「117話 今日の敵は明日の友 」
だいぶ短めになっちゃいました;;
レオが連れてきた二匹の竜は両方とも竜人化状態でこちらにやってきた。
見たところ敵意も全くない....というか私に怯えてる?チラチラとみてくるから目を合わせるとサッと素早く視線を外してくる。
「あの、もうこちらにも敵意はありませんので....少し楽にしてもらえませんか?」
「ヒッ、ごめんなさいッ!」
「も、申し訳ない...。」
青い竜のトゥリプスは両手で自分を隠して身を守り、紫色の竜のニルゲは体をびくりと振るわせて私に頭を下げる。
やっぱり神力が見えているのかもしれない。
オウカの時も一目でバレてたし...ヤバいよ、ここで下手なことを言われたら今までのことと合わせて私が神に関係するって皆にバレちゃうよ。
「ちょっと二人と個人的に話をさせてくれない?ちょっと確認したいことがあって....。」
「あー...。おっけーい!向こうでフレっちのマナ回復させておくわ~!」
「もっ、もう十分だから!!....ミウシア、始末しようとか思うなよ?もし仲間に引き入れられるなら、魔族のことを聞き出せるかもしれないからな。」
「ミウシアさん、お気をつけて。」
レオはすでに感づいていたため、何かを察してフレアとトルペタ君を離れたところに連れて行ってくれた。
本当にこういうところがスマートなんだよねぇ。
後はいい感じに怯えてくれているからそれを利用して寝返ってもらおうかな。
「.....さて。私の正体に気が付いているんだよね?二人とも。」
「えっ、ええ。....結局私達は始末されるの....?」
「お主のあふれ出る神力、見えるものが見たら明らかに異質。長く生きたディレヴォイズ様でさえも流れ出る神力は僅かなのでな。」
年上のグラマー美人が怯えているのはちょっとこう、グッと来てしまうものがある。
ニルゲの方は冷静に判断していることから、戦闘力の低めな指揮官タイプであることが分かった。
これならこちら側についてくれても裏切るようなことはないかな。
「...安心してよ、私は何もしないよ。それよりも二人には私の神力のことを皆に黙っていてほしいんだ。」
私がそういうとトゥリプスは深いため息をついて心底安心した表情へと変わった。
「ふむ、要はお忍びで地上に舞い降りた神、といったところか....。でも神にしては力が人並みに思えるのだが...。」
「一応この身体は人間だからね。神力は直接の強さとは関係ないよ。....だからと言って私を闇討ちしようとしないでね?多分私が死ぬとこの星の寿命が縮むと思うよ?」
この星を安定させるための神力だもん、私が死んだら星全体に定着しないで消えちゃうし、間違ったこと言ってないよね。
「そ、そうであれば、私達が本来守るべきなのは魔族の尊厳などではなくあなたなのでは....?」
「しかし、なぜデストラ様はお主を生贄にせよなどと...もしや神々は争っているということか!?この事実は魔族にも人の世にも大きな影響を齎すぞ!!」
おかしな方向に話が進んでる!!
デストラのこと教えていいのかな?威厳とかそういうのは...どうなんだろ。
まぁデストラがまいた種だし...いっか!
「それなんだけど、デストラは生贄じゃなくて私を守れって言ったらしいよ?拙い魔物語で話したからそういう風に伝わっちゃったんだって。神同士は凄い仲がいいんだよ。」
「.....そんな....。」
「神がそのようなことを....?」
頭を抱えてブツブツと呟く2人、割とすんなり信じてくれるもんなんだなぁ。
2人は顔を見合わせて頷くと、私に跪き頭を下げた。
真面目な空気にもかかわらず上からのアングルで見るトゥリプスの谷間が気になってしょうがない。
「ちょっ、な、なに?」
「無礼を働いてしまい、申し訳ございませんでした。」
「本来であればこの場で首を差し出す所ですが、可能であれば我らの神デストラ様より承った神託を誤って受け止め、暴走を働く魔物をせめて我らの手で収めさせていただけないでしょうか。」
先ほどまでの態度とは一変して私に忠誠を誓うようなその行動は、プライドの高い竜種から考えられないような行動だった。
「これはこっちが勘違いさせたことなんだから、こういう形じゃなくて私に協力してほしいんだ。それよりも魔族との闘いに力を貸してくれないかな...それと言葉遣いも今まで通りでお願い。」
「え、ええ。ありがとう。...魔族との闘いに関しては、お手伝いができないの。ディレヴォイズ様は裏切りものを許さない、軍を無視して前線にでも出てこられたら全滅よ。」
「ディレヴォイズ様は遊戯がお好きでな。自分で攻めずに手持ちの『駒』を使って人間を滅ぼそうとしている...。」
自分が出て行ったらすぐゲームクリア、絶対に勝てる戦いなんてつまらない。
みたいな思考をしてるのか...どこまで自信があるんだろう。
「それじゃあ....さっき言ってた通り、魔族とは別に攻めてくる可能性のある魔物達を頼むよ。」
「わかったわ。」
「ではせめて魔族の情報だけでも伝えておこう。」
フレアたち3人を呼んできてニルゲから魔族の情報を聞き出した。
どうやら竜種の5匹は偵察部隊だけど、あわよくばヴァリアとヴァリス、クドルの高い戦闘能力で王都を襲撃する予定だったそうだ。
魔族の中でもヴァリア達3人は魔族の王であるディレヴォイズに認められた実力者とも言っていた。
「じゃあディレヴォイズってやつもアタシらで何とかなりそうだな!」
「カナちゃんとレオ、トルペタくんがいなくても不意打ちとは言え3体倒せたもんね。」
「レオさん、体力もうちょっとつけておいてくださいよ?」
「でもフレっちがいるときはおぶってくれるから~。あでっ!」
他力本願チャラ男に拳骨を食らわせる。
フレア、まんざらでもない顔しないで。
トルペタ君、昔はレオのことキラキラした目で見てたのに...。今ではきつめの発言とジト目でレオをあしらうまでに....。
私達がじゃれ合ってると二人の竜人は険しい顔をしていた。
「いや、ディレヴォイズ様は王である前に最強の竜種なの。あなたたちが倒した竜達は王より認められてたとはいえ、王の足元にも及ばない強さだわ...。」
「うむ...王が認める基準は『ただの竜種にしてはマシ』だ。魔族の王になる前、竜族の里では龍神と呼ばれていたほどだ....。」
その言葉に私達はごくりと唾を飲み込んだ。
先ほどまでのふざけ合った空気から一変する。
「それと、私達と別に王都に攻めていった魔物達には注意して。一見弱い魔物の群れに見えて『得意個体』が紛れ込んでいるの。弱い魔物で油断させるつもりだわ。」
「得意個体は2種族、ゴブリンから派生した隠密行動の得意な小柄な鬼『シャドウオーガ』、俺達とは違う進化を経た竜種『ディノ・ラプトリア』。いずれも擬態していて隙を突かれる可能性が高い。」
カナちゃん達が危ない!
「すぐに向かうぞ!得意個体は少なくとも王都の兵士じゃあ太刀打ちができない!」
フレアがすぐに立ち上がり走り出そうとしたところで声がかかる。
「待って!それなら私達が近くまで送り届けるわ!それくらいはさせて頂戴!」
「俺は乗りにくいと思うからトゥリプスに乗ってくれ。」
二匹は竜人化を解いて大きな竜の姿に戻る
トゥリプスが背に乗りやすいように四本の足を折って地べたにへたり込んだ。
カナちゃん、無事でいて....!