「25話 初めての戦い 」
クルシュ村を出た私たちは大陸一大きな国である王都を目標にした。
王都とはヒューマンとジャイアント族が主となって作った国らしく、この村からはだいぶ離れてる。
だから王都の次にでかい国、ドワーフの王様がいる技術が発展した国、ギアード国に行くことになった。
トルペタ君曰く、この世界の種族は基本的に個々の種族で町、村、国を作っているらしい。
仲が悪いかといわれるとそんなこともないのだが他種族との間に子供ができないことが原因だとトルペタ君は言っていた。
クルシュ村からでて踏み鳴らされた道を警戒もせず歩く私とトルペタ君。
「ところでトルペタ君。魔物と戦ったことはあるのかね。」
「なんですそのしゃべり方...。ええと、一応ありますよ。ここら辺は弱い魔物しか出てこないので俺でも倒せますので。ミウシアさんはあるんですか?」
「それが無いんだよねー、今まで自慢の脚力で逃げてきたから...ちょっと魔物が出てきたらしばらく私だけで戦わせてくれないかな?慣れておきたいから。」
この体は凄いんだけどまだ私自身戦闘したことないからどれだけ動けるのか知りたい。
「わかりました。危なくなったら俺が倒しますので安心してください!」
ビシッとサムズアップするトルペタ君。徐々に打ち解けてきてくれたみたいでうれしいけど敬語はもうやめられなさそうだね。
そうしてしばらく道なりに歩いていると、はるか先の方の道の真ん中で1mぐらいのでかさをした緑色のトカゲが目をつぶって寝ていた。
「ミウシアさんあそこにフォレストリザードがいます。俺たちの防具にもなってる程度には硬くて俺とは相性の悪い相手ですけど、腹部分は柔らかいのでそこを狙えば初めてでも倒せると思います。」
「わかった。やってみる。まず鑑定!<解析>アナライズ!」
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名前:該当項目がありません
種族:フォレストリザード
職業:ニート
HP:30/30
MP:0/0
力:D-
防御:D
魔力:-
早さ:E
運:-
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私よりはるかに遅い、防御力はあるけどお腹はきっと低いはず。そんでトルペタ君と同じくらいのHP...。
私は愛刀(まだ使ってないけど)飛び兎を鞘から抜き右手に逆手で構えると全力疾走でフォレストリザードに近づいた。
「早っ!ミウシアさんは速度重視の戦闘スタイルなのかな...。」
フォレストリザードは私の足音で目を覚ましこちらに向いてとげのついた尻尾を大きくしならせた。
尻尾!
私は速度を衰えさせずにフォレストリザードを飛び越えるようにしてジャンプし...。あれ宙返りになっちゃった。
私がいた場所にブォン!と風を切る音と共にフォレストリザードの尻尾が空を切る。
反対側に着地した瞬間地面を蹴ってフォレストリザードに近づきおなかの下からすくい上げるようにして蹴り上げる。
おそらく十数キロはあるであろうフォレストリザードの体が宙に浮きお腹ががら空きになる。
「そこっ」
フォレストリザードも空中で体を捻り自分の体の硬い部分である背中を見せようとするがそれよりも飛び兎を振りぬく。
右手に感じた少しの抵抗の後、私の顔に温かい血が吹きかかる。気持ち悪いけど今は我慢
そのままドサッとフォレストリザードが反対向きで地面に落ちる。
「とどめを!」
いつの間にか近くに来ていたトルペタ君の声を聴いて地面に落ちたフォレストリザードがまだ生きていることに気が付く。
ぴくぴくと動いているがもう助からないだろう。私はこの生き物の命を奪うために、自分の実力を確かめるためだけに殺す。
そんなことを今更ながら考えながらもぎゅっと両手で飛び兎を握り喉元に向かって振り下ろす。
「ごめんっ!」
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「ミウシアさん、もう大丈夫ですか?」
フォレストリザードの命を奪った後、私はひどく落ち込んでいた。
魔物とは言え生き物、それを自分の都合で命を奪ってしまった。
日本という生き死にが身近でない環境で暮らしていた私は覚悟が足りていなかったらしい。
アイテムボックスからメイプルウォーターを錬金して作った水を取り出し頭からかぶり気持ちを切り換えつつ血を洗い流す。
「うん、ごめんね私生き物を殺すの初めてで...。戦闘に関してはどうかな?変な動きしてた?」
「最初はしょうがないと思います。今後慣れていきましょう。...そうだあの動き!ミウシアさん本当に初めての戦闘ですか?弱点は確かに伝えましたけどあそこまで素早く適切に戦えるとは思ってなかったですよ!しかも凄い早く移動してましたよね?バーニア族だからなんですか!?」
思ったよりも動けててよかった。多分この速さは・・・トルペタ君がE-だったのに比べて速さD+ってそこまで変わるのかな?
E-,E,E+,D-,D,D+。5段階も離れてたらそう感じるのかもしれない。やっぱり速さ特化でダメージ食らわない方向で強くなっていきたい。
「初めてだよ、他の人たちとあんまり比べたことないけど私走るの好きだから。」
「ミウシアさんは速さを重視していったほうがよさそうですね、俺もそこまで戦闘慣れをしているわけではないですがミウシアさんより早く動ける人はクルシュ村にいないと思います。多分フォレストウルフより少し遅いくらいだと思うので相当早いんだと思いますよ。」
それなら予定通り速さを伸ばしていこう。どうやってステータスを上げるんだろう...筋トレかなぁ。
何はともあれ無事に倒せてよかった。
「よーし、あんまり慣れたくないけどこの調子で頑張ってみるぞー!あ、フォレストリザードっておいしい?」
「油が多くてよく焼かないと食べてて気持ち悪くなっちゃいますね。」
「貴重な食糧だ!...トルペタ君解体とかできる...?教えてください...。」
この後トルペタ君に血抜き、内蔵の処理などを教えてもらったけど日本にいたころYOU○UBEでサバイバル動画をたくさん見てたからグロ耐性はついてたみたいで割とスムーズにいった。...匂いだけはきつかったけど。
その後も何匹かフォレストリザードを狩ったりフォレストバードをトルペタ君に仕留めてもらったりしながら街道を進み、夜になったので野宿の準備を進めた。
「ほい、<弱火>プチファイアっと」
コルペタさんに貰ったフライパンにフォレストリザードの切り身を乗せて焼く。
食糧はコルペタさんにたくさんもらったけどそればっかり食べてたらすぐなくなっちゃうからね、今日はコルペタさん特製シチューとフォレストリザードの切り身を準備した。
丁度いい倒木を椅子に二人並んでご飯を食べる。
「鶏肉とあんまり変わらないですね、ミウシアさんお水頂いてもいいですか?」
「フォレストリザードあんまりだね~、コルペタさんのシチューの偉大さが身に染みる~。コップこっちに向けて~」
トルペタ君の持っているコップの上にアイテムボックスを展開し水をとぽとぽと入れていく。
「本当にすごいですよねその魔法。あんまり頼っちゃいけないのはわかってても頼っちゃいますよ。」
「でしょ~。二人の時はガンガン頼っていいよ!でもつい使っちゃうときもあると思うからそこはトルペタ君、フォロー頼んだっ。」
ハハハと笑いあいながらご飯を食べた後、交代で寝ることとなった。
いつもは家で寝てたけど野宿なんてこの世界に来た以来でなんだか緊張する。
それに異性が近くにいて寝るっていうシチュエーションも...っと異性じゃないぞ!同姓!最近トルペタ君と一緒に過ごしてるうちに自身の性別観念があやふやになってきた。どうも身体に精神が引っ張られちゃうみたいで落ち着かない。
「じゃあトルペタ君先に寝るね、時間になったら起こして火の番交代ね!おやすみ~!」
「はい、お休みなさい。」
これまたコルペタさんに貰った毛布を掛けて眠る。今度絶対にお礼しなきゃいけないな。
そういえば眷属たちは平気かな、毎日ビデオ通信していたのにいきなり連絡もしなくなったら心配してるかも。
目をつぶってチャットだけしておこう。
「<文字通信>テキストチャット」ボソボソ
そうつぶやくと、視界の端にチャットウィンドウが現れた。
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ミウシア:皆ー、私ついに旅に出たからしばらくビデオ通信とかできないや。一緒に行動してる人が一人いるから~。
ルニア:男ですか?女ですか?どちらにせよミウシア様気を付けてくださいね。お美しいのですから襲われぬように。
ジア:おー、そうみたいだな、まあ頑張れよ。
ヒュム:何か困ったことがあったら言うんだぞ、直接は無理でもアドバイスはできるからな。
シーア:二人で遊べるゲーム考えとくね!
ウォルフ:ドワーフの国に行ったら冒険者の酒場に行くといいわ。受付で証明書を発行してもらえるから。
デストラ:強力な魔物たちは襲ってこないはずですのでごゆっくりと旅をしてください、ミウシア教官。
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あー、眠いから返事はまた今度で...ルニアは1万年の年月を経てヤンデレ感が出てきたね...。
ふわああ、おやすみ。
◇SIDE:トルペタ
どうしよう。起こせない。
別に起こしていいんだろうけど家族以外で寝ている女性を見るのは初めてだしミウシアさん美人だし、起こすって声をかければいいのか?
「ミ、ミウシアさーん、交代ですよ、起きてくださーい。」
「ん、ん~」
もぞもぞと動くミウシアさん。毛布がずれてきている服(革当ては外している)もずれて肩が見えてる。
ミウシアさん、俺成人してますよ?無防備すぎじゃないですか?
どこを触っても恥ずかしいので毛布に覆われた手をトントンと叩いておこした。
「ぅあ~、もうそんなじかんかあ、ごめんねおきるね~」
頭をぽりぽりとかきながら乱れた服を直すミウシアさん。恥じらいとかあんまり感じてないのか...。
次は俺が寝る番なんだけど、母さんからもらった毛布は一枚。
つまりミウシアさんが寝てたところで俺も寝る。
俺は邪な気持ちをかき消すように頭を振りながら一気に毛布を掛けて寝転がる。
あったかいし自分の匂いじゃない匂いがするしなんか女性特有の匂いがするしなんかもう...。
この生活耐えられる自信ないですウォルフ様!!!




