「114話 フレアは乙女 」
引っ越しを行ってプライベートが忙しいのと、仕事もダブルで忙しくて速度は下がっていますが更新は必ずいたします!遅れて申し訳ありません、長い目で見てください(*ノωノ)
「ところで空を飛ぶ敵に対してどうやって戦うの?」
南に向かって私、トルペタ君、フレア、レオ、で森の中を走っている時、完全にノープランだった話を皆へ投げかけた。
ちなみに走るスピードはレオに合わせてるため、少し遅い。
間に合いそうになければフレアにレオをおぶらせるしかないなぁ。
絶対フレア恥ずかしがるし、レオも小さなプライドに傷がつくと思う。
トルペタ君はシルフ装備のお陰ですいすいとついて来て余裕そうだった。
そういえばその装備ってそんな効果だったね...RPGとかだと新しい町に行く毎に防具を新調するけど、実際はそうじゃないんだなぁ。
「それについてなんですけど、レオさんと俺のスキルがあればなんとかなるかもしれないです。」
「えっ、オレ?」
走ることに集中していたレオが自身の名前を呼ばれてこちらの会話に気が付く。
どんだけ必死なんだろう。
「闇属性の弓についてなんですが、補助効果を主軸にしようと思っているんですよ。闇属性は攻撃よりも補助効果に向いています。なので魔法が吸着するような特性を持つスキルでレオさんの<拘束茨>ソーンバインドを纏った矢を放って拘束、地上に降ろすのはどうでしょうか?」
「そんなことができるの?それなら何とかなりそうだね。」
確定していなかった闇属性を補助特化にすればバランスも凄いよくなりそう。
うちのパーティは魔法を主軸の戦闘スタイルの人が多い。
特にレオは回復や補助効果を使うため、これからはトルペタ君と一緒に行動することが多くなりそうだなぁ。
「はぁ..おっけ...はぁ...。」
「レオ、平気か?」
レオがそろそろ限界を迎えそうになった頃、ようやく目的地に着く。
森を抜けた先にある岩場。
竜族の進行方向にある、かなり高所まで登れそうな地形のため、斥候の人がここで迎撃をしたほうが良いと教えてくれた。
「えっ...ここ登るってこと?...マジ?」
「うん、早くしないと竜族に追い付かれるよ。フレア、レオのことおぶってあげて。」
顔が絶望に染まって行くレオを見て限界そうだと判断した私は、レオをフレアに任せることにした。
「ふぇっ.....お、おぶるって...おぶるのか!?あたしが?」
男勝りなフレアは色恋沙汰に本当に弱く、普段聞けないような女の子らしい反応をした。
なんか可愛いな、フレアなのに。
いや、見た目はものすごく美人なんだけどなぁ。
行動が完全におじさん臭いから....。
「トルペタ君は準備があるし、私とトルペタ君は先に行くね!後は任せた!」
「おっ、おい!!!」
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SIDE:フレア
本当に行きやがった!
あた、あたしがレオをおぶる?
そんなことしたら密着しちまうだろうが!
「ご、ごめんフレっち...ハァ、ハァ..おねがい...。」
膝をついて赤い顔して、さらに上目遣いで目を潤ませてきやがる。
くそっ!!なんだってそんな可愛い顔でこっち見るんだよ!!
動機が止まらねぇ、でもここでもたついたら間に合わねぇ....。
ああもう!!
「わ、わかったよ...ほら。」
倒れこむレオの前に屈むと、肩にレオの手が触れた。
もう片方の肩にもレオの手が回り、そのまま首に手をまわしてくる。
あっ、あわわわわ。こんなん後ろから抱き着かれてるのと同じじゃねぇか!
た、確か昔ルクニカをおぶった時は後ろに手をまわして下から支え....下から!?
レオの太ももに触れなきゃいけないのか!?
...クソッ!
アタシはSランクに匹敵する腕を持つ冒険者だ、男なんかに負けるか!
ええい!さわ、さわるぞ!!
ふにっ。
その時感じたのは布越しでもわかるほどに柔らかい太もも。
レオは筋肉質でもなければひょろひょろというわけでもない。
にしたって、柔らかすぎるだろ!あたしのカッチカチの太ももとは訳がちげぇな!
くそ、女性らしさでレオに負けた...。
「フレっち、早くいかないと戦闘始まっちゃうよ~?」
「うひっ!....お、おう。い、一気に駆け上がるぞ!」
耳元で話すレオの吐息が耳に当たって思わず変な声が出る。
それをなかったことにするかのように思いっきり岩場を駆け上がる。
振り落とされないように強くしがみつくレオのことは考えず....ええい!!考えないったら考えない!!
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SIDE:ミウシア
岩場を登り切り、森を一望できるような位置まで来た私達は早速撃退の準備を始めた。
トルペタ君が武器を取り出して闇属性のマナを込めると弓から球体の金属の塊へと変わっていく。
「へ~、最初はまんまるなんだね。」
「そうですね、ここから形を決めて再度属性のついたマナを流すことでその形を定着させるんです。...ミウシアさん、何かいい形はありませんか?俺はあんまりセンスが無いので....。」
と言われても、私もセンスがある方ではない。お洒落に無頓着だった武蔵時代はもちろん、ミウシアとなった今は可愛い服は好きだけど武器のデザインの自信はない。
どうしたもんかなぁ、あんまり時間をかけてもしょうがないし...。
「色とかは属性によって変わるんだよね?」
「ですね。」
闇属性だと黒寄りの紫色...だめだ、禍々しい系のデザインしか思いつかない...。
「闇属性って考えると、ちょっと禍々しい感じのイメージがあるよね...。うーん、こんなのどうかなぁ~?」
アイテムボックスから王都で買った紙と筆を取り出してサラサラっと書いた。
敵の能力を下げるデバフ、仲間の能力を上げるバフ特化の弓であれば強さよりも使いやすさ、打ちやすさ特化になると思う。
だから移動の邪魔にならなくて扱いやすいほうがいいと思う。
「弓じゃなくて、こんな感じの....小手一体型って言うのかな?」
私が書いたのは手の甲をガードするプレートを繋げた小手と、手の甲に小さい弓が付いたようなデザインだった。
ボウガンだと矢を装填するのに少し時間がかかる。
だからあえて、トルペタ君の上がった身体能力と強い靭性のある金属のワイヤーの弦任せの撃ちやすさを重視した。
「....うん、今の俺ならこの小ささでも十分矢は飛ばせると思います。これで行きましょう!」
「えっ、いいの?私が何となく考えたやつだよ?」
私が困惑しながら紙を渡すと、トルペタ君は早速武器の元となる丸い金属の塊に手を当てる。
「細かいところは俺が修正しますが、この方向性で問題ない、というか大分いいですよコレ。とっさに攻撃をガードすることもできますし...。」
そこまで話すと、さらに集中を深めるため目を閉じ、マナをさらに多く細かく流した。
するとゆっくりとトルペタ君の左手に金属がまとわりつく。
最初はスライムのようにドロドロの金属が腕にくっついているだけだったのに、徐々に小手の形になっていく。
小手の上部には紫色に光る模様が浮かび上がる小振りな弓が付いていた。
弓の弦をビィィンと指で弾いたり、小手が付いた手を開いたり閉じたりして新しい武器の感覚を確認していると、背後からガラガラと何かが落ちる音が聞こえてくる。
後ろを振り向くと、そこには疲れた顔で崖から這い上がってきたフレアとその背中で完全に寝ているレオがいた。
「..ふーーー。や、やっと頂上か....。レオ、ついたぞ...。レオ!ほら起きろ!」
フレアは口調が荒いくせに、無理やり起こさず優しく揺らしてレオに呼び掛けた。
「...んぁ...フレっち...?あぁ、寝落ちしてたのかぁ....。」
寝ぼけ眼で目をこすりながらフレアの背から降りてこちらに歩いてきた。
合流するまでの短い時間でよくここまで深く眠れるなぁ。
「フレっちの背中ってなんか心地よくってさ~。トルっち、ミウちゃんお待たせ~。フレっちありがとねん。今度なんか奢るよ~。」
「お...おう....。」
サラッとこういうこと言うからなぁ。フレアは頼られるとかそういうのが弱いのかもしれない。
ファイヤー・スピリットでも使ってる?ってくらい顔が赤くなってますけど!
「レオさん、ちょっとこっちに来て試し打ちに付き合ってくれますか?」
「おっけ~♪てかトルっちその弓新型?マジ超かっけーじゃん!」
男の子にしかわからないかっこよさがあるよね、こう、なんて言うか「なんかかっこいい」って感覚。
私にもまだそういう心は合ったんだなぁ。
うんうん。と頷いているとふいに肩をガシッっと掴まれた。
「み~う~し~あ~?」
「あっ、ははは~。フレアお疲れ~....。」
そこには照れて顔がまだ赤いフレアがニコニコしながら拳を握りしめていた。
レオ達に見えないように私に肩を組んで2人に背を向けるように方向を変え、小さな声で話し始めた。
「おまえ、あたしがどんな思いでこの山を登ったかわかってんのか!」コソコソ
「レオと密着出来て嬉し―!...とか?」
あれ、黙っちゃった。
「いや、まぁ。それに関しては嬉しくないとはいわないけどよぉ.....。でも、こういうのは順序があるだろ?まずは手からとか...それをいきなりおぶるって...。あんなの..は、はれんちだろ...。」ボソボソ
小学生並みの貞操観念だなぁ...フレアっていくつだっけ、20代後半だよね?
なんか微笑ましくてからかいたくなっちゃう。
「フレア、破廉恥って言うのはそんなもんじゃないよ...。そうやってスキンシップして慣れて行こうね...。」
肩を優しくポンポンと叩くとぷるぷると肩を震わせて顔がどんどん赤くなっていく。
でもレオがその気になったらこんなもんじゃないし、本当に慣れて行かないと爆発しちゃうんじゃないのこの乙女は...。
そろそろ時間的にも敵が見えてくるころかな?
「あたしが間違ってるのか?それが普通なのか?」とかぶつぶつ言ってるフレアを置いてトルペタ君とレオの元に向かった。
「二人ともー、どんな感じ?」
「ミウシアさん、こちらは大丈夫そうです。俺の矢でレオさんの魔法を竜族まで届けて翼を封じて空中から落としますので、地面に落とした後のことは任せました。」
「パワーアップしたオレの力の見せ所がついに来たって感じかな~!」
レオが自信満々すぎて逆に心配になるけど、これなら大丈夫そうかなぁ。
翼に茨で制限をかけて飛べないようにするならその後また飛ばれることはなさそうだ。
地面に叩きつけられたらそれなりにダメージもありそうだし、案外あっさり行くのかも?
「そういえば竜族ってどんな魔物なの?気を付ける事とかある?」
「竜族に関してはあたしの方が詳しいぜ。」
気が付いたらまだほんのり赤い顔でフレアが後ろに立っていた。
フレア、復活したんだ。
「竜族と戦ったことあるの?」
「前にミウシアと会ったダンジョンあるだろ?あの時にどんな敵が出てきてもいいように調べたんだ。入念な準備は冒険者の基本だろ?」
「おー、先輩冒険者っぽい!ざっくりでいいから教えて!」
真面目に調べてたのかぁ、フレアって大雑把に見えてそういうところ真面目だよねぇ。