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「156話 ヴォイドストーン 」

SIDE:トルペタ

「ミウシアさん!何か方法を見つけたんですか!」

ルクニカさんに言われた通り、戦線を離脱しミウシアさんの元へと俺は駆け足で向かった。


「オセロ、ヴォイドストーンを。」

「りょーかいにゃ。」

俺が正体をよくわかってないオセロと呼ばれた二足歩行の猫がミウシアさんと同じアイテムボックスを展開し、中から一つの石を取り出した。

それを受け取ったミウシアさんはその石を俺に見せてくる。


「トルペタ君、大事なところだけいうね。この『ヴォイドスト―ン』をトルペタ君の力で矢に加工してディレヴォイズに打ち込んでほしいんだ。」

そう言ってミウシアさんは黒い手のひらサイズの石を俺に渡してきた。


「ッ!?」

その石に触れた瞬間、手からマナが抜けていく感覚に陥り、思わず手を引っ込めてしまう。

この石は一体...?


「気が付いたと思うけど、この石はマナを吸収し続ける。触れた相手のマナの総量に応じてその吸収する量が変わるんだ。」

つまりこの石で作った矢がディレヴォイズに刺されば、弱体化することができるってことか。


でも、師匠直伝の加工技術はマナを使って形を変化させる。

マナを吸収する石にマナを通して加工....?俺にできるのか?


つい不安に思ってミウシアさんの方を向くと、ミウシアさんはとても申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた。


「ごめんね、こんな役回りをさせて....。でもトルペタ君しかできないことなんだ...。」

ミウシアさんは俺を頼るときによくこんな顔をする。

模擬戦をしている時もそうだ。

いつも俺と戦った後、こんな顔で心配してくれる。

気にかけてくれていることが嬉しくもあり、子供扱いされているようで嫌だった。

...俺に姉がいたらこんな感じなんだろうか。


だから俺はミウシアさんにこの顔をされると、対等に見てもらえてないようなそんな気持ちになる。


「謝る必要なんてないですよ。」

それが嫌なら俺がやればできるところを見せればいい。

弱気何てそこらへんに捨てておけばいい。


「こんなの、余裕ですから。」

ミウシアさんから石を受け取り、柄にもなくそんな大口を叩いてみた。


「...任せたよ。トルペタ君はそっちに集中して、こっちは私に任せて。」

俺の言葉を聞いて満足そうに微笑んだミウシアさんは、俺に背を向けてディレヴォイズからの攻撃がこちらに来ないよう、武器を構えて警戒を始めた。


....結局守られてるなぁ。


「....オセロの出番はもうなさそうにゃ?それじゃあ、退散させてもらうにゃ~。....頑張ってにゃ。」

「ありがとう。オセロも元気でね。」

そういうってオセロさんは大きなアイテムボックスのような空間へと消えてしまった。





受け取った石を手にして、地面に座り込む。

加工するにはまずは石の特性を確認する必要があるため、俺は石にマナを流しこんだ。


「っ...。」

軽く流しただけなのに、いつもの数倍のマナを消費した。

でもそのおかげでわかったことがある。

どうやら俺のマナは、黒い石の中心部分に向けて吸収されているようだ。


ということは、この石は本来の姿ではなく、中心部にマナを吸収する未知の物質があることになる。


「割ってみるか。」

石を足で挟み込み、ポーチからノミと小さいハンマーを取り出して石を慎重に叩いていく。

周りの黒い石部分はあまり硬くなく、ノミで削ることが可能なようだ。


コンコン...と少しずつ中を傷付けないよう削っていくと、石の真ん中に一気に亀裂が入り、半分に割れる。


「....これが本当のヴォイドストーン?」

まるで卵の殻が向けるように、石の中から細長い透明な結晶が現れる。

その大きさは人差し指程度。


その大きさで無尽蔵にマナを吸収するなんて...一体ミウシアさんはどこでこんなものを手に入れたのだろう。

そんな疑問を持ちながら、俺はその結晶にマナを流し込んで矢じりの形に変えようとした。


「うっ...。」

しかし、余計な障害が無くなったせいで先ほどよりもマナが多量に吸収される。

これじゃあ師匠の技は使えない、それなら地道に削るしかないか...。


弓を射るときに使用する革手袋をつけて結晶を再度手に持つと、今度はマナが吸収されなかった。

どうやら直に触ることでマナを吸収する特性を持つようだ。

マナが吸収されないのを確認して、ノミで地道に削り始めた....がしかし。


「硬いな....。」

強く打ち付けても傷一つ付けることができない。

この結晶は金属と同等か、それ以上の硬度を持つようだ。

そうなると加工方法は少しずつ削るか熱して叩くか。

いずれにせよここにそんな設備はない...皆が戦って気を逸らせてくれているが、あまり時間もかけられない。

ふと顔を見上げると、レオさんとディレヴォイズが対峙していた。

レオさんは多分全てのマナを使い切ってでもディレヴォイズを止める。

俺は皆を信じてコレを作らなきゃいけない...いや、作ってディレヴォイズに当てる必要がある。


...やるしかない。


手袋を外して結晶を手にもち、ありったけのマナを結晶へと注いだ。

俺のマナが尽きるのが先か、矢じりの形に加工できるのが先か...。


「く...。」

結晶の最小単位、その隙間にマナを流し込むと流し込んだだけ吸収されてマナが無くなる。

でも形をほんの僅かに変えることができた、よくよく見なければわからない程わずかに。


それから何度もマナを注入し、吸収されながらも少しずつ少しずつ、形を変えていく。

マナが枯渇したらアルカナのマナポーションで回復をして、何度も何度も繰り返した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

SIDE:フレア

「クハハハハ!我としたことが、なぜこんな簡単なことに気が付かなかったのか!」

アタシが倒れたレオを抱き起し、マナを分け与えていた時の事だった。


レオの魔法によって剣と茨と槍によって動きを封じ込められていたディレヴォイズが高らかに笑った。


...そして次の瞬間、ディレヴォイズの身体がみるみる内に小さくなっていく。


「マズい!!」

アタシは急いでレオを後方にいるミウシア達の元へ連れて行った。


「おいミウシア!何か策があるんだろ!?早くしろ!」

ディレヴォイズが小さくなったのはおそらく竜人化を行ったからだろう。

巨体を封じ込めるための拘束は、人サイズまで小さくなられちゃあ余裕で抜け出せる。

となりゃあ時間が無い。


「うん、わかってる...。トルペタ君、後どれくらいかかりそう?」

ミウシアが後ろを振り向きトルペタに問いかけた。

アタシもトルペタの方を見ると、地べたに座り込んで何かを作っていた。

....なんだありゃ?矢か?

それにしちゃあ苦しそうな顔してるが....。


「....すいません....もう少しで終わります...。」

「わかった。....フレア、ディレヴォイズが竜人化状態ならオウカの術が無くても私が相手できると思う。フレアも手伝ってくれる?そのハンマーならダメージを与えられると思うんだ。」

「ったりめーだ!!」

そう意気込んでハンマーを握りしめてディレヴォイズの方を見ると、既に拘束を抜け、ゆっくりとこちらに歩き出していた。


「フレアと言ったか、気を付けるのじゃ。儂の障壁ももう長くはもたん...。」

「おう!!」

「先行くねっ!!」

アタシが鹿の聖獣の忠告を聞いていると、ミウシアが先に駆け出していた。

そのミウシアの髪の毛は見たことが無い灰色になっていて、体も透けていた。


「それが新しい力ってことかよっ!!」

ミウシアは何かアタシらにもまだ見せてない技があるようだったが、その答えがあの姿らしい。

ありゃどんな技なんだ?わからなきゃ連携のしようがねぇな。


「神の使徒よ、先はよくぞ我を楽しませてくれた。」

「また溺れさせてあげるよっ!」

ミウシアが一足先にディレヴォイズと戦い始める。

お互いがすさまじいスピードで攻守を繰り広げているのをアタシは何とか目で追えた。

ディレヴォイズの姿は何とか目で追えるが、ミウシアの姿はほぼ見えない。


足を止めてふと考える。

アタシの獲物はでかい、でかいが故にミウシアに当たる心配がある。


「あの中にどうやって入ってきゃいいんだ?」

「気にせず攻撃するです!!5,6!<水弾>ウォーターバレット!!!」

少し離れたところにいたアルカナが、問答無用で無数の水の球を創り出して射出した。

何か考えがあんだな?そうときまりゃあ....。


「話ははえぇよなぁ!」

瞬時に冷属性に変化させた火属性のマナを吸収し、アイス・スピリット状態で飛んでくるアルカナの魔法に向けて冷気を纏ったハンマーを振るう。


「無駄だ。」

ディレヴォイズは竜人化状態を部分的に解除し、飛んでくる氷弾(・・)を撃ち落とした。


「フレア!まだ(・・)凍らせないでください!」

「んだよ!!...わかったよ!!!」

ルクニカに指摘されてイラっとした。

普段連携が連携がって言ってるから合わせたのによぉ!

アタシは馬鹿だからわからないが、何かしらの意図があるんだろうな。

水を当てることが重要で、まだ氷にしない....。

わからねぇけど、アルカナが水を当てるまではハンマーには属性を付けないで攻撃しまくりゃいいか。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

SIDE:アルカナ

「意図は伝わったみたいですね。」

フレアは冷気が消えたハンマーでディレヴォイズに攻撃し出したです。

攻撃すればわかると思うですが、ミウはどうやら物理的な攻撃を透過するようです。


「そのようですね、まったく、脳筋なんですから....。」

ルクニカが呆れたように呟く。

2人は幼馴染ですからね、昔から脳筋思考なフレアには苦労させられたでしょう。


「ではルクニカ、質より量で行くですから、雷属性を合わせるです。」

「わかりました。」

私は全属性を扱えますが、光属性は苦手で雷属性への性質変化はできませんでした。

いつか絶対にできるようになって見せますがね。


しかし、ディレヴォイズは部分的に竜状態に戻してまであの竜人化を解かずに戦っていますね。

わざわざ竜人化でミウと戦うのは何故でしょう...レオの魔法のせいで戦うスペースが確保できないからです?


「ま、好都合ですが。」

ミウとディレヴォイズの頭上に巨大な魔法陣を描きました。

属性は水、火。

更にミウとディレヴォイズを囲うようにしていくつもの魔法陣を空中に描くです


「アルカナさん、ミウちゃんは本当に大丈夫なのでしょうか....?」

物理攻撃を透過させるのなら、水が凍ってできた氷も物体ですし、問題ないと思うですが....。


「まぁ、ミウなら何とかするでしょう...。行くです!!<水よ>、全てを覆いて<海となれ>!」

「飛雷!!」

ルクニカが剣を振るい、上空の魔法陣へと雷の剣閃を飛ばしました。

それに合わせるようにして魔法陣から大量の水が流れ落ちたです。

フレアは先に気が付いてそこから離れましたが、ミウとディレヴォイズはまだ気が付かずに戦っているです。


海をイメージして出した水は多くの不純物を含みます。

ミウに教えてもらった電気を見ずに良く通す方法が役に立ちそうですね。


「ちょっ!」「邪魔をするな!!!」

ミウとディレヴォイズはすぐに気が付き、眼前にふりそそぐ水を避けようと横に避けました。


「その牢獄からは<逃れられない>」

続けて唱えた始動キーで、2人を囲う魔法陣が発動するです。


「痛っ!!」「ッ!」

魔法陣に触れた瞬間、磁石同士が反発し合うように2人は魔法陣に弾かれ、元居た場所へと戻されます。


そのまま、バチバチと音を立てながら降り注ぐ洪水に、ミウとディレヴォイズはなすすべもありませんでした。

...ミウまで避けたってことは、もしかして透過できないですか?


「氷雷よ、全てを<凍らせ>死を招け!!ミウ!避けるです!!!<氷雷牢獄>アイシング・ボルト・プリズン!!!」

「無理無理無理無理無理!!!!!!!!!!!」

「ッ!!!!」

降り注ぐ水を凍らせる直前にルクニカがミウに向けて結界をはってくれたです...危ない所でした。

私の魔法でできた巨大な氷塊の中には身動きができなくなったディレヴォイズと球状の結界に守られたミウの姿が見えるです。


「アルカナァー!!アタシも巻き込まれる所だったぞ!!!」

「アルカナさん、私が結界を貼らなかったらミウちゃんまで凍っていましたよ!!」

「何とかなったからいいじゃないですか....!?あれを見てください!!!」

氷に閉じ込められているディレヴォイズの周りに次々と亀裂が走り、ディレヴォイズの姿が人型のまま竜へと変わっていくです。


「カース・フレイム」

ディレヴォイズを黒炎が包み込み、氷が一瞬で内側から溶かされました。


「あの姿は...!?」

先ほどまでは褐色の角が生えた青年、鱗が体の半分を覆っていました。

しかし今は体の全てを黒色の鱗が覆い、目は赤い光を放ち、角は赤く光り輝いています。

太い尻尾も、巨大な翼も備えたその姿はまさに人の姿をした竜。

そのまま翼を一度振るうと、一瞬で上空へ移動したです。


「メテオ・フレア」

ディレヴォイズが手を掲げ、天に向けて大量のマナを打ち上げました。


「....何を?」

マナを見ることができるニカ、ミウが上空に飛ばされたマナを目で追いました。

私も同じくディレヴォイズの意図を考えたです。

何故空中に移動したのか、天にマナを放出して何の意味があるのか、そして隕石を意味する『メテオ』という言葉...。


「まさか....!!!」

私が恐ろしいことに気が付いた途端、オウカのかけてくれた転移結界がフッと消失したのを感じました。


「お主ら!!!!!!!早く乗るのじゃ!!!!死ぬぞ!!!!」

それと同時に、オウカが鹿の姿へとその身を変え、私達の元にやってきたです。

角にはトル君が引っかかっていました。

それなのにそのまま何か作業をしているのは、ミウの策のせいでしょうか。


私達がオウカの背に乗ろうとしていると、ほどなくして空が光り輝き、いくつもの流れ星がこちらに向かってきたです。


「...燃え上がる隕石(メテオ・フレア)。」

オウカの背に飛び乗り、降り注ぐ隕石を見ながらそう呟きました。

無数の隕石が空中庭園に降り注ぎ、足場を次々と破壊していくです。


オウカのお陰で私達に当たることはありませんでしたが、戦うための足場が無くなってしまいました。


「皆乗っておるな!?」

オウカが城の屋根に飛び移り、私達の安否を確認してきました。


「....うん....皆いる。でも....。」

ミウが皆がいることを確認し、ディレヴォイズの方を見つめたです。

宙で停止したままのディレヴォイズは、冷たい目で私達を見つめています。

まるでゴミでも見るかのような。


「こ、この状況じゃあアタシは何も出来ねぇな...。」

「私も、サポートに回ることになりそうですが...相手は飛べますし...あの規模の攻撃を遠距離からされては.....。」

近距離で戦うフレアとルクニカが苦虫をかみ潰したような顔でディレヴォイズを見つめたです。


「う...。」

「お?目が覚めたか?」

その時、フレアさんが背におぶっていたレオさんから声がしました。

意識が戻ったようですね。


「..うーん..うわわわっ、なにこの状況!?空中庭園壊れてるし、なんか飛んでるし!?」

「レオ、見ての通りだよ、ディレヴォイズの撃った魔法で庭園は崩壊、私達は危機的状況ってわけ....。あぁ、どうしたらいいんだろう....。」

ミウが頭を抱えました。無理もないです、この絶望的な状況で楽観的になれって方が難しいですからね。

しかし、ディレヴォイズが続けて攻撃をしてこない今、早急に解決策を考える必要があるです。


このままオウカに逃げ回ってもらいながら私とトル君で....。


そういえばトル君が任された策はどうなったのでしょう?


「でき...た!!...!?うわぁ!!!何で空中に!?!?」

「こ、こら!暴れるでない!!」

「トルペタ君危ない!」

今まで周りが見えてなかったのでしょうか、作業が終わったトル君がようやく顔を上げて周りの状況を把握したです。

突然空中に移動した(と思っている)トル君が藻掻いたせいで角から落ちそうになります。


「あっぶねー。ミウシアよく反応したな。」

「まぁ、速さだけが取り柄だからね。」

ミウがすぐさま反応し、落ちそうなトル君を抱えて連れてきてくれました。


「周りが見えなくなるほどに集中していたみたいですね、...それで、ミウに何を任されたんです?」

「そうだ!できた!できましたよミウシアさん!これです!」

そう言ってトル君は一本の矢を見せてきました。


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