器でもないのに。また一族のなんちゃらです?さすがにおかしいです、理解していないのに魔法陣を描くことなんてできないはずです。それとも文字を図形として覚えているですか、それでも凄いですがまあいいですそれで納得しておくですがいつか秘密を教えてほしいです私の夢のためにも!」
勝手に自己完結していい感じに解釈してくれた。
でも魔法に詳しくないトルペタ君はまだしも魔法に詳しいカナちゃんをだますことはできないかもしれない、いつかカミングアウトしなきゃいけない時が来るのかな。その時普通に接してくれるかな、二人は。
とりあえず見てみよう....。
「う、うん...じゃ、じゃあ使うね、<解析>アナライズ」
私が出した魔法陣をすっごいよく見て紙に書き写しているカナちゃんがちょっと怖い。絶対またなんか言われそう....。
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名前:アルカナ・マジック
種族:ヒューマン族
職業:魔導士(Lv32)
HP:120/120
MP:3253/3253
腕力:E
防御:D
魔力:B+
早さ:D-
運:A-
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つっよ!そんでまた運が高い!
私と旅する人は皆運が高いのはなんで?
「やっぱり魔法に特化したステータスなんだ、魔力がB+....。」
「B+!?...俺なんて...。」
最近トルペタ君が卑屈になってるから早くトルペタ君の強化をしないと...。
「でもほら、祝福武器も手に入れたしがんがん魔物を倒して強くなろうよ!お金も欲しいしね!」
トルペタ君を励ましているとカナちゃんが私の魔法陣を写した紙をみて震えていた。
「カナ....ちゃん?」
「...です....。おかしいです何ですかこの魔法陣は!!!通常の鑑定だと<<対象の>><<情報を>><<読み取り>><<我に>><<示せ>>のはずですがこの魔法陣は<<ミウシアに>><<見せてね>><<いろんなステータス>><<お願い>><<ハート>>です!?なにお願いしてるです頭おかしいです?こんなので魔法が発動するわけないですありえないです見ててくださいよほら書きますよ!!!<<アルカナに>><<見せてね>><<いろんなステータス>><<お願い>><<ハート>>、<解析>アナライズ!!....なんで使えるですか!!!!!!!!!しかも情報多いです、MPが見れるです!?HP....?嘘だ嘘だこんなふざけた神式語の使い方なんておかしいです。」
えぇえ.....ガイドさんに自動で作ってもらった魔法ってそういう風に書いてあったんだ....この世界の魔法の法則って思ったよりふざけてるんだね....。
「ちょっとまつですこのふざけた文章で効果が上がるならもしかして命令じゃなくお願いならほかの魔法も効果上がるです...?頭悪い感じの口調の方がウケがいいんですかね....なんですかウケって誰にですか!!<<目の前に>><<おおきい>><<火の球を>><<出したいな>><<ダメかな?>>、<火球>ファイヤーボール!!.....普通ですね....いやもしかして....<火球>ファイヤーボール!!<火球>ファイヤーボール!!<火球>ファイヤーボール!!」
カナちゃんの放ったたくさんのファイヤーボールが空へ、地面へ、私とトルペタ君の間へ飛んでいく。
これには思わず冷や汗をかいちゃうけどその冷や汗もファイヤーボールの熱で乾いていく。
「...ふぅ....<解析>アナライズ!!......やっぱりですね!威力は変わらずマナの消費量が格段に下がってるです!これもMPが見れるお陰です!!!」
どうやら媚を売った言い方で魔法陣を書けば効率なり追加効果なりが望めるみたいだった。
でもこのことをカナちゃんは世界に発表するのかな?
「これ...俺は関係ないですよね?魔法じゃなくてスキル使いますし...。自分で変な詠唱を考えるのも嫌ですけど男の俺がハートマークがついたような媚びた文章考えるのはちょっと辛いんですけど...。」
む、中二病MAXのかっこいい詠唱を変なって言われた。
トルペタ君はそういうの嫌いなんだろうか。
「失礼な!変な詠唱ってなにさー、かっこいいじゃん!こういうのって普通男の子のほうが好きなもんじゃないのー?」
ひとしきり検証を終えたカナちゃんが私達の元に戻ってきてペコっと頭を下げてきた。
「ミウ、ありがとうです。これで私の魔法ももっと強くなり魔法の神髄に近づいたです。...ですけどこの方法は発表しないです。
独占したほう私的に都合がいいです。それにあんな文章みんなの前で発表したくないです。とりあえず私は二人の後についていきつつ引き続き検証をするです。」
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それから山を目指して進んで歩いたけどカナちゃんの言う通りそこまで強い魔物は現れなかった。
RPG定番のスライムやゴブリンも出てきた。
スライムに関してはトルペタ君のボウガンから放たれた矢で核を貫いて簡単に倒せたし、ゴブリンも知能が高くないので私が持ち前の速さで注意を引きつけながら避けてトルペタ君の矢でサクッと脳天に一発入れて倒せた。
今のところカナちゃんの出番はなかったんだけどずっと小規模の魔法でさっき見つけた媚び魔法陣理論を検証していた。
山のふもとまで来たところで何かの音と話し声がかすかに聞こえた私は二人に小声で伝えた。
「二人とも、あっちの方から何かの音と声が聞こえる。人がいるかもしれないけどゴブリンが複数体いて会話してるだけかもしれない。人だったら助けなきゃ。警戒しながら私が近づくから二人ともサポートお願いしてもいい?」
「俺には聞こえませんでした。ミウシアさんの耳でしか聞こえない範囲というのであれば割と離れていそうですね。少し離れながら俺もボウガンでサポートします。」
「ふむ、この先は山も近いですし洞窟があるかもですね、もしかしたらゴブリンの住処かもです。ミウがいくら早いとは言え複数体のゴブリン相手ではきついと思うですので気を付けるですよ。」
コクリと頷いて音をたてないように歩きながら音の聞こえる方向へ向かった。




