レッツショッピング!
※この物語はフィクションです。
絶対に真似しないでね!
エインたちが冷凍コロッケ製造所から出てしばらくすると大きな繁華街が見えてくる。どこからともなく漂う飲茶の香り。呼び込みの威勢の良い声。明るいショーケースに並んだ雑貨や服など様々な物が彼らの好奇心を刺激してきた。エインたちがキョロキョロしていると一人の猫耳カチューシャをつけた若い娘が彼らのもとへとやってくる。彼女は品定めをするようにエインたちの装備を見ながら
「変わった服にゃのー。ウチの店に来てみにゃい? 良い品沢山揃ってるよー」
と言った。可愛い顔をして意外と推しの強い猫耳娘は薄暗く怪しげな店内へと彼らを案内する。エインたちが狭い視界でキョロキョロしているとパッと証明がついた。そこにあったのは大量のコスプレグッズである。エインたちが驚いているのを尻目にルンルンは商品たちを手にとっては吟味していた。
「そこのお嬢さん。これなんかどうかにゃ?」
猫耳娘がアイリーンに声をかける。甘々なピンクのロリータ服を満面の笑みで靡かせながら。それを見たアイリーンは頬を赤らめて
「い、いらないわよ!」
と言って何気なくエインの方を見た。彼は少し照れくさそうにしている。自分が着るわけでもないのにだ。猫耳娘と二人以外はその様子を見てニヤニヤしている。
「じゃあそこのお嬢様。大人なあにゃたにはこんな服もあるにょ!」
今度はシルヴァに向かって胸元が強調されたゴスロリを勧めてきた。
「なんと破廉恥な!」
ピアズが赤面になりながら猫耳娘に叱責した。
「あら。私着てみたいわ。試着お願いできるかしら」
「了解だにゃ~」
シルヴァはこの店を気に入ったようでいろんな服を試着しては遊んでいる。それを見て恥ずかしそうにそわそわするピアズ。女性陣はそれなりに黒猫のアクセサリーなどの小物などを手にとっては楽しんでいたが、男性陣はそんな彼女らを見ているだけで退屈そうにしていた。
「……もうそろそろ出ないか? 一軒だけで日が暮れてしまうぞ」
ぺディシオンが言うと女性陣は「わかったわ」と満足そうにそれぞれお気に入りのアイテムを手にしながらレジへ向かう。勿論お会計は「ダンダバパス」で行った。
「姉さんの杖前より可愛くなったね!」
「ありがとうシャーロ。肉球水晶という物が施されているらしいの。魔力もアップするのよ」
街中を歩きながらそんな会話をするシャルロットとシャロン。エリッサはうさぎのカチューシャを被り小躍りをしている。シルヴァは気に入ったのかさっきのゴスロリ衣装を着たまま歩いている。アイリーンはそんな彼女を見て
「なんかもっと老けた」
と悪気無く笑った。それにムッとしたシルヴァは
「似合わないイヤリングなんか付けている貴方に言われたくありません」
と返す。アイリーンの右耳は黄金色の猫が描かれたイヤリングがキラリと光沢を放っていた。それぞれ満足して買った物を貶されると怒りが湧くものである。アイリーンとシルヴァが口喧嘩している間もマカロはエリッサがノリノリでうさぎカチューシャを付けて小躍りする姿に見惚れていた。魔王ディオウスはルンルンに尋ねる。
「その袋は無限にアイテムが入るのか?」
「あぁ。これは天袋といって天使が買い物をする時に使う買い物袋だよ。どれだけアイテムを入れてもショルダーバッグサイズでコンパクトだから人気なんだよ。覚えときな」
彼女はそう言うと買った物をどんどん天袋へと入れていった。
「僕はイルカのバッチを買ったよー。可愛いでしょ♪」
「あらまぁ素敵ですわね」
コーリンがわざとらしくシャルロットにイルカのバッチを見せびらかしている間シャロンは目を血走らせながら彼を睨んでいる。そんなシャロンは何も買わなかった。ずっと姉のシャルロットの買い物に付き添っていたからである。
「ねぇエイン。このイヤリング本当に似合わない?」
アイリーンがシルヴァとの口喧嘩を終えてしょんぼりした様子でエインにそう尋ねてきた。
「ううん、とっても可愛いよ。アイリーンだから似合うんだと思う」
「でしょー♪ おばさんにはキツいわよねー」
「あら。おばさんって誰の事かしら?」
第二ラウンド開始。今度はエインも巻き込まれる形となる。ピアズもフォローするが口喧嘩はヒートアップし、その様子は繁華街を歩く天使たちにガン見されていた。そして彼らが「ダンダバパス」を持っていると知るや否やあちらこちらから呼び込みの声が聴こえるようになる。気が大きくなったエインたちはいろんな店をめぐる事にした。




