「12話 サスティニアの大地」
微睡の中徐々に意識が覚醒していく。
心地よい風が俺の頬を撫で、途端に頭痛を感じ頭を押さえる。
「いてて・・・あぁ、やっぱり・・・。」
頭を触った感触と自分の出した声で確信する。
やはり俺はサスティニアに適合するためにミウシア(・・・・)になってしまったらしい。
「ティア~~~~!宇宙神~~~!くそぉ!」
ティアと宇宙神に悪態をつくがその声はか細く高い可愛らしい声だった。
(これ元の体に戻れるんだろうなぁ・・・。)
今後のことを考えると頭が痛くなってくる。確かに俺はネカマプレイをしていたがゲームと現実では全く意味が違ってくる。
ネカマではなく本当の女性、バーニア族の女性になったのだが。
もにゅもにゅと頭の上にあるうさ耳を堪能した。
本来耳がある場所には何もなく、ふんわりとした髪の毛で覆われていた。
(ゲームの中ではわからなかったけどなんだか不思議な感覚だなぁ)
その時、脳内で『新着の<文字通信>テキストチャットがあります』と謎の声が響いた。
「<文字通信>テキストチャット?」
そうつぶやいた途端、視界の端にチャットウィンドウが現れものすごい勢いでメッセージが流れてきた。
ここはゲームの世界じゃないから・・・。ティアの言っていた眷属との対話ってやつか?
チャットを読むと1万年もの間待たされた眷属達の喜びのメッセージであふれかえっていた。
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ウォルフ:主ってばこんなかわいい女の子だったの!?
デストラ:主殿・・・。美しい・・・。
ジア:おーーーー!思ってたのとちげぇなあ!!
ルニア:主様やっとお姿を現してくださったのですねそれにしてもおかわいらしい見た目をしてらっしゃる私と同じお耳がついてるのは私への愛の表れなのでしょうかそれならば私もその愛に答えるのがシスターとしての務めなのではないでしょうか
ヒュム:ルニア、一度チャットを送信しないと発言が続いてちょっと怖いぞ・・・。
シーア:あるじさんだ!主さん主さん!!!!
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「皆....。ていうかルニアのキャラちょっとかわってないか...?まぁ1万年も待たせてるほうが悪いか。」
俺は流れるチャットのほんの一部しか見ていないがそれだけでも眷属達の俺への執着を感じる。
とはいえ何も反応しないのはさすがにかわいそうなため俺はミウシアとして発言することにした。
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ミウシア:皆長い間待たせてごめんね。皆のお陰でサスティニアも栄えてきたから私は各地を回って神力を振りまいていかなきゃいけないんだ。あんまり反応できないかもしれないけど定期的にみんなと話していこうと思うからこれからよろしくね!あ、あと呼び方は皆に任せるけど主とかは堅苦しいからほかの呼び方がいいなぁ。
デストラ:あるじど・・・ミ、ミウシア殿・・様・・・・。ミウシア教官!!!!!!
ウォルフ:じゃあミウシアって呼ぶわね、ここから私たちもできるだけサポートしていくからいくらでも頼って頂戴!
ヒュム:寝ずにミウシア殿を監視しよう。生前に比べたらむしろご褒美だからな!
ルニア:ミウシア様私と同じ種族なのは意図的になのでしょうか?
ジア:戦いと酒のことなら何でも聞いてくれぇミウシア!
シーア:ミウちゃん!ミウちゃんって呼ぶ!暇になったらシーアがいろんな遊び教えてあげるね!
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常に見られてると思うと落ち着かないな、と思っていると脳内に機械音声が流れた。
『眷属の個体名称:ミウシアに対する遠視の泉の使用権限を停止します。』
(これはティアの言っていた加護によるサポート機能かな?)
これで眷属による常時監視がなくなったのなら俺の疑念が一つ解消できた。
それよりこれからどうするか、どう生き抜いていくのかが一番の問題となる。
俺は辺りを見回した、
高さ4mほどの木からなる森のようだ。木と木の間はそれほどなく歩くときに苦労する程度だ。
地面に落ち葉は無く、葉も青々としていて気温もそれほど高くないためおそらく春のような季節だと推測する。
自身の恰好についても再度確認した。
予想通り生産職の装備のままだった。分厚い生地ながらもおしゃれも兼ね備えている作業服。腰には工作用ツールがつるされたベルトと万能のこぎり。
そして首からは全ての生産職の職業に変更できるウォルフの聖石の首飾り。
「そうか、ウォルフの聖石も・・・。」
その呟きすら可愛い声となってミウシアの口から発せられる。
(しかしゲーム内でも声は変わってたと言っても実際に声が違うとなれないなぁ)
ウォルフの聖石さえあればどの生産職にも職業変更が可能だった。しかしこの世界では職業、レベルの概念そのものが違うらしい。
俺はダメ元でウォルフの聖石の首飾りに錬金術師に職業を変更するように祈りを捧げた。
次の瞬間、脳内にウォルフの声が響く。
『ミウシア!何その石!なんかあたしと直接つながるというか意識が接続というかなにこの感覚!!!研究したいしたい~~!』
『あー、ウォルフ?申し訳ないんだけどこの石はあげられないんだごめんね。じゃなくて、錬金術師って職業に変更したいんだけどできるかな?』
突如ウォルフと通話が繋がったことに驚くが、今回の目的はほかの職業になることだ。
『錬金術師?ミウシアよく知ってたわね、最近になってドワーフ族とヒュム族が手を組んで開発した技術分野なのよそれ。でも職業っていうのは戦闘職しかないはずだから・・・普通に魔法を使うだけじゃダメなの?』
『・・・・え、そうなの?わかった、ありがとう~ちょっと何とかしてみる!ありがとね!』
祈ったままの体制だった俺は立ち上がり次はステータス画面を確認することにした。
「アシストさーん、ステータス画面お願いしまーす」
『ステータス画面を表示。以降は脳内操作モードを適用します。』
(これは次から頭で考えるだけでいいよ~ってことなのかな?)
目の前に神界でみたような透明なウィンドウが浮かぶ。
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名前:ミウシア
種族:バーニア族(半神)
職業:無し
HP:100/100
MP:1000/1000
力:D
防御:E
魔力:D+
早さ:D+
運:A+
※数値化不可のためE-~S+までの評価で表記
称号:善意の福兎(6柱の神の祝福により効果UP)
・自分以外のHPを回復する時の回復量+100%
・誰かのために行動する時全能力+50%アップ
・アイテムボックス容量+100%
・製作、採取速度+200%
※このスキルはスキル「鑑定」の対象外となる。
※このスキルを持っていると全NPCに好意的な印象を与える。
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一通り目を通したものの違和感を感じもう一度よくよく眺める。
「あれ・・・?なんか称号の効果がめちゃくちゃあがってる・・・。」