不届き者「フォカッチャ―ズ」参上!
※この物語はフィクションです。
絶対に真似しないでね!
エインは先に出口に行ったアイリーンを探しているところである。そこに赤いリップが特徴のブロンド髪の鼻筋の通った女性が彼に話しかけてきた。エリッサとはまた異なった色気を持つ女性にエインは心臓をバクバクさせながら話を聞く。どうやら金魚の柄の財布を落としてしまったらしい。
「ならボクも一緒に捜します!」
エインは服のポケットの中へと「ダンダバパス」を入れて人の多い街の中を腰を曲げ地面を覗き込むように女性の財布を捜していた。
「……うふふ、ありがと。坊や」
エインが夢中になっている隙に二人の黒ずくめの男がスッと横切る。気がつくと女性はいなくなっていた。そこにアイリーンがやってくる。
「もー遅い! 何やってたのよ!」
アイリーンの声を聴いてみんなが集まってきた。
「ねー。ぼくあのくるくる回ってる風車みたいな乗り物乗りたい!」
「へぇシャーロ君って高いところ好きなんだぁ」
「……悪い?」
「別に」
シャロンとコーリンのやり取りを見ながらエインが「ダンダバパス」を取り出そうとするも、無い。どこを探しても無い。エインは青ざめた。「ダンダバパス」を無くしてしまったのである。それをみんなに言うと全員の顔が引きつった。一番冷静だったルンルンが交番に行こうと言い出したのでエインたちは彼女についていく。交番の掲示板には指名手配犯の顔写真が貼ってあった。それを見てエインはハッとする。それは彼に話しかけてきた真っ赤なリップの女性だったからだ。その様子を見ていたアイリーンは
「もしかして……スられた?」
とエインに言う。
「……うん」
「ばかぁあああ!!」
アイリーンの強烈な右ストレートがエインのこめかみにヒットした。何度も謝るエイン。そんな彼らを影で見ながら嘲笑っていたのが指名手配犯の「フォカッチャーズ」という三人組みである。リーダー格の赤いリップの女性の名前はユンユン。そして四角い顔のタンタン。三角顔のホンホン。彼女らはスリの常習犯でそのモットーは「金持ちから奪い取る」事だそうだ。
「うまくいきやしたね」
「これで遊び放題でやんす!」
タンタンとホンホンが浮かれ気味で「ダンダバパス」を見つめている。
「これは裏ルートで売り払うよ。足がついちまうからね。さぁいくらで売れるかしら」
「聴こえているぞ……」
ユンユンが髪をかきあげながらその場を去ろうとした時ぺディシオンが彼女の手を掴んだ。その場にはエインたちも居る。耳の良いぺディシオンは彼女らの会話を聞いていたのだ。ユンユンは
「きゃー! 痴漢!」
と叫び、ぺディシオンの手を振り払って慌てて繁華街から離れた路地裏へと走り去っていく。
「待て! 不届き者め!」
ピアズが追おうとするがこれまたエインと同様逃げ足が速く土地勘も無いために取り逃がしてしまった。彼女たちはどこへ行ってしまったのか。スリ常習犯「フォカッチャーズ」を捜すという面倒事が増えてしまうことにエインたちは肩を落とす。このまま冷凍コロッケ製造所へは戻れない。きっとダンダバ社長が黙っていないだろうと思ったからだ。
「確か裏ルートで売り払うと言っていたな」
ぺディシオンが口元に手を当てて考えるような仕草をする。彼の言葉を聞いてアヴァロがある提案をした。それは遠くまで響く二胡の音色に乗せて歌を詠い裏の天使を誘き寄せるという作戦である。他に打つ手が無かったエインたちはその提案を受け入れた。果たして「フォカッチャーズ」は見つかるのか。




