「105話 復属性の魔物化 」
オウカを撫でまわした後、神社の最奥にある世界樹の幹に面した箇所に祭られた全種族の神の前で祈りを捧げた私は、無事装備二つに祝福を付けることができた。
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名前:ミウシア
種族:バーニア族(半神)
職業:魔双剣士(Lv82)
HP:1674/1940(1130UP)
MP:8220/8250(1268UP)
力:A(2段階UP)
防御:C+ (3段階UP)
魔力:A+(2段階UP)
早さ:D (呪)
運:A+
称号:善意の福兎(6柱の神の祝福により効果UP)
・自分以外のHPを回復する時の回復量+100%
・誰かのために行動する時全能力+50%アップ
・アイテムボックス容量+100%
・製作、採取速度+200%
※このスキルはスキル「鑑定」の対象外となる。
※このスキルを持っていると全NPCに好意的な印象を与える。
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名称:桜下兎遊(小太刀):光水
品質:S+
祝福:可能
武器性能:攻撃力+150
構成素材:古樹鹿の蒼晶角、黒錬鉄、世界樹の神木、金剛布、漆、チェラリの染色剤
説明:神獣オウカの濃縮されたマナを含んだ水晶角と黒錬鉄から作り出された小太刀。
補足:・黒錬鉄の成長能力と引き換えに装備者のマナ操作効率を大きく上げる。
・装備者が金剛布を触れている間、装備者の筋力+10。
・祝福により小太刀を通して光/水属性のスキルを発動することができる。
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名称:桜下兎走(小太刀):闇火
品質:S+
祝福:可能
武器性能:攻撃力+150
構成素材:古樹鹿の紅晶角、黒錬鉄、世界樹の神木、金剛布、漆、チェラリの染色剤
説明:神獣オウカの濃縮されたマナを含んだ水晶角と黒錬鉄から作り出された小太刀。
補足:・黒錬鉄の成長能力と引き換えに装備者のマナ操作効率を大きく上げる。
・装備者が金剛布を触れている間、装備者の筋力+10。
・祝福により小太刀を通して闇/火属性のスキルを発動することができる。
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オウカの言っていた通り、2本合わせて4属性も使えるようになったけど、水と火に関しては使い方を理解していないためすぐ戦闘では使えないと思う。
二つの祝福装備により、職業も魔双剣士になっていた。
ただの双剣士ならゲームでもあったけど魔双剣士?魔法も使いこなすからかな?
なんにせよ残りの1週間余りでなんとしてでも復属性の魔物化、ソウル・スピリットを使えるようにならなきゃ。
ついに始まった復属性の魔物化、このためにレベルも上げたし小太刀も作ってもらった。
絶対に使えるようにして見せる!
いつものように神社の前、石畳の上でオウカと向き合う。
武器を持っているのは私だけ、オウカはマナの動きを見てアドバイスをしてくれるみたい。
「よし、では両手に持ってマナを流し込み、光と闇属性に変換するのじゃ。」
右手に桜下兎遊、左手に桜下兎走。
右手に光、左手に闇属性を意識してマナを変質していく。
桜下兎遊からは白い光属性のマナのオーラが漂い、桜下兎走からは黒い闇属性のマナのオーラが漂い出す。
「復属性スキル同時発動はできそうじゃな。...しかしここからじゃぞ、二つの相反する属性を混ぜ込みながら取り込むのじゃ。」
一度噴き出た属性のマナを吸収するように体内に移動させる。
少しずつ、少しずつ体内のマナに光と闇のマナを混ぜていく。
全て吸収し終えるも、体がずーんと重く感じる。
「ちがうのぅ、互いの良い所を打ち消し合っておる。髪の毛も黒と白が混じりて灰じゃしなぁ。」
「え、ただ混ぜるだけじゃないの?」
混ぜ方とかにコツでもあるのかな、とりあえず今の状態じゃあ体が重くてろくに戦えない。
体内のマナから属性をぬき、スピリット化を解く。
「ん~混ぜると打ち消し合う、順番に吸収するとマナの総量が多すぎてボカンと....だめじゃなあ。何か方法を考えねば...。」
「まぁあくまでオウカの仮説だったもんね、オウカは復属性のマナを取り込む時、体内のマナはどういう風になってるの?」
人間と魔物ではスタートラインが違うけど、参考になることもあるはず。
「そうじゃなぁ、最初からもつ自分のマナを球体とすると、そこに他属性のマナを流し込んで丁度半々にする感じじゃな。スキルを使うときは光属性のマナから水属性の武器を通して複合スキルを使ったりするのう。儂の場合は光と水、光と火の復属性じゃから打ち消し合うこともなく共存できるのじゃが、ミウシアの場合は相反する属性じゃからのー。」
属性の相性による差かぁ。
そもそも同時に属性を取り込むのは体内のマナの許容量を超えないためだったよね。
人間の場合は、通常時を1(無属性)として属性のマナを1(単属性)取り込んで属性付きのマナが2(単属性)になる。
そこから取り込もうとするとマナの許容量を超えるからダメ。
だから両手の武器から同時に0.5(単属性)ずつ取り込んで合計2(復属性)の復属性にしようとしてるわけで。
闇と光だと相性が悪いから打ち消し合うと....。
無理じゃない?
混ざらないようにするなら最初から0.5(無属性)ずつ、二つのマナを用意してそれぞれに光と闇を注ぐしかないような...。
二つに分ける事ってできるのかな。
「オウカ、自分のマナを二つに分ける事ってできる?」
「自分のマナを二つに??」
言っている意味が解らないといった表情でオウカが首を傾げる。
私が考えた事をオウカに伝えると、「ふむ...。」と言って考え込んだ。
「む~。難しいのう。球体と表現したのは人体の中心部にあるマナを貯蔵する臓器のようなもののことじゃが、物理的に1つしかないからのう。分けるのは無理じゃなぁ。」
「そっか...。」
やっぱり、高位の魔物しかできない技なのかなぁ。
人間と魔物の体のつくり根本の問題だし。
「ま、色々試してみるしかなかろう。とりあえず魔物化の修行はここまでにして、いつもの稽古に移るとするかのぅ。今日からは儂が作った小太刀でスキルも使ってみるといい。」
オウカが角から短剣を作り出して構える。
まだまだ私の二刀流の戦い方には改善の余地がある。
どうしても隙ができちゃうタイミングとか、私自身の力不足のところはスキルや魔法で補えばいい。
まだ複属性スキルは使いこなせないけど、火と水属性が使えるようになったことだし、色々戦略が広がるなぁ。
「行くよ!」
私も武器を構え、オウカへと切りかかった。
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SIDE:ルクニカ
「ッ....。そろそろきつくなってきましたね。」
対岸に見える魔大陸に向けて結界魔法を再度張り直し、ごっそりとマナが抜けていくのを感じました。
魔族を名乗る魔物達が王都を襲撃してから早2カ月半、私が魔大陸に展開した結界ももう耐えられそうにありません。
なんとしてでも後半月は耐えなければ、以前よりも大量に魔族が攻めてくる可能性も有ります。
「ミウちゃん達は修行はうまくいってるでしょうか....。」
私が把握しているのは王都の北東にある火山へ向かったフレアだけ、トルペタさんはギアードの技術を学びに、アルカナさんは禁忌の森の魔女の所に、レオさんは精霊王の元に向かいましたが、その後の経過については何も知りません。
ですが必ず私と同等かそれ以上まで強くなるでしょう。
たかだか3カ月の間ではありますが、ミウちゃんと一緒に行動していた皆さんであれば間違いありません。
前世と違い、今私の肉体は神獣ではありませんが、ミウちゃんと一緒にいると陥る不思議な感覚、あれはおそらく神力。
つまり、ミウちゃんは神の使徒か神に準ずる者だと思います。
どおりで天使なわけですね。
となればいつかミウちゃんは神の元に帰ってしまうのでしょうか。
「ああ、考えたくない....。」
とにかく今はできるだけ王都の兵士たちを鍛えなければ...。
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SIDE:フレア
「だからよー、でかけりゃでかいほどいいんだって。その方が重くて破壊力もすげーんだろ?」
「はぁ、馬鹿ね。いくらでかくてもそれであんたのスピードが遅くなってもしょうがないでしょ?」
目の前の私と同じくらいの大きさの小柄なドラゴンがサラサラと紙に絵を描きだした。
コイツの名はスミス。火山に住む鍛冶師をやってるドラゴンだ。
ドラゴンのくせにドワーフよりも器用だってんだからおかしな話だよな。
この火山に修行に来てたまたま魔物に襲われている所を助けてやったら武器を作ってくれるって話になった。
だが素材は自分で調達して来いってことで、あたしはプロミネンスドラゴンとかいう火口のマグマに住む厄介な魔物を倒すことになった。
というかプロミネンスドラゴンはスミスが火山に住んでる上で邪魔な存在らしく、要は面倒ごとを押し付けられたって訳だ。
「あんたの話を聞いた感じだと、斧じゃなくてハンマーの方が向いてそうね。こんなのどう?」
渡された紙にはあたしと同じくらいの長さで、頭部分がどでかいハンマーが描いてあった。
装飾も下書きだが竜の模様がかっこいい。
「ふーん、ハンマーねぇ。確かに、力まかせにぶん殴ればいいんだから刃なんていらねーよなぁ。...おし、これで頼むぜ!」
「んじゃ、約束通り火口のプロミネンスドラゴンよろしく。ハンマーの材料になるんだから素材も忘れずに持ってきなさいよ?」
「おう、任せろ!」
マグマかー、マグマって熱いんか?
ま、何とかなるだろ。
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SIDE:アルカナ
「詠唱なんざ必要ないさね!!!!」
「魔法からかっこよさを抜いたら魅力が半減どころじゃないですよ!!??」
マクスウェル!この人は何もわかってないです!!
どんなに天才であれこの美学が解らなければ話にならないです。
せっかく命令文を接続キーを使って拡張し、魔法陣の上に命令文だけの魔法陣を描くことで膨大な情報量の魔法を発動できるようになったのに!!
この婆は「<火竜巻>ファイヤーストームのファイ、ヤー、ス、を接続キーに、トームを始動キーにすればいいじゃないか」とかいって!!
ありえないです!かっこよくない!折角なら接続キーを詠唱っぽくした方がいいじゃないですか!!
「かーっ!やってらんないね!!効率を自分から悪くして何の意味があるってんだい!」
「こちらのセリフですね!!マクスウェルはセンスがないです!!」
「ほー、そうかい!!じゃあとっとと帰んな!!!もう十分教えただろう!!」
「あー、いいですとも!!もう教わりたいことは教わりましたしね!!!私がいなくなって検証できなくなっても知りませんから!!!」
そう言って洞窟にあるマクスウェルの家を飛び出して、私は王都へと向かったです。
やっぱりロマンが大事ですよロマンが。
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SIDE:マクスウェル
「やれやれ、若者の考えは理解ができないねぇ....。」
あたしとしてはこの数カ月は数百年の間で一番濃く、楽しい時間だったんだけどねぇ。
まぁ、あの子もそろそろ王都に帰らないといけないと言っていたし、遅かれ早かれってとこさね。
「さて、次は何を研究しようか....。」
あたしが持つ全知の祝福でも知りえない事。
それはこの世界を作り出した神について。
全知を得ても神について何もわからなかった、これは意図的に隠されていると思い、あたしは世界中の神に関する資料や伝承を集めた。
ヒューマンの神「ヒュム」、ドワーフの神「ウォルフ」、ジャイアントの神「ジア」、バーニアの神「ルニア」、ケットシーの神「シーア」そして魔物の神「デストラ」。
世界はこの6柱の神によって成り立っているという。
だがあたしはそう思わない。
この神を作った上位の神がいると睨んでる。それは神に命名規則があるから。
どの神も種族の名前の一部から取っている、デストラに関してはデストラクション(破壊)を意味する言葉が元になっているのではと古い文献には記されていた。
もし6柱の神が種族の名前を作るのであれば、普通は自身の名の一部から取るんじゃないだろうか。
勘でしかないが、もしそうだとすると6柱を作り出したさらなる上位の神がいるかもしれない。
「これは...人間が触れていいようなことなのかねぇ...。」
とはいえあたしは数百年生きた存在だ、神の怒りに例え触れようが、この人生にもはや悔いなどない。
「ちょっと調べてみるかね。」
神に関する文献をもう一度確認しなおすことにした。