やらかしマカロ
※この物語はフィクションです。
絶対に真似しないでね!
一方、配送係りに選ばれた大男マカロはチュンチュンというおばちゃんからトラックの運転の仕方を教わっていたのである。天国のトラックは単純な造りで、右足元のペダルを前に踏めば前進。後ろに踏めば後退する。ハンドルも左右に動かせば6つのタイヤが同じ方向に動く仕掛けだ。ブレーキは左足元のペダルを前に踏めばいいだけである。運転免許もなにもいらない。足が届くのならこどもでもできる仕事だ。
「これなら俺でも動かせそうだな」
見たことのない大型トラックを前後に動かしたり左右に動かしたりして遊ぶマカロ。その様子を見て安心したのか、雀のような口をしたチュンチュンが一枚の地図を取り出して配送先を説明する。
「へヴンズ物流センター?」
「そう、今からアンタにそこへ行ってもらうよ。私も助手席で助言するから大丈夫さー」
そう言うとチュンチュンは、マカロに梱包された冷凍コロッケをトラックへと運ばせ、彼とともに目的地であるヘブンズ物流センターへと向かった。が、しかし……
「信号だよ! ほら、ブレーキ! 違う、そっちは右足じゃないか!!」
マカロは極度の不器用だったのである。仲間たちと冒険をしていたときも、ある遺跡で右と左のスイッチを押し間違えて罠にかかるということがあった。だが今そんなことはどうでもいい。目の前の天使が次々と轢かれていく。ようやく止まったトラックからマカロたちが降りると、道路はレッドカーペットのようになっていた。そして、しばらく地面に伏せていた天使が、いっせいに起き上がると、
「あれへヴンズフーズのトラックじゃん! 轢かれたし、もう絶対買わない!!」
というようにその場から去っていく。状況が飲み込めないマカロにチュンチュンは青ざめた顔で天国の者は何度でも蘇ることを説明し、彼の代わりに運転席に座った。
「幸い警察沙汰にも裁判沙汰にもされなかったからよかったものの、一歩間違えていりゃ牢屋行きだったよ……あぁリンリン姐さんになんて言えばいいか……」
しかし、血だらけの地面を見て放っておく者がいるわけもなく、彼らは警察に通報されてしまう。しかし警官が来たころには、被害に遭った者が一人も残っていなかったため、「ヒヤリハット」として処理された。チュンチュンはポロポロ泣きながら警官に何度も頭を垂れて謝っている。それを真似してか、マカロも警官の前で、まるで頭突きをするかのような速度で頭を下げた。彼の頭は、ゴツン! と、一人の警官の頭部にクリティカルヒットし、そのまま気絶させる。
「あぁ~これ以上事態をややこしくしないでおくれよー」
慌てた様子でチュンチュンが倒れた警官の腕をさすっていた。エインたちが知らないところで悪名がついてしまったへヴンズフーズ。これからどうなることやら……