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「19話 クルシュ村 」


トルペタ君に着いて村を進んでいくと大勢の人が広場で感謝祭の準備を行っていた。

村の人は全てドワーフ族のためスケール感が狂いそうになるが広場の真ん中には半径5m程の石でできた質素な舞台があった。

その周りを加工用に椅子やテーブルが設置されていて、机の上に料理と飲み物を運んでいる人や舞台に何か運んでいる人がいた。

それ以外にも仕事のある日とにちょっかいを出す子供や地べたに座り込んで数人でお酒を飲んでいる人もいた。さぼりかな?


トルペタ君が広場の横を通り過ぎようとすると広場にいる人たちの一部の視線が集まる。私に。


「んー?おいおい妙な恰好したバーニア族の別嬪さんがなんでこんな田舎にいるんだ?クルシュじゃなくて女拾ってきてどーすんだよ」

お酒を飲んでいたドワーフのうち一人が座りながらトルペタ君に野次を飛ばす。

ギャハハハハと周りのドワーフもつられて笑っている。


言ってることは野蛮ではあるけど村の若者をからかうオッサンって感じで嫌みがあるわけではない。

というかどう見てもオッサンには見えない。中学1年生の男の子が農夫のコスプレをして子供ビールを飲んているようにしか見えない。


「ゴーゲンのオッサン、失礼だろ!この人はミウシアさん。森でクルシュを集めてるときに会ったんだ。旅をしているらしくてこの村で1泊したいみたいなんだ。」


トルペタ君がこういう絡みに私が慣れていないだろうと気を利かしてオッサンの相手をしてくれている。

ところがどっこい私も若輩者ではあったが会社でオッサンとはいやというほど絡んだ。ここで印象を良くしておきたいな。


私はゴーゲンと呼ばれたオッサンに近寄り挨拶をする。


「どうも、ミウシアと申します。お楽しみのところ水を差してしまって申し訳ございません。もしよろしかったらコレ、お酒のおつまみにいかがでしょうか?」

そういいながら私はトルペタ君に貰った袋に手を入れアイテムボックスからフォレストワームを取り出す。


「お、フォレストワームじゃねえか!若い奴らにゃあコレのうまさがわかねぇと思ってたが嬢ちゃんはイケるクチなのか?」

「ええ、もちろん。私は焼いて食べますよ。こんな風に・・・ね!<発火>ファイア!」

袋からアイテムボックスを通してメープルの枝を取り出しフォレストワームを4匹ほど刺して<弱火>プチファイアより強い火をイメージした<発火>ファイアをその場で作り出し、串にささったフォレストワームをじりじりと効果力で一気に焼く。


「おおー!嬢ちゃん魔法を使えるのか!本当にいいとこの嬢ちゃんじゃねえか!」

「うちの母ちゃんも魔法が使えたら飯の時間が早まるのによぉ」

「風呂だって夢じゃねえぜ!!」


ゴーゲンと一緒にいたオッサン達も私の魔法を見て驚いている。

そろそろフォレストワームの表面が焦げる程度には焼けたので串から外してみんなに配る。

「それでは・・・はい、熱いから気を付けて食べてくださいね。」

「おお、すまねぇな!じゃあ酒のつまみに一つ・・・。もちろん坊主の分もあるんだろう?」

「いや!俺はいいよ!・・・ほら!クルシュを届けなきゃいけないから行こう、ミウシアさん。」


酒飲みたちにこんがり焼けたフォレストワームを渡し、トルペタ君に焼いたフォレストワームを片手に別れの挨拶をする。

「それじゃあゴーゲンさんたち、飲みすぎないように気を付けてくださいね!」

「おう!いくら飲んでもこんな安酒じゃ酔わねぇけどな!!嬢ちゃんも気をつけろよ、坊主に襲われないようにな!」


ゴーゲンさんたちに手を振って別れた後、先に逃げるように行ってしまったトルペタ君の後をフォレストワームを頬張りながら小走りで追いかけた。

「まったく・・・・オッサン達ときたら・・・・。ミウシアさんすみません。オッサン達の相手させちゃって。」

「あーいいよいいよぉ、わふぁひああいうのなれてるひ。」

もぐもぐと咀嚼(そしゃく)しながら答えた私はさっきのやり取りからトルペタ君の反応見る限り大人にからかわれ慣れてないみたいだし案外女性関係とかあんまりないのかなぁと思いながら後について歩く。


「あそこに見えるのが俺の家です。」

指を刺した方向を向くと私の身長くらいの装飾のない大きな木弓を家の入口に飾った家があった。

2階建ての木造の家、横に隣接して倉庫のようなものがある。

周囲にも家はあるがほかの家よりは倉庫分でかい。


「へー、立派なお家だね、あそこにある弓は何?」

「あぁ、.....父さんが弓専門の木工職人だったんですよ。数年前に感謝祭用に作ったものを飾ってるんです。ドワーフ族には持つことすらできませんけどね。」

「おっきいもんねぇ....。」


ふと私は武器について考えた。

このままこの村を出て各地を巡る時、当然魔物に出会うことになる。

そうなった時のために武器が必要だとこの大きな弓をみて気が付いた。


ゲームの中では短剣士をメインの職業としていたため、この世界でも短剣を主に使っていこうと思ってる。

短剣士は速さ特化で敵の攻撃を避けて戦うスタイルなのでゲームと違って痛覚があるこの世界ではなるべく痛い思いをしたくない。

魔法、弓も遠距離から攻撃できるけどもし万が一奇襲をされたときに避けることができなかったら嫌だし。


「ね~トルペタ君。この村で鉄製の武器を作れる職人さんとかはいないの?」

「あそっか。さっきフルネームは教えてもらっていませんでしたね。ゴーゲンさんの本名はゴーゲン・アイアン。鉄を扱う鍛冶師ですよ!あんなに飲んだくれても....なぜか腕は確かなんですよ....。」

トルペタ君は不思議そうに首を傾げながら答えてくれた。


ゴーゲンさんが鍛冶師であればダガーの作成を依頼できるかもしれない。それにもし素材が足りなくても採掘士としての知識はある(ハズ)なのでつるはしでも借りれば何とかなると思う。

「そうだったんだ....。あとで武器製作の相談しに行きたいからおうち教えて!!」


「わかりました。とりあえず俺の家族を紹介しますね。」

トルペタ君はそういうと扉に手をかけてただいまーと言いながら家の中に入った。

扉を開けた瞬間ふわっとメープルシロップの甘い香りが私を包んだ。

思わず口の奥から湧き出たよだれを飲み込みながら私も頭を下げながら小さめの扉をくぐった。


「お邪魔しまーす...わあ。」


家の中は全て木でできていて、天井からつるされたランプから出るオレンジ色の淡い光が部屋全体を明るく照らしていた。

ランプの光に照らされた壁には大小さまざまな弓がたくさんつるされていた。

部屋の真ん中には角が全て丸み帯びた可愛い木の机と木の椅子が置いてあり、その奥のキッチンには割烹着のような服を着た少女が何かを作っている。


その少女は私の声を聴いて勢いよく振り返った。と思ったらにやにやしながらゆっくりとトルペタ君に近づいてくる。

「あらあらあらあらあらあらぁ?ト・ル・ペ・タァ、あんた案外やるわねぇ!異種族のガールフレンド連れてくるなんて.....。」


「か、母さん。この人はそんなんじゃないんだよ!森でたまたま会ったんだよ!!」

どうやらトルペタ君のお母さんらしい。

ドワーフ族は年老いても見た目の変化がないとは言え、トルペタ君と同じ栗色の長めの髪を二つに緩く縛っているその見た目はどう見ても子供がいる女性には見えない....。んだけど.....。

胸がでかい。その少女のような見た目にあるまじき胸はとてもドワーフ族とは思えない・・・。

っといけない。ちゃんと挨拶しないと。


「初めまして、バーニア族のミウシアと言います。森を彷徨っている時にトルペタ君とたまたま出会いまして、このクルシュ村に案内していただきました。」

「そんなに畏まらなくてもいいんだよ、もっと気楽に話しておくれ。あたしはコルペタ、トルペタの母親さ。にしてもバーニア族でしかもこんなに美人さんなんて初めて見たよぉ」

コルペタさんは私に近づいてきて肩....には手が届かないので腰のあたりをポンポンと軽くたたかれた。

気さくなお母さんで好感が持てるなあと思いつつ上からコルペタさんを見るとやはり胸に目が行ってしまう。

体は女性になってもやっぱり心の根っこの部分は男であることに少し安堵した。よかったぁ・・・。


「何か作ってたんですか?とてもいい匂いですね....。」

なにせこの世界に来てからメープルウォーター、キノコ、芋虫、山菜しか口にしてない。

ちゃんとした料理を目にしたのは久しぶりだった。


「あぁ、今日は感謝祭だろ?うちは毎年クルシュのパイを作ってるんだ。トルペタ、あんたちゃんととってき....てるね。しかも相当な量じゃないか....。」

「ミウシアさんが....、あ、そうだ。少しの間ミウシアさんをうちに泊めてもいいかな?行く当てもないらしくて....。このクルシュはほとんどミウシアさんが取ったもので、コレを宿代にってもらったんだ。」

トルペタ君は背負っていた大きな袋をコルペタさんに見せた。

おそらく十分な量のはずだ。お金を持ち合わせていないからもし足りなかったら体で支払うしかない。体力的な意味で。


「もし足りないようであればいくらでも働きます。少しの間でいいんです。旅支度ができるまでお世話になることはできますか・・・・?」


いきなり違う種族の成人女性が訪ねてきて泊めてくれって言われても信用できないんじゃないかと思ったが、私が頭を下げながらちらっと眼を開けるとコルペタさんは思いのほかニコニコ笑ってこっちを見ていた。


「もっちろん!なんならずっといてくれてもいいんだよ、トルペタもミウシアちゃんのこと気に入ってるみたいだし....ねぇ!」

「ちょ、ちょっと母さんやめてよ....。」


顔を真っ赤にしながら否定しても説得力ないよコルペタ君....。可愛い奴め。


「ありがとうございます!!あ、トルペタ君のお父さんにもご挨拶したいのですが今どちらに・・・?」

私が発言すると少しだけ顔を暗くしたコルペタさんがトルペタ君をちらっと見てから答えた。


「旦那は、トルカは去年森で魔物と戦って死んだよ、とはいってもただじゃあ死ななかった!大人数人でかかっても倒せないドワーフ三人分のでかさはあるフォレストウルフを一人で倒したんだ!自前の弓でね!だから悲しい気持ちよりも誇らしい気持ちでいっぱいなんだ。」

そういうとコルペタさんは憂いを帯びた優しい表情で壁にかかった弓を見つめていた。


「....知らなかったとはいえ無神経な質問してしまってすみませんでした....。とても勇敢だったんですね、フォレストウルフを一人で....。」

ゲームでもフォレストウルフはいた。体長3~4メートルはある狼で、群れではなく一匹で行動している。

その見た目はゲームとはいえ一人称での対峙は迫力が凄い。初見ではあまりの迫力に私も全力で逃げたくらいだった。


死んだら死んでしまう、ゲームではない(・・・・・・・)この世界で一人のドワーフ族がそんなフォレストウルフに立ち向かうことは並々ならぬ覚悟と勇気が必要だと思う。


「えぇ、父は勇敢でした。家にいるときは母さんに頭が上がらない優しい父だったのに....。誇らしいです。」

トルペタ君も優しい表情をして昔を思い出し懐かしんでいた。


「それはそうと!ミウシアちゃん、さっそくだけどクルシュパイを作るの手伝ってもらってもいいかい?」

コルペタさんはいきなり私の手をガシッとつかんで上目遣いをしてくる。さすがドワーフ族、一児の母なのに守ってあげたくなるほどかわいい。


「もっちろんです!!魔法も使えるので火の調節だってできますよっ!」

魔法という単語を聞いた途端コルペタさんがピタッと止まった。

私なんか変なこと言ったかな....?


「....今魔法って言ったのかい....?もしかしてミウシアちゃんはあったかいお湯を熱を保ったままにできたりするのかい....?」

「え、えぇ。できますけど....。」

私が肯定するとコルペタさんは私の腕をガシッとつかんでそのまま外に向かい歩き出した。


「トルペタ!料理の続き任せたよ!!あたしはミウシアちゃんと倉庫でお風呂に入るから、覗くんじゃないよ!!!!」

「そ、そそんなことしねーよ!ミウシアさんすみません母をお願いしま」

トルペタ君が最後まで言い切る前に私はコルペタさんによって家から出されてしまった。

そしてそのまま倉庫に....お風呂....?


ちょっとまって一応まだ心は男だから!!こんなかわいくてロリ巨乳な女の子とお風呂とかまずいって!!

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