「138話 竜の王の側近の日記 」
~×月△日~
今日、ディレヴォイズ様の元に人間からの文書が届いた、私は降伏の意を示した文書だと思っていたが、竜種を侮辱するような内容だった。
何て愚かな!!!ディレヴォイズ様に逆らうなど!
ディレヴォイズ様は手紙を見た後憤慨し、山を一つ消滅させた。
その後、怒りが収まるとにやりと笑って魔族軍にこう告げた。
『あちらから出向いてくれるのであれば好都合、貴様らは人間の主力部隊と一騎打ちを行い返り討ちにしろ。マナの微塵も残さず食らえよ?』
あぁ、なんてお優しい。
私のような魔物に重要な任務を下さるなんて!
その後、私はディレヴォイズ様に人間達を監視するよう命じられた。
直接命令いただけるなんて、シャドウドラゴンであったことがこれほどに喜ばしいことはない!!
~〇月◇日~
ようやく人間の街についた。
道中、口に合わない虫や魚を食料としてきたため、以前人間の街で食べた美味なる料理が待ち遠しく感じる。
人間の国の通貨を持っていないために今日も野宿だ。
今日はもう早く寝よう。
明日は人間側の主力部隊を徹底的に探さねば。
前に訓練所で見かけた人間達が主力部隊なのだろうか。
あやつらは他の人間と比べ物にならないくらい強かった。
楽しみだ。
~〇月□日~
あやつらが戦っていた!!
あやつらは王城の大きな訓練所で模擬試合をしていた。
あれはなんだ!?あの強さは!!
もう我が軍の隊長クラスの実力はありそうではないか!
流石にコシャル・サッハほどではないにしろ、ドラゴニュートの三兄弟では歯が立たぬだろう。
前に見た時とは別次元の強さだった。
強力な氷魔法を使いこなす女はただの水の球を兵器のように扱っていたし、桃色の差し髪の兎女に至っては、私が瞬きをする毎に違う場所に移動している。
....私の正体がバレたらなすすべもなく始末されるだろう....。
未婚のまま死にたくはないな...。
訓練を偵察しつつ、お金を稼ぐために働き口を探すことにしよう。
人間の下で働くのは辛いものがあるが。
~~~~~~~~~~~1週間後~~~~~~~~~~~
~〇月×日~
ヤバいヤバい!
今日酒場でイケメンジャイアント族にナンパされた!!
「よう、順調か?」だって!!
でも仕事中だったから軽く笑って躱しちゃったんだけど...。
今度一人で酒場とかで飲んでみようかな~?
そしたらまたナンパされたりして....へへ。(ニコニコした角の生えた顔文字)
~〇月☆日~
騙された。
あのイケメン、擬態した魔族の連絡係だった(怒りマーク)
確かに!「よう、順調か?」とか言ってたし、厨房戻るとき引き留められたけども!(怒りマーク)
しかもしゃべり方が人間っぽいってめちゃくちゃ馬鹿にされたんだけど。マジありえん。
人間の街に潜伏してるんだからしょうがないじゃん、この町にいる間だけだからいいじゃんね。
あーあ、明日は酒場でお酒のも。
というか今お酒のも。
~〇月=日~
昨日はなんと人間代表の6人と話す機会があった!
6人が酒場にきて酒代を全て持つとか言ってきてもう酒場中大盛り上がり!
私も一通り料理がいきわたった後で参加してもいいことになった!たまにはこういうのもいいよね~!(ニコニコした角の生えた顔文字)
6人は案外いい奴だったなぁ。
私の愚痴も聞いてくれたし、生まれてこの方見たこともないようなケットシー族のイケメンに「こんなに可愛い子、ほっとく男がばかっしょ~。」と言われた時は思わず胸が高鳴った...。
どうしよう、こいつらを憎めないかもしれない。
~☆月◇日~
遂に6人が魔大陸に向かうことになった。
更に宙から隠れて偵察し、一騎打ちのルールを破らないか確認しろとディレヴォイズ様直々に文書が届いた。
この一騎打ちのルール、あの6人にとっては不利なんじゃないの?
普通に6人で戦ってたら人間側が勝ちそうなレベルなんだけど....。
あ、6人が王都から旅立つパレードは凄い豪華だったなぁ。
アイツら、国民に慕われてるよね。
魔族なんて隙あらば力を示そうとしてくる野蛮な奴ばっかりだし。
ディレヴォイズ様に忠誠を誓ってるとはいえ、この仕事向いてないかもなぁ。
人間に情が移っちゃう。
...そろそろ喋り方も戻そう、町から出るんだし他の魔族にバレたらディレヴォイズ様に報告されるかもしれない。
魔族としての威厳を保たないと。
私は魔物であり魔族でもある。
人間とは住む世界が違うんだ。
~☆月□日~
ベリトベルベリトが大した活躍もせずに負けた。
本当に何者なんだあのイケメ....男は!
古代種のような雰囲気を感じたのは気のせいじゃな....ではないだろう。
やっぱ...やはり同じ古代種としてディレヴォイズ様に届きうる存在かもしれん。
このまま偵察を続け、見極めよう。
少しでも情報を集めるためにも。
~☆月〇日~
フィリアウス・アスレーウストリアまで負けた。
海上というフィリアウスの得意な地形でもこの様だ。
しかも魔族側はまだ一度も勝利していない。
まだ中級兵士とは言え、ここまで竜種に通用してくるとは思わなかった。
戦闘に参加していない残りの人間の実力が気になる。
訓練では見せていないような技を隠し持っているかもしれな....ぬ。
.......やーめたやめた。
もうかたっ苦しい話し方やーめた。
魔大陸が近付いてきたのに魔族だれも私の所に来ないじゃん。
それに日記位自由に喋ってもいいじゃん?
そこまで徹底したの私だけど。
~☆月×日~
桃色の差し髪のバーニア族が暴れん坊のゲオグリオスに勝った!
しかもゲオグリオスは人間に寝返った!
まぁ元々ディレヴォイズ様に忠誠を誓ったとかじゃないけどね。
アイツはただ強い相手と戦いたかっただけだし、魔族って言うよりは野生?
そういえばリューシエルの実を初めて見たような反応してたけど、他の大陸にはないのかな。
こんなにおいしいのに。 (水滴が垂れたような跡)
~☆月◎日~
最近隠密スキルが上達したような気がする。
6人のすぐ後ろを歩いていてもバレないし、マナの感知が得意なヒューマンの娘にもバレてない。
酒場では名乗らなかったけど、6人にぴったりくっついていて名前、関係性、性格、役割がわかった。
メモでも残しておこう。
にしても、ずっと6人と一緒に歩いてるとつい会話に入りそうになっちゃうなぁ。
ミウシアがよく移動中に、故郷に伝わるいろんな話をしてくれるんだけど、それが凄い面白い。
1回声を出して笑っちゃったけど、みんな笑ってたからギリギリバレなかった。
料理もこっそりつまみ食いしてるけどバレないし、私凄くない?
流石に寝るのは木の上だけどね。
お休みなさ~い。
【(ドラゴンの顔文字)メモ(ドラゴンの尻尾の絵文字)】
ミウシア
・桃色の差し髪のバーニア族。
・王都でも見慣れない服装の能天気な娘。
・アイテムボックスとかいうものを収納できる便利な魔法にたくさん食料を入れてるみたいで、よく歩きながら何か食べてた。
・役割は一応リーダーっぽい。あと荷物持ち兼料理係で、戦闘では弱い魔物を一瞬で葬ってた。
アルカナ
・氷の魔法使いのヒューマン族。
・語尾に「です」を付けて喋る魔法のエキスパート。方言なのかもしれないけど、王都では彼女以外にそんな喋り方の人はいなかった。
・役割は参謀で、戦闘では火力担当。
・トルペタとは恋仲らしい、リア充爆発しろ!!
トルペタ
・ドワーフ族の弓使い
・成体なのに見た目が幼体のままという犯罪臭がするドワーフ族の中でも特に可愛い。私の母性本能が擽られる。
・役割は武器防具の手入れや索敵で、戦闘ではそのまま中距離牽制。
レオ
・ケットシー族の王子としか表現できないイケメン
・何と本物の王子様らしい。この顔で本物の王子はもう女性の目の毒ね。
・役割はこれと言って無し。一方戦闘では要の回復と敵の能力を下げる役。
フレア
・赤髪のジャイアント族。
・大雑把な性格は王都の酒場で嫌というほどみたジャイアント族らしい性格ね。
・酒場では私をたくさん励ましてくれたし、いい意味でまっすぐなタイプ。
・役割はトラブルメーカー?よく余計なことをして魔物に気が付かれてた。戦闘では大型、パワータイプの魔物の相手。
ルクニカ
・金色のショートヘアーのバーニア族
・丁寧な話し方で、真面目な性格。
・ミウシアと恋仲らしい。人間にも竜種みたいに同性で付き合う風習があるとは思わなかった。
・移動中、戦闘中関係なく、常に全身鎧と大きな盾を使って皆を守る騎士タイプ。
~☆月@日~
トルペタ、ルクニカ、フレアがドゥ3兄弟を倒したんだけど....。
マジで?マナ・シフトを使った時の身体能力ってコシャル・サッハと同じくらいじゃなかったっけ?
3人の連携があったから?
フレアが活躍してたけど、それよりもルクニカが凄い気になる。
私の勘が告げる。
あの人、古代種じゃない?
なんかこう、見た目は人間だけどマナが違うって言うか....。
こういうのは専門の人じゃないとわかんないけどさ。
うーん、憑依で古代種の魔物が乗り移ってる?それか転生?
どっちにしろ力を隠し持ってることは間違いなさそう。
要注意....しとかなきゃなぁ。
てかドゥ3兄弟も裏切ってんじゃん。
皆と仲良さそうにしてるし。
ちょっとだけ、うらやましい。
~☆月※日~
ドゥ3兄弟に勝てるなら、そりゃあリクダモラスにもヴォルガルダにもパースロッキにも勝てるよね。
もうアクアリス、ピュクドリア、シャムラリオル、コシャルくらいしか相手にならないんじゃないの?
それを察してか、下級の竜種達がプライドを捨てて奇襲攻撃とかを仕掛けてるし。
こんなのおかしい。
そういえばドゥ家の長男が言ってたっけ。
『人間とは何か、人間は下等なのか?人間に直接襲われていないし、集落で何かあったわけでもない。だから自分の目で見たことしか信じない。』
私も襲われていない、というか擬態してたとはいえ、人間の温かさを知っちゃってる。
自分の目で見た事しか信じない?
そんなの違う。私は自分の目よりもディレヴォイズ様を信じる。
だって、自分の目で見た事しか信じなかったら、私は魔族であることをやめてしまいそうだから。