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「29話 機械機械してる教会 」



何も悪くない男性冒険者に暴行を加えてしまってから宿屋に帰ってきた私はまだトルペタ君が戻ってきていないことに気が付き暇を持て余していた。


長旅を終えてこの国についてからなんだかんだでずっと動き回ってたから疲れたや。

硬いベッドにごろんと横になり伸びをするけどあんまりくつろげない。


ふっかふかのベッドで寝るにはどうしたらいいんだろ、高い宿に泊まるお金はないし作るしかないかな。

今日買取してもらったフォレストバードの毛だけ全部毟って集めておけばよかった...。

あとは...あと...。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◇SIDE:トルペタ


いい鍛冶師に出会えてよかった、まさか父の知り合いだったなんて!

お陰でボウガンを改良する鉄素材を作ってもらえたし強靭なワイヤーもたくさんの鉄矢も買えた。

これがあればミウシアさんと並んで戦うことができると思う。

祝福武器にだってできるはずだ。マナをまとわせて属性付きの矢を射ることもできるかもしれない。


今のボウガンの部品と差し替えるようにして作ってもらったから宿屋で組み立て作業さえしてしまえば明日には間に合う。


「にしても遅くなっちゃったな、ミウシアさん心配してるかも」

宿屋につき部屋に向かう。ミウシアさんがもし着替えてるところに出くわしたら大変だ。主に俺が。

多分ミウシアさんはあんまり気にしない、その無防備なところが男にはたまらなくかわいく見えてしまうが心配にもなる。


コンコン、とノックをしてから返事を待つがいくら待っても返事は帰ってこない。

まだ帰ってないのかな?


ドアを開けて部屋の中に入るとミウシアさんがベットを占領して寝息を立てていた。

「また無防備な格好してる...。というか...。」


革当てを外した状態のシャツ一枚で上を向いて寝ている。

毛布はベッドの横に落ちてぐちゃぐちゃになっていた。


「風邪ひいちゃいますよ~。」


薄い毛布をふわりとミウシアさんにかけて俺はボウガンの改造を始めるための準備に取り掛かった。


にしても先に寝ててもらってよかった。床で寝るつもりだったけどミウシアさんならそれなら一緒に寝ようとか言ってきそうだ。

もしそうなったらさすがの俺も限界だ。


...でも少し残念な気持ちもある。俺だって男だ、そういう欲だってある。

でもこれから旅は長く続くことを考えるとミウシアさんができるだけ俺を信頼してくれるように我慢を貫き通さなきゃいけない。

いくらこの気持ちが恋愛感情じゃなくて尊敬だとしても、綺麗な人がここまで無防備だとどんな男でも耐えられない。


でも気になる...と余計なことを考え、チラチラと横眼でミウシアさんを見ながら改良したボウガンはなかなか完成せず、横に慣れたのは夜が明けてからだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ふあ~~~んねむい...。あれえ?」


シバが床で寝てる。


眠い目をこすりながら寝ぼけつつシバのわきに手を入れて抱き上げ、ベッドに戻る。


「シバぁ~」

夢の中で私は実家の愛犬、シバを抱き枕代わりにすると懐かしい安心感に包まれ気持ちのよい眠気が襲ってきた。

そのまま抱きしめて寝てたら先に目が覚めたトルペタ君の悲鳴でおきた。


あれ、私またなんかやっちゃいました?





「ミウシアさん!本当に気を付けてくださいね!俺だって男なんですよ!?」

トルペタ君は起きてからずっとこんな調子で怒ってる、怒ってる?照れてる?どっちもかもしれない。


宿屋を出た私たちは教会に向かう途中で改めて朝のことを話していた。


「だ~か~ら~ごめんってば~。シバと間違えたの~!」


「ミウシアさんの恋人ですか?」


「いや、ペット」


「俺がドワーフ族だからですか!?俺と同じくらいのサイズだったんですか?」


「いや、これくらい。」


「全然違うじゃないですか!何で間違えるんですか!」


「でも、オスだよ。」


「だから何ですか!オスの匂いでもしたんですか!!」


オスの匂いってなんだろう。でも面白いからこのままからかうのを続けた。

「うん」


「えっ」「えっ」




もう少しで教会というところまできた私はふとトルペタ君の作ったボウガンのことを思い出す。

祝福ができるかどうか確認してなかったけどいいのかな?


「ちょっとトルペタ君や、改造したボウガンをだしてみなさい。」


「もう突っ込みませんよ...。これです。」

腰につけていたボウガンを取り出した私に渡してきた。

ずっしりと手に重みを感じ、前のボウガンよりも強度と火力が上がったことを察した。


「<解析>アナライズ!」

さーてどうかな?


-------------------

名称:コンポジットボウガン

品質:C

祝福:可

武器性能:攻撃力+25

構成素材:メイプルの硬木、鉄、ワイヤー

説明:トルペタが作ったメイプルの木と鉄を複合して作った威力の高いボウガン。

補足:特殊な技法により弦を引く力が弱まっているがある程度の力を必要とする。

-------------------


「お~祝福できるみたい。しかも凄い攻撃力上がってるよ、品質もCだし凄い!なんか鉄の部品が入ってかっこよくなったね~」


「よかった...。品質のよい部品を作ってもらったからかもしれないです。これで安心して祝福を貰えますね!」



二人とも祝福ができることがわかって安心していると境界が見えてきた。

RPGでありきたりの十字架を模したシンボルが掲げられた教会ではなく、なぜか大きな歯車が建物のてっぺんにある教会で思わず困惑する。

ドワーフ族の国の教会、つまり神様に祈りをささげる場所なんだから技の神であるウォルフを連想させる歯車がシンボルになっててもおかしなことじゃないんだけど先入観のせいで教会だと思えない。


恐る恐る歯車が装飾された扉を開けると中は祭壇と多くの長椅子という結婚式場のような内装という教会の創造とは一致していたため少し安心した。

祭壇の天井と奥はガラス張りになっていていつでも祭壇に太陽の光が当たるようになっている。

まぁベースが機械機械してるからか神聖さはあんまりないけど。


「ようこそいらっしゃいました、ご用件は何でしょう?冒険者様のようなので武器の祝福でしょうか?」

私とトルペタくんがきょろきょろしていると奥から作業着を着てヘルメットをかぶったナイスミドルボイスドワーフ族がこちらに歩いてきた。

ヘルメットには歯車が大きく描かれていたんだけど、この人って神父様とかなの?

ウォルフを信仰する教会だからウォルフの服装こそが神聖、とか?どっちにしろ教会とミスマッチしてる。


「え、えと、二人分の武器の祝福をお願いしたいのですが、初めてなので手順がわからなくて...。」

そう答えると作業着ヘルメット神父様は慈愛に満ちた表情で優しく教えてくれた。


「では祭壇の前で膝をついて祝福したい武器を前に出していただけますか?そして目を瞑り頭の中でウォルフ様に祈りをささげてください。」

これって直接ウォルフが祝福してくれるのかな?だとしたら張り切りすぎて大変なことになりそう。

それにしてもわくわくする、これで私はマナを取り込んで強くなれるしこの武器と一緒に強くなることができる。

トルペタ君にアイコンタクトを贈ると「先にどうぞ」風のアイコンタクトを返してきたため私が祭壇の前に出ようとするとトルペタ君も祭壇の前に出てこようとしてぶつかってお互いにしりもちをついた。


「ちょっとトルペタ君!今先にどうぞみたいな雰囲気出してたじゃん!だったら言ってよ!!」

「ミウシアさんこそ先いいよみたいな雰囲気出してたじゃないですか!だったら言ってください!!」

結局お互いがお互い、先に祝福したかったんだよね。自分の都合のいいようにアイコンタクトを解釈してるだけだったみたい。


「は、ははは...。」

神父様は苦笑いをしながら乾いた笑いを上げていた。

うるさくしてごめんなさい。


結局じゃんけん(のようなもの)の末、トルペタ君に譲ることにした。この世界のじゃんけんは剣、盾、まーほーうっ!って掛け声らしい。剣<盾<魔法<剣...だって。剣は人差し指、盾はパーで指の隙間を開けない、魔法は人差し指と中指の2本を前に向ける...いきなり覚えられないよね!


トルペタ君が祭壇の前に跪き、コンポジットボウガンを持って祈りをささげると祭壇に当たっていた太陽光がほどけて(・・・・)無数の光の紐になる。光の紐がコンポジットボウガン中心に渦を巻きコンポジットボウガンに吸い込まれていく。

コンポジットボウガンが淡く光り、さらに武器から光が伝うようにトルペタ君の手から体全体に光が広がった。

ほどなくして光が収まりトルペタ君が立ち上がった。


前世を含めて私が生きてきた中で一番幻想的な光景だった。

トルペタ君は祝福されたコンポジットボウガンを構えたり触ったりしてにやにやしている。


「はい、これで祝福されましたよ。しかしあのように光り輝くことはめったにないんですよ。あなたはどうやらウォルフ様に注目されているようですね。武器の祝福を変える際はいつでもご自由にお越しください。光が差し込んでいる間であれば可能ですので。」


「あ、ありがとうございます!ミウシアさんお次どうぞ!なんだか体がポカポカするようないい気分でした。祝福された武器を持つと自分の体の一部というか、自分と武器が何かでつながったようなそんな感じがします。」



ついに来た私の出番。でもちょっとその前に...。


「すみません、神父さま...お手洗いお借りしてもいいですか?」


「はい、かまいませんよ。こちらになります。」


ウォルフに張り切らないよう忠告をしないと、トイレで通話してみよう。


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