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「10話 眷属」

天からさす光が消え、眷属たちは各々が頭の中で武蔵からの話を整理していた。

もっとも、一部の眷属は最低限考えた後は自分の今の姿を確認したり、ぼーっとしたりしているが。


実はこの眷属達、6人の神々は武蔵に力を分け与えられ作られたことにより、武蔵の知識の一部も力と同様に流れ込んでいた。

そのためそれぞれ異なる時代、異なる世界で死を向かえた眷属達はこの状況を武蔵の知識から「異世界転生」であるという偏った事実として受け止めたことにより大きな混乱をせずに受け止めることができていた。


「主の使命を果たすためにはお互いのことをもっとよく知る必要があるとおもうのだが、自己紹介でもしておくか?主の知識を使えば別の世界のことも理解できるだろうから好きに話せばいいしな。私はヒュム、軍師として国に仕えていた。」

話を切り出したのは平和の神であるヒュムだった。

----------ちなみにヒュムは平和を思うあまり自分の身を削りすぎ、戦争で血が流れない方法を考え抜いた結果、7徹による過労で死んだどこまでも平和を愛す男。平和のためなら周りが見えなくなるほどに----------



「俺からいくぜ、名前はジアっていうんだがこれはきっと主に決められた新しい名前だな。死ぬ前はコロッセオっていうところで剣闘士として活躍してたぜ!見た目もまぁ、今とあんま変わんねぇな!このキレーな鎧くらいか?ガハハハ!」

--------この男、剣闘士回では無敗を誇っていた。しかし試合後の飲み会でベロンベロンに酔っぱらったところ、帰り道で見かけた猫を撫でようと近づき石に躓いて木箱の角に頭をぶつけて死んだ情けない死因を持つ----------



「剣闘士、だからあんた礼儀がなってなかったわけねー。あたしはウォルフ、機械であふれる世界に住んでたわ。そうね、主の知識から言うとファンタジーとスチームパンクを混ぜた世界ってとこかしらね。そこで技師をやっていたわ。」

----------ウォルフは生前、発明品を多く生み出した。彼女の死因は発明品のショートによる感電死だ。その時ショートした作品は「皮下脂肪胸部集中装置。つまり胸に皮下脂肪を集めて胸を大きくする機械だった----------



「じゃあ次!そこの凹凸ウサギ!」

ビシッっと指をさされたルニアは自分のことだと気が付かず、後ろを向いて凹凸ウサギを探した。


「あんたよア・ン・タ!」

きょろきょろしているルニアに近寄り指でビシビシとルニアの胸部をつつく


「すぐに気が付かずすみません。そういえば私ウサギの耳が付いているんでしたね、生前は普通の人間でしたので・・・。これも主様のご趣味なのでしょうか?」

自分の敬愛すべき主(武蔵)が自分を見て「嫁にしたい」とまで思ってくれていたことでまだ浮ついた気分でいた。

眷属たちは武蔵によって作り出されたときに武蔵に対して絶対的な信頼を感じていた。それは恋愛、尊敬、親愛、崇拝と眷属によってそれぞれだがルニアには恋愛感情として表れていた。


「話を戻しますね。私はルニア、天使様と悪魔が争う世界で天使様に仕える神官としてその生を全うしました。」

--------元神官のルニア。実はド天然であり、悪魔に襲われている子供を庇い足に忍ばせていた護身用ナイフを勢いよく構えた時に誤って足を切ってしまい、ナイフを持ったまま膝に手を当ててかがんだ時に頭にナイフが刺さり死亡した----------



「・・・なんだかゴウコン?みたいで楽しいです、主様の世界には変わった文化が存在するのですね。」

この一人ひとり自己紹介を行っていく流れを武蔵の知識の中でも特に俗っぽい合コンに例えてをしまうルニア。


合コンにピクリと猫耳を反応させたシーアは座ったまま満面の笑みで合コンの話を広げていく。

「でもルニアは主さんいいんでしょ~シーアも主さんとゴーコンしたいな!でもそれじゃあゴーコンの意味ないねー!あ、シーアはシーア!なんか夜お外で寝てたら何かが上から落ちてきて死んじゃったんだよねー!」

----------この落ちてきた何かとはジアのことである。生前のシーアは猫の中でもとびぬけた遊びの才能を持つ猫だった。シーアが考えた遊びを友猫としていた所を見た人間が新しい遊戯を思いつくほどの有能だった。ある日遊び疲れたシーアが木箱を背にして地面で心地よく寝ていた時、小石に躓いたジアがシーアに倒れこんできてそのままシーアを押しつぶしたのだった----------



てへぺろ~とシーアは軽いノリで自分の生い立ちを話したあと、猫時代の名残なのか手の甲をなめ始める。


「貴様ら、弛んでいるぞ!!」

突然気迫のこもった大きな声を上げたのはデストラだった。

「偉大なる主殿から承りし使命に全力で取り掛かれ!貴様らはそれでも主殿の眷属か!」

先ほどまでの緩い雰囲気はどこに行ったのか、デストラの発言によってその場が一気に張り詰める。

真剣な表情になりまっすぐにデストラを見つめるルニア、その後ろ隠れてちらちらと様子を伺うシーア。

ウォルフはボソッと「このめんどくさそうな奴が私と同じ眷属かぁ」と呟く。


「・・・・。」

その呟きが聞こえたのかデストラの表情が曇り、気迫がなくなる。


「ト、トラちゃん怖いよ・・・、仲良くしなきゃダメって主さんも言ってたよ・・・。」

「そ、そうだな。も、申し訳ない、シーア・・殿・・・。」

シーアのおびえ切った声を受けて先ほどまでとは打って変わってデストラがおとなしくなっていく。


「デストラ、あまり威圧しないでくれ。私たちは同じ主によって作り出された存在。いわば家族だ。」

「しかし限度言うものがある!!家族にも規律が必要だ!!」

「あのさぁ~いい加減にしてよ、あんたの世界ではそうやって生きてきたんだろうけどここで誰かを律する必要なんてないから。だってここに主の言うことを守らない奴なんていないじゃない?なら仲良くやればいいじゃん。でしょ?」

「う、うむ・・・。その通りだな・・・。」



デストラの態度がヒュムとの会話とシーア、ウォルフとの会話で明確な差があることに気が付いたジアはにやにやしながらデストラの前まで向かいぼそぼそと問いかけた。


「おいデストラ、お前女に耐性無いだろ。」

「フン、何を言っている。そんな訳あるまい。生前は「ルニア、ちょっとこっち来てくれ!」」


「・・・?どうかしましたか?」

ルニアが耳をヒョコっとジアのほうに傾け、小走りで向かってくる。

・・・しかしルニアの天然具合は死因からわかる通り、生半可ではない。

整った芝生以外何もなく転ぶ要素がない場所で躓き、倒れこんだ。・・・デストラのいる方向に向けて。

「キャッ!」

「ッ!」


倒れこんできたルニアに向けてとっさにデストラが右手伸ばし受け止める。

デストラの腕によってルニアは転ばずにすんだが、結果的に2つのクッションがデストラの腕にムギュッと密着してしまう。


-------争いを司るデストラ、彼の生前は軍の司令官だった。彼は生涯を軍事に捧げたことによって女性とのかかわりが全くなかった。ある日戦争で部下が捕まえた敵軍の兵士を取り調べる時に事件が起こった。デストラが取り調べ室に訪れた際、そこには裸の女性が縛り上げられていた。運悪くボディーチェックを行っている最中の女性捕虜(・・・・)に出くわしてしまった彼の鼻からは鮮血がしたたり落ち、そのまま意識を手放した。そして倒れこんだ彼はこれまた運悪く金属製の箱角に頭を強く打ちそのまま帰らぬ人となった。----------


つまりそんなデストラがルニア自前の二つのクッションに触れてしまうと---------------


「グハッッッッ」

「「「「(デス)トラ(ちゃん)!?」」」」

「ガハハハハハ!!」


--------------当然こうなる


気絶したデストラを心配して抱えるルニア、ジア以外の眷属も突然の出来事に驚きデストラに駆け寄る。

そんな中ジアは腹を抱えて笑っているのであった。


宇宙神によって用意された魂は、武蔵の希望に答えつつ宇宙神が面白くなるように選ばれたものだった。

そのため眷属達は皆実力者ではあるがポンコツ気味の魂を持つ者であり、武蔵は今後この眷属達の尻ぬぐいをしながらサスティニアの大地を駆け回ることになるのであった・・・・。

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