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「22話 感謝祭(後編) 」



「な、なんでここに....。」


壇上にいる少女はだぼだぼのオーバーオールにタンクトップ、ヘルメットを着けて腰には工作ツールを付けている。

つまりウォルフだった。


「ミウちゃんそんな耳を立ててどうしたんだい?あれはこの村の巫女さんだよ。まさか本物のウォルフ様がこんなちんけな村に降臨なさるわけないじゃないか」

わはははと笑って私の背中をばしばしたたいてくるコルペタさん。いたたた。


「バーニア族の感謝祭でも巫女さんがルニア様を模した衣装で出てくるじゃないですか、それと同じですよ。」


「ド、ドワーフ族の感謝祭に出たのが初めてだからちょっとびっくりしちゃったよ~」

この感謝祭というのは巫女と呼ばれる村の代表が神を模した衣装で踊るような儀式をしてそれを見ながら飲み食いするようなものらしい。

ん?そうなるとジア、ヒュムは巫女さんも演じることになるのかな?ちょっと見てみたい気もする。


出される料理はどれも塩気が強めでお酒が進む。なんだかふわふわしてきたのはきっとそのせいかな。

もっとおいしいお酒が飲みたいな。お酒造り何てしたことないから自分じゃあ作れなさそうだし。


そのあと、酔った私がトルペタ君に絡み酒してボディタッチを多発したりトルペタ君が照れてあたふたしたりコルペタさんが爆笑したりして場がにぎやかになった時、他のテーブルからでかい樽を持ったゴーゲンさんがやってきた。


「おう!嬢ちゃん!飲んでんな~顔がまっかだぜ~?」


「お~ゴーゲン飲むぞ~~~!ワームだああワーム食べるぞおおおおお」

酔っぱらった私は机の上にアイテムボックスを展開しワームを数匹ゴーゲンさんの前に出した。


「ちょっおま、今の時空間魔法か?しかも魔法陣も始動キーも無視してんじゃねぇか....。」

「あらすごい!」

「ミウシアさん!あぁもう....。すみませんゴーゲンさん。このことは内密にしてもらえませんか。」


ゴーゲンさんは凄い驚いてるしコルペタさんはあらあらまあまあ見たいな反応してるけどフォレストワーム出しただけだよ?

・・・あ~そうだったアイテムボックス隠してるんだった間違えたまあいいや。


「今のは~~見なかった!ゴーゲン何も見なかった!いいね!」

「あ、ああ。何か事情があるんだろうな。にしても嬢ちゃん大丈夫か?酔いすぎじゃねぇか?まぁ感謝祭は羽目を外しすぎてなんぼのもんだ、ほれ飲むぞ!!あとフォレストワームもな!」

ゴーゲンさんは樽の中のお酒を私のジョッキについでくれた。じゃあ私はおつまみ提供だ。


その辺にあったお肉を食べた串を使ってフォレストワームの頭を落とし、串にさす。

それをテーブルの木目にプスッとさして固定する。

「からの~~~~<弱火>プチファイアああああ」


プチファイアの始点をフォレストワームの少し下に設定し、ほおっておいたら勝手に焼けるようにしておく。

「嬢ちゃん手際がいいなあ!っし、他にも料理はあるんだ。ガンガン食べて飲もうぜ!!」

「おおおおおーーー!」

「ほどほどにしてくださいねミウシアさん....。」

「あたしはミウちゃんが無防備すぎて心配だよ....。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


それから飲み続けてだいたい3時間、料理もあまりなくなってきてちらほら家に帰る人がいる中ミウシアはまだ飲んでいた。

そして周りには10人程度のオッサンドワーフたちが騒いでいる。ちなみにトルペタとコルペタは先に家に帰っている。

どうやらオッサン集団がミウシアに危害を加えないと思ったようだ。


「んでつぎは~~~~~~~?<岩作成>クリエイトストーーーーーン!!!!はい!巨乳な私!!!」


ミウシアは魔法を使って様々な宴会芸を披露していた。酔いもいい感じに収まりつつあり心地よいほろ酔い気分だった。

そして今はオッサン達に「嬢ちゃんはでけぇのに胸はちっちぇよなぁ」と言われて怒ったミウシアが魔法で胸を盛りに盛っているところだった。


ミウシアは自由自在に石を作る魔法で精工な胸パッドをつくりバストアップを披露した。

そんなミウシアをみて「おお~~~~!!」とか「いいぞ~~~!」とか「ピューーーーピューーー!」と盛り上がっているオッサン達。


「からのーーーーー<岩作成>クリエイトストーン!!!」


「うげぇ!!おもっ!!」


「はい!巨乳なゴーゲン!!!!!」


「やめろ~~~!!」とか「そんなんみたくねえぞーーーー!」とか「Booooooo!Booooooo!」と盛り下がっているオッサン達。

<光反射>ミラーで細長く見える鏡を作り出したり、<弱火>プチファイアをリング状に出してその間をくぐったり、ひとしきり宴会芸を披露したミウシアはゴーゲンの隣にすわって一息つく。

後ろではほかのドワーフたちが自分の作品を披露しあって盛り上がっていた。

アイテムボックスからこっそりメイプルウォーターをジョッキに出して一気に飲み干し酔いを醒ましていく。


「にしてもすげぇよなその魔法....。なあ嬢ちゃん。一つその力で頼まれごとをしちゃあくれねぇか?」

「あ、私もゴーゲンに頼みある。持ちつ持たれつでいこ~。」

テーブルの上にあったクルシュのパイを頬張りながらゴーゲンの背中をばしばしたたくミウシア。


「ほんっとに最初とイメージちげぇな、そっちのほうが親しみやすくていいけどよ。それで頼みってのがうちの工房についてなんだけどな?最近息子が俺の正式な弟子になるっつうんで嫁と一緒にうちに引っ越してきたんだが、人に教えるには部屋が狭くてよ。広い部屋に炉をうつしてえんだが炉なんて移動できるもんじゃねぇだろ?その魔法がどのサイズのものまで収納できるかはわかんねぇがもし可能ならお願いできねぇか?」


ゴーゲンの悩みは炉の引っ越し作業だった。しかしミウシアのアイテムボックスの性能を知らないためできればお願いしたいとのことだった。

そんなゴーゲンの心配は杞憂に終わるのであった。


「どのサイズかわかんないけど家くらいならよゆーだよ~。そしたら私のお願いも聞いてほしいんだけど。今私武器持ってなくて、短剣を作ってほしいんだよね~。できれば短剣にしてはちょっと長めで軽い奴。頼んだ!!!」


ミウシアの悩みは知っての通り武器の調達だった。しかしゴーゲンの腕前を知らないため最低限戦える程度のものなら都のことだった。

そんなミウシアの心配もまた、杞憂に終わるのであった。


「任せろ、このままだと効率悪く教えるか炉をもう一つ作る必要あるところだった。あの炉は特別で早々簡単に作れねえんだ。余ってる素材でいい武器作ってやる!!」


ここに二人の利害は一致した。


「よーし!みんな飲みなおすぞーーーー!!!」

いったんメイプルウォーターで酔いを醒ましたはずのミウシアだったがサクサク話が進みそうで気分が上がったのか、再度酒に手を伸ばし何杯目かわからない酒を一気に流し込むのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◇SIDE:トルペタ


「まったく、ゴーゲンのオッサンはミウシアさんに飲ませすぎなんだよ・・・。」


ミウシアさんの帰りが遅かったので、心配して感謝祭会場に顔を出すとゴーゲンのオッサン達とミウシアさんが地面で爆睡していた。

皆全く起きる気配が無く、俺は諦めてミウシアさんを連れて帰ることにした。

あいにく俺は手先が器用なだけで力がない。

ミウシアさんには悪いけど土を運ぶときに使う手押し車に乗せて家に向かうことにした。


こんな時にミウシアさんを背負って家まで帰れたら格好よかったのに。


「にしても、綺麗だなぁ。」


ミウシアさんはとても綺麗だ。背が高く程よく引き締まった体をしている。

褐色の肌は、太陽の光を受けると淡く光を反射しまるで樹液で加工された陶器のようだ。


「あんまりじろじろ見るのも男として最低だな....。」


でも手押し車を押しているとどうしても無防備なミウシアさんが視界に入ってしまう。

たまに「うぅ~ん」とか「ゲツヨウのカイギが....」とか「タバコ...」とか聞きなれない単語が聞こえてくる。


きっと故郷のことだと思う。

俺もいつかこの村から出て冒険者として旅に出たいと思っていたけどきっかけが無かった。

変わらない平和な日々、それは良いことなんだろうけど俺は吟遊詩人が謡う英雄譚のような経験がしたかった。

まぁ俺くらいの年齢の男性なら誰しもが思うことなんだけども。


「ミウシアさんと旅ができたら楽しいだろうなぁ。」


きっとこれは自由に旅をして楽しく生きるミウシアさんへの憧れなんだと思う。


家についた俺は母と一緒にミウシアさんを昔父が使っていた工房の休憩室に寝かせた。


「明日はゴーゲンさんにミウシアさんの話をして武器を作ってもらって、そしたらミウシアさんはまた旅にでるんだろうな。」


悩むくらいならミウシアさんに旅について言ってもいいか聞けばいいのに、俺には勇気がない。現状を変えて新しいことに挑戦する勇気が。

何かきっかけがあればと思いながら寝床に入ったのであった。


『...聞こえる...?...技の民トルペタ...。』

なんだこの声...?俺はたしか寝たはず...?


『ええ、そうよここはあなたの夢の中。どうもトルペタ。私が誰かわかる?』


気が付くと真っ白い空間に立っていた。

声の聞こえるほうに顔を向けるとそこには今日感謝祭で踊っていた巫女と同じ格好をした少女が立っていた。

しかしその存在感、特に目の色は夜空の切り取ったような色をしていてとても神々しい雰囲気をまとっていた。


もしかして、ウォルフ様...?いやそんな...。


『そうよ、私は技の神ウォルフ。あなたに天啓を授けます...といっても助言のようなものだけどね。』

そうウォルフ様は仰ると優しい表情で俺に語り掛けた。


『あなたの悩みはバーニア族のミウシアという少女が解決してくれるでしょう。共に行動するといいことがあるわ。』


ミウシアさん...?どうしてウォルフ様がミウシアさんの名を!?


『あら、もう知り合っていたのね。あなたは運がいい(・・・・)みたいだからそのせいでしょうね。ミウシアに今日見た夢のことを伝えてはいけません。あたしに言えるのはこれまで。私が今後あなたの前に姿を見せることはないでしょうけど私はいつでもあなたたちを見ています。いいですね。』


待ってくださいウォルフ様...なぜ俺に、なぜミウシア様が...。

考えがまとまらない俺をウォルフ様は待ってくれることもなくスーっと消えていく。そして夢が覚めていく...。




◇一方疑似神界では

頭からゆめゆめくんを外したウォルフはふいーーーっと深いため息をついた。

周りにはほかの神たちが一番手で天啓を下したウォルフに感想を聞きたそうにしていた。


「おうウォルフ、どうだった?」


「いや~ちょっと発言しすぎちゃった。それにミウシアに手を出さないか心配でいつでもあんたを見てるみたいなこともいっちゃった。あ~~~~緊張した。次誰!バカジア行きなさいよ!」


天啓を下されたトルペタはなぜ自分が神に選ばれたのか、なぜミウシアなのか悩んでいるがそんなに高尚な話ではない。

なんとなく無害そうな少年をミウシアのお守りを任せ、かつミウシアに手を出すないつでも監視してるぞと脅されただけなのだった。


哀れトルペタ。




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