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「102話 オウカ国の成り立ち その2 」

オウカが数百年前にオセロから貰った本を取りに行っている間、私はオウカの話を自分の中でまとめた。


・はるか昔、知能が発達した魔物の中で、人を守るものを『神獣』、人を襲うモノを『魔族』と呼んでいた。

 現在では両者ともにほぼ滅びている。

・王都を襲ってきたのはおそらくオウカの言う『魔族』とは別物か、その血族の者。

・オウカは神獣の生き残りであり進化を利用し人化を行った。自身を慕う人間と友のドライアドと共にサクラの森に逃げ延びてきた。

・ひときわ大きなこのサクラの木、『御神木』はオウカの友であるドライアド、身をもって展開した結界により木陰に魔物が近寄らない。

・オセロから入手した本によって建国の知識を得た。


うう、情報量が多すぎる。

魔族についての話はトルペタ君たち、王様に共有したほうがいいかも。

あ、人化についてルクスに教えてあげないといけないなぁ~。

思わぬところで情報が出てきたなー。


というかオセロってホント何者?オウカは時間と空間を無視して存在できるとか言ってたけど....。

オウカは自身の髪色を代償に捧げたって言ってたけど、私があったオセロは黒くなかった。

別の猫なのか、はたまた長い年月で色が変わったのか、それとも時間を無視するのなら私と会ってから過去のオウカと会った可能性もある。


....オセロについては考えなくていっか。

お酒をお猪口にトクトクと注いで、クイッと一気に流し込む。

お米で作ったお酒はほんのり甘く、つい飲みやすくてどんどんと飲んでしまう。


オウカに残しておかないと文句言われそうだからそろそろやめておこうかな。


お酒から手を放し、ぐぐぐーーーっと伸びをする。


「んん~~...。ふぅ。オウカまだかなー。」

きんぴらごぼうのような料理を口に放り込んでいると、襖の向こうからどたどたと慌ただしい音が聞こえてくる。


ガラッ!

「あったのじゃ!これじゃこれじゃ!!」

オウカが手に持っていたのはひどく劣化し、茶色く変色した分厚い本。

茶色に変色はしているものの、表紙は元々色がついていたようでところどころ色合いが違っている。


「ほれ、みてみい。」

ぐいぐいと机の上の料理を隅に寄せ、どん!と本をそこに置いた。


近くでよく見て気が付く、その懐かしい文字に。


「....『江戸時代のまちづくり』・・・・?」

「なんと!ミウシア読めるのか!!....さすがは神の遣いといったところじゃの~。」

「なんでこんなものがここに?」

それはこの世界にはない言語、日本語(・・・)でそう書いてあった。

パラパラとページをめくると、小学校にあるような歴史を漫画で学ぶ本のようだった。


しかし内容はものすごく細かく、建築の工程や料理、神社といった概念のような物が図解されている。


確かにこれなら文字が読めなくても何となくで理解できると思う。


「儂が一番読み込んだのは.....ここじゃ!!」

オウカはページを一気にめくり、『江戸の恋愛事情』という項目を指差した。


「ちょっ.....。」

そこには若い男ととても若い女が抱き合って...なんやかんやしている漫画が描かれていた。

もちろん、なまなましくは描かれていないけど、保健体育の教科書くらいは描いてあった。

解説には当時の女性の婚期はとても若く~とかなんとか描いてある。

漫画の最後には年老いた男女が笑顔でたくさんの子供たちと一緒に集合している絵が描かれている。


「人間の交尾についてじゃろ?儂は魔物じゃったから、疎くてのー。国を作るには国民が必要じゃが儂について来てくれたもの達は種族もばらばらでなかなか子宝に恵まれなかったんじゃよ。儂も試してみたらなんと、儂はどの種族とも子を成せたのじゃ!!」

「へ、へぇ.....。そうなんだ...。」

のじゃロリビッチじゃないか!!!!

いや、純愛かもしれないじゃん...あまり確認せずに決めつけちゃいけない。


「種族によって交尾の仕方が違ってのー。特にジャイアント族は「ちょい!!!!!!!!」へぶぅ!!!」

とんでもないことを口走ろうとしたのでオウカの頭にチョップを入れて話を中断させる。


やっぱりビッチじゃないか!!!!


「な、なにするのじゃ!」

「そこまでは詳しく言わんでよろしい!!」

元々魔物だからかその辺の観念が緩いらしい。


「そうでもせんと人手不足でどうしようもなかったんじゃ...。しかし最近はすっかりご無沙汰じゃのう。どうじゃミウシア、今夜儂と「っせーい!!!!」うぎゃ!!!」」

涙目で頭を押さえるオウカ。


「そういう発言は控えなさい!!」

まったく、オウカはこういう感じか...。

確かに可愛いけど幼すぎるしそういう対象には見れない。


はぁ~とため息をつき、本の背表紙を何となく見つめた。


「定価7,980円....たっか!!!」

どうやってこの世界に持ち込まれたかはわからないけど、相当に高価な本だということは解った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

お酒を相当に飲んでいい感じに気持ちよくなってきたころ、オウカから滞在中はこの神社に住み込むと良いと言われたので、好意に甘えた。

オウカに部屋を案内され、なんだか流れで一緒の布団で寝る事に。

全くそういう気分にはならなかったけど、オウカは湯たんぽみたいに温かかった。

夜中に何度もオウカの角に小突かれて目を覚ましたけど....。



朝起きると、オウカにお風呂へと案内してくれるということで、お風呂もあるんだ!とわくわくしてついていくと、想像以上の絶景が広がっていて驚愕した。

数十メートルの高さにあるこの神社で、床と湯船が全て木でできたとても豪勢な露天風呂。

上は御神木の木々の隙間から木漏れ日が見え、目の前にはオウカ国の街並みとピンク色のサクラの森が一面に広がっている。


もうこの国に住みたい。本気で...。



優雅にお風呂を楽しんだ後は、オウカに神社外に呼び出された。

ついに修行の始まりかな?どんな人に教えてもらえるんだろう。


「お、来たかミウシア。風呂は絶景じゃったろう。儂の個人的な風呂じゃからのー、本来なら儂以外入ることは許されないんじゃぞ~?」

神社の外に出るとオウカが一人、石畳の上で屈伸していた。


「さいっっっっっっこうだったよ!夜はあそこでお酒飲みながら入るのもいいなぁ。」

あのお風呂に遣って、夜桜を見ながらお酒を...うわぁ、最高じゃん....。


妄想にふけっているとオウカの角が透き通った青色から、徐々に赤色に変わっていく。

次の瞬間、自分の角の枝分かれした部分を片方ずつ握り.....引っこ抜いた(・・・・・・)


「え!?」

引っこ抜いた角は赤く透き通った二本の短剣へと変わる。


「ミウシアを鍛える者を用意するといったじゃろ?」

オウカの姿が一瞬ぶれたと思った次の瞬間、その姿が消えた。


その直後に背後から寒気のするような殺気を纏った声がした。


「儂が相手じゃ。」


何か攻撃が来ることを察知し、すぐ背後からの攻撃を避けようとするも、高速で足払いをされて体が浮遊感に襲われる。


「ちと痛いぞ。」

背中から地面に叩きつけられ、首に角の短剣を押し当てられる。


「げほっ、げほ....。」

「こういうのは最初に力量を見せなくては儂が稽古をつけると言っても信憑性がないであろぅ?」

石畳の冷たさを感じながら、視界に入ったオウカには先ほどのさっきも無く、角も青色へと戻っていた。


「ほれ、立てるか?」

「う、うん、ありがと。」

差し伸べられた手を掴み、立ち上がる。


オウカは神獣、強いとは思っていたけど人間としての戦い方でここまでとは思わなかった。

この国に来る道中で会った魔物でも、身体能力が抑えられてるとはいえ、目で追うことはできた。


しかし今のオウカの動き、全く目で追えない。


この人に教わればきっと私は強くなれる。


「稽古お願いします!」

「うむ。腐らずに教えを乞うのは偉いことじゃ。ミウシアはきっと強くなる。」

私は頭を下げてオウカにお辞儀をすると、オウカは頷く。


「しかしあれじゃのー、この腕輪の呪いはなんというか、運命や因果を感じるのぅ。」

私の腕を取り、身に着けた呪血と暗黒の腕輪をじろじろと眺めるオウカ。


「運命?因果?」

「うむ、その腕は殻は儂の知り合いじゃった赤竜の気配がするのじゃ。あ奴は誰よりも優しく心の強い神獣じゃった。そして魔族から人間を守るために力を求めた。力を求め、求め抜いた結果恐ろしい魔法を生み出してしまったのじゃ。」


「恐ろしい魔法?」

「うむ、魔法というよりあれは呪法じゃな。呪法の説明は省くぞ、人間が知るべきではないのでな。...赤竜は魔族に対抗するため、最も代償として効果のある自身の強さ、...心を代償に力を手にした。」

呪法、代償...心を代償ってことは心を無くしてしまうってこと...?

もしかして...。

オウカの顔を見ると悲しい表情で頷いた。


「うむ...。心を無くしてもうたのじゃ。心を無くした赤竜は敵味方の区別なくすべてを破壊した。身を賭してまで守ろうとした人間でさえも...な。」

「...。」

赤竜って神獣は本当に優しかったんだなぁ、でも強くなる方法を間違えた...。


「ちと話が重くなってしもうたな。つまりじゃ、その呪いで自身の得意とするものを制限されておるのじゃ。ミウシアの場合は速さなんじゃろなぁ。」

さっきの戦いでそこまで見抜かれてたのかぁ、ますますオウカのそこが知れないや。


「そしてその呪いを打ち破った時、お主は力を手にするじゃろうな。その代償は...別の形で既に払っておるのではないか?」

「別の形...?」

マタタビ?

いやいやいやいやいや、そんな赤竜の願いを込めた呪いの代償を私はマタタビで?

まさかね。


「それで、どうやって呪いを打ち破るの?」

「それは....。」

ゴクリ。

オウカが真剣な表情で私を見つめる、その緊迫した空気に私は額に汗が流れるのを感じた。


「しらん!」

「えぇ....。」

こんな空気にしといて知らないの!?

オウカが私の腰...お尻?をバンバンと叩きながら笑った。


「かっかっか!まー適当に稽古でもしてればいつか解けるじゃろうて!ほれ、まずは基礎体力からじゃ!儂についてまいれ!」

オウカが町へと続く階段の方に向かって走っていく。


「ちょっとまってよ~~~~~!」



こうしてオウカ国での私の修行が始まった。

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