「14話 食料集め 後編」
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「どうしようどうしよう。」
頭を抱えて悩む俺。
目の前にはうねうねと動くフォレストワーム。
何がきついって思ったよりもでかい。
この大きさでは絶対生は無理だ。死んだほうがましとさえ思う。
となるとからっからになるまで焼いてメープルウォーターで流し込むしかないだろう。
フォレストワームを焼くために火をつける必要が出てきた。
「次は火か・・・。」
アイテムボックスからメイプルの葉を40枚程度取り出しドライの魔法で乾燥させていく。
次にゲーム時代に錬金を行う際使っていた加熱用弱火魔法『プチファイア』をイメージして魔法を出す。
「<弱火>プチファイア!」
乾燥したメイプルの葉に火がともる。ここまでは成功した。
アイテムボックスから乾燥していないメイプルの枝を取り出しそこにフォレストワームを刺していく。
刺してもなおうねうねしているその姿に気分が悪くなる。
「うげぇ・・・。」
燃えているメープルの葉のそばに向けて枝を火に向けて斜めに地面にさした。
これでしばらく放置しよう・・・。
~~~~1時間後~~~~
すっかり表面が半分焦げてしまったフォレストワームを見ながらつぶやく。
「ほんとにこれを食べるの・・・?俺が・・・・?この虫を・・・?」
見た感じ一切の汁気は無い。
「頭の部分は固いぞ!」と日本にいるときみた動画サイトでサバイバル好きの外人が言ってた気がする。
枝をもう2本取り出し箸のようにして頭を取る。そうするとおのずと断面図が・・・・。
「んん?案外きもちわるくない。」
以外や以外。なんと断面図はホクホクとしたお芋のようであんまりマズそうに見えない。
それどころかメープルの木を食べたフォレストワームの体からは甘いメープルシロップの匂いがして案外行けそうだ。
覚悟をきめた俺はアイテムボックスからメイプルウォーターをちょろちょろと外に出しながらいつでも飲めるようにして一気にフォレストワームを口に入れる。
「ええい!!」
パクッと口に入れて噛みしめる。
モグ・・・モグ・・・・。
・・・・・・!あのグロテスクな見た目からは想像もつかないジャガイモのようなホクホクとした食感、メイプルシロップの風味をほのかに感じる甘味、まるでメープルシロップ味の焼き芋のような味わいに驚く。
しかしあくまでも芋虫。その事実を思い出した俺はちょっと吐きそうになるもメープルウォーターで流し込む。
「ごくん・・・・っはー。案外何とかなったなぁ。でもしっかり焼かないと厳しいな・・・。」
とりあえずグロテスクな見た目に耐えることができれば食糧難は回避できそうだった。
そうこうしている間に辺りは日が暮れていた。
寝るための住居が無いのと時間が無いことも考えるともはや加工せずに即席で住居を作るしかないと思い、メープルの枝を地面に向かって斜めに大量に刺してメイプルの葉で覆いこみ、三角錐を横にしたような即席住居を作った。
そして中に葉っぱを大量に入れてクッションにし、そこに倒れこんだ。
「は~~~~~~~~~疲れた。明日はちゃんとした住居を作ろう。」
それにしてもなんで俺はこんなところで虫食べたり木から水分とったり枝で家を作ったりとサバイバルをしているんだろう。
今置かれている状況を考えるといろいろ思うことがある。
「この星に残るか地球に帰るか....。」
俺はこの役目を無事果たした時、どっちを選ぶんだろう。
というか
「俺、ミウシアになったんだよな・・・。」
今後もおそらくこの姿のままだろう。ティアは作り替える(・・・・・)と言っていた。
地球に戻るとなったらきっとこの姿で地球に行くことになる。
RoAではネカマをしていた。厳密には違うが自分の可愛い操作キャラが俺とか男っぽさを出すことに耐えられなかったのが理由だった。
それに比べて今の俺はどうだ?
ミウシアの見た目で「俺」「~だ」のような男口調で喋っている。今はまだ独り言だけのため問題は無いが、せっかくこの世界に適応してこの世界の種族であるバーニアとなったのに見た目美少女口調男性のままで行くとどうしても目立つ。
目立つし俺のポリシーに反する。
それに元の世界に戻った後、この耳が何らかの方法で隠せたとしても口調からしぐさまで男として暮らした時、日本ではなかなかに生きづらいことになると思う。最近性に関して寛大になってきたとはいえ、日本でその問題に直面してから口調態度を女性風にしても何かしらぼろが出るはずだ。それならば今から変えておいたほうがいいと考えた。
「諦めて自分を変えよう。」
この時、俺・・・いや、私はミウシアとして生きていくことを受け入れた。
~一方そのころ~
疑似神界ではミウシアと久々に対話できたことにより眷属達はお祭り騒ぎをしていた。
いや、比喩ではなくもはや祭りを上げていた。
ミウシアが眷属と話した(チャットをした)後、下界を見渡す湖、通称遠視の泉のほとりに沿って6人の眷属は下界にある各種族の神殿に捧げられたお供え物のお酒で宴を開いていた。
「我らが主、ミウシアに乾杯!!!」
「「「「「乾杯!!!」」」」」
ヒュムの音頭を合図に6人の眷属はミウシアとの再会に喜びあっていた。
「やー、ミウシア教官は本当にお美しい!!神々しい!!素晴らしい!!」
「とか言ってデストラよぉ、おめぇミウシアと対面したらまた気絶するんじゃねぇのか??プププ」
「いやいやジア殿、さすがの私でもそのような失礼なことにはならぬよ。確かに最初はルニア殿対して迷惑をかけてしまったが・・・。」
初期では堅物だったデストラも、長い間眷属達と共に暮らしていたことによってすっかり打ち解けていた。
眷属達はどんなに長い時間生き続けても魂が摩耗されない。精神が壊れることは無いのだ。
眷属達はミウシアの言いつけを守り争いを起こさなかった。むしろ仲良くなりすぎてまるで高校の友達のような多少バカをするような間柄となっていた。しかしそこに恋愛感情は無く、皆が等しく家族愛というものを感じていた。
「皆さん、おつまみを作ってきたのでよかったら食べてくださいね。今回はちゃんと味見をしたのでおいしいですよ。」
「うむ、鹿の燻製か、これは酒によく合うな、ありがとうルニア。」
「ふあーーーシーアが好きな奴だ!ルー姉ありがとう!」
ルニアの種族は森で暮らすことが多いため、供え物として果物、キノコ、獣肉が多い。そのためルニアはよく料理をして他の眷属達にふるまっている。
その中でもヒュムとシーアは本を読んだり自作のボードゲームをしたりと一つの場所にとどまることが多いためルニアの料理を最も食べているのがこの二人だ。
そんな騒いでる眷属達から少し離れたところでウォルフが発明品を一心不乱に作っていた。
「でっきたーーーーーー!!早速取り付けるわよーーーーー!」
ざぶーんとその機械を持ったまま湖に飛び込むウォルフ。
他の眷属はウォルフが発明品を作った時、いかに突拍子もない行動をするか、それによりに皆が喜ぶかを理解していた。
その光景をみて爆笑するジアとデストラ、微笑むルニアとヒュム、飛び跳ねるくらいわくわくしているシーア。
湖から上がってきたウォルフは皆に告げた。
「今あたしが取り付けた時空遡行機器「みのがし君」は、この「りもこん君」で操作することによって対象の物質の過去を見ることができるの、そして見逃し君は湖に設置してきた。つまり・・・・。」
「ミウシアがサスティニアに降り立った瞬間から通信が切れるまでをもう一度見直すことができるのよ!!!」
「「「「「!!!!」」」」」
その後6人の眷属は何度も何度もミウシアの様子を見直しながら今後の各種族の文化の発達に対して無駄にやる気を出していくのであった・・・・。