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ホーホケキョッ!

※この物語はフィクションです。

 絶対に真似しないでね!

 一方エインたちは「百歳ももとせの楽園」で四季折々の花々を見ては感嘆の声を漏らしている。色とりどりのチューリップ畑の側には満開の枝垂しだれ桜。しばらく進むと輝きを放っている向日葵ひまわり畑や紫陽花あじさい等が沢山見られた。その奥を行くとなんともいえない匂いを放つ銀杏や朱色に染まった紅葉たちが。そしてさらに奥を進むと淡く火照る梅の花や椿つばき等が美しく咲いている。気が付けばエインたちは中を一周も二週もしていた。歩けば歩くほど様々な花を見つける。これはおもむきがあるものだ。しかしここに長居するわけにはいかない。彼らは「桔梗ききょうの花」を探しだす。


「そもそも桔梗ききょうの花ってどんななの?」


 アイリーンがピアズとシルヴァに尋ねると彼らは溜息をついた。知らずにここまで来たのか……とでも言うかのように。エインも花の事はよく知らない。ポカンとした顔で二人の回答を待っている。


「秋の七草の一つです。5裂の鐘形花しょうけいかを開き、一重咲きのものと二重咲きのものとがあって、色は青と白のものがありますよ。本来なら山地や草原に自生しているのですが……見たことが無いのですか?」


 シルヴァの答えに口をポカンと開けているエインとアイリーン。困ったように額に手をやるピアズ。生前の彼らがいたフィールドでは「桔梗ききょうの花」など余るほど咲いていた。しかしエインたちは魔王ディオウスを倒しに行く事に急いでいて花を見る余裕など無かったのである。その結果が低レベルで魔王ディオウスに敗れるという形になったのであるが……


「それじゃあ秋の花が咲いているところに行けばいいのね!」


「違います。桔梗ききょうの花は夏の花ですよ。人の質問や説明は最後まで聞きなさい」


「なによ、知ったかババア!」


「……かんざしで耳を貫通して差し上げましょうか?」


 アイリーンの発言にキレ気味で答えるシルヴァ。彼女らをなだめるエインとピアズ。そんな中、はらりと舞い散る紅葉がエインの頭上に一枚乗った。その場で足踏みをすればカサリカサリと耳障りの良い音が聴こえる。何気なくエインたちが見上げると紅葉の木の枝には先ほどのうぐいすと思われる鳥が毛繕いをしながら彼らを見下ろしていた。


 ♪ホーホケキョッ!


 うぐいすはひと鳴きすると今度は背の高い向日葵ひまわり畑の中に隠れてしまう。するとまた声が聴こえてきた。


うぐいすのウーが逃げてしまったのーつかまえて欲しいのー」


 間違いなく大天使ミッシャエルの声である。彼女はウーをつかまえる代わりに「桔梗ききょうの花」を摘んでも良いと言った。それを聴いて四人は向日葵ひまわり畑に向かう。それにしても視界が悪い。あたり一面大きくて鮮やかな黄色い花で覆われていた。


「お下がりくださいシルヴァ様!」


 突然のエンカウント。二~三匹の蜜蜂が彼らの耳元を通り抜けてはまた戻ってきたのである。蜜蜂はよっぽどの事がなければ襲っては来ない。その事を知っていたエインとアイリーンは怯えているシルヴァや警戒しているピアズを鼻で笑った。だが一匹の蜜蜂がクスクス笑っているエインの鼻にとまりプスリと針を刺してきたのである。不思議な事に蜜蜂は生きている。エインの鼻は紅葉よりも真っ赤に膨れ上がった。


「ふぇえ、痛いよぅ」


「情けない声出さないの! 逃げるわよ!」


 アイリーンが痛がるエインを引っ張って向日葵ひまわりを掻き分けながらがむしゃらに走る。その後をついていくピアズとシルヴァ。二人は


(それ見たことか)


 とでも言いたそうな顔をしていた。しばらく走っているとウーの鳴き声が聴こえてくる。確実に近くにいる。そう思った彼らはなるべく音を立てないように忍び足でウーを捜した。


「……居た!」


 向日葵ひまわり畑をしばらく歩いていると青と白の花びらが特徴の花が群生している箇所を見つける。そこにウーは居た。


「覚えておけ。あれが桔梗ききょうの花だ、田舎者勇者」


「うん、覚えておくよ。いびき魔人」


「貴様……! まだ言うか」


 ピアズとエインのやり取りは置いておいて問題はどうやってウーを捕まえるかである。今の彼らに武器は無い。小さな鳥を手掴みする事も出来そうにない。大天使ミッシャエルの言葉を無視して「桔梗ききょうの花」を摘んで帰るか……彼らは考えていた。そこでエインがある事を思いつく。


「ウーと同じ鳴き声をして仲間だと思ってもらうとかどうかな?」


「さすがに無理だろう」


「ボクの特殊スキル「口笛」だったら出来るかもしれないんだ」


 ひそひそと話すエインとピアズ。このスキルは主に遠くにいる鳩を呼びお使いをさせるためのものであるがもしかすればうぐいすのウーにも効くかもしれない。そう思った彼は


 ♪ホ~ホケキョッ


 とほぼウーと同じような音を口笛で再現して見せた。するとウーはエインの方へ飛んでいき彼の肩にのって首をブルブル震わすとエインをジッと見つめている。また大天使ミッシャエルの声が聴こえた。


「ありがとうなのーお礼に好きなの摘んで帰って良いのー」


 許可を得たエインたちは「桔梗ききょうの花」をそれぞれ両手に一輪ずつ摘んで「百歳ももとせの楽園」の柵を越え外に出る。エインがウーを肩に乗せながら歩いているとそこには大天使ミッシャエルが待っていた。


「ほうほう……百年後はそのような姿なのー」


 大天使ミッシャエルの言葉を不思議に思った彼らは互いの姿を見て驚く。


「誰ー!?」


 四人は腰の曲がった白髪混じりのおじいさんとおばあさんに成り果ててしまっていたのだ。庭園中に響くエインたちの声。このまま帰るわけにもいかず大天使ミッシャエルに元に戻してもらうように要求したが彼女はある条件を出してくる。それは一度天上てんじょう街に戻ってウーの友達を連れてくることであった。


 ♪ホーホケキョッ!


 庭園に響くウーの鳴き声。果たして百年後の天上てんじょう街はどうなっているのであろうか。そしてエインたちに新たなミッションが下される。元に戻るには大天使ミッシャエルに従うしかない。彼らは純白のホイッスルを使って天上てんじょう街へと戻ることにした。

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