寮に戻ろう!
※この物語はフィクションです。
絶対に真似しないでね!
「帰って来たのねルンルン。ずっと待っていたわずっと……あなたが疑われているときに私は何も出来なかった。こんなお母さんでごめんなさい」
口調も表情も違った別人のようなリンリンを見てエインたちはぎょっと互いに目を合わせる。ルンルンが言うように確かにリンリンと彼女は母と娘の関係であるようだ。しかし、この虹色の鏡はどういう理屈でリンリンと会話しているのであろうか。
「これは天具鏡っていって、天国に売ってる心と心を繋ぐ鏡だよ。お母さんとお揃いで持ってたんだけど私のはなぜか割れてたから、きっとこれは私の鏡だね。この鏡は持ち主の大切に想う人の本当の心の有様を映し出すの」
「あんたのお母さんって意外と女々しかったのね」
アイリーンがルンルンにそう言うと彼女は
「シュンシュンと関わってなかったら優しいままだったのに……!」
と握り拳を作って怒りを表す。頑なにシュンシュンに対して嫌悪感を表すルンルンにみんなは疑問を持った。彼らが最初に出会った時や一緒に作業をしている時に感じた印象ではシュンシュンは決して陰湿な性格ではない。それにリンリンとも仲が良く見える。彼女がリンリンを裏切る理由などどこにもなかった。
「まぁ私があのクソババアに悪態をついていたのが気に喰わなかったんだろうね」
「ババア」という言葉にピクッと反応するシルヴァ。ルンルンの話を聞いてみると彼女は仕事に対する態度や赤く染めた髪をシュンシュンに指摘された事から彼女に反抗するようになっていったそうである。その上冷凍コロッケ製造所を抜け出して赤ちゃんまで授かってしまった事でルンルンは周りのおばちゃんたちから孤立してしまったのだそう。
「オカー、人妻だったのか! 我をその気にさせておいて今更突き放すとはなんと」
「サイレンス」
シャルロットが魔法で無理矢理魔王ディオウスの口を封じた。喋れなくなった彼は静かに泣きながら地面にのの字を書いている。
「――話は聴かせてもらったよ」
突然聴こえてきた声の方を振り返るとそこにはダンダバ社長がミルクボーロを口に含みながら立っていた。いつの間に……そうみんなが思っていると彼はルンルンに近づいてサングラスを外し
「悪かった。辛い思いをさせたね」
とだけ言う。それに激怒した彼女はダンダバ社長に事の全てを話した後に108つの愚痴をこぼした。キュートなお目目のダンダバ社長の目が点になる。地獄に逝って大人しくなったかと思えばさらにパワーアップして帰ってきたようだ。
「謝罪も込めて天国で好きに遊んでいいよ。ただし迷惑をかけないようにね」
「ボクたちお金持ってないけど……」
「ダンダバパスを持っていれば支払いは会社の方へ行くから」
エインの問いに自慢げに答えるダンダバ社長。そして彼はその代わりに一つのお願いを彼らにしてくる。それは本物のヘヴンズソルトの製造方法を記した手帳を入手することであった。
「えらく簡単に言ってくれるな……」
ぺディシオンが溜息をつきながら腕を組んだ。
「とりあえず寮に戻って全てを話す。それでいいねルンルン」
まだ悪態をついているルンルンであったが母親であるリンリンと娘のランランに会いたいという気持ちが勝ったのか、口を尖らせながらダンダバ社長の高級車に乗り込む。みんなもその後に続き長くて赤いキャンディのような光沢を放つその車に乗った。




