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「120話 救援 」

SIDE:レオ

「フレっち~、オレミウシアちゃんの加勢に行ってくるわ~。」

「お、1人で大丈夫か?あたしもついていこうか?」

フレっちが最近なんだかやけに優しい。

理由は解るんだけど、どうもオレのことを心配しすぎてるような気もする。


いや~ね?さすがにオレも男のプライド的な何かがあるようなないような気もするわけで、頼るよりは頼られたいっつーか....。


なんかこれじゃあオレがフレっちに恋してるみたいな感じになってんじゃん。

...え~?オレコレ意識しちゃってる系なんかな?


まぁ今考える事でもない..っか。


「おーい、レオ?」

ふと気が付くと、フレっちがオレの目の前まで近付いてきて顔の前でパタパタと手を振っていた。


「うぉわっ...よ、よゆーだから!それにトルっちとカナっちを任せたいんだよね。俺じゃあ自分一人で精いっぱいだから。」

「そうか、気を付けて行って来いよ。」

「ぅ、ぅぃ~っす...。」


なんだこの感じ~~~!女遊びは百戦錬磨のオレが動揺とか無いから!!




ミウシアちゃんが通ったであろう道はすぐに分かった。

急いで通ったのか、木の枝が折れている箇所が無数にあった。


なんか嫌な予感がするから走って向かったら、そこには悲惨な光景が待ち構えていた。


「う~~~~~っわ。えっぐ。」

見渡す限りの兵士と冒険者の遺体。

冒険者をやってきて、誰かの遺体を見る事には慣れていたけど、ここまでの規模は初めてだった。


「こりゃ流石に不愉快だわ....。」

魔物は人を襲う。

生きるため以外にも娯楽として。

それでも、人間と魔物で戦争をしているのだからこれくらいは覚悟してた。


でも殺すだけではなく、殺した後も遺体を切り刻んだり、辱めたりしたような遺体が無数に存在する。


いくら何でも趣味が悪すぎる。


「ミウシアちゃん、コレを見たんだよなぁ。」

大丈夫なんかな、ミウシアちゃん。


ミウシアちゃんは多分神の遣いとかそういった類の存在だと思う。

もしかしたら生まれたばかりなのかもしれないし、そうでないかもしれない。

どちらにせよ、冒険者としては優しすぎる。


そんな優しいミウシアちゃんがこんな光景を見たら....。


「幸い、ミウシアちゃんは兵士とのかかわりも少なかったし、大丈夫かな~?」

こんなところでへらへらしてたら皆に冷たい奴って思われそーだなー。

まぁ慣れちゃったもんはしょうがない、慣れたくないけどね~~。


どちらにしろ、いつも通りの戦い方ができないかもしれない、急ぐかぁ。


このありさまじゃあ、たぶん魔物は王都を襲撃してるよな~。

マナ使ってでも急いだほうがいっかな。


「精霊お..じゃなくて、えーっと何だっけ。我が杖に宿りてなんちゃら~。フェアリー・エンチャント!」

『オベイロンじゃ!!精霊王はもはや貴様じゃろ!!もう少し真面目にせんかい!!』

杖が活性化して精霊の力を宿し、羽の形にマナが形成される。


「っし、フューにフォリア、おいで~。」

「合体?合体する?」「合体?フューと合体なの?」

2人の精霊のマナがオレと同化し、マナの漲りを感じる。

2人のマナを背中に集めて妖精の羽を創り出す。

空を飛ぶことはできないけど浮力があるから走りやすいし疲れないんだよなぁ。


でもコレマナ消費激しいんだよね~、着いたら短期決戦でちゃちゃっと片付けちゃおう。




余りスタミナを消費せずに全力疾走を続けていると、次第に王都の門が見えてくる。


「っと、ここもか....。」

さっきほどではないにしろ、魔族に蹂躙された遺体が散らばっている。


王都の門にはニカニカが守りを固めて....あれ!?


「ちょ、ニカニカどしたんその耳!!」

「に、にか..?...少し油断してしまいまして、もしできれば回復していただけませんか?....羽生えてません?」

時間が経った体の欠如はさすがのオレでも無理臭いなぁ。


「ごめ、切られてすぐであればつなぐこともできるんだけど、血を止めて傷自体を塞ぐことしか無理だ....。<治癒光>ヒールライト!」

「そう、ですか....。回復、ありがとうございます。」

やっぱり気になるよね~女の子だもんなぁ。

バーニア族は耳が大きいほど同種にモテるとかいうしね。


「てかミウシアちゃんは?どこにいるか知ってる?」

「それが、私と戦っていた魔物を追って自分の影に入ったまま戻ってこないんです....。」

影?そういやなんか言ってたなぁ。

影に入って移動できるとかなんとか。

敵まで使ってくるん?


『レオよ。影には光じゃ。』

「なるほど~。」

精霊王の指輪に光のマナを集めて...吸収するんだっけ。

ゆっくりと体内のマナに混ぜ込んでいく...あれ?杖からオベイロンのマナが流れてくる。

更に更に背中の羽からもヒューとフォリアのマナが流れ込んでくる。


「うっわ、何だこれ...。」

体中を精霊のマナと光のマナが巡り巡って、力がみなぎってきた。

この状態だと髪の毛の色が変わるらしいけど...うわっ、エメラルドグリーン....?

精霊石カラーだなぁ。


杖の先に光属性のマナを溜めて、圧縮&圧縮。

攻撃力は無くていい、とりあえず明るく~っと。

杖の先に小さな光の球が生成され、準備が整う。


「ニカニカ、目閉じててね~!...ライト・エクスプロージョン」

杖を軽く振るって光の球を上空へと飛ばす。

....っと、オレも見ないようにしないと。


目を瞑ってさらに下を向くと、ボン!という破裂音と共に何かが地面に落ちるような音が聞こえる。


「ミウちゃん!」

ニカニカの声で目を開けた時、そこには至る所に切り傷を受けて疲労困憊状態のミウシアちゃんと、大きな黒い筋骨隆々な人型の...あれは、ハイオーガ?

両者共に地面に膝をついて辺りを見回している。


『光で周囲の全ての影を潰すと、影の中にいるモノは地上に投げ出されるのじゃ。』

なぁるほど。

それで影の中で戦っていたミウシアちゃんたちが出てきたのか。

それにしてもミウシアちゃんが見たことの無いくらい眉間にしわが寄ってる、憎しみたっぷりって顔だ。

あれじゃああの傷のまま立ち向かいそうだなぁ。


「ミウシアちゃん、後は俺に任せていったん下がって!!」

「でも、私がこいつを殺さないと!!」

やっぱり、何かに縛られてるみたいだ。

殺さないと(・・・)なんてミウシアちゃんの口から聞いたこともない。

こりゃ強く言わないと聞いてくれないなぁ。


「いいから、下がって。」

少し低めの声で、怒気をわざと含める。

ごめんよ~ミウシアちゃん。本当に怒ってるわけじゃないから~。


「ッ...!わかった....。」

ものすごーく不満そうな顔で敵を警戒しながら後ろに下がっていく。

敵さんが追いかけようとしないけど、あれ、めっちゃくちゃ怒った顔してる。


『おい、テメェか.....俺の食事を邪魔しやがった奴ぁ!!!!』

声が二重に聞こえる、なんか変な感じがするなぁ。


「女の子は優しくエスコートしてあげないと、食べるどころか手も繋げないよ~?」

顔の血管が浮き出るほどにイラついている所から、いつ飛び掛かってきてもおかしくないことが分かった。

オレは挑発しながら杖に魔法陣を展開した。


『てめぇから食ってやるよォオオオオオオオオ!!!!』

案の定、オレに向かって一直線に向かってくる。

でももう準備はできてんだけどね。


「<白縮炎>ホワイト・フレア!!」

杖を振るったタイミングで小さな白い炎を打ち出した。


『糞見てぇな火だなァ!!』

相手は避けようともせず突っ込んでくる。ラッキー。

もう一度杖を振るうと、精霊王の指輪の効果でもう一つ小さな白い炎が相手に向かって飛んでいく。


そして着弾した瞬間、白い炎はすさまじい熱量を持つ球体へと肥大し、周囲を全て焼き尽した。


『ギィァァアッァァアアアアア!!離ッッ、離れッッ!!』

「その子はちょっと束縛が激しくてね~、なかなか離れてくれないんだねぇ~。」

これで倒せるとは思わない、もしオレの予想通りハイオーガで、さらに得意個体なのだとしたら竜種に並ぶ存在だから。


「オベイロン!」

『頼られるのも案外悪くないのぉ』

杖を上に掲げ、オベイロンに指示を出すと杖からオベイロンの気配が消え、空に一筋の流れ星が煌めいた。


『ギッ...ギアアアアア!!!糞ガアアアアアア!!』

「あらら...随分とタフな鬼さんだなぁ。」

やっぱりあれでも足りなかった。

光の炎に身を焼かれながら、ゆっくりとこっち向かって歩いてくるハイオーガ(仮)


オベイロンに大量にマナを持っていかれた反動でふらりと足がよろめいた。

冷や汗を拭って空を見上げると、豆粒ほどの何かが空のかなたに見える、しかもその豆粒は徐々にでかくなってきた。


「....離れておこ。」

ふら付きながらも後ずさりでハイオーガ(仮)から距離を置く。

オベイロンが頑張りすぎちゃってるからなぁ。


『フォール・コメットォォォ!!!!!』

フォール・コメット。オベイロンの必殺技。

これにはオレも苦労した。

そもそもオベイロンはドワーフ族の元となった種族、エンシェント・ドワーフが別の進化を経た神獣と呼ばれる生き物だ。


身長はドワーフと変わらないが、その毛むくじゃらの髭、眉毛、髪の毛はマナが結晶化していると言っても過言ではないほどのマナを保有している。


この必殺技は上空へ転移魔法で移動し、体全体を結晶化、重力操作で体重増加して敵に向かって落下。

物理で潰す技だ。


『グボォァ』


彗星のごとく降り注いだオベイロンによって原型をとどめていないほどに潰されたハイオーガ(仮)は死ぬ間際に言葉にならない声を発して絶命した。


「オベイロン、やりすぎ。」

『ホホーッ!この感覚血がたぎるのぉ!小僧は卑怯な手段でよけよるからの~。』


「そりゃ避けるっしょ...。」

王都の東門までの余波はないものの、ハイオーガ(仮)がいた場所には小さいクレーターができている。


こんなのどう受けろって言うんだか....。


『ホッホッホ....』

クレータの真ん中で結晶化を解いたオベイロンが愉快そうに自分の髭を撫でているのを苦笑いで見る事しかできなかった。

ミウシアちゃんとニカニカもちょっと引いてる。


ま、2人が死ななくてよかったよ。

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