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やぁ、魔王です

※この物語はフィクションです。

 絶対に真似しないでね!

 一方、エイン達は一通り作業の手順を覚え、順調に冷凍コロッケを製造していた。エインとアイリーンが梱包作業をしているとき彼女は楕円形の冷凍コロッケを丁寧に箱に詰めながら、自らの行いを反省するかのようにエインにそっと謝る。


「いや、元はといえばボクが悪いんだし、アイリーンが謝る事じゃないよ!」


「いや、私が悪いのよ。ごめんね、エイン」


「いやいや、謝らないで、君は悪くない。悪いのはボク」


「――うるさいねぇ! 静かに作業できないのかい!!」


 リンリンが二人の会話を聞きながら彼らに向けて一個ずつ不良品の冷凍コロッケを投げつけた。そして、「仲直りおめでとう!」とメデューサのような眼でエイン達を祝福する。ちょうどその頃……


「リンリン姐さん。また新しい作業員が来たんですが」


「どんなやつだい?」


「それが……」


 新人の姿を見たおばちゃんの話によると、大きな二つの角が邪魔で作業帽が被れなくて、ぺディシオンより鋭い爪で、芽取り作業にも向いていないどうしようもない者なのだという。それを聞いて、エインとアイリーンは、魔王ディオウスなのではないかと思った。その瞬間、()()の復讐の相手が変わった。


「ねーぇ、エイン。いい事思いついたんだけど、協力してくれる?」


「うん。大好きな君のためなら何でもするさ」


 そうしてエインとアイリーンは、リンリンと一緒に天国へと転生した新しい作業員のいるロッカールームまで見にいく。それはまさしくパーティを全滅させた魔王ディオウスであった。そもそもエインが仲間を裏切るきっかけを作ったのが彼である。エインはチャンスだと思った。


(ここで、ディオウスに男らしく復讐をして、アイリーン達との信頼を深めよう)


 魔王ディオウスは、何が何だかわからない様子できょとんとしている。そして、作業着姿のエイン達の姿を見ると大声を出して笑った。


「何だその姿は? まさか我にも同じ姿をさせようとは思ってはおらんだろうな」


「そんなばっちぃ角で作業なんて任せられるわけないでしょ。ね、リンリン姐さん」


「気安く呼ぶんじゃないよ!」


 アイリーンが不気味に微笑んでいる。それはサーカスのピエロのように。エインはそんな彼女を横目で見ながら様子を窺っていた。しばらくして噂を聞きつけたマカロ以外の仲間達もロッカールームに到着する。数人のおばちゃんたちも興味津々でやってきた。まるで動物園の中の動物のようである。何だか恥ずかしくなってきたのか、魔王ディオウスは、


「……やぁ、魔王です」


 と小さな声で軽く挨拶をしてから、「なんでじゃー!」と自分でツッコミを入れた。


「あんたはクレーム処理係りね。なんとなく精神強そうだから、みゃしないだろうよ」


「それは……世界を征服できるのか」


「あぁあぁ、できるできる。クレーム処理は、意味不明な言葉を使って相手の戦意を喪失させる仕事だからね。きっと向いてるよ」


 それを聞いて急にやる気を出した魔王ディオウスは、「がっはっはっは!」と笑いながらおばちゃんにクレーム処理室(個室)へと連れて行かれた。ここでアイリーンたちがこっそりと、


「休憩時間になったら様子を見に行きましょう」


 と約束をする。彼らが作業をしていた裏ではマカロが大事件を起こしていた。クレーム対応はきっと厳しいものになるだろう。魔王ディオウスはそれに耐えられるのか? そして彼に待ち受けている復讐とは一体何か。


(悪いけどディオウス。お前には人柱になってもらうよ)


 エインは天国ここに来てやっと活き活きした表情をしていた。

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