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「109話 オウカとの約束 」

「ふい~~~。こんなに飲んだのはいつ以来じゃろーな~。」

オウカをはじめにオウカの従者、私がお世話になった町の人々が集まって神社の外で行った夜桜の宴会も終わり、ちらほらと人が減っていく中でオウカと一緒にオウカ国の夜景を柵越しに眺める。


「オウカったら、飲みすぎだよ。あの量の水分どこに消えたのさー。」

「わしゃは神獣じゃぞ~~?見た目と内容量は一致し・な・い・ん・じゃ!」

お腹をポンポンと叩いてアピールするオウカ。


「ふぃ~。」

ため息をついてふとしょんぼりした顔になるオウカ。

麿眉がハの字になって、今にも泣きだしそう。


「ミウシアは本当に帰ってしまうのか...。およそ二カ月の間。この数百年で一番愉快な二カ月じゃった。」

「オウカ....。」


「....本当はまた儂と会える保証なんてないんじゃろ?ミウシアは神の遣い。そう気軽に来れるわけがないわい。」

保証は、ない。でも私は仮にもこの星の神だ。サスティニアと切っても切れない縁がある。

最後になるかもしれない、オウカには本当の事を話しておきたい。


「実はね、私神の眷属なんかじゃないんだ。」

「なに!?ち、違うのか!?ならばその神力は!?」

私に並んで柵にもたれかかっていたオウカが私の肩をがしっとつかみ、がくがくと揺らす。


「実は私、皆が神って呼んでるヒュム、ウォルフ、ルニア、ジア、シーア、そしてデストラの生みの親なの。」

「なん.....じゃと...?それは...。」

顔がみるみる青ざめていくオウカ、私は話を続ける。


「っていっても偉くなんかないよ、眷属の皆の方がよっぽどこの世界のためになることしてくれてるもん。....私は眷属達に仕事を押し付けて、最後のいい所、このサスティニアに降り立って星の神力を補充してるだけなんだから。」

「そ、そうじゃったのか....にしては神力が少ないがの....それになんだか神って感じじゃないのう。」

上から下まで、改めてじろじろと見るオウカ。


「はは、もともと私に力なんてないよ。さらに上位の神のお手伝いをしてるだけだから。...だからまた会える可能性がない訳じゃない。これでも地位だけは高いんだからね~!...絶対にこの世界にまた戻ってくる。約束するよ。...だから私と友達でいてくれる?」

人々が崇める神の上位の神だっていっても信じてもらえないと思ったけど、以外にもオウカは信じてくれている感じがする。

でもそんな存在だって知って、友達でいてくれる保証なんてない。

オウカは凄い話しやすいし、一緒にいて...短い間だったけど凄い楽しかった。


「ふっ、ふははっはははは!ミウシア~~~!!お主はそんな存在じゃったのかあ~~~!!じゃがな、地位こそミウシアより高くないが、今の話からすると儂の方が仕事しておるぞ~~?」

「うぐぐ...言い返せない...。」

ドライアドと一緒に人々を守って、国を築いて、途方もない時の中この国を守り続けてきたオウカと比べたら私なんて大したことなさすぎる。


「じゃからトントンじゃ。」

「トントン?」


「うむ、地位だけあって仕事しないミウシア、地位はないが仕事をした儂。丁度よかろうて。じゃからこれからもずっと友達じゃ!」

私に向けて手を差し伸べるオウカ、握手を求めてきてるんだろうけど、嬉しすぎて抱きしめたい、いいかな?いいよね?


「おうか~~~~~~!!!」

「なっ...し、しかたがないやつじゃなぁ。...いつかまたこの地で酒でも交わそうのぅ。」

身長差のせいで私が地面に膝をついてオウカに抱き着く形になる。

そんな私を受け止めて、手をまわし頭を撫でてくれた。


「それに次ぎ合った時にはもっとぼんきゅっばああああんな体になっておるはずじゃからのー。楽しみにしておくのじゃ。」

「....数百年以上その体型から無理じゃないの....。あいた!」

抱き着いたままもごもごと喋ったのにしっかり聞こえてたらしく、ポカっと頭を叩かれるけど痛くはない。


「ミウシアこそ、ぺったんこじゃぞ。うががっがががいたいのじゃ~!!」

回した腕に力を込めたとたんに大げさに反応するオウカ。

痛いほどは抱き着いてないよ?


「それじゃあ、明日は王都に帰る支度をして、転移魔法で一気に帰国じゃ!もちろん醤油も納豆もたくさん用意しておるぞ!」

「ほんと!?やったね!!じゃあお風呂はいろっかな~」


「最後じゃし、背中でも流させるのじゃ。」

「ん~~~~~~、まあぁいっか、おねが~い。」

軽く寄ってたのもあって、あんまり考えずに返事をしちゃったことを私は後に後悔する。

オウカもまた、男性女性どっちもイケる、男性慣れをした大人の女性だったことを。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「オウカ様、ミウシア様おはようございます。」

神社から出るとテツザンさんが庭の掃除をしていた。


「うむ、儂らは出かけてくるのじゃ。帰ってくるまでに転移魔法の準備をしておくのじゃぞ。」

オウカが何か答えるが、私はもうそれどころじゃない。

昨日のことを思い返して顔が熱くなっていくのを感じた。


「はい.....ミウシア様...?どうされましたか?」

「い、いえ...。ナンデモアリマセン....。」

「ほれ、いくぞミウシア!」

「ひゃ!」

いきなり私の手をガシッと掴むオウカに慌てふためいて変な声が出る。


「じゃーかーらー。悪かったといっておるじゃろ~!酒も入って、別れの時が近い、感極まって手が出てしまっただけなのじゃ!これだけ謝っても許してくれるのか?」

「いや、あの。怒ってるとかじゃなくて...。」

昨日何があったかは思い出すだけで顔が熱くなる。

確かに、男性としてそういう経験が今までなかったわけじゃない。

だけどもう心が女性に引っ張られちゃってるから、今までとはわけが違うし、自分があんなふうになったことが恥ずかしくて仕方がない。

あああもう!

オウカがしたから私の顔を覗いてくるが、私はその顔を見てられず後ろを向いた。

察されたくないけど、どうもフラッシュバックしてしまう。


「ん~~?はは~。さてはミウシア、恥ずかしがっておるじゃろ~?あだっ!」

照れ隠しに軽いげんこつを食らわせて一人で先に階段を下りて町へと向かう。


「ったく!」

別に嫌じゃなかったけど、からかわれるのはイラっと来る。

まぁ照れ隠しなんだけど。


後ろから「わ、悪かったのじゃ~」と走って追いかけてくるオウカを待たずに私はずんずんと階段を下った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

SIDE:デストラ

「大事件です。」

ルニアが何やら深刻な顔で集合をかけた。


何があったのだろうか。

おそらくミウシア教官がらみであることは間違いが無い。

以前ルニアが眷属達を招集したのはジアのアバター騒ぎの時。

あれと同じようなことが会ったというのか。


「なにがあったのよ、また馬鹿ジアのアバターが何かしたの?」

ウォルフも同じようなことを考えていたようだ。

遠視の泉でミウシア教官を見るのは最近ルニアだけだ。


というのも、毎晩寝る前にミウシア教官から通話がかかってきて、色々話を聞けることと、ミウシア教官が監視される(しているつもりはないのだが)のがお好きではないと言っていたからだ。


まぁもし私がミウシア教官の立場だったらあまり良い気はせぬしな。


しかしルニアだけは「またミウシア様が窮地に立たされたらどうするんですか!」といって、遠視の泉を常に見ている。

もちろん遠視の泉は万能ではなく、真上からの映像しか見れないため建物の中の状況はわからない。


以前ウォルフの発明した超小型の魔物の視覚を共有する機械を使えばより至近距離で映像が見れるが、流石にそれはプライバシーが無さすぎるとのことで、普段は使わないようにしている。


「昨日の晩、ミウシア様の寝る前の通話相手は私でした。しかし、昨日はミウシア様からの連絡がありませんでした。皆さんはミウシア様と約束の日なのに通話が来ないことが一度でもありましたか?」

ふむ、ミウシア教官は確かに、約束は守るお方だ。

数日前も、稽古が特に厳しく体中が筋肉痛で悲鳴を上げていてもそのことの愚痴を通話にて話していた。

そう考えると、それ以上に手放せないような何かが起こったと考えるのが妥当であろう。


「確かに~。ミウちゃん忙しくても寝る前は皆に今日会ったことを話すのが楽しみだーって言ってたからにゃ~。夜まで特訓してたんじゃない~?」

「夜の特訓...そうですね、ではこちらの映像を見ていただきましょう。上からの視点なので少し見にくいですが。」

ルニアはそう言って遠視の泉で見た映像を「時空遡行機器「みのがし君」を使い再生した。


「む?なにやら言い争ってるような...。」

ミウシア教官の様子がおかしい、普段はオウカという少女と仲が良く、こんなによそよそしい感じではなかったと思うのだが...。


「この二人は仲がいいんだろ?喧嘩する程仲がいいってこった。これのどこがおかしいんだよ。」

ジアの言うことももっともである。

見た感じそこまでおかしくないとは思うのだが。


「では音声を再生いたしますね。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「じゃーかーらー。悪かったといっておるじゃろ~!酒も入って、別れの時が近い、感極まって手が出てしまっただけなのじゃ!これだけ謝っても許してくれるのか?」

「いや、あの。怒ってるとかじゃなくて...。」

「ん~~?はは~。さてはミウシア、恥ずかしがっておるじゃろ~?あだっ!」

照れ隠しに軽いげんこつを食らわせて一人で先に階段を下りて町へと向かう。

「ったく!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「オウカがミウシアに手を出した....か。大方、暴力でも振るったんだろう。」

「であろうなぁ。」

ヒュムのいうことに私も賛成する。

酔っぱらって稽古でも始めたんだろう、酔っても稽古とは...とことん武に対してまっすぐな幼子だ。


「いや、これヤってるでしょ。」

「ガハハ!!だな!!ミウシアもとうとうか!!ミウシアの世界ではこういう時、赤飯でも炊いてやるらしいな!!」

「人間はよくわかんにゃいにゃ~。」

ヤる?...とはどういうことなのだろう。

ヒュムの方を見ると同じく、よくわかっていないような顔をしている。

顔を見合わせて首を傾げるしかないのだ。


「ウォルちゃんの言い方は少しお下品ですが、昨夜の間、何かしらの事があったと思われます。これによって、ミウシア様が女性を恋愛対象としてみていることが確定致しました。」

「ま、何となくは思ってたけど。一番最初声を聴いたときは男性の声だったものね、もしミウシアが転生者だと仮定するなら、男性の精神で女性の肉体を授けられたってことになるわね。そう考えると納得できる所が多々あるわね~。」

「オレは最初からわかってたぞ、しかしもう内面はすっかり女性のようだがな!」


ちょっとまて、なぜそうなる?

なぜ今の話からミウシア教官が女性を恋愛対象としてみていることになる?

ウォルフの言っていることは解る。私もうすうすはそう感じていたから。

ジアの言っている意味も分かる。もし元男性だとしても、ミウシア教官と話している時は女性としか思えなかったから。


「ちょ、ちょっと待ってくれ、なぜ今の話からミウシアの恋愛対象の話になるんだ?夜に稽古を行っていただけだろう?」

「そ、そうだ。おかしいのではないか?」

ヒュムが私が思っていたことと同じ事を考えていたようで、先に発言をしてくれた。


しかしそれを聞いたジア、シーア、ウォルフ、ルニアは一斉にため息をついて首を振る。


なんだというんだ!?


初心(うぶ)な二人はほおっておいて続けましょ。で、ルニアはそれの何が大事件だと思ったの?」

「このことにより私は本気でミウシア様のお側に居続けたいと思いました。...しかしですね、皆さんは考えた事がありますか?ミウシア様が目的を達成したその後のことを。」


「「「「「後のこと....。」」」」」

ミウシア教官はサスティニアの地に神力を振りまき、サスティニアを、星を安定させる。

その後は天界に戻ってくるとは思っていた。

けど本当にそうだろうか?

ミウシア教官は昔住んでいた世界に帰るという選択肢を選ぶこともあるのではないだろうか。

皆を眺めると私と同じ事を考えているようで、「神界に帰ってきて一緒に住む」と断言するものは居なかった。


「...言わなくても皆さんの顔を見ればわかります。皆さんも、ミウシア様の記憶を一部共有をしているのでお分かりかと思いますが、ミウシア様は元は争いのない平和な世界で暮らしていました。元の世界に帰りたいと仰る可能性は極めて高いと思います。その場合、私達はどう致しますか?」


「どう....って言われてもね...。帰る手段って言うのはあるのかしらね。」

「たしかになぁ、少なくとも今のミウシアはちょっとつええバーニア族なだけだもんなぁ。」

ジアとウォルフの言う通り、ミウシア教官が元の世界に帰りたいと思ったところでその手段も実現できる可能性もない。


「私は...以前まではこのことについてあまり考えていませんでした。しかし、ミウシア様が女性に興味があることが確定した以上!私にも「わんちゃん」あるのではないかと!!思うのです!...そしてその場合、もしミウシア様がこの神界から離れるならば、絶対に離れたくないです!この思いが届かぬのならば、それは我慢できたかもしれません。...つまり何が言いたいかというとですね、ミウシア様の世界にミウシア様と私達眷属の合計7人が転移する方法を考えましょう!ということです!」


「ミウシアの世界に....。」

「シーアもミウちゃんの世界行ってみたーい!」

「ん~~、課題はたくさんありそうだけど、やってみる価値はあるわね。神界のマナと神力をエネルギーに機械で....」

「ミウシアの世界には格闘技ってのがあるみてーだな!オレはそれをやってみてえ!」

ミウシア教官の世界には私の知らないものが色々ある。

私の知識は生かせないだろうが、ミウシア教官のそばにいて役に立てることは少なくともあるだろう。


「よし、ルニアのその提案、乗ろう!」

私が立ち上がってルニアに賛同すると、皆もやる気になったようで何が必要かを各々考えだした。


「ふむ...この世界のマナに関する資料を再度見直す必要があるな、ルニア!神力についてなのだが.....。」

ヒュムもやる気になったようで、率先してルニアに質問をした。


皆やる気になっているのはミウシア教官への思い、それと神界の退屈さが身に染みているからなのだろうな。


「私にも手伝えることはあるだろうか?」

私もそのために全力を尽くすとするか。

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