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「103話 修行の日々 」

「ッ!」

「ほれ、ほれ、ほれ。攻撃に無駄がありすぎるのと、誘導が足りぬぞ~。これじゃあ儂に一発入れる頃には王都は滅びとるの~。」

右手に持った木の短剣でオウカを攻撃、攻撃、攻撃する。

短剣で、時には足を使って。予測されないような動きでオウカに一撃を食らわせようとするも全て防がれてしまう。


「ふぅ、ちと休むかの。」

「全然当たらない...。」


修行が始まってから早数日、私はスキルや魔法を使わずに自分の身体能力と技術を磨いていた。

呪いによって自分が早く動けないから当たらないわけじゃない。


オウカはこう見えてとてつもない実力者で、私と同じ速さでの組手をしてくれている。

要は速さではなく技術力の差がこの結果を生んでいた。


「やはりのう、ミウシアの攻撃は武器だけでなく足技も使うことで相手を翻弄することもあるじゃろう。じゃがそれは自分よりもはるかに遅い相手と戦うときのみじゃ。ある程度落ち着いてミウシアの攻撃を受けることができる相手じゃと、今の戦い方じゃ無駄じゃろう。」

「なるほど...。」

そりゃそうだよねぇ、この世界に来てこの体になって、凄い身体能力を手にしたところで所詮元会社員....。


「強者同士の戦いでは読み合いが主軸になる。真っ向から体術で戦えるだけの技術とスキルや魔法を合わせられれば敵はおらぬじゃろうな。....ま、何はともあれしばらくは儂との組手じゃな~。」

「が、頑張る....。」

この調子であと1か月半ちょい....。


「あっ!!」

忘れてた、帰りの事を考えてなかった!!

ここまで来るのに1カ月、途中でルクスに送ってもらったけど帰りに会えるとは限らない。

そしたらどれくらいかかるか....というか帰れるか...?


「どうしたのじゃ?」

そもそも<暖房>ウォームボディを使いながら戦いなんてできないだろうし、もし仮に行きと同じ時間かかったとしても、後半月ちょっとで強くなれる気がしないんだけど...。


頭を抱えて悩みこんでいるとほっぺに何か硬いものが当たった。


「何を悩んどるのじゃ~~儂に相談してみい~~~~。」

オウカが角を巧みに使って私のほっぺをぷにぷにと突いてきた。

ひんやりしていて気持ちがいい、そういえば組手の時は赤色、普段は青色だけど、感情とリンクしてるのかな~?


じゃなかった、帰りについて考えないと。

オウカなら何とかしてくれるかな?


「実はここに来るまでに1か月かかってるから、うまく帰れたとしても後半月程度しか修行できないんだよ...どうしよう...?」

「へ?...ああ、そうじゃ。説明を忘れておった!」

手をポンと叩くオウカ。


「儂の従者に転移魔法を得意とする者がいるんじゃ。もちろん、王都にも一瞬で帰れるのぅ。オウカ国の交易も転移魔法で行っておるのじゃぞ。」

「ほんと!?よかった~~。」

転移魔法なんてあったんだ...助かった。

それなら残り1カ月半ちょい、修行に費やせる。


「じゃがの、それでも1か月半じゃ。短期間で教えることを全て教えるからの~、組手と並行してスキルについて教えていく必要がありそうじゃの。」

「スキルについて?」

スキルは祝福武器あっての技だよね、魔物であるオウカも装備を祝福したりできるのかな。

一応デストラが魔物の神だからできなくはないのかな?



神社の中で座学をするらしいのでオウカについていく。


ちなみに眷属達と話す時間は夜寝る前の少しの間だけになった。

特にルニアが寂しがってたけ、私の目的のために理解してくれた。

でもその分寝る前に話す内容が濃縮されすぎてルニアが早口になってきた、なんでも話したい事をメモにまとめてるみたい。

嬉しいやら重いやら....。



神社の中のまだ私が入ったことのない部屋に案内されると、そこには黒板と机、椅子が置かれていた。

ようは学校の教室っぽい部屋だ。


私が席に着くとオウカはチョークのような物を手に持ち黒板に文字を描いていく。

描かれた内容は「すきるとは」

オウカの書いた字は縦に長くひらがなを崩したような達筆で、まるで昔の日本人のような.....。


......ひらがな!?


「ちょっとまって、オウカってその文字かけるの!?」

「かけるも何も、ミウシアも見たじゃろう?あの本に描いてあった文字じゃ。」

本..ああ、オセロに貰ったって言ってたあの日本語の本かな?

にしては達筆すぎるような気も...。

あの本から学んだならもっと現代風のひらがなになると思うんだけど。

というか文字の教本じゃないのにわかるもんなのかな?


「解析に数十年はかかったがの、よい暇つぶしじゃった。ま、あの本に文字がどのようなものか詳しく書き記されたような項目があったおかげで解読ができたんじゃがのぉ。」

腕を組んで頷くオウカはどことなくドヤッとした表情になっている。


「凄いね、違う国の文字なんて本だけじゃそう簡単に理解できないのに..。」

でも知らない国の知らない言語を一冊の本から読み解くのは相当に凄いことだと思う。

地球ではヴォイニッチ手稿っていう謎の言語で書かれた本が会ったけど、誰も解析できなかったし...。

まぁ今回は文字の法則とかが書かれたページがあったから何となくニュアンスで読み解いたんだろうけど...。


「まぁその時は文字自体理解してなかったからのう、案外まっさらなほうが頭に入るもんじゃよ。....話が脱線してしもうたな。スキルについてじゃ。」

黒板にぐにゃぐにゃした人...?のような物体とスライムに角が付いたような物体の絵を描き始めた。


「まず人と魔物のスキルの違いじゃ。」

やっぱり人のつもりだったんだ....。あっちは魔物、シカの魔物なのかな...?

どっちかっていうとシカスライムっぽい。シカスライムってなにさ。

つい噴き出すと、オウカがぷんすこ怒り出した。


「これ!!笑うでない!!...で!違いじゃが、人間の言うスキルは祝福武器という神に祝福された武器を媒体として発動する。それに対して魔物は魔核...人間は魔石と呼ぶのう。その魔核を媒体に発動するのじゃ。」

魔石...なんか前にカナちゃんが言っていたようないないような...。

魔物の臓器みたいなものかな?確か魔物を解体屋に預けた時には換金されていなかったけど...。


黒板に書かれた人間?には棒を、鹿スライムには真ん中に黒い丸を書いたオウカ。


「魔石は種族によって性質が違う、それが属性のような物じゃなあ。火属性の魔物は赤色、水属性の魔物は青色が多いのは魔石からあふれ出る属性のついたマナが常時溢れ続けているからじゃの。」

まさかそれって私のホーリー・スピリットとかダーク・スピリットと同じ?


「オウカ、それってもしかしてこれと同じ?」

立ち上がって飛び兎を手にする。

マナを流し込んで光属性が付いてから逆流させる。

今ホーリー・スピリットを使っても速度は変わらないんだろうなぁ~。

オウカがよほど驚いたようで口を鯉のようにパクパクさせながら指を刺してきた。


「そ、その通りじゃが...。ううううう!!なぜじゃ!!!今から教えようとしたというのに!!!つまらん!!!儂が教えたかったのじゃ!!!」

だんだんと地団駄を踏んでいるその姿は見た目と相まってまさしく子供みたいでかわゆい。


それにしても魔物化...そりゃそうか、魔物の特性を再現したようなものだもん。

魔物が身体能力が見かけよりも高かったりするのはそういうことだったのか、魔物は常時発動してた、そりゃ強いよ....。


スピリット化、魔物化を解いて再び席に着くとオウカはうーうーと唸りながらも再びチョークを手に取った


「ふん!まあよいわ!ではその先のことを教えてやろう。ミウシア今使ったのは単属性での魔物化、そしてこれが....。」

青色に透き通った角の枝分かれした部分を持ち、引き抜くとオウカの神の毛が半分だけ青色に変わった。

体の周りには目視できるほどの薄い青色のオーラがあふれ出ている。

見るからに今までよりも威圧感が増したを感じた。


「復属性の魔物化じゃ。.....なのじゃが、これはさすがに.....?」

ちらちらと顔色を窺うように私を見るオウカ。

あぁ、私がすでに習得してるか心配なのかな。


「初めて見」「じゃな!!!そうじゃな!!コレはさすがにじゃな!!!」

安心したようにふーーーーっと息を吐きだしている姿が愛らしい。

なにこの可愛い生き物...。


「復属性の状態ではスキルの多彩さが一気に増すのじゃ。これさえできれば戦闘の幅も増えるじゃろ。....人間が取得するには復属性使えるのが最低条件なんじゃが...ミウシアはどうなのじゃ?」

「んーっと、この飛び兎が光と闇属性を扱えるようになってるんだけど....。」

腰に刺さった飛び兎を抜き、オウカへと渡す。


「ふむ...陰陽樹と....黒錬鉄か。よい素材じゃのぅ。それにこの装飾は素晴らしいのじゃ...。しかしこの小太刀だけでは光か闇の単属性魔物化しかできぬなぁ...。」

オウカはうーーーーんとしばらく悩み、私に飛び兎を返すと黒板に図を描き始める。


「魔物が復属性の強化を行う時、元々ある属性に違う属性を混ぜるのじゃ。しかし人間は無属性のマナを祝福武器という媒体を通して単属性の魔物化を行う。つまりじゃ、人間が復属性の魔物化を行うためには2度も自身のマナを染めなければならないのじゃが....。」

人間の絵の真ん中に小さく丸を書く、その丸を囲うようにしてさらに丸を書く。そしてその丸も囲うように丸を書く。

最後の丸は人間の絵からはみ出てしまっていた。


「人間は内部のマナと外部のマナを操作して属性のついたマナを取り込む、それが魔物化じゃ。普段のマナ量から少し増えておるのじゃが....、この絵の通り、さらに復属性のマナを取り込もうとすると体のマナ許容量を超えて、ボカンじゃな。」

スキルって自身のマナだけしか使わないと思ってたんだけど、外部のマナも取り込んでたんだ...。

許容以上のマナを取り込んじゃうと爆発?

怖すぎる...。


「死んだら意味ないじゃん!」

死なないために、死なせないために強くなるのに強くなるために死んだら本末転倒だぁ。


「じゃからなぁ、儂はこう考えたのじゃ。同時に復属性のマナを取り込んだらどうじゃと。」

新しく人間の体を描いて両手に棒を持たせる。

その棒から人間の体に向かって矢印を伸ばし、人間の中心部にぐるぐるぐるぐると丸い線を描いていく。

今回描いた丸は人間の体からはみ出ていなかった。


「つまり、祝福武器を二本持って同時に属性を発動、そして二つの属性を同時に体内に取り込む。これならば可能じゃ。それにあたって...その飛び兎、儂に預けてみぬか?儂が持ち合わせてる素材を元に対の双剣に打ち直してやろう。」

「飛び兎を...。」

この飛び兎は長い間一緒に旅をしてきた相棒だ、だからこそ、打ち直すといわれると少し寂しい気もする。

でも飛び兎が無くなるわけじゃなく、生まれ変わるんだ。

だったら迷うことはないかな。


「わかった、お願い。...オウカには色々お世話になりっぱなしだね、いつか必ず恩返しするよ。」

飛び兎をオウカに渡して感謝した。

修行に泊まる場所に剣の打ち直し迄やってもらって私は何が返せるだろう?


「そうじゃなぁ、儂と対等に接してくれてるだけで儂は十分なんじゃが...そうじゃ!すべてが終わったら神の元でなく儂と暮さぬか?」

「すっごく嬉しいお誘いなんだけど、色々終わったら私はこの星から離れないといけないんだ。だからここで暮らすのはとっても魅力的なんだけどそれはできない...。」

きっとオウカとここで暮らしたら毎日が楽しいだろうなぁ。

この国は私の故郷に一番近いし、料理だって日本っぽい。

でも王都が安全になったら私はまた世界を旅して終わり次第この星から去らなきゃいけない。

そっか、仲間とも別れなきゃいけないのか~。悲しいなぁ。


誘いを断るとオウカの表情はは生き生きとした顔から悲しい顔へと変わる


「そうか...残念じゃ...。じゃあまたいつか、儂に会いに来てほしいのぅ。その約束がミウシアからの礼じゃ!必ず会いに来るのじゃ!儂に寿命はないからの!」

「わかった、絶対に会いに来るね。」

全部が終わったら宇宙神に地球とサスティニアを行き来できないか聞いてみよう。

私もこの星にもう二度と訪れられなくなるのは悲しいもん。


「よし!決まりじゃ!!じゃあ早速、この武器の祝福を解くのじゃ。」

祝福している状態じゃあ打ち直せないのかな、それなら教会に行かないと。


「わかった、....そういえばこの国って教会あるの?」

オウカがきょとんとした顔で私を見つめる、そんなおかしなこと言ったかな?


「あるも何も、この神社がそうじゃ。この国は複数の種族がおるのでな、全ての神を信仰しておることになる。もちろん、魔物の神であるデストラさまもじゃ。」

「ここ教会だったの!?」

オウカは教会に住んでたんだ、そんでデストラも奉ってるんだ。

魔物だもんねぇ。


神社の中の神を奉る祭壇で飛び兎の祝福を解いてオウカに渡し、今後のことを話した。


祝福武器を二つ扱うためにはレベル上げが必要、でも武器は持ってない。

代わりの武器はないかとオウカに聞くと、稽古で使ってた短剣があるじゃろ!と言って稽古用の木の短剣を二振り受け取った。


こんなのでサクラの森に出てくる強力な魔物と戦えるわけが無いと思い、鑑定を行うと驚きの結果が出た。


-------------------

名称:世界樹の短剣

品質:A

祝福:可能

武器性能:攻撃力+60

構成素材:世界樹の枝

説明:世界樹に進化したドライアドの枝から作られた木剣。

補足:・刃が無いため切ることができないが、刃が対象に触れた時、力と速度に応じて追加でダメージを与えることができる。

-------------------


ただの木剣かと思ったら恐ろしい性能の武器だった。

というか速度と力で追加ダメージ??どおりで稽古中痛かったわけだよ!!

オウカのスキルか何かかと思ってたけど!


木剣を二つ持って双剣での戦い方をオウカに教わる、丁度いい機会なのでオウカのステータスを見せてもらおうとしたら快く承諾してくれた。

自分の力を見てもらいたいのかもしれない。


-------------------

名前:オウカ

種族:エンシェントユグドラシルディアー

職業:守り神

HP:測定不能

MP:測定不能

力:測定不能

防御:測定不能

魔力:測定不能

早さ:測定不能

運:測定不能

-------------------


まったくわからん!!!

オウカに鑑定結果を伝えると、自分よりもはるかに実力が上だと鑑定しても全ての情報を見れないのではとのことだった。


測定ができないほどの実力者に稽古をつけてもらえるなんてラッキーだなぁ。

ん?ラッキー?これやっぱり私の運ステータスがA+だから?

運なんて不明確なステータスがどういう風に影響してくるかと思ったら、本当に運なんだ、クリティカル率とかじゃないんだ..。


こうして私はオウカとの訓練とレベル上げを並行して行うことになった。


-------------------

名前:ミウシア

種族:バーニア族(半神)

職業:短剣士(Lv69)

HP:680/810(100UP)

MP:4814/6982(800UP)

力:B+

防御:D+ (1段階UP)

魔力:A-

早さ:D (呪)

運:A+

称号:善意の福兎(6柱の神の祝福により効果UP)

  ・自分以外のHPを回復する時の回復量+100%

  ・誰かのために行動する時全能力+50%アップ

  ・アイテムボックス容量+100%

  ・製作、採取速度+200%

   ※このスキルはスキル「鑑定」の対象外となる。

   ※このスキルを持っていると全NPCに好意的な印象を与える。

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