表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/163

「107話 腕輪の呪い 」

「ふむ、そろそろいいかのぅ。」

いつものようにオウカに稽古をつけてもらっていると、オウカがそんなことを呟いた。

最近、稽古でオウカに対して攻撃が届きそうなことが増えてきた。

それでもまだ一撃も与えられていないんだけどね。


「良いってって何が?」

「いいからいいから、ちょっと右腕をだしてみい。」

言う通りに腕を差し出すと、オウカは左腕に着いた腕輪に触れると目を閉じた。


そのまま5分が経った。

腕が疲れてきたけどとても話しかけられるような雰囲気じゃない。あ、オウカのつむじ発見。

と、そんなどうでもいいことを考えていると、突然血のような赤と黒に深く透き通った腕輪が綺麗な赤一色の腕輪にかわり、鱗のような模様が付いた。


「えっ、オウカ?なにしたの?」

「ちと昔の友と会話をしておったのじゃ。もう成仏したがの。ほれ、腕輪を鑑定してみい。」


まさかそれって、呪いが解けたってこと?

「アナライズ<鑑定>!」


-------------------

名称:赤竜の腕輪

品質:S

祝福:可

武器性能:魔力制御、魔力蓄積

構成素材:赤竜の核水晶

説明:赤竜のマナが結晶化した水晶から作られた腕輪。

補足:・自身のマナを蓄えておくことができる。

   ・マナの制御が容易になる。

-------------------


「呪いが解けてる!!体も軽い!!」

憑き物が落ちたように体が軽く、少し走っただけで風を置き去りにした。

マナを蓄えることができるというのはどういうことなんだろう?


というか

「オウカ、もしかしていつでも呪いを解けたの?」

ポリポリと頬を掻きながらバツの悪そうな顔をするオウカ。


「あーー、そうと言えばそうじゃが...そのおかげで二刀流の戦い方が学べたじゃろ!!」

「まーそうだけど...私がある程度上達したからいまかなーって思ったってこと?」

首をひねるオウカ、違うの??


「そうじゃな。.....本当はだいぶ前から上達はしてたのじゃがなぁー。...呪われておる者を説得し、正気を取り戻させ成仏させるのは大分骨が折れるのじゃぁ....。」

「何はともあれ、呪いを解いてくれてありがとう。その赤竜は無事に正気を取り戻したんだね。」

何だっけ、自分の庇護下にいる人間を守ろうとして力におぼれたんだっけ。


「まぁのう。精神世界ではこことは時間の流れが違うからの...数百日の戦いの末何とかねじ伏せ、話を聞けるようになってもらったんじゃ.....。あとは儂の光属性スキルで昇天じゃ。」

「あの数分で数百日分も...何から何までありがとうね。」

オウカの頭に手をポンと置いてゆっくり優しく撫でる。


「ん~。ミウシアの手は温かいの~。儂としても友であった赤竜が呪いに縛られ続けているのは心苦しかったからの、こちらこそ、機会を作ってくれたことに感謝するぞ。.....さて。」

私の手をどけて距離を取ると、角から短剣を取り出して構えるオウカ。


「呪いが解けたんじゃろ、今の全力でかかってくるがよい。」

「おっけー。頑張って寸止めするけど、もし止まらなかったらごめんね。」

「ほ~?一撃でも入れられると思っておるのか~?行くぞ!」


行くぞ!と攻撃タイミングを教えてくれたにもかかわらず、目で追うことができない速さで移動し、姿を消した。

以前のように背後からの攻撃がくると思ったけどその様子もない。


右手に持った桜下兎遊にマナを集めて水属性に変質させる。


「ウォーターコーティング!」

そのまま地面に向けて桜下兎遊を振るい、薄く広くマナを伸ばして周囲の地面がわずかに水で覆われた。

それにより、高速移動していたオウカを水しぶきと音で判別する。


位置を把握されたことに気が付いたオウカが一気に距離を詰めてくる。


左後方、3mからの高速突進攻撃。

攻撃が来るほうを向いて片足を引き、ツッパリ棒の要領でぬれた地面を踏みしめながら両手の小太刀をクロスさせて防御する。


その瞬間、ガキイン!と大きな音と衝撃が私を襲うが鍛えた足腰と持ち手の金剛布による筋力アップのお陰でオウカの角を真っ向から受け止める事に成功する。


「儂の自慢の角を防ぐとは、良い小太刀じゃのぉ。」

「小太刀のお陰だけじゃないっ...から!!」

オウカの角を横に受け流すと、今度は両手に持った角の短剣で突きを繰り出してくる。


体を捻って避けると、今度はもう片方の短剣で切りかかってくる。

背面飛びでその攻撃を避けながら、桜下兎遊にマナを集めて光属性から雷属性へと変質させる。


飛雷(ひらい)っ!!」

空中から真下にいるオウカめがけて雷を纏ったマナの剣閃を飛ばす。

この攻撃自体、速さがある方ではない。

でも今回は当てることが目的じゃない。


難なく避けたオウカは一歩下がった、が、次の瞬間オウカが避けた飛雷が水が薄くはられた地面へと衝突した。


「ぐあっ...な、な..んじゃ..?」

一瞬で地面に貼られた水が感電し、地面に足をついていたオウカの体を電気が襲い、地面に足をつく。

神獣と言えども流石に電気が効いたらしい。


とはいえ、このままだと私も地面に着地しちゃう。


「<岩作成>クリエイトストーン!」

着地地点に魔法陣を構築し、人ひとり分の小さな石の足場を作り出す。


着地と共に桜下兎遊にマナを込めて光へ、そのまま吸収してホーリー・スピリット状態になった。

雷属性は光属性を変質させたものであるため、雷属性というよりは光属性で作られた雷スキルって感じ。

だからホーリー・スピリットなら感電しないはず!


そのまま地面に降りると少しだけぴりっと来ただけで感電はしなかった。

行ける!と思いオウカの首筋に小太刀を立てる。


「これで初勝利?かな?」

私がそう告げてもオウカは膝をついたまま動かない。

そんなに雷が聞いたのかな?と思ってると背後に何かの気配を感じた。


急いで横ステップすると、今まで私がいた場所をオウカがものすごい勢いで通り過ぎて行った。

まさかのドロップキック。

そのまま私を通り過ぎ、空中でくるっと体を回転させてこちらを向いて着地するオウカ。


「ちぃ!流石に魔物化されると反応が早いのぅ!」

今私の視界には跪いているオウカとドロップキックをしたオウカの二人が映っている。


と思ったら跪いていたオウカがパアン!とはじけて水が周囲に飛び散った。


「水の身代わり!いつの間に!?」

「ミウシアが都合よく水を撒いてくれたからのぅ」

そのまま薄く張られているだけの水にトプンと沈んでいく。

少し離れた地面の水が盛り上がり、腕を組んだオウカが現れた。


「水同化、復属性の魔物化で儂の体は今水/光属性に変質しとるからの。もちろん、光属性じゃから雷に対しても体制があるぞい。ま、ちと驚いたがの。」

オウカは元々光属性、雷は元から聞いてなかったのか....・


「稽古は接近戦じゃったのー。ここからは遠距離からのスキルによる稽古じゃ。」

腕を組んだまま人差し指を上げると、水が覆われた地面から拳ほどの水球が複数浮かび上がり、短刀へと形を変えていく。

その数およそ50。


「避けてみい。」

その言葉を皮切りに、水の短刀が私に向かって飛んでくる。

あー、水を広げたのは完全に失敗だったなー。

等と思いながら次々に飛んでくる短刀を避けていく。


呪いが解けた本来の速さに加え、ホーリー・スピリット状態の今、避ける事自体は容易だった。

最初は一本だけしか飛んでこなかったのに、二本、三本と、だんだん飛んでくる本数が増えていく。


このまま増えて行ったら軽く躱すだけでは避け切れなくなってくる。

大きくよけたらそれは隙になり、間違いなく被弾する。


ふと気が付く。次々に水の短刀を飛ばしているだけかと思えば、飛ばした矢先にすぐ足元の水から新たな短刀を生成している。

つまり終わりがない。

そんだけ作れるなら一斉に攻撃すれば勝てるんじゃないの?


と思ったけどコレは稽古、遠距離攻撃からの攻撃の稽古なのだ。


「ただ避けるだけで精いっぱいかの~?」

全ての水は消せなくとも、目の前の短刀だけでもどうにかしたい。

でも引力の剣を使っても引き寄せるだけでいつかはキャパオーバーになると思う。

短刀自体をけさなくちゃ意味がない。


方法がない訳ではないけど練習も何もしてない...ぶっつけ本番。


相している間にも短刀の数がどんどん増え、4本同時に連続的に私に向かって飛んでくる。

これ以上は今までの避け方じゃ躱しきれない。


ホーリー・スピリットを解除し、短刀をよけ続ける。

さっきまでと変わらず避けられることから私自身の速度でも大丈夫なようだった。


桜下兎走と桜下兎遊にマナを均等に注ぐ。

光と闇は対極の属性だから今の私には制御できない、けど光と火なら属性の相性もいいはず。


迫りくる短刀はついに5本に増える。

リミットは近い。


「魔物化を解いても避けられるとは、ミウシア自身も相当速くなったのぅ。いや、速さを取り戻したと言ったほうがよいかの。」

両手の小太刀から光と火属性のマナを吸収する。


二つのマナが交じり合わないよう、イメージしたのは二つの勾玉を合わせて球体にしたような関係性。

互いが干渉しあいながらも混ざらず共存するイメージ。

闇と光りの時よりもスムーズに吸収できるのは赤竜の腕輪のお陰かもしれない。


そして全てのマナを吸収した時、私の体から力があふれ出した。

今までにない感覚、ホーリー・スピリットの時には感じなかった力の流れを感じる。


「なんと、やってのけたか!」

私が復属性を制御できることになった事に驚いたのか、オウカが捜査していた短刀の速度が緩む。

今なら光/火のスキルが使えるはず。

今欲しいのは目の前の水の短刀を蒸発させる火力。私が思い描くのは拡散する熱閃(レーザー)

この世界のスキルがイメージによる影響が大きいというのなら、光と火の複属性で再現できると思う。


今も尚止まらない弾幕をよけながら、光/水属性を持つ桜下兎遊と闇/火属性を持つ桜下兎走に光/火属性のマナを流し込み、武器による属性変化を行わない。


キィィィィィと高い振動音のようなものが刀身から聞こえる。

そのまま右手で横に、左手で盾に小太刀を振るい、刀身から高圧縮された光と火の込められたマナを放射する。


私が武器を振るうと、その剣閃は高熱を持った光の刃となって向かってくる障害を一瞬で蒸発させながらオウカに向かって光の速度で飛んでいく。


「!!!!!<多重聖盾>アマテラス!!!!」

オウカの目の前に光でできた何重もの盾が一瞬で現れる。

私の放った十字の熱閃は次々に盾を貫通し、5枚目の盾で消え去った。


「おっっっっそろしいスキルを出すでない!!!儂が受け止めんかったら世界樹が焼かれていたぞ!!!」

今までの緊迫した雰囲気は消え、ぷんすこと頬を膨らませて怒っているオウカ


「ご、ごめん。まさかここまでとは思ってなかったよ...。」

「まぁよい...それはそうと!ミウシア!!できたのじゃな!!光と闇ではないにしろ、復属性の魔物化ができたのは大きいぞ!!ほれ、自分の顔みてみい!!」

パタパタとこちらに走りながら近づいてくるオウカ、どこからともなく手鏡を出して私に向けてくる。

鏡に映っていたのはちょっと汗ばんだ美少女。

やだ、私可愛い。

じゃなかった、髪の毛が半分白、半分赤とオレンジの中間の色になっていて、ピンクのメッシュは健在だった。


「ほんとに復属性になってる....ていうかこの桃色のところは何で変わらないんだろうね?」

「うーむ、そのサクラ色の髪の毛からは神力を感じるのじゃ。マナよりも強力な神力を持つ髪は影響がなかったんじゃろなぁ。」

何この髪の毛、ここから神力を地面に流してサスティニアを安定してるの?

まるでWi-Fi...。


「光と火の相性が良かったんじゃろうか、光と火ができたのなら水と火、闇と水もできるかもしれぬなぁ。よし、試してみよ!」



その後色々試した結果、水と火は光と闇の組合せと同じく、復属性化ができなかった。なんというか火で水を熱しないで水の中に火を入れた感じ。

その代わり、闇と水の組合せはうまくいった。

戦闘にどう応用するかはまだいい案は浮かばなかったけどね。


属性の特性として、こんなことが分かった。

光と火の組合せは光の高速移動と火の火力の相乗効果のお陰で、手数と火力の合わさったインファイター。

闇と水の組合せは隠密に優れた闇とマナの扱いに長けた水の相乗効果で...まだ何ができるかはわかってない。色々やってみないとね。


光と火、闇と水の組合せができるようになったのは、赤竜の腕輪の魔力操作向上によるものだとオウカが言っていた。

それでもできない光と闇、火と水はどうなんだろう、実は論理的に不可能でしたー!とかだったら時間を返してほしい。


オウカと話し込んでふと気が付けばもう辺りは夜。


「そういえばいつ頃王都にかえるんじゃったっけ?」

と言われ、約束の日までの残り日数を数えてみると残りは後2日。


思ったよりも時間が無いことに気が付き、オウカが急に「明日はミウシアお別れ祭とするのじゃ!!町の者に伝えてまいれ!!!」

と従者に命令したもんだから従者さん大慌て、いきなりは無理だということで明日宴会を開くことになった。


何から何まで申し訳ないなぁ、絶対に恩を返したいな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ