表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/163

「101話 オウカ国の成り立ち その1 」

4話ほど書き溜めました、更新がまちまちですみません;;

目の前で美しいクリスタルの角を持った少女が私に好きにしていいといって目を瞑っている。

もしこれが武蔵の姿だったら事案発生だよね~。


って、現実逃避をしてる場合じゃない。

全く飲み込めないこの状況、なんでこの子は私を見て何かを悟ったようにしているんだろう。


「ど、どういうことですか?」

「おぬしは神の遣いじゃろう、それも相当に地位の高い神の。恐ろしいほどの神力があふれ出てきておるしのう。」

私の問いかけに反応して、目を開けてオウカ様は応えた。

神力ってたしか、私がサスティニアを歩いてるだけでこの星に神力が定着して星が安定するとか言ってたやつだよね?

神力って見えるモノなの?


「神力が見えるのは...本当ですか?....もし私がその神の遣いだとして、なぜあなたをどうにかすると思ったのですか?」

「そうじゃのう、神力が見えるというよりは感じると言ったほうがよいのぅ。儂のこの角は少し特殊なのじゃ。」

オウカ様は自分の角をトントンと指で軽く叩いた。

にしても凄く綺麗な角だなぁ。


透き通った薄く青みがかった角の内部は部屋の明かりを受けてガラス細工のひび割れ模様のようにキラキラと乱反射していた。


「昔からの、神に匹敵する程の力を持った..いや、持ってしまった(・・・・・・・)魔物は神の遣いによって処理されると言い伝えられておるのじゃ。...違うのか?」

魔物?..やっぱりどの種族にも当てはまらないと思ったらこの人は魔物だったのか。

それにしても神、つまり眷属達がそんな事をするはずがない。皆はサスティニアの守護神。

害を及ぼそうとする者には厳しい考えもするだろうけど、考えるだけだ。直接手を下さず世界の行く末をただ見守っているだけ。

...神力を確認されている時点で神の遣いだということを否定できなくなった。

私こそが神なんて言えないし、今更ただの人間ですと言っても無駄。

それに宇宙神の仕事の下請けって意味では神の遣いだし、この人になら私の目的を説明しても大丈夫、だと思う。


「...私は神の遣いではありますが、貴女に危害を加えることはありません。私の目的はサスティニアの地に神力を振りまくことです。申し遅れましたが、私の名前はミウシアと言います。どうか警戒を解いていただけませんか?」

私が目的と名前を伝えると、オウカ様の角は薄い青色から薄い黄色へ、足も崩して座り直し、どこかホッとしたような表情へと変わった。


「....ふーーー。であれば安心したわい。して、世界を旅すると言ったな。我が国に来たのも旅の途中ということかの?」

「それもあるんですけど、...実は....。」


王都が襲撃されたこと、今から..約2カ月後に封印が溶けて魔物が襲撃してくる可能性が高いこと、強くなるためにサクラ族の里に来たことを伝えた。

その間オウカ様はふむふむと真剣に話を聞いてくれた。


「ふーむ、神の遣いならばその程度問題ないと思うがのぉ。それほど強い魔物なのかの?」

「いえ、私は普通の人間として作られたので私の強さも魔物の強さもその程度だと思ってください。....それであの、オウカ様。もしよろしければどなたか腕の立つ人を紹介してもらえませんか?」

いきなり一国の責任者にお願いするようなことじゃなかったかなー、間違ったかなーと思いながら返答を待つ。

うーん、と首を傾げて何かを考えるオウカ様、可愛い。

ちょっと真剣な話だったからそっち方向の思考をしなかったけど、滅茶苦茶可愛いなこの人。


「....うむ!よいぞ。じゃが二つだけ条件がある。」

「なんでしょう?」

どんなことを要求されるんだろう、漫画とかだと国のなんやかんやに巻き込まれたりするもんだけど。


「一つ目は、もしできればでいいんじゃが、儂が危険な魔物ではないことを神に伝えてほしいのじゃ。覚悟はしているとはいえ儂も一国の主。避けられるのならまだこの国を支えていきたいのじゃ。」

オウカ様みたいな人間と共存してトップに立って国をまとめるような立派な魔物もいるんだなぁ。

でもそもそも神様が知能を持ちすぎた魔物を始末する、なんてことは無いんだけど...。


「わかりました。我が主もオウカ様が危険な魔物でないとわかれば無駄な殺生は致しませんので。その条件を受けます。」

「助かる。これで儂も安心できるわい。....二つ目はお主のその話し方に関するものじゃ。」

話し方...?なにか無礼な事言っちゃったかな?

いかんせん一国の主と話すことなんて今までなかったし、異世界の礼儀作法なんて...王都ではあったっけ。

でもオウカ様は魔物だからもしかすると礼儀が違ったのかも。


「儂はのー。これでも数千年は生きておる。この国の主でもある。...こうなってしまうと儂と対等に話せるものがいないのじゃ。この国に滞在している間だけでもいいんじゃ、畏まらず気楽に話せる儂の友になってくれんかのう?」

友達、友達かぁ。私は凄い嬉しいんだけどこの国の人からどんな目で見られるか...。


「私としてはオウカ様のようなかわいらしい方と友達に慣れるなんて嬉しい限りなのですが、その、周囲の人から反感を食らったりしませんかね?」

可愛らしいと言った辺りでオウカ様が自分の頬っぺたをムニムニしだした。

なにこの可愛い生き物。


「かわいらしいなんて言われたのはいつ以来かわからんのう...。そのようにあまり気楽に口説くでない。.....で、何じゃったか?周囲の者?それは平気じゃ!この国にいる間は儂と行動していれば、同格の相手であることもわかるであろう。なんたってお主は神の遣い、むしろ同格以上であろう?」

ドヤ顔オウカ様は可愛いなぁ。


「わかりまし...わかった。じゃあ少しの間だけど、これからよろしく!オウカ様!」

私が手を差し出して握手を求めるとオウカ様は私の手をジッと見つめた後両手でガシッとつつみこんだ。


「正座に握手、ミウシアはオウカ国の礼儀をよく知っておるのう!あと様は要らんぞ、オウカでよい。.....よーし!!!では飲むぞ!!友になったらまずは共に酒を飲む!!ずっと気楽な宴会というのがしたかったんじゃあ!!...おーい!馳走と酒を持ってまいれ~~!!!」

オウカは即座に立ち上がり襖を少しだけ開けて部下たちを呼び始めた。

その見た目でお酒を飲むのはなんというか、アニメとか漫画ではよくあるけど実際目の当たりにすると本当に飲んで平気なのかなぁ?って心配になる。


程なくして侍女らしきドワーフ族がやってきて、オウカと何かを話し始めた。

「ですが...えっ!?...はい!」みたいな声が聞こえてくる。

オウカは普段一人でご飯を食べてるのに~とかそういう感じなのかな。やっぱり一国の主ともなると部下と一緒にご飯をするとかしないのかな。


話し終えたオウカは席に戻り、ぽすんと座布団の上に座った。


「さて、馳走が来るまでは世間話でもどうじゃ?お主の話を聞かせてくれぬか?」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「ほうほう、インテリジェンスウルフという魔物に乗って雪山を突破したとはのぅ。初めて聞く名じゃ。」

「ルクスって言うんだけど、毛がふわふわで気持ちいいんだよ~。あ、お代わりください!」

黒豆の煮物のような物をつまみにお米からできたお酒を飲みながらこれまでのことを話す。


出てきた料理は想定通り和食だった。

でも昔の和食というよりは色々とごちゃ混ぜな和食だった。

とんかつやら豆腐やら納豆、懐かしい味に目を思わず潤ませちゃったのはしょうがないよね、日本人だもん。

オウカは見た目こそ幼く見えるけど中身はちゃんと大人だった。


ちゃんといちいちリアクションを取ってくれるし、話しててとても楽しい。


「いいのう、儂もいつかは乗ってみたいものじゃ...。」

酔っぱらって神子服を着崩し、座り方も大分リラックスしてきたところでこの国について聞いてみることにした。


「ところでこの国って独特な見た目なものが多いけど、どんな歴史があるの?」

「ふむ、それを語るには儂の生い立ちから離す必要があるのぅ。」

手に持っていたお酒の入ったお猪口をくいっと一気に飲み干すと、オウカはほんのり染まった頬で話始めた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

儂は元々、フォレストディアーという単なるシカの魔物じゃった。

見た目も今は人間に近いがの、昔は他の魔物と大差が無かったんじゃ。今のミウシアが見たら普通に戦うじゃろうな。


当時、魔物達はドライアドという神の眷属からマナを多く保有した果実を貰って力をつけて行ったのじゃ。

魔物の中には襲い掛かってくる知無き魔物もおるが、知があるものもおる。

その違いはマナの実を食べ、ドライアドと友好な関係を築いたかそうでないか、じゃ。

ま、有効な関係を持ったうえで悪さをするずるがしこい魔物もおるがの。


まぁよい、それで、この知を持つ魔物達は『魔族』を名乗っていたのじゃ。

その王都を襲撃してきた奴らも言っていたようじゃが、それとはちがうのぅ。

程なくして人間達が現れる。魔族の反応は様々じゃった、人間を襲うモノ、守るモノ。

その守るモノたちを『神獣』として崇めたのじゃ。ま、おこがましい名じゃがの。


しかし神獣は魔族達によって滅ぼされたのじゃ。

魔族達もほぼ滅んだがの~。その王都に襲撃してきた奴らは魔族の子孫とかそういう類じゃろうなぁ。


それでじゃ。

儂は儂を崇める人間達と、儂と仲が良かったドライアドと共に安全な地に逃げる事にしたのじゃ。

なが~~~~い旅じゃったから説明は省くぞ。


そしてこのサクラの森へとたどり着いたのじゃ。


魔物が少ない奥地の方に、儂が連れてきたドライアドを植えてやったのじゃが....この地に馴染みすぎたのか、みるみる内に巨大化していってのぅ。


その時にドライアドは儂と人間達を守るために自我を代償に結界を作ったのじゃ。

自分の下、つまりドライアドの木陰に魔物や魔族などの悪しきものが近寄れないような結界じゃった。


ミ、ミウシア。これ、泣くでない!

なに?ドライアドが可愛そう?....ま、奴も長い間生きてきたのでな、色々思うところがあったのじゃろう。

奴のために泣いてくれて感謝する。


....それでじゃ!国を作ろうと思うても、儂には知識が無い。

魔物であったときも洞穴を住処にしてたくらいじゃからな。


しかし人間達は儂を頼った。儂は悩んだ。

悩んだ末に、とりあえず人間達と同じ見た目になって崇めるのをやめさせようと思ったのじゃ。

見た目が自分たちと違う、強大な力をもっている生き物に持つ感情など、邪であれば畏怖、正であれば信仰じゃろ?


じゃから儂は今まで溜め込んだマナを使って人化した。

ぬ?ああ、魔法ではない、人化というのは魔物の進化を利用するものじゃ。


魔物はレベルが一定になると進化してより上位の個体になる。

その進化の際に体中にマナを込めると少々進化の方向性を決めらるもんで、儂はために貯めたマナをすべて使い、人の見た目に近付けたというわけなのじゃ。


ええと、それでのう。


人に近付きはしたのじゃが、儂のマナが多すぎるせいかマナが結晶化して角になってしもうてのう。

やはり崇められたのじゃ...じゃから儂は信仰対象に比べたら王の方がまだマシじゃと思って王になったのじゃ。


あんまり変わらなかったがの...。


それでのー、王になったはいいがどうやって国を作ればいいのかわからなかったのじゃ。

どうしたもんかとサクラの森を散歩しておった時に突然、空間が歪みだして、その歪みから猫が出てきたのじゃ。


何?ミウシアもここに来る途中に会った?

ふむ...もしかしたらあ奴は時間と空間を無視して存在しておるのかもしれぬな。


それで、なんじゃったかな。


そうそう、そこでその猫に「自分の一部と引き換えに今必要なものを授ける」というのじゃ。

口調までは覚えとらんが、そのような事を言っておった。


しかし困ったことに、この角は儂のマナの結晶じゃから渡せぬであろ?


だからと言って体の一部を渡すのものう、人間の見た目になったばかりで当時は何も渡したくなかったのじゃ。

そうしたら、「黒い髪の毛がうらやましいからその色を渡せ」ときたもんじゃ。


え?そうじゃ。儂の神は元々黒かったのじゃよ。魔物の時から黒かったのじゃ。


それでのう、儂は結局一冊の本を選んだのじゃ。

その本は国づくりに役立つような絵が沢山描いてあったのじゃ。

字はこの世界にはないものじゃった。


なんじゃ、あ~~~どうだったかのう。確かまだあったと思うのじゃが、数百年前の本だからの~あっても劣化しておるぞ?


わかったわかった!持ってくるからしばしまっておれ!

儂がいない間に酒を全て飲んではだめじゃぞ。


ほんとじゃぞ!!


無くなってたら見せぬぞ!!!見せぬからな!!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そう言ってオウカはチラチラと何度も振り返りその本を取りに行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ