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「123話 決心 」

あの後目を覚ましたニカはハッと飛び起きて、私服に着替えて部屋を出て行った。

顔が真っ赤だったから我に返って恥ずかしがってたのかな、そういうところが可愛いんだよね。


王城内にある浴室を使わせてもらって、気分もリフレッシュした私はトルペタ君がいる病室へと向かった。


「あ、ミウシアさん!」

病室に入ると、寝込んでいると思っていたのにすっかり完治してけろっとしているトルペタ君と、寄り添うようにぴったりと座っているカナちゃんがいた。


「おはようトルペタ君、もう大丈夫みたいね!」

「はい、レオさんとカナのお陰です。」

...ん?カナ?


「あぁぁああぁあ!ちょっと!!呼び方!!」

カナちゃんが顔を真っ赤にしてあたふたしている所からみて、2人はくっついたのかな?

自然と笑みがこぼれてくる。


「ふふっ、おめでとう、2人とも。」

「....はいです....。」

「ありがとうございます!」

2人は無事にくっついたんだ、良かった。

でも少しだけ後ろめたそうな顔をしているのは....。


あぁ、他種族との子供は作れないんだっけ。

どんどん人口を増やすことが推奨されているこの世界で子を成せないカップルって言うのは少しだけ肩身が狭いもんね。

....私とニカも同じようなものか。いや、女性同士だからどうやっても子供はできないけど。


「トルペタ君、カナちゃん。私が絶対何とかするから、2人が家族になれるように!だから何も気にしないでよ!!」

「へ?.....あっ。そ、そういうことです....?まぁ、もし何とかなるならしてくださいです。」

「はは、期待してますね!」

2人とも冗談だと思ってるなぁ。

絶対宇宙神の首を縦に振らせてこの世界のルールを変えてもらうんだ、よーし、頑張るぞ!


「にしても、ミウ元気ですね?レオが『ミウシアちゃんがかつてないほどに落ち込んでてマジやばたにえん』ってよくわかんないこと言ってたから心配してたです。」

「ミウシアさん、何かあったんですか?」

ニカに元気をもらったよ!性的な意味で!なんて口が裂けても言えない。

ははは、と愛想笑いをしておくととたんにカナちゃんがにやにやしだした。


「そういえばぁ、さっきルクニカが顔真っ赤にしてミウの部屋から出てきましたねぇ~~。おやおやおや?ミウも(・)昨夜に何かあったんです~???」

「『も』?」

私をからかおうとしてにやにや顔で固まるカナちゃんと引きつり顔のトルペタ君。


数秒間病室の時間が止まったかのように誰も動かない。

その静寂を破ったのはカナちゃんだった。


「あああああああ!!なんでもないですなんでもないですですです!!!いいからミウは王様と話してくるです!!早く!!いけーーーーー!!!!」

顔から血が噴き出るんじゃないかってくらい赤い顔のカナちゃんが、病室の枕やらコップやら花瓶やらを私に投げてくる

もう少しからかいたかったけど、流石にこの失言は私の方が恥ずかしくなるようなものだったので、さっさと退散することにした。


「しっかしカナちゃんもやるねぇ~。」

しみじみとカナちゃんとトルペタ君の恋の成就を祝福しながら歩いていると、兵士に声をかけられた。

何でも、王たちは今後について竜種と話し合うため会議室に移り、休息をとった後、朝からまた会議室に籠っきりらしい。


会議室に案内してもらい、大きな扉を開けると、中に入ると5人の王と二人の竜種が机を囲んで話している最中だった。

その中で私が入ってきたのに一番に気が付いたのは一番扉の近くにいたバーニア族の王、バラッド。


「あ、おはようミウシア君。昨日はよく眠れたかい?」

「おはようございます。ええ、心を落ち着かせることができました。ありがとうございます。」


昨日は王の御前なのに失礼な態度...というか落ち込みすぎて会話に入れなかったんだよね。


「ふふ、ルクニカ君のお陰だね。皆、作戦の要のミウシア君が来てくれたよ。」

ルクニカのお陰?まさか昨日の夜のことを知ってるわけでは無いよね....?

流石にね...違うよね?


バラッドの呼びかけで机に広げた地図とにらめっこしていた皆がこちらに顔を向ける。


「あ!ちょっとちょっと、ミウシアちゃーん。なんでこの2人魔族なのにミウシアちゃん崇拝してんの~?聞いても教えてくれないんだよ~。」

私に気が付いたティスライト王がまるで「待ってました!」と言わんばかりの勢いで私を問い詰めてくる。


ちらりとニルゲとトゥリプスを睨むと目をサッとそらされた。

王に怪しまれたら断れないじゃんねぇ!


「え、っと。2人が人間達と暮らせるように仲介するって約束したからですよ!2人とも人間の文化が好きですし、それで感謝の気持ちがあるんじゃないですかね?」

ちょっと苦しいけど、納得してくれぇええ!


ティスライト王は少し目を細めて私をまっすぐ見つめる。

疑われてる~~!


「ふぅ、まぁいいや。そういうことにしておくよ。」

手をひらひらと振りながらもといた席に戻るティスライト王。

ニルゲとトゥリプスを見ると手を合わせて謝罪のポーズをしていた。

人間より人間臭いね?


「...それよりもミウシア。覚悟はできたのであろうな?」

低いトーンでオリバーが口を開いた。

その表情は相変わらず険しく、私の目をまっすぐに見つめてくる。


「はい。仲間たちにはまだ確認していませんが、覚悟を決めました。....もう、無駄に命を失いたくありません。私にやらせてください!」

私がここで止まっていたらより被害が増大する。

もしディレヴォイズに負けたとしても、兵力の削がれた魔族がすぐに人間の領地に攻め入ることはないと思う。

勝っても負けても無駄じゃない、負けるつもりはないけど。


「フ..、仲間のことなら心配無用だ。ルクニカ、アルカナ、トルペタ、フレア、レオからはもう答えは聞いている。皆作戦への参加を希望しているぞ。」

「そうだったんだ...。」

...って、あれ?今リージェン王、ルクニカって言った?

そっか、この作戦、この世界で最後の度はニカも一緒なんだ。

嬉しいなぁ、今はちょっとお互い恥ずかしいけど。


「ミウシア君、笑みがこぼれているよ。」

「はっ」

自分の頬っぺたをむにむにと押しつぶして表情を無理やり元に戻す。

やっぱりバラッド王は私とニカの関係に気が付いてる?

というか私とニカの関係ってなんなんだろう....。


「はぁ、今度は難しい顔になっておるぞ。こっちに来て作戦の内容でも聞かんかい。」

「あっ、すみません。」

ギア王の一言で我に返り、そさくさと地図を広げた机へと向かった。



作戦はこうだった。


まず、ニムゲとトゥリプスが人間の王からの提案というていでディレヴォイズの元に手紙を届ける。

手紙の内容を要約すると


①今から1か月後に王都から6人の人間を暗黒大陸に向かわせる。

②その途中でもついてからでもいいから一騎打ちにて全て人間を打ち倒したら魔族の勝利人間達はこの大陸から出ていく。

③しかし、もし人間が全ての魔族に勝利したら今後人間の大陸には干渉しない。

④もちろん引き受けるよな?まさか誇り高き竜種の王が受けないわけないよな?怖いんか?


といったものだ。1か月という時間を魔族が待ってくれるのだろうかと思ったけど、今回の進軍の結果を知る魔族はいないため、人間側の被害を知らない魔族達は、人間の戦力を警戒して攻めてくることはほぼほぼないんだって。


随分と煽るなぁと思ったけど、これくらい煽ればプライドの高いディレヴォイズは確実に引き受けるだろうとニルゲとトゥリプスは言ってた。


それで、ディレヴォイズがその手紙の内容を承諾した後は、出発までの1か月で死に物狂いの特訓をする。

基本的には一騎打ちなので個人の戦力を上げる。

しかし魔大陸には魔族としてディレヴォイズに従っていない強力な魔物もいるらしい。

だから連携の訓練も忘れない。


1か月たったら王都で出陣のパレードを開き、魔大陸に向かう。


という流れだ。

なんだか王道RPGみたいな感じになってきたけど、浮かれてられないよね。

気を引き締めて行かないと。


どちらにせよ今できる事は仲間同士の情報共有。

皆に声をかけて家で作戦会議をしよう。





「ご迷惑おかけしました!」

ニカ、トルペタ君、カナちゃん、フレア、レオが集まった我が家で私は皆に謝罪をした。

直接関係なくても心配させてしまったことにまずは深くお詫び。


「ま、ほっときゃ勝手に戻るとは思ってたがな。」

「フレっち~。ほっといたわけじゃないんじゃないかな~?」

レオがにやにやした目でニカに視線を移す。

それに気が付いたニカは顔を真っ赤にして下を向いた。

かわいい。


「何はともあれ、ミウシアさんがいつもの調子に戻ってくれてよかったです。今後の話についてなんですが、この一カ月でどれだけ戦い方を磨いていけるかが勝負ですよね。」

「ですね。1人がずーっと一騎打ちをするわけにもいかないですから、皆が皆、どんな敵が来ても戦えるようになっておくべきです。」

カナちゃん、朝あった言い間違いに関してはもう気にしてないのかな?....って思ったけどわざと私に視線を合わさないようにしてるのがバレバレじゃん。いつまで引きずっちゃうのかな。


くすっとつい笑いがこぼれた時、カナちゃんがビクッと体を大きく震わせたけど触れないであげよう。


「あ、あの、毎日違うペアを組んで訓練、できる限りいろんな戦法で行うのはどうでしょう?そうすれば皆の戦い方も解って連携に繋げられませんか?」

ニカがまだ少し赤い頬で訓練法を提案した。


「では戦闘中にスキルや魔法を使うときは技の名前を言うことにするです。仲間内でスキルや魔法の把握がしやすいですからね。」

「な、名前ですか....。」

困惑するニカ、そうだよね、スキルは普通無言で使うよね...。


でも皆と戦う、か。確かにいい訓練かも。

私達は皆戦闘時の役割が違う。


私(速さ特化)、フレア(火力特化)、ニカ(防御特化)が敵との距離を詰めて戦う戦法。

トルペタ君(万能型)、カナちゃん(火力特化)、レオ(援護特化)が敵との距離を開けて戦う戦法。

相性が悪い人との闘いは経験しておくに越したことはないよね。


私が戦って相性が悪い人って誰だろ?

ニカなのかな?防御を突破できないし。

フレアはには速度で勝てるし、トルペタ君の矢は避けられる。

カナちゃんは詠唱前に攻撃しちゃえばいいし、レオも詠唱の隙を与えなければ勝てると思う。


あれ?私意外と強いんじゃない?


「それじゃああたしと当たった奴が可愛そうだろ~?自身無くしちまうよ。」

「はぁ?」「....。」「やれやれです...。」「む。」「ははは~。」


ガハハと大口を開けて笑うフレアに対して、その場にいる全員がむっとした表情になる。

何せ皆修行をつんできたのに、自分の実力を皆に見せ切れてない状態でフレアにそんなこと言われたんだから無理もない。


「フレアさん、俺だって強くなってますから、そう簡単にやられませんけど?」

そんなフレアの発言に異を唱えたのは意外にもトルペタ君だった。

今回トルペタ君が活躍したのは竜種を空から落としたとき、カナちゃんを助けた時の二つだけ、あんまり活躍できなかったのがきいてるのかなぁ。


「ああん?トルペタぁ?前あたしに惨敗しただろ?また惨敗したいのか?よっし表出ろ。現実見させてやる。」

ガタッと椅子を引いて勢いよく立ち上がるフレア。腰についたハンマー型のキーホルダーを握ると一瞬で身の丈以上のハンマーに変わった。


「望むところです。今回あまりいい所を見せられてませんからね!」

腰に付けたボウガンを小型の銃へと変え、意気揚々とフレアと外に出る二人を見て、私達も外に出た。

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