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「143話 レオの戦い:前編 」

仕事の忙しさで更新ペースがガクッと落ちていますが、合間合間に書き進めていますので最後までお付き合いいただければと思います;;

SIDE:レオ


何で追ってくんのなんで追ってくんのなんで追ってくんのーーーーーーー!?


「ちょっとぉぉぉぉおおん!とまりなさいよッ!」

「止まるものかああああああああ!!!!あっ.....。」

地面からにょきっと飛び出たクリスタルに躓き、体が宙に浮く。


やばい、ここで転んだら追い付かれるううううううううううう!!!


ごろんごろんと地面を数m転げ、地面に倒れ伏す。

.....ドスン、ドスンとこちらに()が向かってくる音がする。


『諦めて戦わんかい....。』

『レオ、天井のシミを数えてる間に終わる』

『レオ、諦めるの。』

俺の契約精霊達うるせええええ!


「追っかけっこはもうお終いかしらン?...じゃあ...ヤりましょ?」

「や、やるって.....何を?」

そんなこと聞く必要ないだろオレええええッ!

戦う以外に何があるんだよ!それ以外だったらどうするんだよオオオオ!


オレの発言に、マッチョオネェはにっこりと微笑みながらポーズを決める。

まるで筋肉をオレに見せつけるかのように。


「決まってるでしょ....?貴方の力で私を攻撃するの.....♪」

へ、へんたいだあああああああ!!!


「オベイロン!フュー!フォリア!一気に終わらせるぞ!!!!」

『必死じゃのう...じゃが気を付けろ、奴は強いぞ。』

『レオのお尻守る~。』

『レオ飛んで逃げるの。』


逃げはしないけど尻は守る!!

フューとフォリアが融合し、背に翼が生える。

オベイロンが杖に憑依し、マナがみなぎる。

オレは過去一スピーディに戦闘態勢に入った。


「うっそ、貴方....天使?ヤダもう、絶対に連れて帰るわよ!!!!」

マッチョオネェが握りこぶしを作り、手と手をゴン!!と合わせて構えを取った。

構えからして、格闘術?戦ったことが無いタイプだけど、空から魔法を使っていれば問題無いっしょ。


....ってか竜種って人間見下してんじゃないの!?

コイツむしろ人間好きじゃん!!


「オベイロン!いきなりだけどヨロ!!!」

『速攻じゃのう....ほっ!』

オレは杖を上に掲げて、オベイロンへフォールコメット発動準備のためのマナを注いだ。


キラッと空に一筋の流れ星が煌めく。


「ヤダ!流れ星!?どんどん....おっきくなってきてるワ...♪」

マッチョオネェは構えを解いて空を見上げ、そんなことを呟いた。

ちょっとオレもう帰っていいっすか!!!!!


...でもどうせフォール・コメットがオベイロンの強力なスキルとはいえ、流石に竜種の中でも協力な相手は倒しきれない感じっしょ?

油断しているいまのうちに畳みかけるっきゃないか....。


「<拘束鉄茨>アイアンソーンバインド!」

「あら!?」

ソーンバインドの茨を土魔法で金属へと変えた拘束力の高い魔法で足止めを行う。

まぁ、マッチョオネェには力負けするだろうけど少しでも足止めができればいっか~程度の感じで。


「<白縮炎>ホワイト・フレア!フェアリー・ブレッシング!」

続けざまに威力は高いけど速度が無いホワイトフレアを発動し、それにフェアリーブレッシングをかけてマナの効率を上げる。

オベイロンが離れている今、この間みたいな緑色の炎にはならないけど、フェアリーブレッシングによって効果が高まってたら流石に少しくらいは効くと....思う。


「こんな拘束意味ないわよ?....だってアタシ貴方の攻撃は全て受け止めるって決めたもの...♪」

「.....ソッスカ。」

意味わかんないって!

なんでオレこんな気に入られちゃってんの!?


宣言通り、鉄の茨にとらわれているのに藻掻こうとせず、ホワイトフレアを真っ向から受け止めようとしている。

小さな炎はゆっくりとマッチョオネェに近付いていき....。


『フォール・コメットォォォォォ!!!!』

隕石と化したオベイロンが空から降り注ぐ。

ホワイトフレアとフォールコメットが着弾する瞬間、マッチョオネェが何かを呟く。


「美味しそうじゃないの....。」

ドゴォォォォォォォォン!!!と周囲にすさまじい音が響き、凝縮されていたホワイトフレアが破裂する。

目を開けられないほどまばゆい光が周囲を照らした。


『ぬぉぉぉ....』

「!?オベイロン!どうした!」

今もなお光をまき散らしながら太陽のように輝くホワイトフレアの中から、悲痛に満ちたオベイロンの声がする。


「凄いワ、これが精霊魔法?まるで天災ねェ♪」

ホワイトフレアの光が徐々に小さくなり、段々とその惨状が見えてきた。


「.....ッ!?」

そこには腰に手を当てて仁王立ちしているマッチョオネェと、その頭から生える巨大な剣のような角に刺さる結晶化したオベイロンがいた。


「オベイロン!?大丈夫なのか!?」

フォール・コメットで結晶体として落下するオベイロンは、見た目はそのまんまオベイロンだけど実体ではない。

マナで作り出された偽物と言ってもいい。


でもさっきのオベイロンの苦しそうな声、もしかしたら精霊とはいえどなんらかのダメージがあったのかもしれない。

その瞬間、角に刺さっていたオベイロンが霧となって消え、オレの杖に戻ってきた。


『う、うぐぐぐぅ....。』

「精霊体にもダメージがあったのか?!」

心配してオベイロンに質問すると、帰ってきたのは予想外の答えだった。


『尻に....尻に異物感が.....。』

『おじいちゃん、ばっちい。』

『おじいちゃん、ばっちぃの。』

「....ソッスカ。」

杖に憑依したオベイロンから伝わってくる悲壮感。

俺の羽になっているフューとフォリアからも冷たい視線をしているような冷ややかな感情が伝わってくる。


...とはいえカウンターで攻撃されたとはいえ、少なからずダメージを与えてるハズ....。


「今の、なかなか良かったわよン♪精霊ちゃんのマナって案外」

しかしマッチョオネェの体に一切の傷はない、それどころか体も一切焼けた形跡が無い。


「....マジ?」


あの攻撃で無傷?

これ正攻法じゃあ無理じゃね...?


「せっかくだし、アタシからも攻撃してあげるワ....死なないでネ..♪」

オレが弱気な思考を巡らせていると、マッチョオネェが攻撃の構えをとった。

ヤバい!と思う間もなく素手で地面を叩きつけた。


ズンッ....と大地が鈍く、深い地点で振動を起こす。

その行動がオレへの直接的な攻撃であることに気が付くのには少し時間がかかった。


かかりすぎた。


『マズい、レオ!盾じゃ!!!』

「...ッ、そういうことかよっ!!フェアリー・シールド!」

オベイロンのマナを全て使い、オレは自分の足元に(・・・)マナでできた盾を展開....しようとしたけどマナの固定が間に合わない。


ゴゴゴッと俺が立つ地面だけに縦揺れの地震が発生する。


『バカモン!一点集中(・・・・)じゃ!!!』

「....りょ!!」

地面に人ひとり分の盾を展開しようとしていたマナを集め、手のひらより小さいサイズまで凝縮。

いつ本命の攻撃が来てもおかしくない、けどこの大きさなら間に合う。

位置はもちろん.....。


「尻だろ!!」

キィィィィン!!!というマナで防御した時特有の音が鼓膜を揺らした。


『やはりのぅ。』

『嫌な死に方するところだった。』

『絶体絶命だったの。』

地面からつきあがる金属製の杭、その先端は俺の尻に展開した盾によってその勢いを完全に殺されていた。


盾が脆かったら、狙いが違ったら相当にグロい、不名誉な死に方をしてたんじゃないのこれ....。

っぶね.....。


「あら、よくわかったわね。」

オレが冷や汗を拭っているとマッチョオネェは追撃をする様子はなく、先ほどまでの妖しい雰囲気が弱々しくなっていた。


『...む?....レオ、少し対話しておれ。もしかすると話すことで勝機を見出せるかもしれん。』

「?」

オベイロンの狙いはよくわからないけど、このまま戦っても勝機はないことが先ほどの攻撃で十分に解ってしまった。


良くも悪くもオレのことをきっ...気に入ってるし、多分話しかけたら普通に返してくれると思う。

正直今は媚びてでも勝つ可能性に縋った方がいい。


「..わかった。マッ..えっと......『シャムラリオルじゃ!!』...シャムラリオル!決着がつく前に君のことを知りたい!少し話をしよう!!」

俺の思いもよらない発言にマッ...シャムラリオルは一瞬驚いた後、満面の笑みへと変わった。


「いぃーーーーーーーーーー」

そしてそのまま笑顔でこっちに走ってくる。

こ、こえ~~~~~~~っ!!

でも殺気を全く感じないことから、戦う気はないらしく本当に喜んでるようだった。


よく見るとスキップしてるし、否定ではないはず....?

どんどんと迫りくるシャムラリオルに思わず目を瞑りそうになる。


「ーーーーーーーーわよぅ!!!!」

オレが目を瞑るよりも早く距離を詰め、キキキッとオレの目の前でブレーキをかけて地面にドカッとすわるシャムラリオル。


「あ、ありがとう.....。」

同じように恐る恐る地面に座り込むと両手を顎に当て、首を傾げながら聞いてきた。


「それでっ、何か話したいことがあるのン?」

「あ、あ~。そうだなぁ....。」

オベイロンが何かを確信するまでは時間稼ぎをしなくちゃいけない。

女の子を口説き落とす自信があっても、同性の相手を落とす自信なんてあるわけなくね~?


同じ要領でやるしかないかぁ...。

例えば....相手の特徴を褒める。


「い、いい筋肉してるよね。」

「あらァ、やっぱりこういう見た目が好きなのね!」

喜んだシャムラリオルは力を入れてムキッ!!とオレにアピールをしてくる。

好きではない!!!程よく筋肉が付いた女性は好きだけど、男性は好きではない!!!


「ン"ン"ン"....恋愛対象ではないけどかっこいいと思うよ....。」

「ん~?人間ちゃんは皆こういう見た目が好きって聞いたのヨ....?」

おやおやおやおやおやおや、選択ミスった?


「いや、まぁ皆が皆好きって訳ではないけど、オレはかっこいいと思うよ~....?」

「そう、嬉しいワ♪」

にっこりと笑うその姿に魔族としての威圧感を感じなかった。

なんか思ったよりも普通に会話できてるし、敵対って感じもしない。

人間を憎んでたりするわけじゃないのか?


オベイロンが話してみろって言ったのはこういうことに気が付かせ用途してたって訳~?


『やはりそうじゃな。レオ、シャムラリオルは精神がそのまま防御に出ておる。』

.....つまり?


『先ほど恋愛対象ではないといった時、シャムラリオルのマナ総量が著しく減りおった。つまり凹ませれば凹ませる程レオが勝てる可能性が出てくるって訳じゃ。』

怒らせずにうまい具合に凹ませるってこと?

むずくね....?


「ねぇ、貴方の名前を教えてくれないかしらン。」

ふとそこまでねちっこくないしゃべり方になるシャムラリオル。

これが彼の素の話し方か?


「レオ、レオ・フェアリアル。名乗ってなくてごめんね~。」

「レオちゃんね。...早速だけどアタシからレオちゃんに聞きたいことがあるの。色々聞いていいかしらン。」

そういって地面をタン!と音が出るように踏むシャムラリオル。

地面がモコモコッと盛り上がり、ほどなくして土でできた二つの椅子が向かい合うように出現した。

....もしかしたら戦うとかではなく、本当に話し合いだけで済むのかもしれない。


オレは彼の純粋な目を見てそう思った。

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