またミッションですか……
※この物語はフィクションです。
絶対に真似しないでね!
一方、へヴンズフーズの冷凍コロッケ製造所の外れでは本物のヘヴンズソルトの製造を再開していたところである。その場にはリンリンとシュンシュンそしてダンダバ社長がいた。分量どおりに調合されていく素材たち。そして「永遠の愛の誓い」すなわち「2厘の桔梗の花」をすり鉢で丁寧にすり潰していく。最後の仕上げにそれを入れて本物のヘヴンズソルトの完成だ。出来上がった本物のヘヴンズソルトはザラメのようにピカピカ輝いていてまるで宝石のようである。
「これで地獄も大人しくなるかな」
「あの子たちには感謝しないとね」
ダンダバ社長とリンリンがそう言うと深々と頭を下げて謝るシュンシュン。
「そんなに罪を感じてるなら君にミッションを与えよう」
「ミッション?」
夜になって寮へと戻ってきたエインたちを迎えたのはリンリンとシュンシュンそしてダンダバ社長であった。仲間たちから話は聴いている。ランランとルンルンは親子で天上街で暮らしているのだとか。知り合いが少なくなったことで少し寂しく思った彼らだがダンダバ社長の姿を見て何か嫌な予感がする。
「明日、地獄に冷凍コロッケを届けに逝って欲しい」
(この社長なに言ってんだ!)
みんなの心の声が一致した。できることならば地獄なんか逝きたくない。そこでシュンシュンがミッションの説明をする。それは獰猛と化したヘルグループの社員を大人しくさせるために「本物のヘヴンズソルト」を使った冷凍コロッケをヘルグループの本社まで届けるといったものだ。
「途中で死んだら?」
「諸君ならできる!」
(何を根拠に!?)
アイリーンの質問になぜか自信たっぷりで答えるダンダバ社長。エインたちに不安が一気に広がる。特にアヴァロの歌で眠らせることが不可能なダウダウと出遭えば厄介だ。
「今度は私も一緒に行くよ! ディオウス。あなたの力が必要なの」
シュンシュンが真剣な顔つきで魔王ディオウスに言う。
「我が役に立つ……だと? ふふふふ」
「協力しない気か、ディオウス!」
エインが尋ねると魔王ディオウスは涙を流しながら
「何でもします! よろしくお願いします!」
深々と頭を下げた。120年ぶりに必要とされて嬉しいのか彼はシュンシュンの元へ近寄り肩をポンと乗せる。作戦はこうだ。まず一匹のヘルグループの社員を捕まえ魔王ディオウスの特殊スキル「洗脳」でヘルグループの本社まで案内してもらう。次に社長のワンワンと会い冷凍コロッケを渡す。最後にヘヴンズフーズとの取引契約書にサインをして帰って来る。
以上だ。
「気をつけてね!」
「死んだら駄目だよ」
リンリンとダンダバ社長がまるで見送るように言う。まだ明日まで断る猶予があるというのに……しかしここまで期待されたらそれに応えるしかない。そう思ったエインたちはしぶしぶ明日に備えて作戦会議を行ってからそれぞれの部屋へ戻って歯磨きやお風呂などを済ませるとすぐさま眠った。魔王ディオウスは一人ワクワクしながら自分が活躍する妄想をしている。実はこのミッション、冷凍コロッケであるがゆえに時間制限があるのだがそんなことなど微塵も考えていなかったエインたち。果たしてミッションは果たせるのであろうか。
「ねぇマカロ~一緒にトイレ行こう。ディオウスの笑い声が不気味でなんか怖い」
シャロンが目を擦りながら眠っていたマカロを起こした。彼はしぶしぶシャロンと同行する事にする。それを冷やかすようにコーリンが
「シャーロ君に怖いものってあるんだー?」
と笑いながら言った。
(あるよ。それは人が増えすぎて出番がない事だよ)
シャロンは本音を隠してマカロとお手洗いに行く。彼らが部屋に帰ってきた後も魔王ディオウスの寝言は変な笑い声に満ちていた。




