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「18話 ドワーフ族の少年 」


私が助けた少年(正確には私と会ったことで転んだから私のせいなのかも)は私から離れた後こちらに手を差し出してきてくれた。

「あ、えーと、コホン!あの、大丈夫ですか?転びそうなところを助けてくれてありがとうございます。」


あー、感謝の気持ちが心地よい。

私は手を取りながら起き上がる。

「いや、むしろ驚かせちゃってごめんね?私はミウシア。キミの名前は?」

「俺はトルペタ・アロー、ドワーフ族です。この先にあるクルシュ村に住んでいます。あなたはバーニア族ですよね?どこから来たのですか?この先はメープル森しかないと思いますが・・・。」


しっかりとした話口調から見た目以上の年齢だということがわかった。にしてもここでなんて言えばいいんだろう。素直に「私はこの星を見守る神です!」なんて言えるわけがないし行ったところで頭のおかしい人だと思われること間違いない。


「みての通りバーニア族だよ。えーっと、私の家の掟で成人したら世界を見て回る旅をするって決まってるんだ。だから今は旅をしているんだけど食料の底がついちゃってね・・・。この先のメープル森を拠点にして食料を集めてたんだ。もしよかったらクルシュ村に案内してもらえないかな?」

何か不自然なところは無いかな?半分くらい本当だから疑われないと思うけど・・・。

トルペタ君を見ると驚いた顔をした後険しい表情になった。どうしたんだろうか。


「き・・き危険です!!あなたのような綺麗な方が一人で旅だなんて!!!それにメープル森で食材集めなんて木から飲み物を集めることしかできないでしょう・・・。荷物もあまり持ってなさそうですし・・・。」

ものすっごく心配された。考えたらこんな見た目の女性が一人で旅なんて、非力に見えるし私が後藤武蔵だったころでも同じように思うだろう。


「心配してくれてありがとう、でも飲み物以外にもあったよ?」

目の前にアイテムボックスの空間を展開させフォレストワームを一匹取り出す。最初はこの感触が嫌いだったけど今はもう嫌いじゃない。


「時空間魔法?!それも魔法陣、始動キー無しで!?」

私、何かやっちゃいました?ってやつだこれ!!ステータスとアイテムボックスはシステムメニューみたいなものだから魔法じゃないんだけどね。

予想以上に驚かれたためさっき考えた家の事情にに絡めてそれらしい言い訳を述べた。


「これは私の家系に伝わる秘術なの。うっかり使っちゃったけどできれば内緒にしておいてもらえると嬉しいな。」

ちょっと前かがみになって人差し指だけ上に立てながら唇の前に持ってきてトルペタ君に伝える。

これぞ、一人で暇なときに魔法で作った鏡に向かって日夜練習していた数あるあざといポーズのうちの一つ、「内緒だよポーズ」だ。

でも片手に芋虫握りしめてやるポーズじゃないねこれ。



「わ、わかりました。ここだけの話にしておきます。・・・ところでそのフォレストワーム、ミウシアさんが食べるんですか?」

「これ?うん。ほんのり甘くておいしいよ?トルペタ君は食べたことないの?」

「村の年配たちが酒のつまみに食べてるのは見たことありますが、俺はちょっと苦手で・・・。」


誰も食べないわけではないらしい。それでも年配の酒のつまみでしか見たことが無いなら私はゲテモノを主食としている変わった人だと思われているだろう。


「あ、あの、ミウシアさんをクルシュ村にご案内してもこちら側は問題ないのですが、クルシュ村に宿屋は無いので泊るところが・・・。俺の家に案内してもいいんですがミウシアさんはあって間もない男の家に泊まるなんて・・・。」


まったく気にしない。むしろ女性と同じ部屋のほうが私の理性が持たないと思う。

それにトルペタ君は私からしたら年下の男の子にしか見えないし、まだ(・・)心は男の部分もある。

恋愛とかに関しては女性にしか興味が無いはずだ。自分の体を見てもそこまで興奮しないのは多分自分だからかな。


「あ、そういうの全然気にしなくていいよ、でもいいの?本当に。私としてはありがたいんだけど二人きりだとトルペタ君気にならない?」

「!?いやいやいやいやいやいやいや両親も家にいますから!!まさか一人暮らしの男の家に誘うわけないじゃないですか!!.....とにかく!ミウシアさんを家に案内しますのでついてきてください!ここから1時間ほど歩きますので準備ができ次第行きましょう。」

「は~い」


準備をしてクルシュ村に向けて歩き出した。

途中でこの世界の一般的なステータスが知りたかったのでトルペタ君に聞こえないくらいの声で<解析>アナライズでステータスを確認した。


-------------------

名前:トルペタ・アロー

種族:ドワーフ族

職業:該当項目がありません

HP:30/30

MP:10/10

力:E

防御:E-

魔力:E-

早さ:E-

運:A

-------------------  


結果、トルペタ君が一般的かどうかはわからないけど一応彼のステータスを基準に考えておくことにした。

そうすると私は基礎ステータスが高め・・・というかそもそもレベルはあるのかもわからない。

一度定番の冒険者ギルドとかで話を聞くべきだなあと思った。


道中で歩きながら焼いたフォレストワームを食べていたらトルペタ君にどんな味がするのか聞かれたためメープルシロップがほんのりかかった焼き芋みたいな感じであることを伝えると少し興味深そうに見てきたので小さくて食べやすそうなフォレストワームを焼いて上げた。

5分くらいの時間食べるのを躊躇していたが「せっかく焼いてあげたのに食べないの?」と伝えると意を決したかのように口の中に放り込みやけくそ気味に口をもぐもぐと動かした。

トルペタ君の感想は「思ったよりも甘くなくてちょっと触感が気持ち悪い・・・・。吐きそうです。」とのことだった。

私も最初はそうだったなぁと笑っていると30mくらい先に開けた空間と建物が見えてきた。


「お待たせしました、ここがクルシュ村です!」


森を抜けたそこは私が想像していた村のイメージ以上に栄えていた。

視界に入る建物は木で作られた立派な家がほとんどで小屋と呼べるようなささやかなものは無かった。

規模は数百人くらいで、見る限りではお店はなさそうだったため外部からの来客はめったにないっぽい。

森と村の境目にこれといった塀や入り口のような門は無く、家の裏に茂み森から出てきたような気持ちになる。

遠くから見ると立派な家だったのに、微妙に縮尺が小さい。家のドアはドワーフ用で高さ160センチくらいで多分私が入ろうとすると少し屈まないと入れなさそう。極端に小さいんじゃなくて微妙に小さいだけだから家の中に入った時に物を壊したりしないか不安になってきた。

トルペタ君の家族に迷惑かけないようにしないと・・。


トルペタ君に案内されてついていくと、何やら村の中心部付近がガヤガヤと慌ただしかった。


「トルペタくん、今日は何かあるの?それともいつもこんな感じ?」

「今日は感謝祭ですよ!バーニア族も同じ日ですよね?」

「あ、あ~。ずいぶんと一人でいたから忘れちゃってたよ。あ~今日だったんだ~。」


はて、感謝祭とは一体・・・。

しったかぶって見たものの、これ以上追及されるとぼろが出そうだよ。

なんかトルペタ君の反応見る限り忘れてはいけないことであり全ての種族にとって大事な日らしいから、日本でいうところのクリスマスとかかな?

さすがに日本でクリスマスって何?って聞いたらおかしな人認定されちゃうと思う。


「ドワーフ族流の祝い方ですがミウシアさんもぜひ参加していってください。今日はそのためにクルシュを取りに森へ・・・・行ったのに取るの忘れた・・・。」

どうやら私と会ったことで本来の目的を忘れちゃったみたい。

クルシュというのが何かわからないけど何となく響きが胡桃っぽいのとトルペタ君と会ったところには胡桃がたくさんあったことから何となく予想がついた。


「クルシュってこれだよね?たくさん取ったからもしよかったら全部あげるよ。トルペタ君の家に泊めてもらうお礼、宿代として受け取ってよ、もし少なかったら働いて返すから教えてね!何か袋ある?」

「ほ、本当ですか!ありがとうございます!それではここにお願いします!」


トルペタ君が腰から折りたたんだ袋を取り出し、広げていくと人ひとり(ドワーフ換算)入るくらいの。

私が取ったクルシュ(胡桃)は100個近くあるけどこれなら間に合いそう。


「トルペタ君袋広げててねー。」

「?わ、わかりました・・。」


少し不思議そうに首を傾げるとトルペタ君は袋を広げて袋が地面につかないように背伸びをして上に向けた。可愛い。

その袋の入り口にアイテムボックスを展開し、下に向かってクルシュを出していく。

ドドドドドドと音を上げて短時間で貯めたクルシュがどんどんと袋を満たしていきトルペタ君がふら付く。


「うわわわわ」

トルペタ君のもつ袋が8割くらい満たされたとき私は代わりに袋を持とうとしたがトルペタ君が首を振り私の助けはいらないとアピールしてきた。


「ここは男の俺に任せてください。」(ミウシアさんに持たせて帰ったら親になんていわれるか目に見えてるし。)ボソボソ

「あ、あー。うん、じゃあお願いするね。」


ごめんトルペタ君、バーニア族は耳がいいんだ....。

気持ちわかるよ、異性の前で親になんか言われるのってこたえるもんね....。


「あ、村の中で時空間魔法を使う時にごまかせるようにこの袋持っていてください。小さいですがごまかしは聞くと思います。」

「ありがとう!」

トルペタ君からコンビニ袋ぐらいの大きさの布袋を貰い、ベルトにつける。


口を結んだ袋を担いだトルペタ君は少しふら付くも何とか歩き出す。

「じゃあついてきてください。俺の家はすぐ近くですので。」


その姿をほほえましく思い笑みをこぼしながらうなずいた私はトルペタ君の後に続いて家に向かうのであった。





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